独房を脱出し、地下基地の外へ出るべく
通路を進むの耳に
「・・・・・・・ん?」
誰かの騒ぎ声のような音が聞こえてきた。
「これってまさか・・・・・・」
ふ、と脳裏に江戸の5人が浮かんで―
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その想像は 叫びながら逃げる忍者姿の
銀時達の姿を取って現実となった。
「ってお前ら何やってんだ!?」
「あ!さん無事だったんですね!」
「さすがだ!俺は信じていたぞ!」
追いついてきた彼らの後を追って兵達の攻撃が降り注ぎ
彼もまた、一緒になって走り出す。
「ていうか何だよこの状況!?お前ら何したんだ!?」
「テメェの武器とかを回収するために
この基地に乗り込んだんだよ!」
「だったらそれなりに敵の目を盗んでやれよ!
何フツーに敵に追われてんだよ回収所じゃないだろ!!」
「大丈夫ネ!の武器みーんなここにあるアル!」
自慢げに神楽が武器の入ったバッグを見せびらかす
どうやらドサクサに紛れて取り返していたようだ。
「ならいい・・・ってわけじゃないんだけど・・・」
戸惑ったが前を向くと、出口の先には
兵士の壁が出来ていた。
「あれじゃ脱出できねーぞ!どうすんだよオイ!!」
「まったく手こずらせやがって・・・!」
「こいつらをやったら軽く一杯やろうぜ!」
「そうか・・・ならばカレーなんかではどうだ!」
急ブレーキをかけた桂と神楽が、どこからともなく
取り出したカレーを目一杯兵士へと投げつける。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「目に入ったぁぁぁぁぁ!!」
「目が染みるぅぅぅぅぅ!!」
直撃を喰らい悶え苦しむ兵士の群れへと突貫し
薙ぎ倒しながらも彼はツッコむ
「何でカレー持ってんだよ!?どっから出したそれ!?」
「気にしたら負けだ!もうすぐ出口だぞ!」
敵を薙ぎ倒して包囲網を抜けた6人は、地下基地を脱し
見つけた近くの空き家へと隠れて 囲の警戒が解かれるのを待つ。
第17話 敗者復活戦って便利だね
「な、何とかなりましたね・・・」
「何とかじゃねーよ確実にヤバかったぞ・・・」
「それもこれも全部ヅラが馬鹿なことしてっから・・・」
「ヅラじゃない、桂だ。しかし結果こうして
を助けれただけヨシとしよう。なぁリーダー」
「うるせーよヅラ」
パカン、と頭を殴られる桂を尻目に、新八は言う。
「早速カズさんに報告しないと。」
「俺がしよう・・・」
バッグから無線を出し、早速カズへコールする。
『ジャック・・・』
「・・・ああ・・・」
『また声が聴けて良かった。』
安堵のにじむ声に、彼は微笑んで軽く答える。
「カズ。次は、もっとよく切れるやつを、用意してくれ。」
『わかった。糸鋸の刃を、ダイヤにしておくよ。
ええとそれで・・・・その"次"は、いつだ?』
「オイ待てよ、次もこんなんあったら俺達の身が
持たねぇぞ。カンベンしてくれよ」
「てーかこんな状況、そうそうないアル。」
「フ・・・フフフ・・・」
『フフフフフ・・・・』
「ハハハハハ・・・・!」
徐々にこみ上げて来る笑みに合わせて彼らは笑い合う
「『ハッーッハッハッハッハッハッハッハッハ!!』
うぇゲホッガハッ!!」
が、だけは途中で咳き込んでしまった。
『わ、悪い・・・、おい・・・大丈夫か。』
「ああ・・・・咳が、焦げ臭い・・・」
『よく分からんが、しばらくは笑わない方がいいか?』
「いや、心配はいらない。胸の痛みは消えた。」
『ビッグ・ママの傷を模した?』
「そうだ・・・・傷跡も消えた。」
ただ一言だけだが、振り切れた何かを感じてカズは言う
『感服するよ・・・』
「そっちの状況は?みんな無事か?」
『ああ・・・。実は気になることがある。』
「何アルか?」
『パスと連絡がつかない。』
「パ、パスさんと連絡が!?」
思わぬ事態に、6人の間にも動揺が広がる。
「パスなら"教授"に保護されているはずだ。」
『ああ、そうなんだが・・・聞いてくれ。』
連絡が取れずに心配になり、カズは"教授"が
用意したと言っていた"学校"へ人を送り
"学校"の実在は確認できたものの・・・・
肝心のパス自身は見つけられなかったと言う。
"学校"関係者に聞いても"教授"もパスも
しばらく見ていないとの事
