アマンダ達が立ち去ってから程なくして
カズから通信が入ってきた。





『見たかジャック!さっきの巨大兵器っ!』


「ああ、今まで見てきた無人兵器とは比べ物にならないぞ。」







これまでが見たものは、フルトン回収用のヘリ
通じて 映像としてマザーベースへと送られている。





『まさかあの様な巨大なものが完成していたとは・・・』


『あれ、UFOとかじゃないアルか?』


形状は確かに似ている。だが江戸で見たものとはかなり違う
天人の仕業ではないようだが・・・』


「一体ここで何が起きているんだ。」


『アマンダじゃないが、この兵器群の投入量は尋常じゃない
明らかに過剰だ。核の持ち込みは十中八九、間違いない。

問題は・・・核を何に使うか、だ。


『ま〜たお偉いさんの本部潰すとかそんなんじゃねーの?』





鼻をほじりながらの銀時の一言へ、カズは
呆れたような声を返した。





『自分達の組織を、自分で潰すのか?』


『あ。』


『全く・・・少しは頭を使わんか銀時。』


あん?エラそうにしてんじゃねーぞヅラァ!』


『ヅラじゃない桂だ!!』





にわかに騒がしくなる江戸の面々を無視して
二人は言葉を交わす。





「もっと情報が欲しいな。判断材料が少なすぎる。」


『どうする?情報源の司令官は死んだ。』


「いや、娘のアマンダならまだ無事だ。」


『あの人達を追うんですか?さん』


「ああ。」


『よしジャック、次の拠点に向かおう。
アマンダが無事なら、もう一度接触出来る筈だ。』


「了解。」











第5話 ルーラ理論もフルトンのアレもゲーム内では
大人の都合で片付けろ












敵の増援を掻い潜りながら、橋を渡ろうとして





不意にカズから再び通信が入る。





『・・・ジャック、今は俺とお前だけだ。
念のため言っておくぞ。』


「何だ突然?」


今は私情を捨てろ いくらあの時パイソンを
殺したゲリラがFSLNでも、今は味方だ。』


「・・・俺は別に『モニターしていたんだぞ あの時呟いた事を、な。』


聞かれていたか、と彼は小さく舌打ちをする。


カズはただ冷静に 無線の向こうへ言葉をかける





『いつまで引きずるつもりなんだ・・・向こうは
とっくに忘れてしまっている、それに彼らの協力を得なければ
「わかってる!・・・過去を振り返っても
どうしようもないのは俺だって理解している!」



『だったら、もう迷いは捨てろ
・・・早くアマンダ達と合流するんだ。』


「了解。」





僅かにわだかまる想いを押し込んで、通信を切った
はバナナ工場の選別所へと辿り着く。







うろついている敵兵を気絶させながら歩を進めれば





目の前に重武装をした兵士と
装甲車『LAV−typeG』が立ちはだかった。





『回避出来そうにない。ジャック、やれるか?』


「ああ。」


『装甲車部隊だ。装甲車を破壊するか、全兵士を
無力化するしかない 排除するんだ!


「了解した。」





彼は装甲車部隊の背後へ回りながら、たむろしている
兵士を気絶させた端からフルトン回収を行っていく。


(これだけの重装備の兵士だ・・・実力は
折り紙つきに違いあるまい)





「・・・いたぞ!


が、装甲車に見つかり結局戦闘になった。





「うげっ、手間取りすぎたか・・・!」







仕方なく敵兵を倒し、顔を出した部隊長を
装甲車に飛び上がって殴り倒し





「・・・よし!」





彼は敵部隊を無事、全無力化させた。





『そこの部隊長(コマンダー)のフルトン回収も
忘れないでくれよ?ジャック』


「ああ、分かってるさ。」







回収も一通り終えて一息ついた、その最中





チコをさらった円盤あの時の巨大無人兵器が見えた。





『侵入者発見、侵入者発見。』


見つかった・・・と思い身構えるが目にしたのは





ワイヤーが放たれ、捕らえられ宙吊りになるアマンダ。





「クッ!」


その状態のまま彼女はワイヤーをナイフで切り
自力で拘束を解いたものの


足から落下し、衝撃に耐え切れず・・・骨の折れる音がした





「グッ!?」





駆け寄る彼だが間に合わず、円盤が折れた足へと
ワイヤーを飛ばして彼女を再び吊り上げる。





「アマンダ!」


「撃って!」


「落ちるぞ!」


「あいつを撃て!」





円盤を差して告げるアマンダの真下に樹木を確認し


は、間髪要れずにLAWで円盤を撃ち落とした。





「ああああっ!!」





悲鳴を上げた彼女は枝をいくつか巻き込んで落ち
地面へと叩きつけられる。







「・・・アマンダ!!





