地下基地にてパイソンと一戦交える事になった
だが、フロアはパイソンが出した冷気の霧により
視界が悪く 狙いが定まらずにいた。
「くそっ、何処だ・・・!」
「目で追っている様じゃまだまだだな!」
叫んだ後、グレネードランチャーの弾丸が
狙いをつけて彼へと迫る。
間一髪直撃は免れ、反撃に移ろうと引き金を引いたが
「なっ、銃が凍ってる・・・!?」
銃のスライドが液体窒素によって凍らされ
弾が撃てなくなっていた。
「どうした、こんなものか?」
「ちっ!」
は凍った銃を捨て、上のフロアへ逃げる。
「逃げても無駄だぞ!」
身を隠しながらパイソンの追跡を免れる彼の脳裏に
「パイソン・・・何故だ、何故お前が・・・」
出会ったばかりのお互いの記憶が蘇る・・・
―ビッグ・ママが消えた家の中で、何をするでもなく
ただただ途方に暮れていた時
「ここか、新入りがいるって家は。」
入ってきたのは、当時グリーンベレーでは先輩だったパイソン。
「おいおい、トップ入りした新入りさんが
何て湿気た面してんだ?」
「・・・・・何の用だ?」
「新入りの歓迎会だ、その迎えだよ。」
気さくに話しかける相手に
けれど俺は、黙ったまま動こうとしなかった。
第18話 話せば分かる人もいる…事もある
ふとテーブルへ視線を向けたパイソンは
ビッグ・ママの残したバンダナに気付いて ハッと目を見開く。
「・・・そうか、お前あの人の弟子だったのか・・・
通りで有り得ない結果を出すわけだ。」
「・・・いなくなったよ。俺を残してな・・・」
呟く内、哀しさが沸き起こるが・・・
その頃は 泣きたくても一粒たりとも涙は出なかった
「俺は・・・また一人だ・・・!」
長い沈黙の後・・・そんな俺を見かねたのか
横に座ったパイソンが、横に座って肩を叩き
「大丈夫だ、あの人は任務か何かで
姿を眩ましたんだろう?ならきっと帰ってくる。
それに・・・お前は一人じゃない。」
ニカッと笑いながら親指を立てて 明るく言った。
「俺がついていてやる。
・・・寂しい思いはしなくても大丈夫だ。」
励ましの言葉が、本当に嬉しくて
俺は久々に心から感謝の言葉を相手に告げた。
「・・・・・ありがとう・・・」
「お前、名前は?」
「ジャック。」
「そうか、俺はパイソン。俺の方が先輩だが・・・
堅苦しいのは嫌いだ 何の気兼ねなく接してくれ。」
「ああ。」
その時からアイツとは・・・よく一緒に色々
話し合ったり、ケンカもした
カズを交えてバカをやったりなんかもした
けれど あの時の中米での、反米勢力鎮圧任務
俺はまだまだ未熟で・・・アイツと共に窮地に追いやられていた。
「全く、あれほど少年兵には気をつけろと
言っておいたってのに・・・!」
「・・・・・・・済まない」
「このままじゃ切り抜けれそうにないな・・・
俺が囮になる、お前はその隙に戦線を突破しろ!」
「待ってくれ!それじゃパイソンが・・・!」
「大丈夫だ、お前は生きろ。
お前には・・・帰る場所がある。」
そう言い残して、止める間もなくパイソンは飛び出し
ゲリラ達を挑発する。
「おらこっちだクソガキ共!!」
結果として・・・アイツがゲリラ達の眼を引いてくれた
おかげで、俺は仲間と合流できた。
けれどもその半日後―
パイソンはゲリラの捕虜となり 殺されたと報告が入った
生き残った憤りと後悔の念にさいなまれながらも
俺はその後・・・・ゼロ少佐のスカウトをきっかけに
グリーンベレーを抜けた―
思考が現実に戻り、は思わず呟く
「パイソン・・・あの時俺を救ってくれたお前が・・・
何で・・・」
