PMCの活動が沈静化してからも・・・
俺はどこか不安感を覚えていた。
賢者達が一斉に殺害されたが、その経緯が
あまりにも短絡的すぎる。
あの時は安堵してたが・・・・・・
どことなく、悪い予感がしてならない。
そう思って寝付いた翌朝・・・
目を覚ますと、サニーはTVでトッシーが
好きだったキャラが出ているアニメを見ていた。
トッシーと言えば確かこの前
お通ちゃん公式ファンクラブを賭けて争ってたな
・・・・まあどうでもいい戦いだったけど。
ぼんやりと画面を見つめ アニメも結構いい展開まで
来た次の瞬間、急に映像が切り替わった。
「ああ!いい所だったのに・・・」
『番組の途中ですが緊急ニュースが入ってきました!
江戸の数キロ先に大量の船舶が接近中との事です!
現場に結野アナが向かっております!結野アナ!』
スタジオから、現場にいる結野アナへと替わる。
『はい!現場の結野です!
皆様ご覧になられますでしょうか!
・・・10隻以上はいますでしょうか!
謎の船舶の群れが、徐々に近づいてきています!!』
わずかに見えた船を見て 俺の頭が覚醒する。
あれは・・・強襲揚陸艦ボクサー級のプリンストン!?
なんでPMC主要艦が・・・・まさか!!
「!サニー!すぐにここから離れるぞ!!」
「ど、どうしたの。そんなに慌てて・・・」
「ジャック・・何かあったの?」
「敵が来るんだ!ここはすぐに戦場になる!すぐに」
声を遮り、外からクラクションがけたたましく鳴る
まさかもう来たのか!?
「ボス!!そこにいるんだろ!早く乗れ!!」
聞こえてきたのは・・・ドレビンの声!?
俺達はすぐに外の戸を開けた。
「ドレビン!なんで江戸に来てるんだ!?」
「今は奴らからその嬢ちゃん達を護る事が
最優先だ!早く乗れ!」
「ドレビン!サニーとだけでも
安全な所へ避難させてくれ!!」
言いながら、戸惑う二人を装甲車へと移動させる
「そんな!はどうするの!?」
「俺が囮になる!だからその間に!」
「・・・わかった、だが死ぬなよ!
俺も顧客が減るのはごめんだからな!」
ドレビンが二人を乗せた装甲車を走らせた後
Mk.Uがこちらに近づいてくる。
『ジャック、PMCと戦う気だね。』
「当たり前だ!
こんな所まで火種を持ち込みやがって・・・・!」
『PMCは無人兵器である『月光』を使ってくるはずだ
前に送っておいた装備を使ってくれ。』
「たしかオクトカムのことだったな。
タコの擬態のように周囲の環境に溶け込む事が
できるということだが・・・」
『それにPMCはSOPシステムを駆使してくる。
少しでも対抗するためにこれを。』
Mk.Uから取り出されたのは 眼帯のようなものだった。
『それは『ソリッドアイ』だ。感覚レーダーと双眼鏡
強化型暗視装置の3つのモードが搭載されている。
それで一定範囲の兵士のナノマシン情報を
立体的に表示してくれる。
それを使えば何とか対抗できるとは思うんだけど・・・』
説明を聞きながら、俺はソリッドアイを手に取って
「感覚レーダーは周囲の音にも反応するんだな・・・・
これがあるだけでも役に立つさ。」
早速 左眼に付け、いじりつつ機能の確認をした。
『この先、僕も後ろについていくよ。
ステルスをオンにするからMk.Uが見つかる危険性はない。
・・・ジャック、気をつけて。』
「ああ、わかっている。」
俺は持てるだけの武器を持ち 外に出た。
・・・もうすぐPMCが上陸してくる
銀さん達は、大丈夫なのだろうか・・・・
いや あの人はPMCの兵士にやられるような人じゃない。
真撰組のみんなも・・・桂さん達も・・・・
きっと無事に再会できる。
そう自分を納得させ 俺は家を後にした。
ACT−4 今時は男子だけでなく女子も肉食
それから、何日が経過しただろうか・・・・・
江戸の家屋の大半が破壊され、住民のほとんどは
大慌てで江戸から身を引いた。
PMCは央国星、鳥型天人、戌亥大使館を占拠し
事実上江戸の街を掌握した。
ターミナルも水際で止めているが
いつ制圧されてもおかしくない状況にあった。
とサニーはあの後、アメリカに保護されていた。
ドレビンが手を回してくれたおかげだ。
街のどこを行っても人はおらず、PMCと幕府が
果てしない戦いを繰り広げている。
戦争の火種が・・・ついに江戸にも押し寄せてきた。
銀さん達は桂さんの支援があって無事らしい。
真撰組は鳥型天人大使館だけでも取り返そうと
策を練っているようだ。
ドレビンは、しばらく江戸に店を置くと言っていた。
