ラバに乗り、熱帯雲霧林の中を進んでいた
無線を通じて彼女が呼びかけてくる。





『ジャック、ラバの調子はどう?』


「このペースなら明朝には目的地に着くはずだ。」


急いでくれ。AIはいつ完成してもおかしくはない。』


「勿論だ・・・しかし、この辺りの地形には
不慣れだからな・・・ガイドが欲しい所だな。」





待ってましたとばかりにその言葉を受けて
ノリノリで神楽が背筋を伸ばして口を開く。


オホン、それじゃあ私がガイドするネ。

みなさ〜ん?私の右手にあるのはー熱帯雲霧林です。』


360度熱帯雲霧林なんだけど・・・・』


『ボーボーに生い茂りすぎるとチクチクするので
冬でも風呂場でのお手入れは手抜きしな』


言いかけた銀時の顔面へ いい感じのパンチが炸裂した。





ふざけてる場合か?
AIの完成は間近なんだ まともなガイドを頼む。」


『そうだよ二人とも、さんだって
ふざけてるんじゃ無いんだから・・・・』


『ちぇ〜・・・ちょっとしたジョークなのに・・・』


ふて腐れた声で愚痴る神楽に変わって





『それじゃ、そのジャングルに詳しい パスに協力してもらおう。』


ヒューイが通信をパスへと切り替えれば





『ジャック、いい?サバイバルの達人でも気を抜かないで』





ついさっきまでのやり取りを払拭するような
真剣な声でのガイドが解説される。







今現在、ラバで進んでいる深い森林は霧で視界も悪く


400種類の蘭を含む2500種類の植物 500種類の蝶

・・・400種類を超える野鳥が生息していると言われている
正しく"太古のジャングル"なのだそうな。





『その一帯は岩盤が硬い・・・だから度重なる地震の中でも
マヤの遺跡が生き残れたの。』





タメになる知識を、彼は瓢箪(ひょうたん)にいれて
持ち運んでいるマテ茶をすすりながら相槌を打ちつつ聞き


無線越しにヒューイへと呼びかける。





「マヤ遺跡の中でAIとはな、ヒューイ?」


『ああ、そうだね。
といっても入口のセキュリティに抜かりはない。

・・・僕が渡したIDカード持ってるよね?』


「ああ、ちゃんと持ってる。」





答えて ラバを近くに止めてがその場に降り立つ











第10話 フランスと聞いて書院と続けた人は
グラウンド十五週












『ん・・・何やら水の音がするのだが?』


耳聡いな まぁ腹が減っては
戦が出来ぬって言うだろ、桂さん?」





道中の川で休憩し、魚を捕まえる様子だと気づいて





『ふむ、なるほど・・・』


長髪の侍も納得したような呟きをもらしていた。





『そのIDカードがあればゲートを難なく通過できる。

後はジャック次第だ AIさえ組み込まなければ
コールドマンの計画(ゲーム)はコールドする。』


「よっと・・・研究所内部のセキュリティの方はどうなんだ?」


『うん、そっちは心配する必要はないよ。ストレンジラブの
要望で施設内の警備は最小限に絞られているんだ。』





話の最中に捕まえた、ビチビチと跳ねる活きのいいアロワナを


彼は構わず生のまま 腹から噛り付き・・・





『ていうか、何をもっさもっさ食ってるアルか?』


「ああ、魚だよ。熱帯雲霧林のアロワナ。
捕りたて新鮮をそのままかぶりついてるトコだ」


それウマいアルか!?私にもよこせヨ!!』


「お前がいたらアロワナが絶滅する。」


『いやいやいや生のままはマズイですって寄生虫とか!!』


「よく噛み砕けば問題は無い」


『『あるわぁぁぁ!おまっ寄生虫なめんなぁぁぁ!!』』





まさかの銀時と新八によるWツッコミに さしもの
サバイバルの達人も若干、自らの行動に疑問を持った。





『あー・・・食事うんぬんはさて置き、ジャック
そう良いニュースばかりじゃないようだぞ。


・・・コールドマンに俺達の存在が知られてしまった。
施設周囲の警備レベルが上がっているようだ。』


「わかっていたことだ。大丈夫だ。」







無人飛行機"クリサリス"や哨戒ヘリを多数確認し


ジャングルに待ち伏せ(アンブッシュ)しているだろう
スカウト兵の存在を示唆して





『施設が近づいてきたら、今まで以上に注意してくれ。』


「了解。」





呼びかけたカズへ答え返して 通信を切った直後





『ラーンランラー、ラララー、ラララー・・・・・』


「・・・本当だ。」


件のクリサリスが 独特の歌声を響かせながら
こちらへと近づいてきたのが見えた。


はすぐ物陰に隠れ、やり過ごそうと息を潜める。







クリサリスのセンサーが2つの動体反応を見つけ


一番大きい方に反応して警戒音を鳴らす





