ドレビンはオクトパスの過去を語りだした。





『彼女は北欧の出身だ。そこは「悪魔の村」
呼ばれた海辺の小さな集落だった。』


「悪魔の村?」


『何てことはない、蛸だよ。彼女の故郷には
ヨーロッパには珍しく蛸を食う習慣があったんだ。』


「蛸が悪魔アルか?私達普通に食べてるアル。」


「神楽 ヨーロッパでは蛸は
悪魔の使いだと忌み嫌われていたんだ。」





よく分からないらしく首を捻る神楽に構わず
ドレビンは続ける。





『そうだぜボス、頭のおかしい連中が
その集落を忌み嫌っていた・・・・・・
彼女がまだ10代もはじめの頃、その事件は起きた。


このカルト集団がどこかから武器を手に入れて
彼女の村を襲撃した。
ささやかな村は突如、戦場と化したんだ。







その言葉に、新八君が眼を見開く。





「そんな・・・・!
ただ蛸を食べてるからって襲撃するなんて!


「新八君・・・カルト集団には過激な者が必ずいる。
平気で人を殺せるくらいに・・・・」


『そうさ・・・村人全員が捕えられ、一人一人
惨殺されていった。しかし、彼女には死よりも
残酷な運命が用意されていたんだ。』







死よりも残酷・・・・・どんな事が出てくるんだ







『連中は「悪魔の子」と呼び、その名に
ふさわしい行為を強要した・・・・・・
家族や親友を痛めつけ、殺せ、と。


しかもその最中、彼女は笑い続ける事を命じられた。
悪魔らしく、楽しそうに。』


「なんて下劣な・・・・・!
本当に同じ人間がやったというのか!」








顔をしかめる桂さんの言い分も最もだ。





同じ人間とは思えない程、残虐だ・・・・・







『逆らえば自分が殺される。彼女は恐怖に支配され
ひたすら命令に従った 笑い叫びながら
親しい人々の身体を切り刻んだ。


血を浴びるうち、その赤はやがて漆黒に変わっていった
彼女にはそれが蛸が撒き散らすに見えていたんだ。』





恐怖のあまり、幻覚が見えたのか・・・・・





『その体験は彼女の心に深く刻み込まれたんだろう。
以来、彼女は笑うことを止められなくなった
・・・だがそれは本来の笑いじゃない。


「それで、笑いっぱなしだったのか・・・・・」







話を聞く内 3人は黙り込んでしまった。





無理もない、同じ人間同士でこんな
醜い事をしていると知ったのだから・・・・







『だから、あれでよかったんだ・・・・
ボスと戦う内に彼女の精神は浄化された・・・・・


さて、長話もこれくらいにしておこう。
あんたを追っているビーストは他にもいる。
くれぐれも気を抜くなよ。』





幾分か軽くなったドレビンの言葉に





「分かっている。」





短く返し、俺は無線を切った。







俺達が央国星大使館を出た後またあの症状が
現れ、たまらず俺は膝を付く。





「グ・・・!!」


さん!?大丈夫ですか!?





これは今までで一番デカイ・・・・
しかも、治まる気配がない・・・・!





先程ナオミからもらった注射器を首に刺して打つ


すると、不思議なほどに発作が治まった・・・・
これでしばらくは大丈夫だろう。





そこにMk.Uからオタコンが語りかけてきた。





『ジャック、その人達をノーマッドの方まで
避難させてくれないか?』


ノーマッド?何処にあるんだ?」


『大江戸空港だよ、そこに着いたら
こちらが誘導するから。』


「ああ、新八君達を頼んだぞオタコ・・・・・・
あれ?メガネはどうした?」





今の今まで気付かなかったが・・・・・
何でメガネを外したんだ?