「一体どういうことなのだ?」
「・・・コールドマンは俺達のことを知っていた。」
自分達はCIAにマークされている事も、調査を依頼した
KGBやパスについても情報が及んでいると彼が口にし
カズが、一つの可能性に気付く。
『まさか・・・コールドマンに?』
「いや、ガルベスは単なる"教授"じゃない。」
『そうだな、KGBも、コールドマンの動きは
常に掴んでいるはずだ。そうなると・・・
CIAの動きを察知して 何処かに身を隠したか・・・』
「そう願いたい。カズ、KGBからも情報を入手してくれ。」
『わかった。引き続き、こっちでも探ってみる。』
パスの身柄を案じつつも、彼らは気持ちを切り替え
これからの作戦について語ってゆく。
『ジャック、少なくとも地上からはピースウォーカーが
始動した様子は確認できない まださっきの格納庫にいる。
・・・今度こそ最後のチャンスだ、AIを破壊しよう。』
「ああ、そのためにC4を支援してくれないか?」
『C4?何でまた?』
地下を逃げ回りながらも、彼の目は重要なことを
見逃してはいなかった。
「地下にAI兵器『ピューパ』が量産されていた。
あれを使って、ピースウォーカーを閉じ込めれるかもしれん」
『なるほど、シャゴホッドと同じで液体燃料の貯蔵タンクを
爆破し、昇降ハッチを開けさせないということだな。』
「その方法を試してみよう。ピースウォーカーは
少なくとも明日の明朝まで掛かるそうだ。」
『AIの最終調整は終わっていないと?』
「ああ、すぐに試してみよう。」
『わかった、すぐにダンボール支援を送ろう。』
通信を切って装備を点検しながら、は言った。
「銀さん達は先にマザーベースに戻っててくれ。」
「待ってくださいよさん!
尋問を受けていた身体のまま行ったら危険です!」
「そうだ、焦る必要はない 少し休んでいけ。」
「いや、出来ることは全部やっておく必要がある。
気持ちは分かるが時間が惜しい。」
不安そうな彼らの肩を叩いたのは、銀時。
「そういうこった、テメェらが何言ったってコイツは
聞かずに行くだろ?なら俺達は先に帰っていようや。」
素っ気無くも吐かれたセリフにこもる信頼に気付き
沈黙した5人を見送り、は支援されたC4を持ち
「それじゃ、行ってくる」
再び地下基地へと潜入を再開した。
大分時間が経ち、警戒態勢が解かれていたのを見て
敵兵の監視をすり抜けていき
量産されたピューパの格納庫にある貯蔵タンクを見つけ
見張りの目に付かない場所へC4を仕掛けると
格納庫から離れた場所での起爆を試みる。
「これでピースウォーカーは外に出られなくなる。」
頃合を見計らって彼は 起爆スイッチを押した
だが・・・肝心の爆発が起きなかった。
「な、何でだ・・・!?」
「危なかったぞ、ジャック。」
声と共に格納庫の出入り口から霧が流れ込み
そこから・・・一人の男が歩いてくる。
「この格納庫の内壁は見た目よりも脆い。
液体燃料に引火して爆発でもすれば落盤してしまう。
危うく自分の脱出路も潰すところだった。」
現れたのは、にとって忘れられない相手だった。
「自らの危険を計算せずに任務達成にこだわりすぎる。
昔からの悪い癖だ。」
「ま、まさか・・・・!?」
「いつまでも私に世話を焼かせるな、ジャック・・・」
「パイソン・・・!生きていたのか!?」
パイソンは彼を一目見て・・・ニッと口の端を上げる。
「ああ、随分見ない内に男の顔になったな。」
「その身体は一体・・・?」
問いかけに答えず、彼は親しげに告げた。
「久しぶりだな、ジャック。」
ビッグ・ママが姿を消して途方に暮れていた頃
を助け、長く任務に連れ添っていた彼は
"信頼できる数少ない戦友の一人"だった。
5年ほど前 最後に共に行った任務で
反米ゲリラ勢力鎮圧の最中、自らをかばい
ゲリラの捕虜となって死ぬまでは。
「あんたは、確かに死んだはずだ・・・」
「そうだ、私は一度限りなく死に近づいた。」
言葉を紡ぐパイソンの身体から 冷気が
白い帯となって吹き出し、まとわりつく
「体温調節機能が狂った私の身体は
放っておくと際限なく体温が上がり続ける。
自分自身の肉体をも、焼き尽くすほどに・・・」
「まさか、C4が爆発しなかったのは・・・!」
「そうだ、お前がここの捕虜になる前に
液体窒素のグレネードを食らっただろう?