側へ寄って怪我の状態を確かめる彼へ

相手はポケットから、何かを取り出して差し出す。





「どうした?」


巻ける?シガレット・・・」


「・・・ああ。」





がタバコを巻く間、アマンダは弱々しく
息を吐きながら口を開く。





「チコが・・・ツッ!


「動くな、足が折れてる。」


「あの子を・・・また子供扱いして、それで喧嘩を・・・」


「ん?」


「チコには・・・知られたくなかったから・・・
だからみんなで秘密にしてた。」





"何を"と問いかけて彼は、続けて開かれる口に
気づいて その言葉を喉元に押しやる。







「あたし達は・・・ソモサの国家警備隊に祖国を追われ・・・
国境を越えて・・・ここまで流れてきた。それでも・・・
何とか抵抗を続けることが出来たのは・・・」


「アマンダ?」


「そこの工場を・・・?」


「あのバナナ工場のことか?」


「それは表向き、本当は麻薬を精製していた工場よ。

KGBの支援を受けて、その運営を任されてた。
その収入で食べ物や武器を・・・」


「・・・知っていたのか?」





浮かんだ彼女の笑みは、少し皮肉げだった





「ええ、父さんは黙ってたけど・・・みんな知ってたこと・・・
チコ以外はね。それもこれも・・・同志や武器を集めて、みんなを
一つにまとめて・・・祖国を・・・自分達の手で再建するためだった


・・・麻薬に手を染めてまで頑張って来たのに・・・」





紡がれる言葉が、段々と力を失っていく。





「でも・・・もうだめ・・・あたし達は指導者である
父さんを失った・・・あたしなんかに代わりは務まらない・・・


工場さえも奴らに奪われ・・・このままじゃバラバラに
・・・革命どころの話じゃない・・・」


「ほら、巻けたぞ。」





は沈んだ彼女の口へ巻けたタバコを
咥えさせて、火を付ける。





「アンタは?・・・積み荷を追っているの?」


「ああ。」


「相当、大切なものが入ってるようね?」


「全てを破滅に追いやるものだ。恐らく・・・核兵器。





それを聞いて、アマンダの目が見開かれる。





核兵器!?大変!グズグズしてはいられない
イラスに行きましょう!そこが奴らの搬送ルートなの。

多分チコや同志達もそこに囚われてるはず・・・」


「何で分かる?」


「チコは喧嘩すると、いつも部隊を抜けて一人で
何処かへ行ってしまうの・・・だから奴らの拠点
チコが一番詳しい。チコが・・・」


「やはり、弟のチコが気になるんだな?」


「だから、あたしはリーダーには向いてないの
・・・う・・・くっ!