『ああ、・・・・半年前ナオミが来てただろ?
君が出会った昨晩に僕の部屋に泊ったんだ。』





・・・・・なんだかな・・・・・・





「・・・・で?」


『その、コンタクトにした方がいいって・・・・』


「お前まさかあの女とネチネチ乳k


神楽ちゃんんんん!!
女の子がそんなこと言ったらダメだって!!」





全く・・・・こんな時までそんな思考かよ
ダメな方で銀さんの影響受けてるなーもう。


あ、そんな事より





「オタコン、さっきナオミが置いて行ったカルテがあるんだ・・・
これをパラメディックに見せてもらえないか?」





言いつつ部屋から持ってきていたカルテを見せる。





『分かったよ、Mk.Uでスキャナして
すぐパラメディックに送るよ。』


「頼む。」





頷き返し Mk.Uは消えた


また、ステルスを使ったみたいだな。











ACT−7 どこのグループにもいる憎めない奴は結構しぶとい











「と言うわけでみんな、大江戸空港に向かってくれ。
そこに仲間が保護してくれるから。」







顔を見合わせ 桂さんが深く頷く







「分かった、。ウィルスがどうとかは
よくわからぬが・・・・死ぬような事はするな。


「分かってるよ、桂さん・・・・二人を頼んだ。





新八君と神楽を任せて彼らと別れ、俺は一人
先を急ぐ事にした。









さっきの話を聞いた通りならば、BBは
オクトパスと同じ目に合いあのような姿に・・・・





血塗られた過去に狂わされた悲しき美女達





せめてその最後は安らかにしてやらないと・・・・







と決意を新たにしたその時、無線が鳴り出した。







『ジャック、聞こえる?』


「メリルか!?」


『ごめんなさい、合流場所を変更したいの。』


変更?まさか大佐の言っていた協力者って・・・」


『ええ・・・・急にPMCの兵士が
大使館を包囲してたから・・・・』





なるほど・・・今までそのせいで
協力したくてもできなかったのか・・・・





「で、今何処に?俺がそっちに行くから。」


『すぐ近くにいるわ、大江戸ホテルよ。』


「分かった、すぐ行く。」





無線を切り、すぐに大江戸ホテルに向かった。









道中でPMCと幕府の戦闘に遭遇し
戦火をやり過ごしながら状況を見ていたが・・・





システムを有したPMCが相手では勝ち目がなく


・・・・あっという間に幕府側は全滅した。







『この地区は正規軍が制圧しました。契約PMCは
オクトパス社・・・オクトパス、武装蛸は
あらゆる武装を取りそろえております。


あなたに蛸の腕を貸しましょう。』





くそ・・・・・・・
今にそんな事が言えなくしてやる・・・・!





歯噛みしながら大江戸ホテルへと辿り着くと


中へと入り、メリル達を探す。







5階位上がった先の部屋に
ラットパトロール3人の面子が揃っていた。





「ジャック、遅かったわね。」


「悪いな、PMCと幕府の戦闘を掻い潜るのに
手間取った・・・・あれ?





部屋の奥にいた人影に眼を凝らすと
そこにいたのはさっちゃんと全蔵だった。


全蔵は相変わらずジャンプを読んでいるようだ。





「さっちゃん!?全蔵!?
何でお前らがメリル達といるんだ?」



「ちょっと天狗みたいなやつらにやられてね・・・
でも大丈夫、もう傷は癒えたから。」





天狗・・・さっきの強化兵と遭遇したのか・・・・







ようライバル兵士、元気そうだな。」





ジャンプを閉じると 言いながら全蔵が顔を上げる。





「失礼な、簡単にくたばるかよ・・・所ででメリル
協力といっても何か情報が掴んでるのか?」


「あるわ・・・今回の首謀者
『ソリッド・スネーク』の潜伏場所が。」


教えてくれ!すぐにでもそいつを倒してこの戦争を」


「落ち着いて、あなただけ飛び出しても勝てる相手じゃ」


「関係ない!!この戦争を止められるなら俺一人でも」





激昂するこちらとは対照的に







「ったく無駄に熱い奴だねぇ・・・修造かテメェは。」





嫌味混じりな全蔵の呟きが、響き渡る。







「・・・・・・何だと?」


「端で聞いてりゃ、戦争止めるとか首謀者倒すとか
まるでジャンプ漫画の主人公だよな・・・」


「おい、どういう意味だ?


テメェの安い正義感であっさりコトが片付くほど
世の中、そんなに甘かねーんだよ

ヒーローゴッコがやりたきゃよそへ」





我慢が出来ず その先を言わせる前に


全蔵に体を向けたまま、すぐ側の柱をパンチした








頭に血が上り痛みは感じなかったが
拳からは、じわりと血がにじみ出ていた。





「ふざけるな・・・!俺はそんな幼稚な考えで
この戦争を止める気はない!!」



「何だよ、図星指されて悔しいってか?」


「ちょっと全蔵!」


ジャックも落ち着いて!!こんな事になって
イライラするのは分かるけど・・・・!」


「チッ・・・・」





二人に諌められ、俺達は機嫌悪く顔を逸らす。







少し気を張りすぎたか・・・・・





悔しいが全蔵の言う通り、ただいきり立って
行動しても戦争は止められない・・・・









そこで何かの機械に眼をやり、エドがメリルに報告してきた。





「隊長、何者かが近づいてきている。
一人だけだ。」


「もしかしたら・・・・
もう一人の協力者かもしれないわね。」





もう一人?まだ増えるのか・・・・・?





