タワーの中に入った俺と近藤さん達は
レイジング・レイブンとの戦闘を繰り広げ始める。





外にいる無人機を俺が排除し、代わりに
近藤さん達が中に入って来たレイブンを倒す作戦だ







旦那!何か爆弾みたいなものありませんか!!」





下から、山崎君の声が聞こえてくる。





「グレネードならあるが・・・・何をする気だ?」


「それをありったけ俺に寄こしてください!!」





何か策があるのか・・・・?まあいい。


グレネードが入ったケースを彼に向けて投げ渡す。





「山崎、何するつもりなんだ?」


「要は奴をおびき寄せればいいんですよね?
これでこいつを打ってぶつければいいんですよ。」





言いつつおもむろに取り出したのは・・・・
ミントンのラケット。





「山崎!!テメェこんな時もミントンかよ!!」


「けど土方さん、これは案外いけるかもしれやせん。
こいつぁ自動で爆発する仕組みみたいだし。」


「じゃあ遠慮なくやらせてもらいますね。」





なるほど・・・・・考えたもんだ


こっちばかり撃ってたら敵は中々
タワー内に入ってくれないからな・・・・





今回ばかりは山崎君のミントンに助けられるかもな。







彼はグレネードを持ち、レイブンが近くに来るのを
見計らって打ち上げた。





「喰らえカラス女ぁぁぁぁぁ!!」





タイミングが良かったのか、それは上手い具合に
レイブンの周辺で爆発した。





『グオ!?』


「やったな山崎!!」


「まさか普段のミントンが
こんな形で役に立つなんてな・・・・」


「読者やファンも予想できやせんぜこんな事。」





確かにそうだな・・・・・・・・











ACT−9 カラスは意外と規則正しい











『ガァァァァァァァァァァ!!』





怒りに満ちた叫び声をあげ、奴が
タワーの中に入ってきた。






「今だ!!トシ!!総悟!!」





近藤さんの合図で3人が跳びかかりレイブンを
斬ろうとするが、寸前で避けられ外に逃げられる。





「くそ!!君気をつけろ!!


「分かった!!」







すぐに俺を見つけたレイブンがグレネードランチャーを
向けてこちらに撃ってきた。





『怒れ!!!』





咄嗟に転がって避けながらパトリオットを浴びせる。


火力で押してくる所はバルガン・レイブンに似てるな・・・







奴は他の無人機を使って盾にし、下の方へ下降する。







これじゃラチが明かない・・・・・


俺も下に行って援護をする事に





「来たぞ山崎!!」


「はい!!」





再びミントンから打ち出されたグレネードが
今度はレイブンに直撃した。





『グワァァァァ!!』


「すごいな山崎君・・・・・」





すると そこでレイブンの様子がおかしくなった。





『くそ!!オーバーヒートか!!』








悔しげに呻き、レイブンは何かをこちらに投げ込む。


げ・・・・スタン・グレネード!?





