俺達がアメリカから帰ってきてから半年が経ち
俺の予測とドレビンが言った通り
日本以外の全世界が・・・戦争が日常化してしまい
戦争経済が復活してしまった。
だがこれは、前に行われていた大戦とは
また違う方向へ歩み寄っていく。
戦争は・・・変わってしまった・・・・・
国家や思想のためではない
利益や民族のためでもない。
金で雇われた傭兵部隊と造られた無人兵器が
果てしない代理戦争を繰り返している。
命を消費する戦争は
合理的な痛みのないビジネスへと変貌した。
戦争は・・・変わってしまった・・・
ID登録された兵士達は、ID登録された武器を持ち
ID登録された兵器を使う。
体内のナノマシンがシステムによって
彼らの能力を助長し、管理する。
遺伝子の制御、情報の制御、感情の制御、戦場の制御。
全ては監視され、統制されている。
俺があの時聞いたことの大部分が改変されていた。
恐らくPMCが本格導入ギリギリに
システムを大幅に変えてしまったのだろう。
戦争は・・・変わってしまった・・・
時代は抑止から制御へと移行し
大量破壊兵器によるカタストロフは回避された。
そして、戦場の制御は歴史のコントロールをも可能にした。
ACT−3 エラぶる奴は一辺戦場に
ぶち込まれて苦難を味わって来い
戦争は・・・変わってしまった・・・・・
戦場が制御管理された時、戦争は普遍のものとなってしまった
かつてママとスネークが目指した世界は
一つの大企業のせいで 悪化の一途を辿っている。
全PMCの取締役の名前はジョージ・シアーズ。
しかも大手PMCの社長が全員賢者達である事が発覚した。
あいつらは是が非でも戦争を繰り返し、自分達が
裕福になるように行動していると思うと
何処にこの怒りをぶつければいいのか・・・・・
本当なら戦争を抑止され、無駄な殺戮や
破壊がなくなるはずが
賢者達が自分たちの利益のため、システムを
委託された事を好機と見て改変したのだろう。
こんなことのために賢者の遺産が世界中で
使われていると思うと
死んだママは どんな顔をしているのか・・・・
だがこればかりは俺が手を出せることは出来ない。
大手企業に俺のような一兵士が挑んでも勝ち目がない。
ここ最近、江戸の外で意味のない代理戦争が
繰り返されていることを思うと複雑な気持ちになる。
「おい、何ボ〜っとしてやがる。」
そう言って俺の頭を引っ叩いてきたのは銀さんだった。
「何だ・・・銀さんか・・・」
「何だじゃねーよ。お前この頃おかしいぞ?」
「何か悩み事があるなら私にでも
愚痴っていいんだよ?」
微笑んで、お登瀬さんが酒の入ったグラスを
俺の前にそっと置いた。
そういえば俺、銀さんに連れられて
『スナックお登瀬』で飲んでたんだったな・・・・
「いや・・・気持ちは嬉しいが、
これはあまり教える事が出来ない・・・・」
「どうしてだい?まさかと喧嘩でもしたのかい?」
「んなわけねぇだろ婆さん?
このバカップルが喧嘩なんて有り得ねぇぜ?」
「言ワレテ見レバソウデスネ。」
独り身の二人に言われるとなんか腹が立つ・・・
と普段ならツッコミの一つも入れるのだが
今は、そんな気分じゃない。
お登瀬さんはふとつけたTVに映る画面へ
自然と俺も目を向ける
何か、特集を番組で組んでるみたいだが・・・・
『・・・それで、江戸の外では民族の違いなどで
戦争が続けられているということですね?』
『はい、彼らは民族風習や風俗の違いから
互いを見下し、争いをして』
「あら、江戸の外じゃまだ戦争やってたのかい?」
「最近は外国のニュースもやってるからな、でも
こんな陰気臭いのやらねぇでスイーツ新情報でも」
「何が民族の違いだ!!奴らはただ上の連中が
裕福になるために踊らされてるだけだ!!!」
俺は思わず 机を叩いて怒鳴ってしまった。
「お、おいおい、何怒ってんの?
カルシウム不足?」
「糖分中毒ニ言ワレタラサンオ終イネ。」
「前科モンが偉そうに言うんじゃないよ!」
「ニュ?」
倒れ、零れた酒をふき取りながらお登勢さんが呟く
「ところで・・・アンタほど冷静な奴が
そんなに声を荒くするとはね。何かあったんなら
私達だけにも吐いちまえばどうだい?」
「分かった・・・話していい範囲で話そう。」
俺は 機密に触れない程度にこれまであった事を話した。
PMCが戦争に加担している事。
奴らはビジネスで戦争をしている事を
「何か、荒んだ世の中になっちまったもんだねぇ・・・」
「自分らの利益のために殺しあえってか
本当、腐ってやがんな。」
・・・・・・これも全て賢者達のせいだ。
常に歴史の裏に潜み、戦争を繰り返してきたのだからな。
「俺はどうしても黙って見たくはない!