アキバ、念のためホールドして。」


「わ、分かりました・・・・」





命令に、ジョニーが腹を抱え扉の後ろにつく。


・・・ってまだ下痢治ってなかったのかよ・・・







俺達も念の為 隠れて様子を見る事になった。







程なく扉の開く音が聞こえ、ジョニーが
入ってきた者を後ろから捕えた。





「銃を捨てろ!!」







入ってきた者がゆっくり構えていた拳銃を置く。







「い、行け!」





ジョニーが相手に対し 前に移動するよう
ライフルで促した。


おぉ、意外にやるもんだな・・・・・・







入ってきた者は数歩進んで ゆっくりと
後ろを向いてきた。







「う、動くなよ!!」


「・・・セイフティが掛ってるぞ?ルーキー?





ん?この声何処かで聞いたような・・・・・





いや気のせいか、だってあの男はもう
この世にいないんだから・・・







「ルーキーだと!?
俺はこの道10年のベテランだ!!






そう言いながらもセイフティを覗くジョニー・・・


あーあ、これじゃルーキーって呼ばれても
言い訳出来ないな・・・・







それを好機と見たのか、一瞬の隙を突いて
ジョニーの顔を軽く殴り


流れるようにライフルを持ってその身体を
一回転させて 床にたたき伏せる





そして奪ったライフルをジョニーに向けた。







あ・・・あれはCQC!?





俺以外にCQCを使える者がいたっていうのか・・・







「ぐわぁ!?」


「これでよく10年も生き残れたな?」





ホントだよおい・・・・・







しびれを切らした俺達は 奴にライフルを向けた。





「そこまでよ!!」





そいつもライフルを向けて警戒している。







覆面を被って見慣れた戦闘服を着ているな・・・・







「ビッグ・ボスかぶれのCQC使い?」





問いに、そいつは黙ったままだった。





「ゆっくり銃を下ろしなさい・・・・
変な気は起こさない方がいいわよ?」


「おい・・・・もしかしてそれ・・・
SEALSの戦闘服か?」


「え?SEALSってあの海軍の?」


「そうだ、随分手荒い歓迎だな。」





やはり こいつが二人目の協力者か・・・・・







覆面を外したそいつに、メリルが訊ねる。





「あなた・・・名前は?」


イコロィ・プリスキンだ。
キャンベル大佐の要請でここに来た。」


「大佐から?」


「ああ、ビッグ・ボスを助けてくれってな。」


「プリスキンって言ったな・・・
誰かに似ていると思うんだが・・・・」


「気のせいだろ?メリル、状況を。」


「分かったわ。」







そして 俺達は状況説明を聞いた。









メリル達の方で分かっている状況は次の三つ





竜宮城でも出会った強化兵は通称、天狗カエル


パワードスーツを装備しているソリッド・スネークの
私兵部隊「ヘイヴン・トルーパー」だという事。







そのソリッド・スネークは
世界制圧を目論み 江戸に来た事







最後に、それにナオミが協力していた事・・・・・・







やはりナオミは・・・・だが敵なら
あそこまで俺に情報を教えはしないだろう・・・・







何を企んでいるのかは見えないままだったが


入れ替わりに 俺はここまであった事を話した。







BB部隊の一人、ラフィング・オクトパスを倒した事







そして・・・俺に埋め込まれたウィルス
FOXDIEの事も・・・・・









流石にこれには奥にいたさっちゃんも
全蔵ですら 少し驚いていたようだった。







「そんな・・・あなたの命は数年しか・・・・・」


「ああ、それに3カ月後には歩く殺人兵器に変わる。
どの道俺の命はあとわずかだ・・・」


「まさか・・・・死ぬつもり!?





そうするしかない・・・・





このまま生きてても、みんなを死なせてしまう事に
なってしまう・・・・それだけはゴメンだ







桂さん・・・・すまない 約束は守れそうにない。







「若造、それでいいのか?」





打ち沈む俺に声をかけてきたのは―





「プリスキン・・・・」


「お前はそれでいいのだろうが・・・
周りの連中はどう思う?







・・・・・・・何となく予想がつく


きっと、ふざけるなみたいな事を言われて
メチャメチャ怒られるんだろうな・・・・







「・・・・続けるわ、ソリッドは大規模な蹶起を
目論んでることは話したわね。


システムを乗っ取り、それを利用した最強の軍隊の
創造と最強の兵士による世界制圧、


それをこう呼んでるらしいわ。
『ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』と。」





「ガンズ・オブ・ザ・パトリオット・・・・」





愛国者達の銃・・・・・





サンズ・オブ・ザ・パトリオット
対抗しての名前なのか・・・・・









「隊長!」





再び機械に目を通し、エドがメリルのそばに寄った。





「20人はいる、奴らはここいらの
PMCの兵士じゃない。天狗とカエル達だ!