無理やり起き上がろうとする相手を抑えながら彼は言う。





「いいだろう、少し寄り道になるが・・・
その場所を教えてくれ。


「山岳に収容施設があるの・・・たぶんチコも」


「チコは山岳の収容所か。」


「お願いがあるの・・・チコを・・・

チコを助けられなかった時は・・・チコの苦痛を・・・
屈辱を・・・やわらげてあげて・・・





すがるようにしてアマンダは言葉を続ける。





「苦痛に負けて仲間を売るようなことになったら・・・
お願い・・・よ・・・」



その瞳から・・・大粒の涙がにじみ出ていた





「彼の・・・名誉だけは守って・・・」


「それは約束出来ない。」





彼女の頼みは・・・暗にチコの殺害を意味していた。







昔ならばいざ知らず、仲間を売っただけで
子供を殺すなど・・・"今の"の心が 許さなかった。





「・・・どうして?」


「・・・俺達は祖国を棄てることになるかもしれない。
だが、それでも生きる。それでも戦い続ける。」





強い眼で見つめて、はアマンダへと告げた。





「生きる理由は・・・他にいくらでもある。」







空を見上げて・・・満身創痍の彼女は
細くタバコの煙を吐く。





「ああ、少しは生き返った・・・」


「アマンダ、身体が回復するまで・・・俺の部隊に来い。」


「・・・あんたの部隊?あんた誰なの?
何故ここに現れたの?」


「俺は・・・雷電、闇を照らす雷だ。」


「雷?もしかして・・・あんたは偉大な指導者・・・」


そこまで呟いて、アマンダの意識が次第に薄れていく





「あたし達を・・・導いて・・・『自由な祖国か 死か』・・・」





気を失った彼女の口からタバコが零れ落ち


少し心配になった彼が首の脈を調べて・・・・

大丈夫だと判断し、通信回線を開く。





「カズ、聞こえるか?」


『こちらMSF』


一人回収を頼む。怪我人だ。」


『了解。』


「それからカズ、陸揚げされた物資はやはりイラスの方だ。」


『つまり核もそこに運び込まれている?』


「そうだ、間違いない。急ぐぞ!





フルトン回収装置でMSFのマザーベースへと
送られていくアマンダを見送ってから、は駆け出す。









・・・一方、マザーベースでは
MSF実戦部隊のミーティングが行われていた。





「よし、ボスが無力化した装甲車を回収するんだ。
回収には電磁ネットを使う 早速現地へ赴いてくれ。


『了解!』


命令を受け、MSFの実戦部隊は輸送ヘリを
数機駆り出して現地へと向かっていく。







・・・忙しなく動く兵達の中





「副司令!大変です!」


「どうした騒々しい。」





慌ててカズへと駆け寄った糧食班の兵士が叫んだ。





「食料供給率が40%以下に減少してしまいました!!」


「何!?糧食班を重点的に配置したはずだぞ!
何故そんなに下がっている!!」



「そ、それが・・・」





様子がおかしいと感じ取り、糧食ベースへと
赴いたカズが目にしたのは―







「お、かなりうめぇなこのアイス。」


「ああ・・・腹が・・・腹がちぎれそうアル・・・」


「ちょっと二人共!あれから何にも成長してないでしょ!?」





万事屋(というより銀時と神楽)が糧食ベースの食糧を
食い漁り、散らかしていた現状だった。






「・・・お前ら、何をしている?


「あ、ああすみませんカズさん!
僕必死に止めたんですけど全然聞いてくれなくて・・・!」


「・・・分かってる。
全く、糧食班なら仕事が出来ると思っていたが・・・」


副司令!MSFの何人かは腹ペコで逃げ出しました!」


「だろうな、腹が減っては戦は出来ぬって言うからな。」


そいつぁ真理だな俺モドキ、腹が減ってちゃ
確かに仕事のやる気も失せるってモンだよな。」


「あんたの場合四六時中やる気ないでしょ!?」





叱り飛ばされても銀時は甘味から手を離そうとせず





「腹が・・・妊娠したアル・・・」


「何でお前はいつでも限界まで食おうとすんだよ!!」





神楽もまた、腹を膨らませた状態にも関わらず

新たな食料へ手を伸ばして口へと運んでいく。





「はあ・・・桂は諜報班、ローズは医療班、サニーは
研究開発班として役にたっていると言うのにお前らときたら・・・」


沈痛な面持ちで額を押さえてため息をついた後


壁を強く叩いて、カズは怒鳴った。





「お前らは待機室行きだ・・・用が来るまでそこにいろ!!」





流石に威圧されてか、渋々二人も腰を上げて
万事屋トリオは待機室へと消えていく。







それを尻目にカズは静かに虚空を仰いで


戦地に赴いている親友へと愚痴をこぼした。





「ジャック・・・ホントにこいつら大丈夫なのかよ・・・」








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後書き(退助様サイド)


退助「さてさーて、急展開を見せつつも
どうにかこうにか銀さん達サイドの活躍も」


銀時「書けてねぇだろ!ほとんど怠けてるだけじゃねぇか!」


神楽「そうアル!詫びに何か食い物献上しろぃ!!」


カズ「マザーベースの食糧を食らい尽くす気か!!」


桂「全く・・・貴様らは自分の役割も果たせないのか?
同じ攘夷志士として情けないこと極まりないぞ」


銀時「勝手に仲間入りさせてんじゃねぇよ
つーか、そう言うヅラはどうなんだよ?」


「ヅラじゃない、桂だ。」


カズ「実際、彼の情報収集力は凄いぞ?
実に役に立ててもらってる。お前らと違ってな。


神楽「マジでか」


サニー「戦闘車両対策のために対物兵器を重点的に開発して!」


MSF研究員「了解!」


新八「サニーちゃんスゲェェェ!!」


銀時「・・・何この子、俺らより働いてるし・・・」