巨大無人兵器と対峙するへ 無線のコールが鳴る。





『ヒューイが"コクーン"と言っていた巨大無人兵器だ。

お前ならこのデカブツ相手でもやれる!
排除するんだ、ジャック!』


「重火器が大量にいるな・・・カズ!


分かっている!新型のカールグスタフと徹甲弾仕様の
マシンガンをそちらに送った!有効に活用してくれ!』


「わかった!」


返事の直後、見計らったようなタイミングで
コクーン頭部が動き出す。





『主砲装填完了』


危ない、逃げろ!その威力じゃ隠れても無駄だ!』





ヒューイのアドバイスに従い主砲の斜線上から離れると


間を置かず発射された砲弾が 先程がいた場所
着弾して派手な火柱を上げる。


しかし砲塔はいまだ狙いを定めたまま放たれ


彼は走り続けてそれを避ける。





が・・・3発目を避けた瞬間、主砲があらぬ方へ駆動する





「何!?」


危険を察知して方向転換し、転がり避ければ





砲弾が着弾したのは・・・先程走っていたら
通過していたであろう地点だった。





「あのまま行ってたら吹き飛んでたな・・・
追尾機能があるとは、厄介なもんだ。」





コクーンが次に巨体に張り巡らせている対人砲の
弾幕を張ったので 遮蔽物に隠れてやり過ごす。







轟音が止んで、無機質な音声が響く


『ターゲット補足』


逃げてジャック!ロックオンされたわ!』





サニーの叫びを聞いて、その場を走れば


が駆けた地点をなぞるようにミサイルが着弾する。





一度ロックした場所からの追尾は無いと踏んで


隙を突きながら、地形を利用し対人砲やガトリング砲を
攻撃するが・・・未だに勝機が見えない。





『範囲攻撃実行』


コクーンから放たれるヘッジホッグを、
巨体の下に潜ってやり過ごす。


そこにヒューイから通信が入ってきた。





『ジャック、下方のラジエーターを破壊するんだ!
そうすればコクーンは排熱手段を失う!


「わかった!」











第14話 やたらドデカい兵器は攻略されるためにある











いいタイミングで落ちてきたダンボールからは
カールグスタフと徹甲弾仕様のM60が出てきた。





早速カールグスタフで下方のラジエーターを破壊すると





『エンジン内温度異常』





機械音声の後、コクーンは崖に体当たりして動きを止め


体当たりの拍子に 巨体の側面へ梯子が下りる。





『衝撃でキャタピラの側面のハシゴが下りたようだ!
これで乗り込める!』



『随分とご都合主義だなぁ・・・そんなアバウト設計
よく設計者の肩書きもらえたなオメェ』


『銀ちゃん、今に始まったことじゃないアル。
所詮メガネはダメガネよ


『二人共その辺にしときましょうよ。
てーかまた僕も非難対称に入ってんの?』





向こう側の漫才を無視し、は梯子を伝い
コクーンの上部へと乗り込む。





上がりきった所でアーム部分が展開し

電動ノコギリが唸りを上げて彼へ襲い掛かるが


スレスレでかわしたので、ノコギリは自らの機体に
突き刺さったまま動きを止める。





『上方にもラジエーターがあるはずだ。そいつも壊すんだ!


「わかった!」





排熱しているラジエーターを見つけ、LAWを撃ちこみ
破壊すると コクーンは悲鳴を上げて停止した。





『オラハシンジマッタダー、オラハシンジマッタダー
オラハシンジマッタダー、テンゴクニイッタダー』



今だ!AIポッドに乗り込め!』





すぐに頭部へ張り付いてよじ上り、ハッチを壊して
ポッドの中に乗り込めば


ピューパと同じく記憶板の設置された内部構造をしていた。





ロックが外れた記憶板を、同じ要領で引き抜けば





しばらく経ってAIポッドが振動を始める。


「ちっ、時間切れか。」





がAIポッドから脱出したのとほぼ同時に
コクーンもまた爆発を起こす。





破損した機体の欠片が入り口へと直撃し


その拍子にパネルがショートを引き起こしロックが外れた





「・・・これまた上手い具合に行ったもんだ」





感心する彼の背後で、他の兵器との戦いと同様に
AIポッドは何処かへと飛んでいった。







「これでAI兵器は最後か・・・」





少し安堵に浸っていたが


今はピースウォーカーを止めることが最優先、
気を引き締め は地下基地へと乗り込んで行く。











既に警戒態勢に入っていた基地内部は、敵兵士が
要所要所で神経を尖らせていた。





(・・・こんな奴らに構っていられない)