「ソリッドの私兵部隊ね。」


「天狗とカエル・・・
さっき言っていたヘイヴン・トルーパーの事か。」


「若造、今のうちに銃を出しておくんだな。」


「言われずとも。」







俺達が武器の準備をしている最中、ジョニーは
ひたすらうろたえていた。







「最悪だ・・・マジヤバイ・・・・」


「全蔵、さっきの奴らが。」


「分かってるさ・・・・おい兄ちゃん!
仕方ねぇから 今だけ協力してやる。
クナイが後ろから来ないように気をつけるんだな。」


「そっちこそ、流れ弾には十分注意しな。」


「ヘッ、いってろ。」







忍者組2人も立ち上がり、武器を出した。







「つけられたの?」


「まさか・・・そんなヘマはしない。」


「若造と同じく。」


「あの忍者二人組でもなければ・・・・・・」







メリルが目線を向けたのはジョニー・・・・・・
まさか・・・・







「アキバ・・・!」


「あ・・・・いやいや・・・・・
スコープレンズの反射光が見つかったのかも・・・
ね?こいつがほら・・・・・・」





必死で言い募るその姿は、見苦しい以外の何者でもない





・・・・・・・・・・やっぱし・・・・・・・・・


気付けば室内にいる全員が
ジョニーをじっと睨みつけている。







「ちょ、待・・・・・僕の・・・ミス?」





どう考えても それしかないだろ・・・・・・・・







とうとう空気に耐え切れなくなったのか
ジョニーは頭を抱えて悶えだす。





「ああ・・・・ジョニーのミスじゃない!
ジョニーのミスじゃない!!
ジョニーのミスじゃない!!!





いやいやいや、うろたえすぎだろ・・・・・・


さっきまで頭に血が上った俺が言うのもなんだけど







テンパり続けるジョニーの頬に
メリルの平手が飛んだ。





馬鹿!移動するわよ!」


「メリル!ソリッド・スネークの居場所は!」


「ターミナル前にいるらしいわ。
生き延びたら詳しく教えてあげる。」





俺とメリルは互いの愛用銃のマガジンの
残弾数を確認し、再度入れた。







「ほう、M1191か、中々いい銃だ。」





そう言うプリスキンが取り出したのは
オペレーターとM4A1だ。







メリル達ラットパトロールは
それぞれにカスタムされたXM8


建物内の戦闘に向いているし、彼らの
ナノマシンの連携によって十二分に発揮される・・・





けど 肝心のジョニーはまだ悶えている・・・・・


こんなんで大丈夫なのか・・・・・?









確認をしながら、俺達はメリルと部屋の外に出た。





アイコンタクト!相手はソリッドの私兵部隊よ。
躊躇なしで撃って 階段を使って一階裏口から脱出する。


ルートは状況で変更するわ、私がポイントマンになる。
・・・いい?」


「「了解!」」





エドとジョナサンは親指を立てて声を揃える。


ジョニーは・・・・まだ緊張しているのか
下を向いて 落ち着きがない。





アキバ!!深呼吸しなさい、いいわね?」


「りょ、了解。」


「英雄が一緒よ、腕前に見惚れないでね。」


「おいおい・・・・・・・」





そのままメリルの視線が忍者二人組とプリスキンに移る。





「あなた達もいいわね?はぐれないでよね?」


ハッ!笑わせてくれるぜ
こんなの年末のジャンプ探しより簡単だ。」


「私を命令していいのは銀さん・・・・
だけだけど状況が状況だからいいわよ。」


「俺は問題ない。危険を冒す者が勝利する。







各々の状態と周囲を確認した後





「ムーヴ!(行け!)」





メリル達ラットパトロールが言葉と共に
前に出て 天狗とカエル達に攻撃を加えた。





同時に忍者組も突貫して懐に入り、刀で斬ったり
納豆で身動きを・・・・って何で納豆?







プリスキンもオペレーターで敵を倒してゆき


俺も遅れを取らないよう銃を構えた。







やっと・・・・
やっとソリッド・スネークの情報が手に入った!


後は見つけてこの手で倒すだけ・・・・・





絶対 殺戮兵器になる前に決着をつけてやる!!








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後書き(退助様サイド)


退助「オクトパスの過去も明らかになり
メリル達と合流しました。」


桂「ガンズ・オブ・ザ・パトリオット・・・・
中々大変なことになっているな。」


新八「ていうかどんだけジョニーさん
テンパってるんですか・・・・」


ジョニー「し、仕方ないだろ・・・
腹も痛いし私兵部隊は来るし・・・・」


メリル「あなた・・・ホントに統率されてないわよね?」


ジョニー「え!?あ、いや・・・これは・・・・」


神楽「何隠してるアルか?」


退助「そこまで、彼も彼なりに
頑張ってるんだから察してあげて。」


メリル「・・・・そうね、トラップに関しては
私達より優れてるから。」