CIAから 今回の首謀者である
『ソリッド・スネーク』の抹殺命令が下った。
スネークの名前を使って戦争を拡大させているとは・・・
前ビッグ・ボスであるネイキッド・スネークが浮かばれない。
俺はPMCと幕府の戦闘を幾度もかいくぐり生き残っていた。
しかしPMCはSOPシステムのおかげで撃たれても
怯まず、仲間がやられても気にも留めない。
所か 殺人を犯しても快楽に似た表情を見せている。
おそらく体内のナノマシンがそうさせているのだろう。
こんな事で戦争をしたら・・・人は戦争依存してしまう。
ドレビンの言っていた全人類が戦争に加担するとは
この事か
・・・快楽を求める結果が代理戦争ということか。
相変わらず繰り広げられる乱戦をすり抜け
俺は 央国星の大使館に向かっていた。
大佐の話だと、そこに協力者がいるらしいが
・・・こんな状況で俺と協力してくれるというのは
誰の事なんだ?
いや、今は考えてる暇はない。
この戦争を止められる手がかりがあるのなら
藁だろうと何だろうととことん縋ってやる。
大使館へ向かう途中、少し先の路地で
幕府の戦車隊が走っているのが見えた。
どうやら向こうも央国星大使館を取り戻そうと
部隊を送り込んだらしい。
俺は、少し離れた物陰に隠れ通り過ぎるのを待つ。
急に戦車の一台が動かなくなった。
キャタピラは動いているからマシントラブルではなさそうだが・・・
『悲しい・・・・・悲しいぞ・・・・』
不気味な声が響き、戦車の後ろについていた
警察隊員達が前方を確認すると・・・
異型の犬のような機械が 戦車をせきとめていた。
『泣いていいんだ!泣け!!』
「な、何だこいつは!?」
「攻撃しろ!戦車隊の進路を開けろ!!」
隊員達が手元にあったライフルを犬のような機械に
撃ち込んで行くが、効き目がない。
「まさかあいつら・・・・報告にあった化け物か!?」
「やばい!いったん退け」
『ガアアァァァァァァァ!!!』
唐突に聞こえた叫び声に反応し、反射的に逃げる隊員達を
何かが跳ね飛ばし 上空を旋回し続ける。
空を仰げば・・・そこにいたのは
人間に翼が生えたような奴だった。
『怒れぇぇぇぇぇぇ!!』
「な・・・空を飛んでる・・・!?」
『アハハハハハハハハ!!』
高らかな笑い声と共に
たじろいだ隊員の後ろに何かが現れる。
・・・見た所、女性のようだが
特殊なスーツと兵器を身につけている。
「おい!後ろ!!」
「え!?なんだこいつ」
『笑え!!笑ってみろぉぉ!!』
息つく間もなく、女性は装備している
機械の触手2本を隊員へ巻きつけ
雑巾のように血が吹き出るまで締め上げた。
・・・まさかさっきの2体も女性で
似たような装備を身につけているのだろうか。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」
「くそ!撃て撃て!!」
隊員達が女性へと攻撃を仕掛けている間、
後ろに倒れていたPMC兵士が突然起き上がり
持っていたライフルを乱射した。
「ぐわぁぁぁぁ!!」
あの兵士は死んでいたはずだ
なんで突然操り人形みたいに・・・・と思った最中
何かの気配が感じ、ビルの上を見ると
「あれは!?」
女性の頭の上に6本の腕のようなものがあり
操り人形を2体持った奴が宙に浮かんでいた。
・・・何かに似ているような気がした。
装備はしてなかったが、シャドーモセスで戦った
『サイコ・マンティス』に何処となく似ている・・・
『ウオオオオォォォォォォォ!!!』
犬のような機械が不気味な雄たけびを上げ
戦車を横転させ
『アハハハハハハハ!!!』
女は笑いながら触手で隊員達を弾き飛ばし、腹を貫く
『ガアァァァァァァァ!!』
逃げようとする残りの戦車が後退していた時
飛行している女性がミサイルを放ち、戦車を撃墜し
「うわぁぁぁぁ!!」
『ウワアァァァァァァァァ!』
犬のような兵器が泣き声を上げながら逃げ惑う隊員達を
跳ね飛ばし、横転した戦車に体当たりして破壊する。
上にいたマンティスのような女性が
機械の手で合図をすると
鳥のような女性が上空からこの場を離脱
犬のような兵器は雄たけびを一度上げ
啜り泣きをしながら走って行く
もう一度マンティスに似た女性が合図すると
笑い声を上げる女性が触手を使い何処かに去って行き
最後にマンティスのような女性が
ゆっくりとビルの陰に消え・・・・・
僅かな時間でその場は血の海となり、戦車隊は全滅した。
なんて恐ろしい奴らだ・・・・
まさかあれが噂に聞いた『ビースト』だというのか?
