突然俺達の前に現れたネイキッド・・・・
いや、ジーンの一件を考えると
こいつはソリダスの分身かもしれない
俺は懐から出した拳銃に弾倉を入れて向けるが
あちらは動じず近づいてくる。
老人は2、3歩位離れた所で立ち止まると
瞬時に近づき間合いを詰め こちらの腕を
CQCで捻って押し出した。
すぐに返そうとしたが銃を下に持っていかれ
マズイと思った その次の瞬間
ネイキッドは・・・・俺を抱きしめた。
「な!?」
「もういいんだ・・・息子よ、戦う事はない。」
「何を・・・・!?」
「もう終わった、銃を捨てて生きていいんだ。」
戸惑う俺を他所にネイキッドは銃を取り上げ
弾倉を抜き取り中に入っていた弾も哨弾すると
あっさりと地面に落した。
「全ては年寄りが始めた事、元凶となった
全ては閉ざされ・・・過ちの時代は終わった。
最後に遺されたこの私も・・・もうすぐ終わる。」
色々と呆気に取られっ放しではあるものの
最も気になっている事が、1つあった。
「何故・・・生きているんだ!」
ネイキッドは真っ直ぐに俺の目を見て
淡々と言葉を紡ぎ始めた。
「リキッドに撃たれた私は奇跡的に
一命を取り留めた。だが賢者達は私をシステムの
肖像にしようと昏睡状態のまま捕らわれた。
私は体内にナノマシンを埋め込まれ、代理AI
『J.D』に強制的に昏睡状態を保たされていた。」
そんな事があったなんて・・・・・・・・
「肉体的な意味でなく、私の意志は完全に閉ざされていたのだ。
お前が遭遇したBB達を拘束していたものとも通じる技術だ。」
「待ってくれ!
じゃあ、あの時俺と出会ったのは一体・・・・!」
そう 俺はあの作戦であんたに・・・!
「あれは正真正銘、私だ。
昏睡状態になっていた時、ソローが私の精神を
コピーしお前の元に寄こしたのだ。
私が目覚めるためには、なんとしても
システムを破壊する必要があったのだ。」
J.Dの破壊・・・・それじゃあネイキッドも
あの作戦に関わっていたことになるのか!?
構わず目の前の男は語り続ける。
「AIであるJ.Dの破壊と・・・ゼロと呼ばれた
『ジェームズ・ジョンソン』の死。私の覚醒と賢者達の終焉。」
「ゼロ・・・・!」
俺の脳裏に浮かぶのは、とある上官。
けれどネイキッドは即座にそれを否定した
「ジェームズは私の上官だった男のことだ。
君の言うゼロは彼から受け継いだだけに過ぎない。
それが、ナオミとオセロットの目的だった。」
ACT−28 大事な話や回想ってくどいから
夢主が空気になりかけんだよね
オセロットだって!?何であいつが・・・・!
疑問に思ったけれど、ネイキッドはそこについて
説明をしてはくれなかった。
「G.Wにウィルスが流し込まれる直前、G.Wの
実体化によってのみJ.Dへの道が開かれた。
そこでこの男、ゼロの居場所を知ることが出来た。
私にとって、そして彼らにとって、ナオミにとって
それこそが重要だった。彼らは、その為に
半年以上前から大掛かりな計画を実行した。」
半年、そんな前から計画されていたとは・・・・
「オセロットは私の身体を奴らから奪った。
コールドスリープ状態だった私を覚醒させた。
そうだ、ソリダスが今まで起こしたことも話してやらないとな。」
「ソリダスが起こした事・・・・?」
重々しくネイキッドは頷く。
「まずは、君達が言う紅桜事件からだ。
奴はシュルツを通じて資金、技術提供をし
高杉一派に対艦兵器『紅桜』を開発させたが
知っての通り江戸の壊滅は君の仲間である侍二人によって頓挫した。
・・・だが結果的に彼らは刀を精製する技術を
手に入れる事が出来た。」
確かにその通り、あれは銀さんと桂さんが
中心となって 紅桜の破壊に成功したんだ
しかしそんな前からソリダスが関わっていたのか・・・
「次に機械家政婦の反乱は、林博士に月光運用データを
取らせるために協力していた。」
それはあらゆる環境下において優れた結果を残したが
武装データだけは取れなかったようだ。
「・・・ソリダスはそれを何処かで補う必要があった」
一旦言葉を途切り ネイキッドは再び口を開く。
「それが、真撰組参謀の謀反だ。」
「何だって・・・・!」
あの事件にもソリダスは関与していたのか・・・!