「ヒヒ〜ン!」





それに対して身の危険を感じたラバが茂みを抜け
何処かへ逃げ出していくのを捉えると


警戒を解き、クリサリスはその場から飛び去っていった。







「ふぅ・・・何とか凌いだか。」


『ジャック、ストレンジラブ博士の研究施設は北へ数マイル
完成間近のAIを破壊するんだ 一刻も早く!





通信を耳に彼は崖を滑り降り、体勢を整えて
AI調整を行っている施設へと向かう。





『そのあたりに偵察兵が潜んでいたら、発見は困難だ。
気をつけろ。』


「わかった。」





木の陰に隠れ、息を潜める偵察兵を探して
辺りへ視線をはしらせる・・・・





と、草が僅かに動くのが見えた。


「あそこか・・・」





極力足音を殺しながら は死角から
兵の後ろへと回り込み





「まさかここにいるとは気付くまい・・・奴が
こちらに気付いた時には・・・死を迎えた頃だ・・・」


「奴って誰のこと?」


な!?いつのm」


攻撃の間も与えずスタン・ロッドを当て、電撃で気絶させた





「偵察兵なら実戦部隊の増強に役立つだろう。」





道中の偵察兵も含めて、どんどんフルトン回収を行い
森の中を抜けた先には・・・


滝の音がごうごうと轟く 吹き抜けた空間があった。





しかし、大自然の轟音を縫って僅かに・・・
ヘリのローター音が聞こえてくる。





物陰へ潜んで敵の視界から離れたの前に現れたのは


「Mi−24a・・・か」





俗に言う"ハインド"から数人の歩兵が出てくると
周囲を警戒し巡回を始める。





ジャック!ハインドの襲撃だ なんとか排除するんだ!
敵兵を無力化するか、機体を破壊するしかない。頼むぞ!』


「出来る事なら、あのヘリは頂戴したい所だな・・・」


『それなら、敵兵を無力化するしかない。
ヒューイに作らせたアレを使え。』


「・・・アレか、よし。」





頷き、彼は地面に細工を施し・・・"仕掛け"をセットし
敵兵をそこまでおびき寄せる。





ん?ここから声が聞こえてきたが・・・」





岩陰から銃を構えながら進む歩兵達が目にしたのは―







『秋ナスは嫁に食わすな!秋ナスは嫁に食わすな!』


訳の分からない事を連呼しているボ○ボボ人形





「な、何だこれ!?





驚きながらも、一人がそれを手にした瞬間


ボン!と地面にあった地雷が爆発し





『うわぁっ!?』





たちまち周囲の敵兵にフルトンバルーンが取り付けられ
順繰りに空へと舞い上がっていった。





『な、何だ!何があった!?』


異変を感じたハインドのパイロットが
コクピットの窓を開けて覗き込めば





「馬鹿め。」





狙い済ましていたの麻酔銃が撃ち込まれ


パイロットの昏睡によってコントロールを失ったハインドは
森の広い場所へと不時着する。





「・・・よし、これでハインドはMSFのものだ。」





無論ぐったりとしたパイロットも、引きずり落として
フルトン回収をするのも忘れてはいない。









更に奥へと進んで、遺跡へと足を踏み入れれば
カズからの通信が入る。





『偵察兵の中には、草や土で偽装している者もいる。
自然に溶け込んでいる分厄介だ。』


「なら、これを使うか。」





暗視レーダーを装備して、は物陰から
敵兵が隠れている場所を確認しながら安全ルートを進んでいく





「ギリースーツも装備しているのか・・・
これは、確かに厄介だったな。」





慎重に深部へ足を運んで・・・・動きを止めた





鳥が集まっている木の下に、人影が見えたからだ。







ライフルの筒先を向けながら慎重に近づけば

そこにいるのは敵兵ではないと気付く。





・・・"彼女"の姿は、敵兵にしては軽装過ぎたからだ。





「おいっ。」


「Ah Tumas trouvnl、Cestmotleloup・・・
(見つかっちゃった、私がオニね。)」


「フランス人か・・・Fini de jcuer a cache−cache
Dismouqul tu es
(隠れんぼは終わりだ、さあ、何者だ?)」





母国語で話す相手へ、強張った顔が見る見る内に

恐怖へと染め上げられていくのが見て取れた。





「お願い・・・殺さないで・・・!」


「兵士ではなさそうだが・・・」


「観光客よ・・・」


「名前は?ここで何をしている?」


「セシール・コジマ・カミナンデス・・・
アナタ、ここの兵士じゃないの?」





木にもたれかかった彼女・・・セシールはひどく怯えていた


恐らく、武力勢力に囚われていたのだろう。





「お願い・・・銃を下げて・・・!あなたは誰・・・?