その瞬間 身を隠していたコンテナに銃弾が当たる。
「そこに隠れていたか。」
その場を離れ、彼は声のする方へパトリオットを撃つ
何発かはパイソンへと着弾するが、その内
いくつかは掠める程度でしかなく
冷却スーツに当たった弾丸はその場で凍り付いて
むなしく床へと転がっていくのみ。
熱が上がってか、パイソンの身体から冷気が噴き出す。
「ふはは、ちょうど暑苦しかった所だ。」
再び遮蔽物に隠れながらの銃撃戦が繰り広げられる
「思い出すぞ、あの過酷だった訓練の数々を!」
「くそっ・・・!」
「さあ来い!遠慮せずにかかってこい!」
しかし打つ手がなく、防戦一方の攻防を強いられ
は苦しげに歯を食いしばる。
接近しようにも冷却スーツに守られた
パイソンにはCQCをかけれない。
銃で攻撃しても冷却スーツに当たるばかり
「おまけにこの視界の悪さはマズイ・・・
アイツは、どこにいる・・・・?」
見失った目標の姿を探している最中
「どうしたジャック、俺が気配を消しながら
移動できることを忘れていたか?」
気がつけば 真横から銃口を突きつけられていた
「し、しまった!?」
「お前は強くはなった。
だが考え込んで隙ができる所は相変わらずか。」
向けられた銃口は避けようがなく、は
その場から動けずに硬直する。
「これで俺は悪夢から解き放たれる。
さようならだ、ジャック!」
パイソンが銃の引き金を引き・・・・・・
弾丸が、放たれる直前
コンテナに刺さった刀が銃弾を防いだ。
「な、何だこれは・・・!?」
そこにあったのは、白銀に輝く刀身
「共和刀・・・!」
「ったく、オメェらなんつう寒ぃ所でバトってんだよ
風邪引くっつーの・・・おおさむっ!」
刀が飛び来た方からの声へ二人が顔を向けると
霧の中から、見覚えのある影が浮き出てくる。
「何だ貴様は・・・」
「別にオメェらの邪魔するつもりはねぇよ。
ただ俺ぁ、ソイツの忘れもん届けに来ただけだ。」
「誰かは知らんが、余計な事を・・・」
投げかけられる鋭い眼光をものともせず
いつもの調子で、銀時は口を開く。
「テメェの悪夢なんか知ったこっちゃねぇんだよ
がおっ死んで俺らが変な夢見るのは御免被りてぇ。
単純にそれだけだ。」
内心で礼を言いながら・・・は刺さった共和刀を
引き抜き様に距離を取って
その刃先を添えるようにして構える。
「刀で挑む気か、侍のスタイルで銃に勝てると思うな。」
「・・・わかってないな パイソン。」
「それはこちらの台詞だ!」
M4を放つパイソンだが、その弾丸の全ては
振り払われた共和刀により弾かれる。
「なっ!?くそがぁぁぁぁ!!」
咆哮をあげてグレネードランチャーが発射されるも
は駆けながら液体窒素グレネードを斬り
「はぁぁぁぁぁ!!」
流れに任せ、峰打ちでパイソンを叩き斬った。
うめき声をあげながら、彼は仰向けに倒れる。
「・・・まさか・・・一撃で俺が倒されるとはな・・・」
「ったく、んトコの知り合いにしちゃヤワな奴だな。」
「パイソン、これが侍の強さってやつだ。」
「さすがだな、ジャック。CIAがお前を恐れていた理由が
・・・よくわかった・・・」
倒れこんだパイソンの全身からは、熱により
吹き出た湯気が上がっている。
「これでもう・・・・誰も殺さずに済む・・・
俺に真の救いを与えてくれるのはやはりお前だったようだ」
「もういい、しゃべるなパイソン。」
眼を閉じた相手の側へと歩み寄って・・・
は、冷却スーツへ腕を押し当てる。
「おい何する気だ!?」
「パイソンのスーツから漏れている 液体窒素を止める・・・!」
「よせジャック・・・!