「伊東鴨太郎らと君達が戦っていた最中にソリダスの憲兵は
警察本部に潜り込み 機械家政婦の武装データを
参考にしようとデータをハッキングした・・・
彼らの戦いが長引いたおかげで
その目論見は成功したらしいがな。」
ふと、ここまで来てある事に感づいた。
「ということは・・・竜宮城でも?」
「ほう、察しがいいな。」
ネイキッドいわく、竜宮城ではヘイヴンに搭載されていた
無人式メタルギア『メタルギアRAY』のデータを取るため
奴は竜宮城付近に試作であるRAYを海に沈めた。
その時に俺が出会ったヘイヴン・トルーパーは
データを入手する為に潜り込んでいたらしい。
そしてデータを転送後、俺がいた事によって
標的が変わり あの時襲って来たのだろう
「それじゃあの亀達が持っていた武器も・・・?」
「いや、そればかりは関与してなかったらしい。
だが彼ら自身が海に沈んだ海軍の兵器を偶然拾い
それを元に、製造していたのかもしれん。」
なるほど・・・そうでもなければ
いくらなんでもM4等の銃器は造れないはず。
合点がいくが・・・どうも腑に落ちない。
「そしてソリダスは最後にパワードスーツの
試験運用のために吉原へ介入した。」
性能を確かめるには並大抵の実力では
的確なデータは取れないだろう。
だからこそ奴は・・・夜王鳳仙に目をつけたのか。
「結果は成功に終わったが過負荷がかかり改良の余地があった。
それがソリダスが装備していた完全体のパワードスーツ
君が退けたものだ。」
俺はそれに勝った・・・・だが何故
あのような結果になったのかは未だに分からない。
「だがそれも全て・・・奴が賢者達の統制から
解放されるために行ってきたものだ・・・・
犠牲は莫大なものとなってしまったがな・・・・」
俺とはいつしか 黙って話を聞いていた。
「ゼロ・・・・全てはこの男から始まった。」
ネイキッドはその言葉を、少し離れた場所に
置かれた車椅子に座る老人へと向ける。
誰かに似ている気がするが・・・・・
「気付かないか?ゼロは・・・・・
ザ・ジョイ、ビッグ・ママの父親だ。」
「何だって!?
だがある日突然いなくなったって・・・・!」
「厳密には何処かへ身を隠していたにすぎない。
ゼロは年老いて、賢者達はもはや実体のない組織が運営していた。」
「実体がない?」
そんな事が、あり得るのか・・・?
「AIはゼロが生み出した巨大な循環の一部に過ぎない。
PMCの社長をしていた御偉い方はただの代理人に過ぎなかった。
軍産複合体を形成する各企業や営利団体、研究機
それらは資金源となる口座からAIの算術分配に
よって自動的に振り込まれた予算で活動を行っていた。」
つまりは賢者達の代理人は自動で振り込まれた
予算で活動をしていたという事か・・・・
「兵器研究開発、投資、資産運用、市場開拓を含む・・・
人も、システムも企業も、それらを保護する法律でさえ
そして政治も経済も、非常に画一的なシステムの上を
反復していたにすぎない。
誰もそれが仕組まれた事、それが単なる規範だとは
気付かなかっただろう。
極めて単純化された規範という神経回路の集団
それが賢者達だった。
意志や変革のない普遍性、それが賢者達の正体だった。」
全ては賢者達のボードの上で踊らされてだけ・・・・
種を明かせば単純なものだが、知らなければ
確かに死んでも気付けないだろう。
「しかし、ある時その規範は単一分裂を止め
突然変異を起こし始めた。
生命の誕生とも言っていいだろう。
戦争という新たな生殖方法を手にしたのだ。
統一国家として計画されていた規範は急速に
戦争というビジネス、戦争経済へと傾倒していった。」
そこでが おずおずと口を開く。
「つまり・・・・それまでは世界を
ひとまとめするつもりだったってことですか?」
「そうだよローズ君、戦争浄化という政治的な大義が
触媒にもなった。それはもはやゼロの意志でもなく
誰の意志でもなかった。
まさにゼロの意志を継ぐAIである規範が
生殖を経て初めて命を持った瞬間だ。」
「それじゃあジェームズ・・・
ゼロは戦争は望んでいなかった・・・・?」
俺の一言にネイキッドが力強く同意する。
「そうだ、そもそもゼロが目指したのは
戦争のない統一国家、『内なる世界』を確立する事だった。
しかし、彼の意志は引き継がれる事はなかった。
やがてJ.Dは気ままに増殖し続ける時代そのものに変わった。
時代は国家より、経済行為を目指した。」
それが・・戦争経済を本格的に活発にさせた・・・