「(これは少しでも安心させないといけないな・・・)
俺は・・・鳥類学者だ。」


「密漁者・・・?」


「この銃は護身用だ。コスタリカの・・・」


は辺りを見渡し、適当な鳥を見つけて目で示す。





「珍しい、そいつを探していた。」


「そいつ?・・・ケツァールのこと?」


「そう、ケツァールを・・・珍しいといっても
ワシントン条約の対象には入っていない。」


カザリキヌバネドリはレッドリストに入っているわ。」


「そう・・・詳しいな。」


「私も・・・鳥類学者なの。」


「そうか、じゃあ先輩だな。」





励ましながら やや目を逸らし気味にしている


相手が衰弱しているのを見て取って
マテ茶の瓢箪を取り出した。





「飲むか?」



途端、セシールはそれを奪うように手にして
勢いよく貪り飲む。





(先程の、思考が麻痺したような反応といい
よほど過酷な環境にいたんだな・・・)





「ふぅ・・・助かった・・・」


「そうか 君は、何でこんな所にいるんだ?」


「・・・ここは世界でも有数の珍しい鳥達が生息する楽園
おまけに戦争もないから安全・・・だから
バーダー達にも憧れの場所だった。」





彼女は、後悔するように呟く





「・・・あんな声、録らなければ・・・」


「・・・声?」


「鳥の、ケツァールの鳴き声を録っていたの。

茂みを抜けると、大きな遺跡がそそり立っていた・・・」





彼はすぐに、ガルベスが聞かせたテープの記憶を思い出した


「あのテープは君が?」





よくよく想起してみれば・・・・テープの最後には


侵入者に気付いた兵士の声と銃声、そして
セシールのものらしき女性の声も録音されていた。





それには答えないまま、彼女は続ける





「・・・その女性に捕えられた。
ところが、その人は私に優しかったの。」





捕らえられたセシールへ食事を食べさせ、お風呂で
毎日身体を拭いてくれた相手は


ひと月で帰れる事を 彼女へと約束していた


『目隠しを取ってはいけない、二度と戻れなくなる』

条件を出した上で。





「・・・約束を破ったわけか。どうやって逃げた?」


「隙を見てIDカードを盗んだの。
捕まりそうになったけど・・・振り払って・・・」


「で、ここまで逃げてきて力尽きたわけだ。」


「裸足だし・・・装備も何もないもの・・・」





話の合間にマテ茶を飲み干してしまったらしく
空になった瓢箪を振って、セシールが言う。


「あ、ごめん。全部飲んじゃった。」


「構わんさ。その施設で・・・他に誰か見なかったか?」


「ええ、もう一人女性が。でも、姿を見たことがない・・・
ずっと目隠しされてたから・・・」


「他には?些細なことでもいい。」


「そうだわ・・・よく歌を歌っていた。


「歌・・・?」


「不思議な歌声だった・・・」





そう言えば今まで見た無人兵器も妙な歌を
歌っていたな・・・とは思った。





「まあそれはいいとして他には?どんな人物だった
・・・声からでも想像できるだろう。」


「わからない、捕まった理由さえもわからないもの。

機材も装備も、パスポートもお金も・・・何もかも没収された。
許されたのは下着だけ・・・」





確かにセシールの今の姿は、タンクトップシャツに
パンティーのみといった出で立ちだった。






「そうやって逃げられないように・・・

だから、もう身分を証明するものもない。
これじゃあパリに帰れない・・・」







のっぴきならない状態の相手をそのまま放っておく事は
出来ないと考え、彼は決意して口にする。





「それなら・・・俺達の所に来い。」


「え?」


パスポートの要らない場所だ 名前さえもいらない。

帰りたくなったらいつでもパリに帰してやる。
・・・その根回しは任せておけ。」





希望を思わせる発言に、彼女の目が輝きだす





「身体を洗って・・・煙草を吸って・・・服を着たい。


「葉巻ならある、キューバだ。」


フランスの煙草は?両切りがいい。」


少しずつではあるが元気を取り戻していくセシールに

小さく笑み返しては告げる。





「・・・今は持っていない。だが俺の所に来れば
フランス煙草ならいくらでもある。」


「楽園みたい!」


「生憎そこは天国の外側(アウターヘブン)だ。」


「ますます魅力的な所ね。」


「・・・・それで、君は逃げる時に見たんだな?
その施設には何があった?