轟いていた奴らの声は、男と女が同時に
喋っているように聞こえた。
・・・とにかく出来る事ならこいつらとは戦いたくないな。
胸の内で呟き、急ごうと駆け出したその時
デパートによく流れるチャイムが鳴りだした。
『この地区は、正規軍が制圧しました。
契約PMCはマンティス社、マンティス社は確実で完璧です
次回の戦闘にはマンティス社をご検討ください。』
この場にそぐわない楽しげな声は
・・・これ以上ないくらい、怒りを煽った
「ふざけやがって・・・・・・
戦場はデパートじゃないんだぞ!!
戦争で商売するのもいい加減にしやがれ!!!」
堪えられず俺は 空に向かって叫ぶ。
だが叫んでも、奴らが止まるわけじゃない。
わだかまる思いをどうにか抑え、一刻も早く
央国星大使館へ向かうことに・・・
する前に、ボロボロの装甲車を背にして
俺はんまい棒を手にする。
少し腹が減ったからな・・・・少しだけ
包装を開けてかじろうとしたその時
突然んまい棒が消えた。
と、同時に上から猿の声が聞こえてくる。
俺は反射的に拳銃を向け・・・驚いた
「な!?ドレビンの猿!?」
「おーい、こっちだ。」
白いハンカチをちらつかせて、すぐ横から
姿を見せたのはドレビンだった。
しかも背にしてたボロボロだった装甲車は
いきなり新品のように変わる。
うぉ!?まさかこれオクトカムか?
変化の仕方が 何処となく似ている・・・・
「まあ乗れよ、外は物騒だ。」
誘われ、俺はとりあえず装甲車の中に入った
「また会ったな。」
「・・・取引ならMk.Uを使っている
なんでワザワザ俺に接触した?」
「あんたに興味が沸いてな、ちょっと調べさせてもらった。
まあ座れよ ここ数日走りっぱなしで疲れてるだろ?」
言われてみれば、確かにここ数日は
腰を落ち着けるヒマなどなかったな・・・
ここはお言葉に甘えて椅子に座った。
「CIAにもコネがあってね、数々の武勇伝を
聞かせてもらったぜ。」
CIAにもコネが効くって・・・ホントに
何者なんだ、ドレビンは
「所で どうやって俺の居場所が分かった?」
「半年前、あんたにナノマシンを注入しただろ?
あれであんたの居場所を追跡している。」
「・・・随分勝手なことをしてくれるな。」
「そう怒るなよ、あんたさっきBBと遭遇したな?」
「BB?」
こくりと頷き ドレビンは先を続ける
「ビューティ&ビースト部隊だ。
彼女達はPMC帰属の強化兵士だ。
厄介事があると強化兵を従えて現地に駆け付ける。」
「強化兵?そのBBに似たような兵士が?」
「いや、あんたも見たはずだぜ?竜宮城でな。」
「な!?何でそんなことまで」
「言っただろ?