「産業革命以来のデジタル確信を手に
一人歩きした時代は歪な経済革命を、戦場革命を産み
質量のない新たな世界体系を創出した。
そこにはイデオロギーも、主義も理想も
あまつさえザ・ジョイが固執した忠さえもない。
それが戦争経済、それこそゼロの
思いも寄らなかった誤算だったに違いない。」
そこまで語られて 俺は気が付いた。
「まさか・・・・・ゼロの本当の目的は・・・・」
まるで心の中を透かしたように、ネイキッドもまた 首を縦に振る。
「娘であるザ・ジョイのため・・・・
戦争のない平和な世界を築き上げるための
ものだったのかもしれない。
だが今の私達には真実を知る術はない。」
「そんな・・・・・・・・」
この場所の空気を震わせるのは 俺達の声と
車椅子に付けられた機械から漏れる微かな音だけ。
「米国のシステムが崩壊した今、賢者達が
築き上げた社会も白紙に還った。
全ての発端はこの男だ。この男が・・世界を破滅に導いた。
しかし・・・今はそのことすら解っていない。」
ネイキッドに釣られ、俺達も彼を見る。
ママの父親だとするともうこの人はジ・エンド並みに生きている・・・・
植物状態の身体では 何も知る事は
出来ないだろう・・・・・・
「長い年月を経て再会を果たした私が感じたのは
・・・懐かしさと・・・深い哀れみだ。
不思議な事に憎しみは湧いてこなかった。」
自分をシステムに閉じ込めた張本人だというのに
・・・・ホントに不思議だ。
「そもそも・・・ゼロは私が憎かったのか?いや、畏れていたのか?
それを聞くことすら出来ない。」
すると車いすから水が流れる音が聞こえてきた。
自動で排泄させているのか・・・・
「全てには始まりがある。始まりは・・・1ではない。
その遥か以前のカオス、世界は0から生まれる。
0が1に変わる瞬間、世界が動き出す。
1は2になり、やがて10になり、100になる。」
そうやって徐々に世界は大きく変わっていく
・・・・そう言いたいんだろう・・・
「全てを1に戻しても解決はしない。
そうだ、ゼロを消さない限り、1はまた いずれ100に復活する。」
「負の連鎖・・・・・」
「そうとも言えるな。ゼロの抹殺・・・
それが私たちの目的だった。
強大な賢者達も元はたった一人の人間 たった一人の欲望
それが肥大化してテクノロジーを吸収し、経済を操作し
いつしか・・・怪物となった。
私達は・・0を10にする手助けをした。
私達にも罪はある。」
間接的にとはいえ、自分もシステムの一部と化していた。
だからこそ・・・・・・
「だからこそ、自らの手で・・・・・
ゼロを・・・無に還すのだ!」
ネイキッドは車いすについていたスイッチを切った。
延命装置のスイッチなのだろうか・・・
その瞬間、ゼロが悶え苦しみ出した。
けれどネイキッドはゼロの身体を抑え
そして・・・・・・ゼロは息を引き取った。
ゼロ・・・ジェームズ・・・
アンタは娘のために・・・
戦争を無くしたかっただけだった・・・
ただ・・・機械に任せたばかりに・・・・・・・
望んでもいない結果になってしまった・・・
あの世で・・・
ママと平和に暮らしてくれ・・・・・・・
ネイキッドは 見開かれたゼロの目を閉じさせた。
「ネイキッド・・・・アンタも無に還るのか?」
問いかけに、ゆるゆると首は横へ振られた。
「いや・・・私は他の者と一緒になるわけにはいかない。
余命を、罪を償うために使う。」
余命・・・そうだ、こんな事をしている間にも
破滅が近づいている・・・俺は一体どうすれば・・・
「もう一つ、ナオミから報告がある。」
「ナオミから?」
まだ・・・・あいつは何か言い残していたのか?
「君の体内で変異を遂げたFOXDIEのことだ。
新たに打ち込まれたFOXDIEが急増殖し君の全身に同化した。
これは同時に古い変異型の増殖を妨げることとなった。
変異型は・・・新たなFOXDIEに苗床を奪われた。
ナオミの経過観察で、変異型の減少が確認された。
じき滅び去る・・・いや、もう消滅しているだろう。」
告げられた言葉の意味を理解するのに
少しだけ、時間がかかった。
「という事は・・・・・・」
「「変異型は 発症しない!?」」
俺とが口を揃えて言った。
「それじゃあ・・・
ジャックは死ななくてもいいんですね!」
「そうだ・・・・そして・・・
新たに入れられたFOXDIEは・・・
厳密にはFOXDIEではなかった。」
じゃあ一体何なんだ・・・・?
