ドレビンと別れた後、程なく央国星大使館に着く
中に入り周囲の探索をするも
不思議な事にPMCの兵士がいない。
利用価値をなくしたか、それとも何かの罠なのか
医療室の近くで声が聞こえ 慎重に部屋に入り中を確かめる。
・・・中にいたのは新八君と神楽、そして桂さんだ。
「!?貴様生きていたか!」
「さん!今まで何処に!!」
「すまないみんな・・・俺は俺で独自に行動していたんだ
それよりもみんな何でここに?」
「あのご婦人に怪我をしていた所を治してもらったのだ。」
桂さんが示したのは、隣の部屋から出てきた・・・
「ナオミ!?何でここに!!」
「あなたを待っていたの、隣の部屋に来て。」
「あ、ああ・・・・」
「きっと昔の女だったアルね?未練が残ってたのかヨ」
「何でオメェはそっちの方向にしか
いかねーんだよぉぉ!!!」
新八君のツッコミと殴られる音を背に聞きつつ
隣の部屋に入り ナオミがこちらを向き直る。
「ジャック、服を脱いで。」
「え?」
「さっきの子が言ってたみたいな事はしないから・・・・さ、早く。」
「いや、誰もそんな事考えてないって・・・・・」
ナオミの言う通り服を脱ぎ、俺はあらゆる検査をした。
血液検査からMRI 触診を施してもらう。
だが俺はいたって健康だ、こんな事をする必要があるのか?
全ての検査が終わり、オクトカムを着直した後
ナオミは重い口を開いた。
「ジャック・・・・シャドーモセスの時に
ビタミン注射をしたのを覚えてる?」
「ああ、あの時か。」
「実は、あの時投与したのは
ビタミンじゃなくて・・・・・ウィルスなの。」
「ウィルス!?」
「ええ、ウィルスの名はFOXDIE(フォックスダイ)。」
「FOXDIE・・・!FOXDIEとは一体!?」
「FOXDIEはウィルス内の鍵に設定された
遺伝子配列と感染者の遺伝子が完全に適合した場合のみ
その感染者を殺害する。
つまり、特定の遺伝子を持つ標的だけが
発症するようになっているの。」
「という事はこれもナノマシンの一種だと?」
「ええ、同時にこの仕組みはターゲット以外の生物を
凶暴なウィルスから守っていた。」
ターゲットにはウィルス、それ以外は
無害の細菌の役割をしていたのか・・・・・
「最近発作に似た症状を出さなかった?」
「ああ、一度だけだ。
急に胸が苦しくなって・・・・すぐに収まった。」
「これは同時にあなたの身体を蝕んでいくわ。
最終的にあなたはFOXDIEによって殺される。」
「何だって!?」
「ごめんなさい・・・・・
私が助かろうとしたばかりに・・・・・」
そうか・・・口調から推測するに
リキッドに脅されて、そうしたんだろうな・・・・
だが何故ナオミは俺にこんなウィルスを仕込んだんだ?
疑問が頭を渦巻く中 彼女は言葉を続ける
「ジャック、長い年月であなたの体内の
FOXDIEはこの鍵が壊れてきているの。」
「鍵が壊れる?壊れるとどうなる?」
「そうよ、長い間体内に潜伏し続けた事によって
FOXDIEが変異し始めている。これを見て。」
そう言って示されたディスプレイに
細菌のようなものが2つ 映し出された。
ACT−5 余命宣告は半年か三ヶ月の2パターンがベタ
「これは?」
「左が正常な本来の姿をしたFOXDIE、右が
あなたの体内から採取した変異型のFOXDIEよ。
鍵が磨耗しだしている・・・」
たしかにちょっと中の核が収縮してきているが・・・・
「つまりは?」
「変異型のFOXDIEは感染者の遺伝子配列が
鍵と完全一致しなくても発症する可能性があるの。」
「何だって!?という事は相手を選ばず
感染者を無差別に殺すと・・・・!」
深刻な表情で、ナオミが頷く
「ええ、FOXDIEはシャドーモセス事件以来
あなたの体内のナノマシンコロニーで繁殖し
空気中に散布され続けている。
だけど対象者は既に存在しないから感染しても
発症する人はいなかったはず。」
「たしか特定の人物を殺すように作ったウィルスだろ?
