敵兵を掻い潜り、遺跡にたどり着くと
不自然な機械の扉が待ち構えていた





恐らくAIの研究施設はこの先に繋がっている


そう考えたは、ヒューイからもらった
IDカードを読み込み機器へと差し込む


・・・が、赤い表示が示されるだけで扉は開かない





「・・・・ん?開かない・・・?」





もう一度ゆっくりとIDカードを差し直しても
結果は全く変わらなかった。


「ダメか・・・」





おかしいと思い、彼はすぐカズへと連絡を入れる





『開かない?どういうことだ!


「ヒューイを呼び出してくれ。」





程なくして通信にヒューイが応答する。





『ジャック、どうしたんだい?』


「ヒューイ、お前のIDカードが使えない。
このIDではロックが解除されないんだ。」


『え、それがあったら扉を開けられるって
話じゃなかったんですか?』


『まさか・・・!』


『心当たりでもあるアルか?』







ヒューイは一拍の沈黙を聞いて、小さく・・・
だがハッキリとこう呟いた。





『・・・・そこまで嫌われたか・・・・』


『・・・・はい?





全員の呆気にとられた声の後、気を取り直して
彼は無線に呼びかける。





「おい、ヒューイそれどういうことだ?」


『実はあの施設のIDの許可を出しているのは
ストレンジラブなんだ・・・だから彼女の意思によって
前は使えたカードでも、権限を外されることがある。』


『オイオイ待て兄ちゃん、そりゃつまり・・・』


『そう、例えば・・・嫌いになった相手とか・・・』


「まさか・・・・心当たりが?」





答えは無かったが 沈黙が十分ソレを示していた。





『ケッ、どーせヤラしい目で視姦でもしてたとかそんなアル
キモっ!メガネはしばらく会話禁止ネ話しかけないで。』


『いくら何でも言いすぎでしょ神楽ちゃん、てーか
女の子がそーいう言葉を使っちゃダメだって』


『話しかけるなって言ったばかりヨ メガネ!』


僕も入ってんの!?それ僕も入ってんの!?』











第11話 カードリーダーはゆっくり通さないと
たまーに読み込まない












騒ぎ出す新八と神楽はスルーし、ヒューイは言葉を返す





『別にその、そんなんじゃないんだけど・・・
正直好かれているとは思えない。』


「はぁ・・・・」


困ったな・・・外にいる兵士も研究室への出入りは
許可されてないから、連中のカードを奪っても意味がないし・・・』







そこで直前にセシールと交わした会話を思い出し


無事フルトン回収されたことをカズに確認して
は無線越しに彼女へと語りかける。





「セシール、鳥になった気分は?」


素敵だった・・・鳥の気持ちが少しはわかったわ。
鳥の研究はやめて、空を飛ぼうかなって思う

・・・で、どうしたの?』


「君はIDカードを手に入れたと言っていたな?」


『ええ・・・、でも一度見張りの兵隊に捕まった時
没収されちゃったの。』


取られた?どんな奴にだ?」





思い出すような唸り声の後、セシールは言う





オレンジ色のジャケットを着ていたわ
顔は・・・ゴメンなさい、思い出せない。』


「奴ら似た顔が多いからな・・・場所は?」


『ええと・・・あ、そこには「ケツァール」
鳴いていた これだけは確かよ。』


「さすがバーダーだ。」


『ケツァールの鳴き声、聴く?』


ああ、と彼が答えると 無線越しに


"キョー、キョー、キョー"