問いかけに、記憶を探りながら彼女は頷く。





「・・・機械が一杯あった。大学の電算機みたいな・・・」


「声が聞こえた部屋には?誰かいたか?」


「わからない。筒が・・・奥に大きな筒があった・・・
近寄ったら 声が聞こえてきた。」


「何と言っていた?」


「・・・ジャック。
そう、確かにジャックって、呼び続けていた。」


「ジャック・・・!」





思いがけない単語に の顔から一筋の汗が流れた







「・・・ねえ、早くここから出たい。
シャワーを浴びたい!服だって着替えたいわ!


「待て待て、気持ちは分かるが俺にはまだやる事がある。」


「まさか、アナタ遺跡に行くの?置いていかないで!





服を掴んで縋りつく相手をなだめながら





大丈夫さ・・・・すぐに仲間を寄こす。」


無線を手にして、彼はカズへ通信を入れた。





『こちらミラー。』


「1名回収してくれ。民間人だ。」


ジャック、民間人を受け入れる余裕はない。』


『待つアル 何抜かしてるね薄情銀ちゃん!
そんな冷たい態度じゃ主役降ろされるアルよ!!』



『ってそれほとんど俺じゃねぇかぁぁ!!』


『そこの二人はともかく・・・そんな所に一人で
置いてきぼりにしていったら危険ですよ。』


『それでも、今のマザーベースでは保護はできない。』





ある程度予想がついていた受け答えに ため息をつき





「そうか・・・金髪のパリジェンヌなんだが・・・」


ボソリ、と彼はワザとその部分を強調して呟く





勿論その後の反応は分かりやすいものだった。





何だと!!?・・・・で、イケてるのか?』


金髪ぅ?おおおぉい!
さぞかしボインちゃんなんだろうなぁ?』


「・・・・・・・・お前ら一度カリブ海に落ちろ。





こりゃそのまま回収させるとマズイと考えて


荷物を漁り とっさに目に付いたTシャツ2着を
セシールの腰周りにスカート代わりとして巻かせといた。





『もう、ホントダメダメなんだからカズさんと銀さんは・・・』


『だったらオメェらも俺らの股間センサー
反応するようなボインか色気をつけてみr』


その後、木霊する銃声と断末魔が無線の音量を
埋め尽くしていたことは言うまでもない。





天パが制裁を受けているのを敢えてスルーして彼は言う





「カズ、彼女の話が本当なら
どうやら彼女がパスが言っていた友人のようだ。」


『行方不明の?』


「ああ、恐らく例の声を録音した本人だ。
・・・テープを聞かせてみろ。」


『そうか、無事だったんだな。』


「パスも喜ぶはずだ。」


『わかった ジャック、遺跡はもうすぐだ。
そこから北に向かってくれ。』


「了解。」







連絡を終えたへ、いまだ困惑した顔のセシールが尋ねる





「ねえ、私は?」


「そこにいろ、鳥になれるぞ。」


「え?」





素早くその背にフルトンバックを背負わせ
スイッチを押すと





「え、きゃぁぁぁぁぁぁ!!


悲鳴を残し彼女は、空高く舞い上がっていった。







無事にその様子を見届け終えて


の顔つきが・・・セシールの前では見せなかった
険しいものへと変わっていく。





「やはり・・・ママが生きているのか・・・?





その答えが全て あの遺跡にある


そう直感し、彼は答えを探るべく遺跡へと急ぐ。








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後書き(退助様サイド)


カズやっと出ましたパリジュゥェェェンヌッ!
彼女こそ私のラ・マンなのだろうかぁっ!!」



退助「おい何でアンタが後書きの頭をやってんだよ!
つーか無駄にエロやかましいから帰れ!冥界に帰れ!!


神楽「ていうか今回の話、重すぎるネ。
どんだけ長文になるアルか 管理人だっていい加減編集に」


退助「はいはい、楽屋裏は次回
割り増しにしてあげっからここまで!撤収!!


新八「え、ちょま・・・」


桂「待て待て!
さっきの人形とかツッコミどころ満載だっただろう!!」


銀時「しかもまだ俺らここで一言m」(強制終了)