その対象者は一体・・・・?」
「賢者達よ、リキッドはこれで賢者達を
滅ぼそうとしていたの。自分を欠陥品と罵り
命を奪おうとした賢者達を抹殺するために・・・・」
納得すると同時に先程の疑問が融解する
その"感染する役割"を、俺にしたという事か
「このまま磨耗が進めば不特定多数の感染者に
発症する殺人ウィルスになる。」
「止める方法は?取り除いたり殺す事は?」
ゆっくりと 彼女は首を横に振る
「抗体もない、鍵が何%壊れた時点でどれくらいの人間の
遺伝子配列と一致する事になるのかは分からない。
だけど空気感染によって人々は確実に
FOXDIEに冒されていく。」
そして、ナオミは衝撃的なことを話した。
「つまりは、あなたに近しい人から・・・・・
命を落としていく事になるわ。」
そんな・・・もし仮にこの戦争を止めれたとしても
今度は俺が 江戸を脅かす存在になるというのか・・・!
「人の個体を別つ部分が磨耗しだすまで恐らく・・・」
「どれだけだ?」
「持って後3ヶ月・・・・」
「3ヶ月!?」
「それにリキッドはFOXDIEにあなたも
発症するようにセットさせていたの。
その期間はおよそ後数年・・・・」
「俺の命は後数年・・・・・・!」
信じがたいが、どうやら事実らしい・・・しかし
リキッドは死んでもなお俺を殺そうとしているのか
・・・・・・ったく執念深い奴だ。
「皮肉なことだけど・・・・
今まで核戦争を食い止めてきたあなた自身が・・・
今度は最悪の兵器になりつつある。」
「被害者の規模は?」
「正確にはわからない・・・壊れた鍵穴を
開けてしまうのが人類の1%なのか、それとも全てか。」
そんな・・・・・・・・・
「いずれにしろ3ヶ月後にはあなたは 歩く殺戮兵器になる。」
「投与した本人が何を悠長に・・・・!」
「私なら、今すぐあなたを隔離する。」
「冗談じゃない!俺はこの戦争を止めるまで
隔離されるわけにはいかない!!」
けれどナオミは、あくまでも冷静だった。
「そうね・・・・・
全てを終わらせてから考えてもいいわ・・・・・」
しばらく沈黙していた俺は、ふと頭を過ぎった
ある可能性を問いかける。
「・・・・・それまでに俺が死を選べばどうなる?」
「ホストが死ねばウィルスも死滅する。」
やはりそうか FOXDIEはナノマシンの一種。
活動するための母体がなくなれば自然と死滅する。
「どうせ数年で消える命だ・・・・・
人類の為なら喜んで「さんやめてください!!」
「お前死ぬ気アルか!!」
盗み聞きしていたのか言葉を遮り、新八君達が
隣の部屋からやって来る。
「あなた達!勝手にベットから起きたら」
「本当なのかナオミ殿!
を救う手立ては本当にないのか!?」
「・・・ないわ・・・・・こんな事になるのなら
・・・リキッドに殺されてでも投与をするんじゃなかった」
「っお前ぇぇぇぇ!
になんてモンを打ち込んだネ!八つ裂きに」
「やめろみんな!!
ナオミだってあの時必死だったんだ・・・・・」
俺の一言に、三人が一旦口を閉ざす
「でもさんはそれでいいんですか!
この人が命乞いをしてあなたにとんでもないウィルスを
注射したんですよ!!
そんな事で・・・死んでしまってもいいんですか!!」
そこでナオミが唐突に声を上げる
「待って一つ確認させて。あなた、最近病院に行った?」
「話をそらすな貴様!!」
「待ってくれ桂さん、病院は行ってないが?」
「そう・・・・何処かで注射した覚えがある?」
「それが?」
機械を操作し、ナオミがディスプレイに新たな細菌を映し出す。
「実はもう一つ体内から新しいタイプのFOXDIEが検出されたの。
私も見たことがないFOXDIE。つい最近入れられたものよ。」
つい最近の注射といえば・・・・・・
まさかドレビン!!あの野郎・・・・・!