無理だ・・・お前の腕が凍りつくぞ・・・!」
戸惑う二人へ、彼はふっと笑ってこう言った。
「コレくらい平気さ銀さん、それに・・・負けがこむと
すぐ熱くなるのは昔と同じだな、パイソン。」
「何?」
「あんたには、払ってもらってないポーカーのツケが貯まってる。
だからまだ死なれちゃ困る。」
眼を見張って・・・パイソンの口から笑いが漏れた
「・・・・ハハハハハ、お前はいつの間に
その手の冗談がうまくなった?」
「これも江戸で学んだことさ」
「おーい、初対面の外人にウソ教えてんじゃねぇぞ
テメーが勝手に覚えたんだろーが。」
軽い掛け合いにせせら笑いながら 彼は
凍りつく手前のの腕を掴んで、離す。
「やはり・・・お前は世話の焼ける男だ。」
ニコリと笑ってパイソンは半身を起こして語りだす
「忘れるなジャック。俺がコールドマンに従っていたのは
ヤツが救いを与えてくれたからだ。
国家の正義も、敵に対する憎しみも・・・
俺達兵士の救いにはならない。」
「なんつーか面倒くせぇな、兵士ってのも」
「まあな・・・兵士には英雄が必要なのだ。
命を懸けて忠誠を尽くすに足る 兵士の英雄が・・・」
「そのための・・・ママルポッドか?」
「違う・・・そんな機械に忠誠など誓えるわけがない・・・」
静かに首を横に振り 彼は言葉を続けた。
「仲間の命を預かる、その重さに耐えられるか?ジャック
・・・・それができなければ・・・お前はあれを壊せない。」
は、視線を逸らさぬまま答えた
「・・・そのためにパイソン、手を貸してくれ。」
「何?」
「俺達・・・MSFに来て力を貸して欲しい。
お前なら、カズもきっと歓迎してくれる。」
覚えのある名前に、パイソンの表情も僅かに明るくなる。
「カズ・・・ミラーか。あいつもいるのか。」
「ああ、MSFの副指令をしている。」
「あいつが副指令とは・・・出世したものだな。」
肩を借りてパイソンは、共に立ち上がって、言った。
「いいだろう、昔みたいに・・・また助けてやる。」
「ああ。よろしく頼む、パイソン。」
笑い合い、歩き出そうとした矢先にたたらを踏んで
「派手にドンパチやって足元ふらつかせて
そんなんでこの先大丈夫か?お二人さん」
「「すまないな。」」
空いている脇を 銀髪の侍に支えられながら
二人は一旦基地の外へと脱出する。
パイソンがフルトン回収されたのを見送って
「それじゃ、俺はこれから戻るから」
「さーん!大丈夫ですか!」
「帰りが遅いから心配してたアル!」
基地の内部へ戻ろうとした彼の背に、少し前に
別れたばかりの面々の声が降りかかってきた。
振り返れば 銀時の側へ新八達が寄って来るのが見える
「な、お前らまだ帰ってなかったのか!?」
「帰るわけねぇだろ?オメーと同じでコイツらも頑固なんだよ」
「銀さんに言われたらオシマイですよ」
「そうアル、自分だけ勝手に先に行ってズルいヨ!」
騒がしい万事屋トリオを放置し、桂は真面目に答える
「カズ殿の申し出でな、ピースウォーカーとの
戦闘に入った時に援護してくれとな。」
「そうか・・・」
お子様二人の頭を押さえつけながら、銀時が訊ねる
「、行くのか?」
「ああ、今度はピースウォーカーのAI ママルポッドを
直接破壊する・・・あれはピースウォーカーの要だ
あれさえ潰せば全て終わる」
返答に、満足げな笑みを浮かべて拳を突き出し
「わかった、ほんじゃ俺らはここで待ってっから
さっさと行ってぶっ壊して来い。」
「ああ。」
同じように拳を出して軽く合わせたは
仲間の笑みに見送られ、地下基地の奥へと進んでいく。
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後書き(退助様サイド)
退助「さあジャンプシステムでパイソンも無事
仲間になり、いよいよピースウォーカーと対面です」
カズ「久しぶりだなぁ〜パイソン。」
パイソン「おう、だがまさかジャックに助けられるとはな
あいつもデカくなったもんだ・・・」
新八「昔はどうだったんですか?」
パイソン「そりゃ新米独特の甘さがあったが・・・
機械の様に任務をこなす冷酷さも兼ね揃えていたな。」
サニー「え、でもジャックは優しいよ?」
パイソン「ああ、しかし何が奴を変えたんだ?」
銀時「へぇ〜俺らと会う前はそんなんだったんだ。
アイツも意外とアレな奴だったんだなぁ。」
桂「時々厳しい眼差しはその名残か。」
退助「まあ人の出会いは人を変えるって言うっしょ?
一期一会とは昔の人もよく言ったモンだよ。」
パイソン「そうか・・・お前らのお陰だったのか。」
銀時「稀にいい事言うなぁ馬鹿作者のくせに。」
退助「それ褒めてんの?貶してんのどっち?」