俺はソリダスと最後の戦いを繰り広げていた。
二刀流で挑むあちらに対し、俺の方も少しは
剣術を鍛えてきた。
・・・・・・対抗するには十分
ソリダスは肩部分につけている「スネークアーム」を
使おうとはしなかった。
侍が行う決闘、余計な小細工は使わないつもりなのだろう。
だが向こうはパワードスーツを装備している。
パワーに関してはこちらが下回ってしまうが・・・・
ここで負けるつもりはない。
俺とソリダスは剣を交り合わせ、隙があれば
蹴り飛ばす・・・・という動作を繰り返す。
「うおりゃぁ!!」
振り下ろされた刀を横に素早く避け
2発蹴りを加え、相手を弾き飛ばした。
「流石だな・・・・!
ビッグ・ママを超えただけの事はある!」
「俺は彼女を超えてなどいない・・・・・・!」
短い会話の合間にも互いに剣を振るい
幾度と無く、空いた手で隙を見て
ボディーブローを仕掛けた。
「ぬぉ!」
怯んだ今がチャンスだ!
間髪入れずに回し蹴りを何度か浴びせ
拳で遠くへと殴り飛ばす。
「ぬぉぁ!?」
勢いで倒れるも ソリダスは再び起き上がる。
「流石だなジャック!
ならば・・・これならどうだ!!」
言って奴は全身に力を入れ、スネークアームをパージし
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
・・・・呼気と共に全身が膨れ上がっていった。
ACT−25 国が違うと言葉の認識も妙な事に…
皆も気をつけろよ!
パワードスーツを最大限に活かすつもりだな・・・・
「行くぞ!!はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
身構えた直後にソリダスが刀の連撃を浴びせてきた。
何とか防ぐ事が出来ているが
奴のパワーが上がったせいか、受けるのがやっとだ。
「どうした!そこまでか!!」
俺は何度も隙をうかがい攻撃を仕掛けるが
その度に避けられてしまう。
パワードスーツの完全形・・・ここまでの性能とは・・・
ソリダスは力を込めて2本の刀を真上から振り下ろす。
「とりゃぁぁぁ!!!」
下段で支えるようにブレードで受けるが・・・・
マズイ、これはあの時・・・鳳仙の時と同じだ・・・・
このままでは追い詰められる・・・・・!
「フフフ・・・所詮貴様では私には勝てんのだ・・・・
私こそ、後の世代まで語り受け継がれる事が
出来る存在だったという事だ!!」
「まだ・・・・まだ終わりじゃない・・・・!」
「終わりじゃない?
これでお終いにするの間違いだ!!」
パワードスーツの力を加え、ソリダスは
俺を押し潰そうとした。
全身の筋肉・・・骨がきしむ・・・・・
あの時の銀さんの姿が、頭に浮かんで消えた・・・・
それでも耐える内 足元から亀裂が入る
床が崩壊を始めかけている・・・それほど
ソリダスのパワーが半端ではないのか・・・!
「ぐ!あぁぁぁぁぁぁ!!」
「貴様ごときの腕で私に敵うはずがないのだ!!
私こそ人々の記憶の中に残るのにふさわしい!
貴様にはここで消えてもらう!!」
「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ここで負けるわけにはいかない・・・・・
俺は・・・・俺はみんなが待っている
あの場所に帰る為に・・・・・!!
「が待っているあの場所に・・・・・
帰るんだぁぁぁぁぁぁ!!!」
その瞬間、全身から失ったはずの力が蘇ってきた。
蛇眼が発動したのだろうが・・・
いつもより 強い力を感じる・・・・・・
「な・・・・!貴様・・・蛇眼が・・・
紅く染まっていくだと・・・・!」
どうやらFOXDIEはまだ俺を生かすつもりらしい
俺の眼は蒼から・・・・・紅へと変色した。
これが、FOXDIEの最後の力か!
「うおおぉぉぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
圧され気味だったソリダスの攻撃を押し返し
僅かに間合いの開いた身体を蹴り飛ばす。
「な、何だと!?
貴様にまだそんな力が残されているのか・・・!」
「おおおおおおお!!!」
FOXDIEのプログラムが働いている今しかない!!
立ち直らせるヒマを与えず、すぐに連撃を繰り出し
ソリダスを追い詰めていく。
「くっ・・・おのれ死にぞこないがぁぁぁぁ!!」
ソリダスが左手に持った刀を振り下ろしてきた
片手で受け止めたので血が手から噴き出たが
俺は刀を握り締め、そのまま真ん中でへし折った。
「な・・・民主刀を砕いただと!?馬鹿な!
ベリリウム合金で出来ているのだぞ!!
ダイヤモンドでも削れないものを
素手で破壊するなど・・・!!」
砕けた刀の末路にやや呆然とするソリダスへ
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は再び拳と蹴りの連打を浴びせ、追い込む
「ぐぉぉぉぉぉ!!」
奴も反撃に出てはいるが今はこちらが押している
このまま畳み掛けて・・・倒す!!
