彼がママルポッドのある格納庫へと急ぐ合間に


カズからの通信が入ってきた。





『ジャック、パイソンが到着した。』


「そうか。」





通信相手がパイソンへと変わると、昔と
変わらない気さくな声音が響いてくる。





『カズもそうだが・・・お前もいつの間に
ボスと呼ばれるまで出世したんだ?』


「突然過ぎるなパイソン、それにボスとは
呼ばないでくれ。俺にはそんな称号似合わない」





軽い笑い声の後、へこう言葉が返される。





『聞いたが、FSLNの姉ちゃんにゲバラ
間違えられたそうだな?』


「よしてくれ、俺なんかゲバラの足元にも及ばん。」


『相変らす謙虚だな・・・俺からすればお前も
十分偉大な人間に見える。』


「相手は20世紀で最も完璧な人間だぞ?」


『サルトルか?まあ、ゲバラはすっかり
時代の象徴になっちまったからな。』


「それ以上に誠実な革命家で、偉大な戦士だった」





しみじみと語る言葉に・・・しかし江戸の面々は
理解できずに置いてけぼりを食らう





『あのー・・・ゲバラって一体誰なんです?』





おずおず訊ねる新八に、逆にパイソンが驚いていた


何と!あのゲバラも知らないのかこいつらは?』


『仕方ないさ、彼らは江戸の人間だ。知りゃしないよ
ゲバラはキューバ革命を成し遂げた革命家だ。』





無線を通じてヒューイとパイソンと、そしてとが
チェ・ゲバラと呼ばれた男の生き様を簡単に説明した。







カストロとキューバへ渡った直後
彼の仲間は12人しかいなかったと言われているが


小勢にも関わらず、彼らは仲間を集めて組織を広げ

農民の支持を得て徐々に劣勢を巻き返し


最後には バティスタ政権を倒した。


誠実さゆえに人を集め・・・強いからこそ
勝利を手にした偉大な資質を持つ、革命家、だと





へぇ〜・・・スゴい人だったんですね。』


『それに関してはお前らも一緒だな。

これだけの小勢で、アメリカがバックにいる軍隊に
弓を引いてんだからな。』


『なるほど・・・俺の先輩だな。』


『お前と一緒扱いじゃゲボラも報われないネ』


ゲバラな、何にせよ彼への道は遠い・・・」





苦笑するを、戦友は力強い言葉で後押しする。





だが、それはママルポッドを破壊すれば成し遂げられる
急いでママルポッドの破壊に向かえ、時間がないぞ。』


「わかった、パイソン。」











第19話 この人も善人キャラの役少ない











と、通信の相手が銀時へと変わる。





。』


「ん、どうした銀さん?」


『無理はすんなよ、いざとなりゃ俺らを頼れ。』







いつもの不真面目さなど微塵も見られない
覇気のこもった声音に 頼もしさを感じて





「ああ、わかった。」


彼は笑みと共にそう返す。





『銀時達は引き続きその場で待機しててくれ
何かあり次第、指令を下す。』


『あいわかった。』





通信を終了させて、は急いで
ママルポッドの元へとひた走る。











再び格納庫に着くと、そこにはピースウォーカーがあった。


しかし・・・ママルポッドが見当たらない。





「一体どこに・・・」







辺りを見渡した彼の眼に、ストレンジラブとコールドマンの姿が映った。





「手遅れだ、雷電。」


「ジャック・・・」





それだけではなく・・・コールドマンの腕に囚われている、パスも





「パス!?」


「探したよ。お前を呼びよせた張本人だ。
あの搬入施設で始末しておくべきだったな。」


「ジャック、だめ・・・・」


「ママルポッドは完成し
ピースウォーカーの起動は完了した。」


「完成だと!?」





信じられないと言いたげなに答えるように
ストレンジラブは、淡々と言葉を紡ぐ。





「確かにお前は最後までビッグ・ママに忠を尽くした
だが、そのお前の沈黙こそが答えだった。


「何・・・・?」


「1年前、お前の任務は彼女の暗殺だった。
そして、お前に暗殺される事こそが、彼女の任務だった。


彼女は最後までアメリカのために任務を貫いた。
ジャック、お前のお陰で最後の空白のピースが補完出来た」





一区切りの間を置いて 抑揚なく彼女は告げる





「彼女はママルポッドとして蘇った。ありがとう。」


「ビッグ・ママが蘇った・・・?馬鹿な!