と、特徴のある鳴き声が耳に届いてくる。





「え・・・あれ?その鳴き声は?」


『私のケツァール。回収された時、一緒に連れてきたの。』


「確か、ワシントン条約の対象に入ってると君が・・・」


『オイオイ待てよ、どこにそのケツア○ルっつー
鳥がいるってんだよ どこにも見当たらねぇぞ』


「ケツァールだっつの・・・じゃあ銀さん
さっきの鳴き声はどう説明するんだよ?」


『エリザベスの声だと説明「できるわけねぇだろ。」





素っ頓狂な桂のセリフにツッコんだ直後

小さな笑い声が彼女の口からもれた





ウソよウソ 今のは私の 物真似。鳥類学者は
このくらい出来なくちゃ・・・うまいもんでしょ?』


「なるほど・・・大した女だ・・・」


『ジャック、もしまたケツァールの鳴き声が
聞きたかったら連絡して。』


「わかった。よろしくな、セシール。」


『ええ・・・それじゃシャワーでも浴びようかしら。
いつまでもこの格好じゃ辛いし』


『私が案内するわ、ついてきて。神楽ちゃんもどう?』


『キャッホー!助かったアルぅ〜
汗ダラダラで気持ち悪かった所ネ!』










女子3人がシャワー室へ向かった所で、
あの事について問いかける。


「カズ、セシールに例のテープは?」


『聴かせたよ 確かに彼女の物だった。』


「じゃあ彼女が・・・」


いや、どうもパス殿の友人じゃないらしい。
セシール殿も面識は無いと言っておった。』





抱いた予測が確証を得た矢先、次の一言で覆り
彼は思わず目を見開いた。





「何だって!?」


『互いの年齢も 10は離れているだろう。』


「だがパスは・・・」


『大方あの娘っ子の方が"友達が録ったモン"
思い込んでるんじゃねぇのか?ヒデェ目にあったらしいし』


「だとしても、どうにも腑に落ちない・・・」


『とにかく、IDカードを持っている兵士を見つけ
IDカードを入手するんだ。』







通信を切ったは、"オレンジ色のジャケット"
"側で鳴くケツァール"を目印に


IDカードを持つ兵士を見つけるため森へ引き返す。





カモフラージュしながら動き回る兵達の合間を抜けて
慎重に目標を探していると、奥の方で





キョー キョー キョー


と、先程聞いたばかりの鳴き声がするのに気付き





歩を進めれば・・・間をおかず辺りを注視している
オレンジ色のジャケットの兵士が見つかった。





「にしてもあの女・・・中々のものだったな・・・・捕まえたら
こじ付けで一発y「一発やられたくなかったらうつ伏せになれ。」





さくっと兵士を後ろからホールドしてボディチェックで
IDカードを見つけて入手し


首尾よく兵士のフルトン回収も行った後

彼は急いで遺跡へと舞い戻った。











カードを差し込めば・・・今度こそ青い表示が出され
目の前の扉が開いた。





「よし。」





奥へ進めば、そこにはマヤ遺跡がそびえ立っており


仕掛けや伏兵の可能性を念頭に置きつつ遺跡内部へ
侵入すると・・・唐突に 何かが目の前の現れる。





「なっ!?」





銃を構えたまま固まった彼の前に現れたのは

敵兵ではなく、一頭の白馬





しかも・・・彼はその馬にも身覚えがあった。





「こいつは・・・まさか・・・!?」







間違いなくビッグ・ママが愛用し、側に置いていたアンダルシアンもまた


の姿を認めると、駆け足で近づいて

自らの頭を相手に擦り付ける。





「何でママの馬が こんなところに・・・」


「誰?」





突然聞こえた人の声へ視線を向ければ


遺跡の入り口の壁にもたれかかる、赤いコートを
一部の隙無く着込んだサングラスの女性がいた。





「お前は・・・ストレンジラブ・・・博士だな?」


「・・・待っていた、お前を・・・」


彼女―ストレンジラブは摘んだ嗅ぎ煙草を
手袋に包まれた左手へ付着させ、それを嗅ぐ。





「恋しかったわけではない・・・

むしろ・・・・憎い。お前が!


「動くな!」


『動くな』か、武器を手にした人間は、みな同じ事を言う。
私の研究成果を壊しに来たんだろう?