振り下ろした剣を、ソリダスはもう1本ある
刀で辛うじて受け止めた。
「何故だ・・・!何故貴様がそこまでやれるのだ!!
何が貴様をそこまで駆り立てるのだ!!」
つば競り合いながら顔をつき合わせ
「俺は・・・ただ自分自身に忠を尽くしているだけだ!
お前にはないだろう・・・・!
他人を愛し、自分を愛する精神を・・・!!
どれだけの武力で攻めてこようが、どれだけの力を
つけていようが・・・・自分に忠を尽くす・・・・
この俺を倒す事は不可能だ!!!」
俺は 相手へと強く言い放った。
「おのれ死にぞこないが
ベラベラと語りおってぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
お互いを剣で弾き飛ばし、瞬時に拳を強く握りしめると
「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
俺とソリダスはお互いの拳を顔面に当て
しばらく後ろに下がって 同時に倒れこんだ。
しかし・・・・まだ決着はついていない・・・・・
まだ・・・・戦いは終わっていない・・・・!
示し合わせたかのように俺とソリダスは
ゆっくりと立ち上がり、フラフラの身体で近づいて
満身創痍の身体のまま殴り続けた。
殴っては殴り返し、また殴っての不毛な連鎖・・・・・
「「はあ・・・・・はあ・・・・・・はあ・・・・」」
何度目かの殴り合いの後 ソリダスは刀を持ち直し
「まだだ・・・・まだ終わっていない!!」
叫んで構えたそれに従うように、俺も刀を
構え直して身を強張らせる。
そして・・・・空を飛ぶ鳥の鳴き声が響いた刹那
俺達は どちらとも無く床を蹴り突貫した
「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」
すれ違うように互いが剣を振り下ろし
背を向け離れたそのままで しばし時が止まる
・・・・・・亀裂音が響き、俺の高周波ブレードが
根元から砕けて散らばった。
「・・・・・・・見事だ・・・・ジャック・・・・」
同時にソリダスの背中から血が吹き出て
奴は ひどくゆっくりと倒れた。
・・・・・・勝った・・・・・・・・
鳥の微かな鳴き声以外は何も聞こえない静寂が
辺りを包んでいた。
・・・・・・俺は、ソリダスの元に歩み寄った。
「・・・・・どうやら・・・・私は
後の世代から拒絶されたようだ・・・・・・」
「ソリダス・・・・・」
「フフフ・・・・・笑ってもいいのだぞ・・・・
私は・・・子供も作れないことをいいことに・・・・
記憶に残りたいだけの為に・・・戦争を起こした・・・・」
確かに、やり方は誉められたものじゃない。
だがソリダスはソリダスなりに・・・・
自分が生きていた事を示したかっただけだった・・・
「だが・・・・貴様と戦って分かった・・・・
私は・・・・私はただ・・・誰かに私が生きていた事を
覚えてもらいたかっただけなのかもしれん・・・・・」
ソリダスは右眼から涙を流していた。
「ソリダス・・・・お前が生きていた事は
今、俺達に伝わった。やり方は悪かったが・・・
少なくとも・・・俺はお前が生きていた事を伝える。
賢者達から解放される為に足掻いたお前の事を・・・」
眼だけで頷いてからソリダスは
「ジャック・・・・これを・・・・・・」
片腕を持ち上げ、鞘に納まった刀を手渡した。
「それは・・・共和刀だ・・・・
ベリリウム合金より硬いタングステン合金で
造られたアメリカ製の刀だ・・・・・
高周波によってその切れ味は
日本刀同等の切れ味が出される・・・・」
鞘から少し出した共和刀は、白銀に輝いていた。
ぶら下がっているドックタグにはやや達筆な
『共和』の二文字が彫られている。
「それで・・・世界を・・・・
共和へと導け・・・・・ガハ!?」
「ソリダス!?」
血を吐いた・・・もう長くないらしい・・・・
「時が立てば・・・貴様はいなくなる・・・・
後の世代まで・・・私の・・生きた証は・・・
消えているであろう・・・・
お前だけでも・・・・私が生きていた事を
・・・・記憶していてくれ・・・・。」
震えたままのその片腕を手にとって
「・・・・大丈夫だ・・・
お前はお前なりに国を愛した・・・・
お前は・・・・俺が『愛国者』として葬ってやる
・・・・・出来る限り多くの人々に伝える
・・・お前が・・・自由を求めて戦った事を・・・」
俺はソリダスへ、そう語りかけた。
「ありが・・・とう・・・・・・・」
微笑んで最後に最後にそう呟くと・・・・
握っていた手が するりと落ちた。
ソリダス・・・・・・
お前は確かに人々の心に刻み込まれた。
安らかに・・・眠ってくれ・・・・
『ジャック!!無事か!!』
そこにオタコンのヘリが近づいてきた。
俺はソリダスの遺体も乗せてミズーリに運んだ。
そこでオタコンは・・・
J.Dが破壊された事について話してくれた。
「サニーのプログラムは賢者達のAI『J.D』の