「特別に教えてやろう・・・雷電。」





コールドマンは既にピースウォーカーの初期目標を
カリブ海洋上の領海域外へと決めていた。





貿易風によって拡散した放射性降下物が近域に降り注ぎ


その影響による中米一帯の農水産物を全滅


平行してのピースウォーカー量産の人足増加
狙う、と語る不敵な口上に





「カリブ海洋上・・・・まさか・・・」


気付いたが口を開く前に わざとらしい口調で
相手が答えを返す。





「だが・・・・おや?こんな所に
誰が、いつの間に小癪な要塞を築いていた?」







そう・・・ピースウォーカーの目標には

MSFのマザーベースが含まれていた。





目標のど真ん中だ、まあ丁度いい。
弾頭の命中精度をお前の基地で試させてもらおう。」


「貴様・・・・!」


「カリブ海の海賊風情が、吹き飛んでも誰の迷惑にもならん」


「そのために多くの人間が、死の灰に苦しむ!
それだけは許さん・・・!」






拳銃の照準をコールドマンへ定めるが


パスも共にいるため、迂闊には撃てなかった。





「だが・・・まずはカリブ海沿岸を
単独走破出来ることをホワイトハウスに証明する。

ピースウォーカーの万能性を世界に知らしめる。


共産圏やゲリラ支配地域、あらゆる地形を踏破し、
そして確実に狙った場所へ核を撃ち込むことができる・・・


誰も手を出すことが出来ない『完全なる抑止力』の誕生だ。





勝手な言い分に、彼の表情も苛立ちに歪む。





「冷戦の時代は終わる・・・
もはや米ソ間だけで抑止論は語れない!


「いい事を言う その通りだ。」





アメリカが尻込みをしている間に中国やフランス
インド、まして日本にまで出し抜かれ


水面下で核開発の自由競争が始まり


核の脅威は、拡散していく一方である





・・・だからこそ ここでそれらを食い止めなければ


その為の抑止力として生み出されたのが

『ピースウォーカー計画』だと、コールドマンは言った。







発言に合わせるように側の昇降機が動き出し





ピースウォーカーは・・・地上に出ようとしていた。





ピースウォーカーの誕生で世界は静かになるだろう

・・・わかるか、ジャック。
平和には制御された核が必要なのだ」


「嘘・・・!」


「一度それを人間でやってどうなったか知らないお前じゃないだろ!
システムの制御がなくなれば、それこそ世界が終わる!





激昂に、ストレンジラブが冷笑交じりの言葉を返す。


ママルは完璧だ、SOPと一緒にするな。」





歯を食いしばったままの相手を見下ろして





「ピースウォーカーが秩序を、新たな冷戦を取り戻す。

・・・その抑止力を世界に啓禁するために
核を撃たねばならんのだ!






そう言い残すと、ストレンジラブとコールドマンが
エレベーターへと乗り込んだ。





「ジャック!」







パスの悲鳴を残して扉が閉まり

間髪いれずカズが、無線越しに叫ぶ。


『止めろジャック!止めてくれ!!』


「・・・ああ!」





すぐに梯子を伝い、が地上にたどり着くと


警告音と共に昇降口が開かれ





黒一色の機械の巨体が・・・・姿を現した。


頭頂部にはAIポッドが2つ、巨大な球体には

peace walkerと書かれている





巨大な脚を重く鳴らし"ピースウォーカー"が歩き出す


その先は・・・国境、ニカラグア。







逃がすまいと反射的にライフルで攻撃を仕掛け





『あっジャック』


刹那、ヒューイの警告が割って入るが


・・・既に時遅く、弾丸が当たって
ピースウォーカーが停止した所だった。





「・・・まずかったか?」


『・・・・・自己防衛システム、作動。
自己防衛システム、作動。』






機械音声が鳴り響き、耳障りな排気音が轟く





『ジャック、僕のポッドには自己防衛モジュールが
組み込まれている 攻撃を感知すると実行中の命令を
中断して、対小規模対象抑止モードが働く。』


「なるほど、つまり?」





ヒューイが説明に入っている間に

ピースウォーカーは、脚をの方へ向けていた。





『今・・・ピースウォーカーの最優先目標は君だ!







ミサイルハッチを開け戦闘態勢に入った兵器を前にし


「マジかよ・・・!」





覚悟していたものの、彼は思わず呟きをもらす。





『ピースウォーカーが来るぞ!』


無線の呼びかけに答えるかのように、ピースウォーカーは
火炎放射を行いながら威嚇音を鳴らす。





『さあ、来い!』





同時に、ママルポッドからも
力強いビッグ・ママの声が聞こえてきた。





「ああ・・・分かっているさ!





返事をしては、すぐにライフルを向け攻撃を開始する







『ジャック、敵の増援がそちらに向かっている!』


「何!?」





報告に面食らうも、カズは続けてこう言い放つ。





『いや・・・大丈夫だ、彼らが食い止めてくれる!
お前はピースウォーカーの相手に専念してくれ!』


「・・・・・了解!









宣言通り、格納庫の入り口で


地上へ上がろうとする兵士を食い止める一団がいた。





おらおらぁ!サインが欲しけりゃ右から順番に
一列に並べやテメェらぁぁぁぁ!!」



の邪魔をする者は
何人たりとも、この桂小太郎が通さぬわ!!


「私達倒すならショッカーの偉いさんでも連れてくるアルぅぅぅ!!」





なだれ込む敵を片っ端から張り倒し
一人も通すまいと奮闘を続ける銀時達だが


続々現れる兵士の群れに、少しずつ疲弊し始めていた。





ダメです銀さん!これじゃキリがありません!」


「ならば元を潰すまでだ!エリザベス!