「この新型のFOXDIEは急激に増殖を始めている
そしてあなたの身体全体に広がり同化し始めているわ。」
「中身は!?」
「分からない、詳しくは調べてみないと・・・・・」
言葉を切り ナオミは棚から箱を取り出す
・・・注射器が入っているみたいだな。
「これを渡しておくわ、ナノマシン活動を
抑制する薬が入っているわ。発作がひどい時に打って。」
「信用していいんだな?」
「ええ・・・」
その言葉を信じ、俺は注射器の入った箱を
受け取ろうとして・・・
ナオミが手を少し上に上げた。
「先に言うけど劇薬よ、廃人になりたくなければ
過度な使用を控えて。」
「ああ、分かった。」
頷いて注射箱を受け取った直後
ナオミが、頭を抱えて苦しみだした。
「うう・・・・・」
「どうしたナオミ!?」
戸惑う中ナオミがサーバのUSBを引き抜き
直後、スタングレネードが投げ込まれた。
「な!?」
拾う間も無く爆発し 辺りが光に包まれる。
「な、何アルかこれ!!」
室内に、PMCの兵士が二人割り込んできた。
「まずい!!物陰に隠れろ!!」
兵士がこちらに向かってライフルを撃ってくる。
ナオミはPMCの兵士に腕を掴まれ
「危険です、こちらへ。」
その言葉と共に連れ去られてしまった。
PMCが彼女を護っている・・・・
まさかナオミは最初から俺をこいつらに
差し出すためにここへ!?
「あのアマァァァァ!やっぱり私達を
罠にはめようとしてたアルか!!」
「ナオミ!!」
俺は拳銃を構え、ナオミを追おうとしたが
入れ替わりに竜宮城で見たのと同じ兵士2人が
現れたのに気付き 咄嗟に部屋に戻る。
窓ごしに強化兵が建物を取り囲む様が見えた。
「まずい!敵だ!!」
刀を構え 桂さんと新八君が警戒していたその時
天井から笑い声を上げながらラフィング・オクトパスが現れる。
「な、何なんですかあれぇぇぇぇ!?」
「いつの間に天井に!?」
「ピチピチスーツで柱に触手巻いてて気持ち悪いアル!!」
「あれは・・・・オクトカムか・・・!」
どうやら最初から天井に張り付いて見張っていたらしい
『ジャック、可笑しいか?私の獲物・・・・・』
笑いながら 奴の顔が俺そっくりに変化する。
「な・・・の顔!?」
どうやらデコイ・オクトパス同様、顔も完璧に変装出来るみたいだ。
『アハハハハハハハハ!さあ!笑ってみろ!!
ここからは・・・・逃がさない!!』
上から強化兵が二人降りてきて、膝まづいたまま
P90を片手で持つ。
『笑い死ぬがいいぃぃぃぃぃぃ!!
アーッハハハハハハハハ!!!』
オクトパスは笑いながら黒い煙幕を撒き
それが晴れると・・・オクトパスも強化兵も消えていた。
潜みながら俺達を取り囲み、一網打尽にするつもりか
「さん!あいつらは何処に!?」
「落ち着くんだ新八君!
、さっきの兵士なのだが・・・・
どうやら侍には刀でしか攻撃してこないのだ。」
「どういうことなんだ?」
「分からん・・・中には天狗みたいな者も
いるのだろうし、頭は侍の心が分かるらしいな。
決して銃を向けてこないのだ。」
なるほど、ならチーム分けは簡単だ。
「それじゃあ桂さんと新八君は向こうを
俺と神楽はあちらで敵を排除する。
・・・みんな、死ぬなよ。」
「分かってるアル!!」
「行きましょう!!」
俺達は通路で、二手に分かれた。
ナオミ・・・・お前を捕まえて真実を明らかにしてやる!
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後書き(退助様サイド)
退助「さあついにBB部隊とのバトルが勃発です!」
神楽「あんなに笑って顎外れないアルか?」
新八「いや、ギャグパートじゃなくなってるから
それはナイよ神楽ちゃん・・・・」
桂「しかし・・・ナオミ殿は本当にを奴らに
引き渡そうとしたのか?そうは見えなんだが」
退助「やっぱりそこんとこの観察力 優れてるねあんた・・・・」
新八「それにしてもさんがあんなウィルスを
埋め込まれてたなんて・・・」
オタコン「彼女も人間だ、自分が
殺されそうになったら嫌でも従うしかなかったんだ。」
新八「って何でオタコンさんが弁解するんです?」
オタコン「あ、いや・・・・これは・・・」
退助「ナオミとアレだからね・・・・
そこは後々明らかになるんでここまで。」