慎重に、かつ迅速に兵をやり過ごし内部へ急ぎ


格納庫に着くと・・・あの博士の声が耳に届いた。





「起動(イニシエイト)だ。」


ママルポッドの起動テストを行っているようだ。





「・・・・ん?」


「状況は?」


「レプタイルの承認処理待ちだ まだ時間がかかる。」


「朝まではかけるな。」


「ああ。コールドマン、最終確認をしておきたい。
みんな、休憩してくれ。ママルへの偽装データに懸念が・・・」





どうやらストレンジラブと一緒にコールドマンもいるようだ





ママルポッドを見ていた群衆が格納庫を出たのを見計らい





「今だ!」





彼はママルポッドの元へ駆け、ポッドの中に入り込んだ。







記憶板の納められたAIと向き合うと





『ジャックね。』


突然 ママルポッドの方から話しかけてきた。





無言のままは、ライフルをママルポッドへ突きつける





どうした?体温が下がっている。』


「・・・・気のせいだ。」


『壊しに来たの?』





冷や汗を滴らせ、彼はライフルのグリップを強く握る。





『少し、心拍数が上がった。』


「ここは冷える、寒いんだ。」


『・・・・そう。』


「・・・ママ。」


何?ジャック。』


「本当にママなのか?」


『どうしたの、ジャック?』







一度閉ざし・・・開かれた口は、問いを投げた。





「あんたは・・・後悔してるのか?


「何に?」


「自分の・・・最後の任務に・・・」


『最後の任務?』





(ビッグ・ママの写し身当然であるママルポッドが
・・・あの時の任務を知らない?


それに若干動揺しながらも、は話を続ける。





「ツェリノヤルスク、グロズニィグラード
ザンジバーランドでの任務だ。」


『そんな任務経験は・・・ない。』





銃を降ろし 彼はその時の詳細を口にする







数年前、ツェリノヤルスクでヴォルギンが撃った
核弾頭を持ち出しソ連に亡命し


グロズニィグラードに保管されていた賢者の遺産を奪取。





そして・・・1年前、アメリカを裏切り


自らの手にかかり殺された事を







だが、彼女の声は淡々と答えを吐き出す。





『いいえ。そんなデ・ブリーフィングは記録にない。』


「・・・もう一度聞く!
あんたは、自分の意志でソ連に亡命したのか?」


『該当するような任務記録はない。』







覚悟を決め、は再びママルポッドに銃口を向けた







『ジャック?』


「あんたはママじゃない。ママは死んだ!


『ジャック、止めろ。』





構わず引き金に手がかけられ―









「銃を捨てろ、雷電。」





ママルポッドの外壁が上がり、兵士達の銃口に囲まれ
その動きが止められた。







「・・・ママルに研究施設と同じ反応があった。」


兵達の囲いの向こうには ストレンジラブと
コールドマンが佇んでいる。





「お前が近くにいる兆候だ。」





囲いの合間を割って、コールドマンが歩み寄った。





「また会えて光栄だ。雷電。


「そのコヨーテには見覚えがある。」


「狼だよ。」


「狼?屍臭がするぞ?」


言った瞬間コールドマンは 拳を眼一杯
相手の顔に振り下ろしていた。





「私は君をよく知っている。数年前のツェリノヤルスク・・・」


「あの時の関係者だってのか?」


「あの作戦は私が立案した 裏切り者の抹殺計画。」





それを聞き、はコールドマンを怒りの眼差しで睨みつける。





あの時、ジーンが言っていた・・・"あの事件の全て"
計画していた人物が目の前にいる。







「だったら、本部にいるはずのスーツマンが
どうしてこんなところにいんだよ・・・!」


真実を知る者の口を封じる もしくは僻地へ放り出す。
CIAの十八番だよ。」


「・・・なるほど、再び返り咲きたい訳か?」


「それほど単純ではないが、一言でいうならば・・・
新たな世界秩序の創造だ。」





緊張緩和(デタンド)、核不拡散条約(NPT)
戦略兵器制限交渉(SALT)、地下核実験制限条約(TTBT)