「みんな目を覆え!!」





忠告し、咄嗟に目を覆い閃光を防いだ・・・・が







「局長ぉぉぉぉぉ!
局長がのびたぁぁぁぁぁ!!」



「大丈夫か近藤さん!?」





あらら・・・・・・一足遅かったか・・・・・・・・


いや、今は近藤さんの心配をしている場合じゃない。







レイブンはと外へ視線を向けると、どうやら
近くの家屋の屋根で休んでいるみたいだ。





『落ち着け・・・・・落ち着け・・・・・』





しかも動揺している。今なら確実に叩ける







「旦那、これ使ってくだせぇ。」





沖田君が俺に バズーカを渡してくれた。





「分かった。ありがたく使わせてもらう。」







持ち上げるようにして構え、屋根の上にいるレイブンに
照準を合わせ引き金を引いた。


弾は狙い違わずレイブンに当たり 奴が空中を舞う





『ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!!』







その合間に無人機が背中につき
レイブンは苦しみだした。







『うあぁぁぁ!ああああ!がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』





猛り狂った叫びをあげ、またこちらに飛んでくる







身体の所々電気が走ってボロボロのようだ。







「総悟、山崎、まだ油断できねぇぞ。」


「わかってやすぜ土方さん。」


『許せない・・・許せないわコンチクショウ!』







様子がおかしい・・・こいつも殻を脱ぐ瞬間が・・・・


それを見越してあの特殊弾を取り出し 装填した。





『ああ・・・・怒りが私の中に溜まっていく・・・・
怒りが私を浸食する・・・・!』






レイブンは機械の翼を羽ばたかせながら呟いた。







「旦那、様子がおかしくないですかぃ?」


「こいつらは戦争で抱えたトラウマのせいで
怪物になったんだ。それが今剥がれようとしている。」







そして翼を目一杯広げた瞬間、周りに
カラスのような黒い羽が舞い散りだす・・・







『いいえ・・・・違う、許せないのは自分自身・・・・
本当は怒りたくない 怒りはいらない、怒りじゃない』





声が女のものだけに変わり 黒い羽も白く変色し





「何なんだこりゃぁ・・・・・
幻覚でも見てるのか俺達は・・・」








ようやく身体を纏っていた外装が全て剥がれ
素顔があらわになった。


こいつもオクトパスと同じくらいの・・・・・・
黒いポニーテールの美人だ。





『怖いのよぉぉぉぉぉ!!』





悲鳴のような叫びと同時にグライダーから離れ
彼女はゆっくりと落ちてきた。







「この美人がさっきの化け物だったって事ですかぃ?」


「ああ・・・そうだ・・・」





いきなり顔を起こしたレイブンが、何かを
払いのけるように腕を動かし怯えていた。





「ああ・・・・・ああ・・・・助けて!!
鴉が私の肉を、身体を、心を啄ばむのよ!!
やめて!!もう怒りはいらない!!いやぁぁぁ!!!


「いきなり何だこいつぁ・・・・・
しかも男みたいな声も消えちまったし・・・・」


「・・・カラスに何かされたんでしょうか・・・・?」





そんな甘っちょろい経験なんかじゃない。


きっとレイブンもオクトパスと同じくらい
ひどい目にあったのだろう。







やけにゆっくりと レイブンが立ち上がる。





「私を檻から出して・・・・・
もう羽はいらない・・・もう怒りはいらない・・・・」







突然燃えた炭のような身体が、オクトパスと
同じように灰色状に変わった





こいつらもオクトカムを持っていたのか・・・・







レイブンが一歩、また一歩とこちらに近づいてくる。





「さあ・・・・怒りを放出しなさい・・・・・


「な・・・・何なんですかこの人・・・異様にエロい・・・・」


んなこと言ってる場合かよ山崎!
おい!こいつはどうすればいい?」


「俺に任せてくれ
これであいつの魂を浄化させる・・・





俺はレイブンに銃を向け、引き金を引いた。







弾が当たり 彼女はオクトパスと同じように仰け反る。







「あああああああ!!!」







悶えた後、後ろから大の字になって倒れた。







ただオクトパスと違い・・・少し身体が動いている。









「ん・・・・あれ?どしたみんな?」


「やっと起きたのかよ近藤さん・・・・
こいつの最後を見届けてやってくれないか?」







自然と蹲っていくレイブンの、その眼には涙が流れていた。





「・・・大丈夫だ・・・
もうお前を怖がらせる者はいない・・・・・」






そう言って俺は レイブンの涙を拭いてあげた。







「旦那・・・この人どうなったんです?」


「・・・死んだ、だが最後にこいつらの魂を
浄化させてあげたんだ。これでゆっくり眠れるさ・・・」


君、彼女は一体何が・・・?