「いくら変異型が発症しなくなったとしても
FOXDIEは君の身体を食い潰していた。
だから死のうとせずともとっくに死んでいたはず
・・・なのに君はまだ生きている。何故か分かるか?」
分からず、俺は素直に首を振った。
「リキッドが打ち込ませたFOXDIEには
自己防衛プログラムが施されていた。
それは苗床が窮地に立たされた時、生命の危機に反応し
身体能力を飛躍的に向上させ、第6感を
意図的に創り出す。それが・・・蛇眼だ。」
その辺については、ソリダスも
同じような事を言っていたな・・・・
「リキッドはFOXDIE以外で死ぬ事を
許さなかった結果だが・・・それは同時に
FOXDIEの活動を早め、身体を蝕んでいった。
蛇眼が発動する度に 君は生命を削っていたのだ。
その新型のFOXDIEは・・・・
その食い潰された組織を身体と同化することによって
修復していった。
ヴァンプやナオミのナノマシンと通じるものだな。」
新型が打ち込まれたタイミングといえば・・・・
やっぱりドレビンしかいない。
あいつ・・・全てを分かっているような感じだった。
もしやあいつ・・・まさか賢者達の・・・・?
「最後に君は完全体であったパワードスーツにも対抗できた。
眼が紅く変色し、以前の蛇眼と
比べ物にならない位の力が備わった。
そのプログラムが新型にインプットされていたのだ。
ナオミはこれを、君を診察することで見つけ
注射器を通じて変異型のプログラムを書き換えるようにした。
・・・・発作が止まらない時がなかったか?」
一度だけ 思い当たる節がある
あの時・・・強化兵に追い詰められて
銀さん達に助けられた時・・・・・!
「その一本がプログラム書き換え用の注射器だったのだろう。
何故・・・これが打ち込まれたか分かるか?」
「まさか・・・賢者達が?」
「そうだ、AIは現代で最高の兵士である君を
生き延びさせようと仕向けたに違いない。」
奴等が・・・俺を?
「その目的は自分達を護る為・・・・
賢者達は所詮機械だ、同じ事をするしか能がない。
だが・・・結果的に君は生き延びる事が出来た・・・」
言われてみれば、その通りだ
はずっと 嬉しそうに涙を流していた・・・・
「新型にも蛇眼の機能が備わっているが・・・・
身体を食い潰す事はない。
恐らく賢者達はこれからも君を戦いに
駆りだそうとした結果なのだろう・・・・・だがもう戦う必要はない。
正にそれは・・・・君を生き延びさせる
(LIVEさせる)・・・FOXALIVEだな・・・」
俺を生き延びさせる・・・・・・
ああ、俺は殺戮兵器にならなくて済むのか?
まだ・・・・みんなと生きていく事が許されるのか・・・
唐突に 視界がぼやりと歪んだ。
「ジャック・・・・・!」
「なんと・・・・・そんなはずは・・・・!」
「ジャック・・・・眼から・・・涙が・・・・!」
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後書き(退助様サイド)
退助「さあ全ての謎が明らかになりました。
賢者達のこと、そしてFOXDIEのことも。」
新八「良かった・・・さんは死ななくていいんですね。」
神楽「ホント良かったアル・・・・」
近藤「先生!!良く分からないんで
俺にも分かりやすく教えてください!!」
ネイキッド「分かりやすく教えたつもりだったのだが
・・・いかがだったかな?」
神楽&沖田「ZZZZZZZZZZZZ・・・」
新八「先生、神楽ちゃんが途中で話について
いけなくなって寝ちゃいました。」
土方「総悟も同じく。」
退助「まあちょっと分かりづらいけどね・・・・・
てーか語り長すぎ、読者ついてこれてるかなぁ」
銀時「まー要するには死なずに済んで
元凶も元は悪い奴らじゃなかった。
ただ、機械に任せっぱなしだったんで世界が破滅に
向かっちまった。そういうこったろ?」
ネイキッド「おお、私が話した時より分かりやすくなったな。」
退助「ほとんど噛み砕いてるけど・・・
まあこれでいいでしょう。世界が平和になったんだから・・・」
次回、から涙が・・・・その真実とは・・・・・