キューバ危機以降、冷戦構造は音を立てて崩れ始め

新たな時代が到来した今こそ


忍耐と冷徹さを兼ね備えた機械による完璧な核抑止システム





・・・「ピースウォーカー」が重要になる、と狼は語る







無人兵器に人類の罪を押しつけるつもりか?
それではSOPの二の舞だぞ。」


「ふふ、なかなかのロマンチストだな。」





覚えているか?とコールドマンが続けたのは





キューバ危機の際、米駆逐艦へ向けた
格搭載魚雷の発射命令を拒否したソ連潜水艦の仕官は


今では全面核戦争から世界を救った英雄と称されている話





「つまり・・・人間に核は撃てん。」


「AIならば、躊躇なく核を撃つ?」


そう だからこそ真の抑止力となるのだ。」


「躊躇いを持った人間が関与するからこそ・・・
「抑止論」という駆け引きが成り立つんじゃないのか?」


いや、機械は間違いを犯さない。
過ちを犯すのはいつも人間だ。だからこそ、機械による
全自動の抑止力、ピースウォーカーが必要になる。」





この導入が決まれば、本部は新冷戦の緒となる
ラテンアメリカに再び注目する。


ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカ、パナマ・・・

中南米カリブ海沿岸にピースウォーカーを配備し


北米、南米、西インド諸島全てを射程内に収め
まずはこの大陸を粛正する・・・と意気揚々に公言する
コールドマンを彼は皮肉げに見やって言う。





「まだまだあんたの時代は続く?」


「・・・ふふ、わかってないな。思想に失墜した
ビッグ・ママと共に英雄の時代は終わった。


これからは“感情なきシステム”が英雄になる。
それが一番わかっているのは貴様だろう?

・・・いや、貴様の相棒か?」


「何だと?」





眉が跳ね上がったのを見て、老人は口元の笑みを
崩さぬそのままで言葉を続ける。





「金で買える抑止力「国境なき軍隊」これも
新しいシステムだ、実に目の付け処がいい。」


「依頼(オファー)なら断る。」


「いや、そのつもりはない 私の新しいシステムを
売り込むためには君達のような旧システムが目障りなんだ」





手を振り上げたコールドマンの合図に合わせ

兵士が再び一斉に、へ銃口を向ける。


引き金にかけられた指へ力が入り・・・







待って、コールドマン。」





それを止めたのは、ストレンジラブ





「この男には聞きたいことがある。ママルの
完成度に関わる重要な事項だ。私に身柄を預けてくれ」


「ふふ・・・あまり入れ込むなよ。SALTUの会談は
予定通りとの連絡が入った 核発射は時間通りに行う。」


「ジャック、彼女の再臨に協力してもらうぞ。」


「黙れ!ママは死んだんだ!」





憤る声を無視して、彼女は側の兵へアゴをしゃくり


「連れてこい。」





声に合わせて兵士が取り押さえようと迫る。







・・・伸ばされた手が触れるか触れないかの刹那





腰の刀を引き抜いたが、一閃で兵士を斬りつける





「な!?」


「何をしてる取り押さえろ!」





コールドマンの激で次々と兵士達が取り囲んで
相手を取り押さえようとするが


刀、体術を使った連撃が繰り出されて

敵はあっという間にことごとく無力化していく。





周囲の兵が尽きて、ストレンジラブとが睨み合い







不意に 彼の足元にグレネードが転がってきた。





「しま・・・!?」


反応するが遅く、爆発したグレネードから発された
おびただしい冷気に押し包まれ


彼の身体は凍りつき・・・身動きが取れなくなる。





「連れて行け。」





退避し 見下ろしたストレンジラブの一言により
援軍の兵が身柄を拘束し





はコールドマンの捕虜となってしまった。








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後書き(退助様サイド)


退助「コクーン退治から敵に捕まるところまで行きました」

(リアルでコクーンは倒せないな・・・と思っていたけど
主砲とミサイルに気をつければただの図体デカイ的でした)


新八「カッコ内が呑気過ぎでしょ!?
さんあのまま捕まって大丈夫なんですか!?」


カズ「心配ない、あの博士はジャックの聞きたい事を
聞くまでは生かしておくだろう。」


セシール「けどそれを聞きだしたら用済みになる・・・
早く何とかしないと!


銀時「大丈夫だって、はそう簡単に口は割らねぇよ。」


ヒューイ「いや、あのストレンジラブの尋問だ。
いくら彼でも耐えきれるかどうか・・・」


神楽「そんなモン、アイツならへいちゃらピーね
きっと何とかして脱出するはずアル!」


退助「まーその辺りは次回で明らかになります。

尋問の内容に関しては・・・やっぱり年齢制限の問題で
アレはなしになったんですよね・・・」


桂「アレとは何なのだ?」


退助「それは次回の後書きにでもお教えします。」