けどどうしようも出来ない!ただの一兵士が大企業に
いくら言っても相手にもしない!俺はどうすれば・・・・」
「そればっかりは、どうしようも出来ないんじゃねーの?」
素っ気ない銀さんの呟きが耳を打つ。
「テメェ一人で戦争止めるなんて無理だ。
あの時だって達を助けにいったのがやっとだったろ?
俺達が束になってもあいつらを止めることは出来ねぇ。」
俺は 下を向いて黙り込んでいた。
「気にすんなよ、手前の勝手で戦争やってる奴らなんざ
すぐに滅ぶ。心配しなくてもすぐに終わるさ。」
「・・・・そうだな・・・・フルシチョフだって
ヒトラーだって短い期間で消えた。
これも、すぐに消えるだろうな・・・・」
「そー言う事 オメェは難しく考えすぎなんだよ。
さ、飲め飲めドンドン飲んでウサ晴らせ。」
「今夜は私がおごるよ、これで元気出しな。」
二人から進められた酒のコップが、嬉しかった
「ああ・・・ありがとうお登瀬さん。」
「あーあ、私がもっと若けりゃ
アンタをから奪い取ってたのにな・・・」
瞬間 口に含んだ酒を丸々吐き出す銀さん。
「うおええぇぇぇぇ!!ちょいきなり
18禁ギリギリの発言すんじゃねぇババア!!」
「んだとこのアホ天パァァァァァ!!」
カウンターを乗り越えんばかりのお登勢さんと
銀さんの、いつも通りの口ゲンカ
・・・俺はその光景を見て少し笑った。
それから数日が経ち、俺は大佐から
驚くべき事を耳にする。
「何だって!?賢者達が全滅!?」
『ああ、各大手PMCの本社で死亡が確認された
どれも日本刀で切られたような傷があったらしい。』
「日本刀?賢者達を殺した犯人は侍か?」
『それはまだ分からん、だが賢者達を殺したほどだ。
内部の人間にしか出来ないと考えられている。』
「PMCの社長を殺す隙を作れるだけの人物か・・・・
一体・・・・」
いくら唸っても、該当する人物は思い当たらなかった
『賢者達が社長をしていたPMCは『オクトパス』、
『レイブン』、『ウルフ』、『マンティス』の4社だ。』
「大元のPMCは?」
『『ヘイヴン社』か?
ヘイヴン社の社長も行方不明になっている。
・・・だから今、PMCは混乱している。
大手PMCの社長が5人もいなくなったのだからな。』
その答えは ある意味俺の望んだものだった。
「そうか・・・・
これで戦争が沈静化されればいいんだが・・・」
『少なくとも状況が悪化することはまずないな。
何か情報が入り次第そちらに送る。』
「了解した。」
その後無線を切り、俺はホッと息をつく。
銀さんの言った通り、戦争をやっている連中は
すぐに滅んでくれた。
これで戦争もなくなればいいのだが・・・・・・
それからまた数日の時が流れ
この日は俺と、サニーの三人でショッピングをして
家へと帰る最中だった。
「たくさん買っちゃったね。」
「ジャック、私、明日朝ごはん作ってあげる。」
「そうかそれは楽しみだ、オタコンの話だと・・・・!?」
その瞬間、とてつもない激痛が胸を締め付け
俺は その場で膝をつく。
「!?どうしたの!?」
「む・・・胸が・・・・」
「ジャック!大丈夫!?」
襲い掛かったのと同じ位の唐突さで、激痛は唐突に
身体から引いていった。
「だ・・・大丈夫だ・・・収まった・・・」
「もう・・・心配させないでよね・・・・」
息をつく二人を安心させるべく、ニッコリと笑う。
・・・でも この急な発作は何なんだ?
今までこんな事になった覚えはなかったのに・・・・
その夜、寝静まったサニーを寝室に残し
俺とは屋根から夜空を眺めていた。
「・・・来月、何の日か覚えてる?」
「え?来月って言ったら・・・・4月30日か?」
「ええ、覚えてる?」
「えーっと・・・・ごみの日じゃないし」
「何その古典的なとぼけ方!?
・・・まあいいわ、来月まで楽しみにしてるわ。」
楽しげに笑い、は屋根から降りた。
当たり前だ・・・4月30日 忘れるわけがない。
その日まで楽しみにしててくれ、と心の中でだけ呟く
だがこの時、江戸に近づく脅威があった事を
今は知るよしもなかった。
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後書き(退助様サイド)
退助「さあついに起こってしまいました戦争経済。」
新八「改めてみるとホントに恐ろしいですね・・・・」
銀時「ていうかが一人で何とかしようって
考えてるのが一番驚いたけどな。」
退助「そりゃ、ただのビジネスとしての戦争なんて
望んでなかったからね。」
銀時「ていうか半年ってどんだけはしょってんのこれ?」
退助「その半年の間に竜宮とか田足とか吉原とか
通撰組とか白鴉とかがあったと思ってください。」
新八「はしょり過ぎでしょう!!」
神楽「それよりが言っていた4月30日って
何の日アルか?」
退助「それ言ったら今回最大のネタバレだよ?」
新八「え?そんなに重要なキーワードだったんですか?」
退助「誰も予想しえない事を用意してるのでお楽しみを。」