「後で教えるよ。」





俺は彼女が持っていたグレネードランチャー
「MGL140」を拾い、もらうことにした。







・・・無線が入ってきた ドレビンからだ。





ようボス!調子よさそうだな!
ほう、戦利品まで手に入れてるな。
グレネードランチャー・・・使い勝手の言い武器だ。』


「だがこれもIDロックが掛って撃てないだろ?」





ドレビンは無線の向こうで楽しそうに返す





『今回はただで洗浄してやるよ。その代わり
用が済んだら俺に譲ってくれ。


何十年もの怒りが込められたグレネードランチャーだ。
いいコレクションになる。』


何十年?あいつの歳は?」


『二十歳そこそこだろう・・・だが彼女の身体には
何十年間の兵士の怒りが閉じ込められていたんだよ。』


「兵士の?おい、詳しく教えろ。





ドスの利いた土方さんの声に、チッチッチと
指を振る際の短い舌打ちが返って来る。





『そう慌てなさんなって鬼の副長さんよ・・・・
アチェの兵士達の怒りだ。


ここでは何十年も紛争が続いていた。
彼女は、素性の知れない兵士達に拘束され
家畜のような扱いを受けていた。


そこにはそんな子供たちが山ほどいたんだ。』


「・・・匿名の暴力・・・・」


そうだ。国軍か独立勢力かもわからない
兵士達の怒りを 来る日も来る日もぶつけられた。


浴び続けた戦場の怒りは、身動きの取れない
彼女達の体内に蓄積していった。』







眉を潜めた沖田君が 短く吐き捨てる。





「・・・・なんて下劣な野郎共でぃ、胸糞悪い。





沖田君からそんな言葉が聞けるなんてな・・・


どっちかっつーと・・・いや、そんなことはないか







『彼女達はお互いを励ましあい、いつか助かる事を
望みながら残飯を喰って命を繋いだ。


「残飯食いの鴉」と蔑まれて、更なる怒りの
はけ口にされながらな。』


なんてひどい事を・・・・!
怒りなら他にぶつければいいじゃないか!!
何でそんな罪のない子供達なんかに!!」


「近藤さん・・・戦場の怒りは人を狂わせる。
別に子供じゃなくても誰でもよかったりするんだ。」


『そうかもな・・・・兵士達が去っていく朝
彼女達は生きたまま鴉のエサとして捨てられた
・・・まるで鳥葬だ。』


「そんな!
そのまま逃がしてやればよかったのに何で!!」



「・・・・そんなになる位、奴らが狂ってしまったんだろう・・・・」







痛々しい沈黙の中、無線越しの声だけが響く。







『何日もかけて一人ずつ・・・仲間の身体は
鴉に啄ばまれていった。


鴉の群れはとうとう、彼女にも襲いかかってきた。


だが偶然にも彼女の拘束は
鴉の嘴によって解かれたんだ。


彼女の身体は突如、解放された。
その瞬間、体中に充満していた怒りが彼女の心を壊した





ビーストになった瞬間・・・・・か・・・





『彼女はまとわりつく鴉達を擂り潰すと
兵士達の後を追った・・・そして兵士達に追いつくと
彼女は狡猾にも夜を待ったんだ。』


「鴉と同じで悪知恵が働くらしいな。」


「トシやめろそんな言い方!」





皮肉もそれを諌める言葉にも答えず
ドレビンはただ、低く呟く





『あながち間違っちゃいねぇな。
鴉が鳴くと人が死ぬ・・・その光景はそんな伝承そのままだった。


彼女は鴉のような声を上げながら、そこにいる
全ての人間を殺してまわった。


兵士達、奴隷として捕らわれていた民間人・・・
もう見境がつかなくなっていた。』







近藤さん達は黙り込んだ。







仲間が受けた仕打ちと、自分が浴びた苦痛。
彼女の怒りは兵士達が長い戦争に植え込まれた
怒りへとリンクした。』


「それが・・・彼女の強さでもあり・・・
弱みでもあった・・・・」


『ああ、けどあんたはそんなレイブンも浄化しちまったんだ
・・・・・・ボス、BB部隊はまだ半分残っている。油断するなよ。』


「ああ。」





返事をして、無線を閉じた。







真撰組のみんなも今の事実に 流石に動揺を
隠しきれていないようだ。







「・・・もしかしてまだ残っている2人も・・・
同じ事を体験したって言うんですか・・・・」


「山崎、敵に情を持つと死ぬぞ。」


「けどあまりにも可哀想すぎるでしょ!!」


「山崎君、救ってやるのも俺達なんだ。
だから、戦う時が来たら本気でやるんだ。
そうしないとあいつらの魂は・・・浄化されない。





口を閉ざし 山崎君は頷いた。









俺は鳥型天人の大使館を出て、次の戌亥大使館に
向かう事にした。





あそこにいるのは恐らくクライング・ウルフだ。







彼女達の悲劇を起した原因が兵士にあるのなら
それを償うのも、兵士だ。



早くこの戦争を終わらせないと・・・


また彼女達のようなビーストが生まれてしまう。





それだけは 何としても阻止しなければ・・!








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後書き(退助様サイド)


退助「さあここに来て
2人目のBBの魂を浄化する事が出来ました。」


沖田「つーか俺がああ言うこと言っちゃ悪いんで?
俺ぁそこまでドSじゃねーぜぃ?」


退助「いや下手したらそっち行っちゃうからね
いっつも土方さん襲ってるからね。」


土方「そうだぞ総悟、これからは自重しろよ。」


沖田「うがー、ビーストになったー。
殺してやる土方―。」(棒読み)


土方「テンメ!調子のんな総悟ぉぉぉぉ!!
しかも棒読みだし!!」