呼びかけに呼応し エリザベスが口から飛び出した
バズーカを一発お見舞いし


放たれた砲弾によってエレベーターの扉が
上手い具合に歪んで、開かなくなった。





「神楽、こっちも頼む!」


「アイアイサー!ふんぬぉぉぉ!!


力一杯近くにあったコンテナを持ち上げると


神楽はそれを投げ飛ばして、兵士が現れる道を塞ぐ





「うわぁぁぁぁぁ!?」


くそ!これじゃ地上に上がれないぞ!!」


「おっしゃ神楽!ダメ押しの一発!


と銀時が言ったその直後





ピューパの頭部が飛来し、地上へ上がる入り口を塞いだ





「ちょっとぉぉぉぉぉ!?何すんの神楽ちゃん!?」


「駄目押しの一発ネ!」


これ俺らが駄目になっちまったろうがぁぁぁ!!
どーすんだよこいつら片付けた後ぉぉぉ!?」


「大丈夫アル、銀ちゃん元から駄目アルから。」


「フォローになってねーんだよ!!」


自慢げな赤髪をペシりと叩いた直後、桂が
落ち着いた様相でこう告げる。





慌てるなお前ら、エリザベスが
地上に上がれる道を作るから安心しろ。」


「何でエリザベスそんなこと出来るんですか・・・」


本当に何者なんだろうエリザベスって・・・と

今更ながらの疑問が新八の脳内に沸き上がり


からの通信によって、うやむやになった。





『みんな!あと少しでピースウォーカーを
止められる!頑張ってくれ!



「本当か!」


「んだそりゃ、思ったより早くね?」


「手抜きアルよ手抜き。


「それ、どっちに言ってんの神楽ちゃん・・・・」





視線がこちらに向かってるのは・・・多分
恐らくきっと、気のせいとしておく。









ほぼ同じタイミングで、地上では





『脚部駆動モーターチャージ』


を踏み潰そうと、ピースウォーカーが
巨大な脚を鳴らして昇降口付近を走りまわる。





けれど彼はすぐに上へと退避して


カール・グスタフの照準をレプタイルポッドへ合わせ





「落ちろ!!」





一斉射撃を浴びせていく。





度重なる砲弾の直撃に・・・ピースウォーカーは
バランスを崩し その場に倒れた。





「・・・・・・止まった・・・・・・」





息を整えつつ、慎重に機体に近づく







・・・・・・だが





『ロック・・・か、かか解除・・・』


止まっていたハズのピースウォーカーが再び
動き出し、機体を立ち上がらせる。





『自己、自己防衛モードに移行・・・ロロックか解除・・・』


「動きが おかしい・・・?」


『火炎放射開始・・・エエSマイン発射・・・』





グラグラと不安定にのし歩きながら向かう兵器へ


ライフルを向け、攻撃の構えを取る







・・・正に攻撃を加えようとした瞬間





彼より早く コールドマンを乗せたハインドが
ピースウォーカーに向けて発砲する。



巨大な兵器が・・・目と鼻の先で睨み合う様にして止まる





「な・・・に・・・?」


予測不可能な展開にも迂闊には動けず





凍りついた場の沈黙を・・・ピースウォーカーが解く


開かれたハッチが全て閉じられ、脚を前に反転させると


頭部から新しく広がった脚が 地面を強く踏みしめた。





「変形した・・・!?」


驚きをあらわにした彼に構わず





『こっちだ!』





身震いしたピースウォーカーは、誘導に従い

ハインドが飛び去っていく方へと歩き出した。





『ジャック!ピースウォーカーが行く!!』





すぐに追いかけるだが


機体は採掘場の坂を軽々と越えていき、とてもじゃないが
自分の脚では追いつけずにいた。





くそっ・・・とてもじゃないが間に合わない!」





苦渋に満ちた呟きが零れた・・・その直後







「ヒヒーーン!!」





アンダルシアンの鳴き声が、採掘場の空気を振るわせた。








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後書き(退助様サイド)


退助「いよいよピースウォーカーの真の姿が露わとなり
この長編もラストスパートです!」


(いやーまさかこの戦いが前座だったとは・・・
プレイ時は思いにもよりませんでした。)


銀時「オイオイ何なんだよアレ、あんなんが
変形するなんて聞いてねーぞ!」


退助「誰が変形しないなんて言った?」


新八「いや確かにそうですけど・・・」


退助「だってさー俺だって変形するとは
思ってもみなかったよ〜当時は。」


カズ「なるほどな・・・四足なら安定性も高い。
これならコスタリカの地形に対応出来るな。」


神楽「ったくなんつうモン開発したアルか このオタクモドキが。」


ヒューイ「仕方ないだろ!開発した当初は
あんな事に使われるなんて思ってなかったんだから・・・」


銀時「それよりヅラ、ホントに脱出できんだろうな?」


桂「ヅラじゃない、桂だ。案ずるな、一度
獄門島の時でも役に立った。ぬかりは・・・・!?」


ズサー


サニー「ちょ、どうしたの桂さん?」


桂「見ている・・・!誰かがこっちを見ている・・・!


銀時誰も見てねーよ!!
何あずかり知らぬトラウマ開いちゃってんの!?」