知っているぞ、1年前、お前が何をしたのかも。」





淡々とした言葉に、彼は冷や汗を流したまま
相手へ銃口を向け続けている。





「さあ、同じように殺せ。ママと同じように。


「くっ・・・・」


「殺せ!」


「お前は・・・!」


ビッグ・ボス!いや雷電か?人殺しのご褒美に貰った
穢れた名をまだぶら下げているのか?」





彼女は冷たく笑って、同じ口調で訊ねる





育ててくれた"恩人"よりも実体の無い"国家"を選び

世界中の戦士を失望させた・・・


任務という権力のため 真の英雄を殺した


それがお前の"忠"なのか、と。







強く詰問され、戸惑いながらも・・・は返す。





「・・・あの女は祖国を裏切り・・・核を盗んで亡命した。」





無論 彼は真実を知っていた。





しかし、この女に聞かせるわけにはいかないと思い
敢えて捻じ曲げられた事実を・・・聞かせた


"アメリカの核を使い、ソ連を撃ったため
政府は裏切り者を自ら抹殺するため 自国の潔白を
ソ連へと証明して見せた"と


"全面核戦争を止めるため、彼女の死が必要だった"・・・と







「・・・それが"真実"か?」


「これが語られている真実の全てだ。」


「この世で最も愛した恩人を、汚名を着せて
葬り去る事がか?」



「・・・・任務だった。」





苦々しい内心を見透かすかのように、ストレンジラブが
嘲笑じみた笑い声を響かせる。





「フフフ・・・・ハハハハハ!
それが自分を守るために下した結論か。」


「お前はママの・・・!」


何なんだ、と訊ねようとしたのセリフを
先取りして彼女は答える。





「この世に置き去りにされた人間だ
愛した彼女に答えを聴くまで、死ぬことも出来ない

・・・お前と同じ、生ける屍だ。」





しばらく緊迫した空気が流れて・・・







不意に、ストレンジラブが口を開いた。





「・・・逢いたいか?」


「・・・ママはもう、この世にはいない。」


ぬけぬけと・・・!
逢いたいだろう?逢わせてやってもいい。」





再び嗅ぎ煙草を手に乗せながら 言葉を紡ぎ





「お前が奪った命を、私が蘇らせた。」


「クローン・・・なんて言わないだろうな?」


そんな下品な手を使うとでも?吸うか?」


彼女は粉末の乗った手の平を、相手の側へ差し出す。





「何だそれは?」


「ただの嗅ぎ煙草だ、葉巻は吸うだろう?
ここから先は禁煙だ。彼女に逢いたければ吸っておけ」


「いや、俺は・・・煙草は吸わない。」





返答に さして興味なくその手を自らの鼻に近づけ


「そうか・・・こっちだ。」





ひと嗅ぎ終えて、ストレンジラブは壁から身を離し
入り口へと先に進んでゆく


その後について施設内部へと足を運ぶ





・・・その先で、とんでもないものを見てしまう。








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後書き(退助様サイド)


退助「さあいよいよ登場しましたストレンジラブ!」


ストレンジラブ「待っていた、出番を・・・」


銀時「出番(そっち)かよ!?」


新八「特集の時に言っていた彼女の写真って・・・
さんのお母さんの写真だったんですね。」


ストレンジラブ「ああ、何だと思っていたのだ?」


神楽「いや普通にやらしい関係だと・・・」


ストレンジラブ「おっと、私もシャワー室を借りようか」


カズ「アンタだけはやめてくれ!
アンタが行くなら俺が行った方がまだマシ」


新八「なわけねぇだろぉぉぉぉぉ!
どっちにしても変態厳禁!!檻の中に帰れぇぇ!!」


セシール「あら・・・覗こうとしてたわけ・・・?


ストレンジラブ「おおセシール、無事だったか・・・」


カズ「ど、どしたのその黒いオーラはセシール?」


セシール「ブェッヘー!!」


カズ・ストレンジラブ「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


カズ「ヨ、ホーホーがはいって・・・」


ストレンジラブ「私のアゴがバスターした・・・」


新八「アンタら何言ってんですか。」