大脳部分を破壊したものの、脳幹部分は破壊しなかった。
サニーはナオミのブラックボックスを解析して
賢者達の制御とライフラインの電子制御を分離したんだ。
水、空気、電気、食糧、医療、通信、交通
彼女は賢者達の支配を断ち切り、そして近代文明を護った。
母親・・・オルガの仇のつもりだったのか・・・・・
それとも・・・
サニー自身が望む理想の未来を描こうとしたのか・・・・
それとも・・・・単なるデータの整理だったのか・・・・・
まさにAIがLIVEする(生き延びる)
FOXALIVE、これで賢者達の支配は滅びた。
皮肉にも、創生期から
戦争を生業としてきた文明は生き延びた。
果たしてそれで良かったのか・・・・・
ナオミ・・・・・・・僕らは何を無くして
・・・・何を護ったんだろう・・・・」
深く、暗く沈むオタコンに俺は言う
「だが・・・・これだけは分かる・・・・・
俺達は俺達の住むこの世界を・・・護ったんだ・・・・」
「・・・・そうだね・・・・・」
そしてミズーリに着艦し、カサッカから降りた瞬間
銀さん達江戸のみんな・・・・
FOXのみんなが迎えてくれた・・・
「!また派手にやりやがったな・・・!」
「しかし、あの男に勝てたとは・・・
やはりは俺が認めた男だ!」
「の旦那があそこまでやれるたぁ
ちっと驚きやしたぜぃ。」
「殿・・・無事で良かった・・・・・」
「アンタ なかなかやるもんだね。」
「ホント、局長も見習ってほしいものよ?」
「いや、俺なんかは君と比べられる器じゃないさ。
君は誰にも超えられない壁を乗り越えたんだ
・・・それは俺達が簡単に越えられるものではない。」
「あら、あんたがかぃ 結構いい男じゃない?
けど報酬はきっちり振り込んでもらうからね。」
「流石は鳳仙と渡り合っただけの事はあるな
いつかこの星海坊主も手合わせ願いたいもんだ。」
「やりましたね!さん!!」
「お前最高アル!!」
「約束・・・守れたみたいだな・・・・よぉ。」
「私、あんなのと戦って勝った男を殺そうと
してたんだね・・・今思うとぞっとしちゃっわよ。」
「ジャック・・・
流石はヴォルギン大佐を倒した男ね・・・・」
「やるなボス!
ホントにソリダスに勝っちまうなんてな!」
「出来ればもうちょっと早く倒してくれれば
よかったのに・・・・見てて傷が痛んだわ。」
「メリル・・・それはちょっと言い過ぎ・・・・・」
『ジャック・・・お前は俺の理解を超えた
・・・・もうお前を殺すことは出来ない・・・』
「ありがとうなジャック、ソリダスの最後を
見届けてくれて。同じ兄弟として感謝する。」
全員の歓迎を受けて笑い返していると
サニーが おずおずと側へ寄ってきた。
「ジャック!私・・役に立てたかな・・・?」
・・・・俺は、かがんでサニーの頭を撫でた。
「ああ・・・サニー・・・
お前のおかげで勝てた・・・・ありがとう。」
するとそこに・・・も走り寄って来た。
「!!」
「・・・・・」
「良かった・・・・ホントに良かった・・・・・!」
感極まったように涙を浮かべたが
俺に強く抱きついてきた。
「・・・・人前だし・・・・
体中痛む・・・・か・・・・・ら・・・・」
流石にそこで限界が来たようで
意識が途切れた俺は、に寄りかかるように倒れた
「な!?君!!」
「どうしたのだ!!」
「まずい!脈が落ちてきている!
すぐに医務室へ運ぶんだ!!」
「!しっかりしろ!!!!!」
「!!目を覚まして!!
!!いやぁぁぁぁぁぁ!!!」
戦いには勝利した・・・・・しかし
まだ・・・・の身体の中には・・・・
FOXDIEがある・・・・
果たして・・・彼はいつまで生きられるのか・・・・・
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後書き(退助様サイド)
退助「ソリダスを倒し、この戦争は
幕を閉じました・・・」
土方「の野郎もやっと刀を持てるようになったな。」
桂「斬り合うつもりか?あの戦いを目の当たりにして
言えるセリフではなかろうて。」
沖田「俺はいつでも土方さんと斬り合えやすぜ?」
土方「てめぇはいつもそうだろうがぁぁぁ!!」
新八「今までにない壮大な死亡フラグじゃないですか!
どう処理するつもりなんですか!!」
神楽「小○でも消化しきれないアル!」
退助「いや・・その名前出しちゃいかんよ・・・・
大丈夫、この物語は終わるから
どんな消化の仕方でもへっちゃらだから!」
全員『マジでかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
新八「えええ!?
てことは・・・もうアップとかなしですか!?」
退助「さあ・・・・・・でも・・・これで
戦いは終わった・・・ゆっくり休ませてやろうよ。」
銀時「仕方ねぇな・・・・だがこの長編は
まだまだ続くからな。引き続き応援よろしく。」
次回 の決断とは・・・?そして・・・・・・・