ナノマシンの信号で、あんたを追跡してるって。」
それにしては場所の特定まで出来るなんて・・・・・
だがあの時 遭遇したのはその強化兵だったって事か。
それに今、ドレビンは彼女達と言った。
・・・やっぱりあいつらは女性だったようだ。
「たぶん各PMCに雇われたフリーランスだろう。
母体組織は別にある。
そうだ、あんたにこれを言っておいた方がフェアだろう。」
「フェア?」
「そうだ、BB部隊にはある抹殺命令が下ってる。
この要注意人物は最優先で排除せよ。
ジョン・ドゥ・・・
いや、ビッグ・ボスと呼んだ方がいいかな?」
と言うことはあの時、俺を見つけたら真っ先に
殺しにかかってたのか・・・危ない危ない。
「噂では醜い強化服の中身は絶世の美女らしい。
連中はそれぞれ重度のトラウマを抱えてるって話だ。」
トラウマ・・・・・・か。
「彼女達は元々戦士だったわけじゃない。
むしろ戦争の被害者だ。」
「被害者がなんで戦争に加担するような真似を?」
思わず口を挟んだ俺へ、ドレビンが重々しく頷く
「戦場でのショック、PTSD、極限状態での精神崩壊
・・・彼女達は戦場で適応するために戦闘マシンに
ならざるを得なかった。
人の部分が内側に抑え込まれ、獣の部分が
外側へ表出化したのさ。」
・・・・・・前に聞いたことがある。
戦争は、人を変えると。
それならば彼女達はあそこまでなるほど
変わってしまったという事か。
「しかしその殻の奥底にまだ人間の部分
傷ついた脆い心が残っているらしい。」
「それじゃあ彼女達の殻を破れば助ける事が」
こちらの台詞はいともあっさりと否定される
「そんな簡単にはいかない、守る殻が無くなれば
彼女達は生卵の黄身と同じだ。
聞いた話では、無垢な生身の身体では
数分しか生きられないらしい。」
そんな・・・・・・・・
俺はそんな犠牲者と戦わなきゃいけないのか・・・・
愕然とする中、容赦のない説明が語られる
「そして彼女達はこう思い込まされてる。
『ジャックを殺す事で 私の精神は浄化される』
苦痛や怒り、悲しみから解放されるとな。
だから今頃あんたに夢中のはずだ。」
女運が悪いのは直ったはずなんだが・・・・
こんな形で、また悪くなるとはな
ため息をついた所で、ドレビンは写真を
4枚取り出し 手渡してくれた。
「確認されているBBは4人。
飛行型のレイジング・レイブン、擬態能力を持つ
ラフィング・オクトパス、四足歩行のクライング・ウルフ
そしてマインドコントロールを得意とする
スクリーミング・マンティス。」
「マンティス・・・・」
やはり、あの時感じた直感は正しかった
「たしかシャドーモセスでもそんな奴がいたってな
人間の精神を操るロシア出身の超能力者だ・・・
彼女は後継者らしい。
残りのBB3人も彼女によって
強制的にマインドセットされている。」
「オクトパスにレイブン・・・ウルフにマンティス・・・」
全員、シャドーモセスの
FOXHOUND部隊の名前を使っているのか
「ああそうだ。
あんたを追うJACKHOUND部隊、おぉコエェ!」
「茶化してる場合かよ・・・」
呆れ交じりでツッコミを入れるも
どうしても、彼女達の事が気になる。
「・・・ドレビン、ホントに助ける方法はないのか?」
「まあ・・・・あるにはあるが・・・」
「教えてくれ!俺も戦争の被害者だ!
・・・彼女達を救いたい!頼む!」
「わかった、じゃあこれを持っていけ。」
言いつつ渡されたのは色の付いた幾つかの銃弾。
「これはBB部隊のナノマシンをコントロールして
精神を浄化出来る銃弾だ。
黄色はオクトパス、赤はレイブン、青はウルフ
緑はマンティスに撃ち込め。
だがこの弾は一発しかないから
殻を脱いだ無防備な所を狙え。
・・・それで命は助からないが、せめて安らかに
眠らせてあげてくれ。」
銃弾を握り締め 俺は撃ち込む順番を頭に叩き込む
「ありがとう、そろそろ合流地点に行かないと
いけないからこれで。」
「ああ、必要ならいつでも呼んでくれ。」
装甲車を降りて ドレビンがハッチを閉める途中
「EYE HAVE YOU!」
ドレビンが、再びあの言葉を口にする。
そして完全にハッチが閉まり 装甲車は
俺の前から走り去っていった。
ホントに何者なんだ、ドレビンって・・・・
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後書き(退助様サイド)
退助「さあついに江戸に戦争の火種が」
銀時「ちょっと待てぇぇ!今回だけしか
出てねぇじゃねぇか、俺の出番は!?」
退助「しばらくありません。」
銀時「んだとぉぉぉぉ!!?」
新八「BBって言いましたっけ?
・・・今までで最強の哀れな敵じゃないですか?」
退助「言われてみればそうかもね・・・・
強制的に戦わされてる所なんか特に。」
桂「それにしてもマンティスと言ったか、操るなら
警察の連中でもよかろうて。
なぜわざわざ死んだ兵士を操ったのだ?」
退助「それ言っちゃうと後々の展開が
読めちゃうんでご勘弁を・・・・・」