あれを使わせてもらった。」
おかげでのんびり爆弾を探させてもらった、と
言いながら彼は起爆装置の凍ったC4を放り投げる
「液体窒素を満たしたこのスーツがなければ
私は半日と生きてはいられない。
だが、このスーツが私を最強の兵士に変えた!」
パイソンが全身に力を込めると
身体から液体窒素の冷気がフロア全体に広がり
霧で視界が悪くなってゆく。
「見るがいい。私が支配するこのステージを。
お前のお得意のCQCは私には通用しない!」
「パイソン、何故だ?なぜあんたほどの男が
コールドマンの陰謀に荷担する?」
「・・・救いだよ、ジャック。CIAがこれまで
私を生かしておいた理由がわかるか?」
の返答を待たずして、パイソンは口を開く。
「ジャック。CIAがお前を恐れたのだ。」
「俺を・・・?」
「お前はビッグ・ママを倒した伝説の英雄だ。
そのお前がいつかCIAを裏切った時に備えて、お前を
暗殺できる力を持った兵士が必要だった。
そして・・・私が選ばれた。
ジャック、お前を倒すためのアンチジャック兵士として。」
話す内に・・・パイソンの表情に哀愁が漂ってくる。
「暗殺者としての勘を鈍らせないように、CIAに
戻ってからの私は暗殺任務ばかりを与えられた。」
「・・・パイソン」
「お前はこれまで戦場で何人の人間を殺したか
覚えているか、ジャック?」
「・・・・俺は・・・「俺は覚えている!
奴らは毎晩のように俺の夢に出てきて俺を責める!」
遮るような叫びを上げて、彼はグレネードランチャーが
取り付けられたM4の銃口を向ける。
「だが、今更引き返すには俺はあまりにも
・・・多くの血を流しすぎた!」
「やめろパイソン!どれだけ血に染まろうがやり直せる!
俺は、そう江戸で学ばされた!」
の言葉に対し、相手の表情に冷笑が浮かぶ。
「侍に感化されたというのは本当だったようだな。
あの様な軟弱な人種から何を学ぶことがある!」
「違う!侍は兵士にはない強さがある!
だからパイソン、お前もやり直せる!」
「・・・所詮兵士である俺達には関係のないことだ!
だがその悪夢も今日で終わりだ!」
届かぬ言葉に、仕方なく彼もまた銃を構える。
「待ち望んでいたぞ!
お前と戦場で敵同士として相まみえる瞬間を!
ジャック、お前を殺せば俺の役目も終わる!行くぞ!!」
パイソンの一声を合図に 彼らは霧にけぶる
フロアを駆けて戦闘を始める。
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後書き(退助様サイド)
退助「さあ2年近く登場を待たせてしまった
パイソン、満を持して登場です!」
銀時「登場の仕方がまさかのエド/モンドパターン?
どんだけ在り来たりな復活なんだよ。」
パイソン「何だよそのエド/モンドパターンとは?」
退助「いやそれここで話すことじゃないし・・・」
神楽「この頭に刺さってる釘は何アルか?」
新八「ちょっと神楽ちゃん触んない方がいいよ!」
パイソン「その眼鏡の坊主の言う通りだ。
これは頭部を冷却するために針と脳を連結させて
冷却しているものだ。」
新八「あわわ下手したら大変なことになってたよ
ホントすんまっせんしたぁぁぁぁ!!」
パイソン「・・・・日本人はみんなこうヘコヘコしているのか?」
退助「いや、アレと一緒にせんでくれ。」
新八「さり気なく見下さないでくださいよ!?」