客人を待たしてある倉庫へとやってくると


奥にストライカー装甲車があり、手前に猿と
数々の銃が置いてあった。





まさかと思うが・・・・猿が客人?


・・・なわけないよな・・・・しかも缶コーラ飲んでるし







辺りを見回すが人の姿は無く、そこで
ふと猿の前においてあったM4に目がいった。





形が随分変わってるが・・・・改良モデルか何かか?





思わずそのM4を手に取ろうとした俺に







「いいブツだろ?」





突然聞こえた声がぶつかった。





「さ、猿が喋った!?


反射的に拳銃を取り出す俺の前に、





「待て待て、猿が喋るわけないだろ。」





猿の背後にある薄暗い影から滲むように
白いハンカチをチラつかせて 見知らぬ男が現れた。


ああ、こいつが客人か・・・・・びっくりした。







「俺は敵じゃない・・・
ましてまだ・・・味方でもない。


「じゃあ何なんだ?」


「武器、兵器の卸売り販売業者だ。
武器洗浄をしている。」


「武器洗浄?」


「ああ、システム管理下にあるID銃を
ノンID銃にハックする・・・言うなれば
武器洗浄屋ってことだ。ドレビンとでも呼んでくれ。」





男は妙に不敵な笑みを見せて 自らを指差す。





「ドレビン?」


「ドレビンは俺達の総称だ。」


「・・・つまり他にもいるということか?」


「そうだ、俺はドレビンの893番だ。」





893番・・・・・・・ヤクザ?


っとふざけたことを考えている場合じゃない。







「ビッグ・ボスにお目にかかれるなんて夢のようだぜ。
どうだ?力になるよ?





言いながらドレビンがM4をこちらへ寄越す。





「それは、挨拶がてらのプレゼントだ。」





俺はその銃をいじり、機構などを調べた。







M4カスタム、M16をベースに開発されたカービンモデル
そいつは大手PMCにも普及している高級品だ。
官給品と違って精度も高い。」





・・・なるほど、見た通りなかなかいい銃だ。





「そいつの魅力は、カスタムパーツが豊富なことだ。
様々なニーズに合わせてカスタマイズできる。」


「フリップアップサイトにレールシステム・・・・
悪くないな。こんなにいい銃を見たのは初めてだ。」


「必要ならアフターマーケットに出ているパーツも用意するよ。」







確かに カスタマイズの仕方によって精度と火力も違ってくる。





それに、妙なガタツキもないからこれは初心者にも
扱いやすい銃だ・・・竜宮城で見たM4とはわけが違うな。







「引き金を引いてみな?」


「いいのか?」


「もちろんさ。さ、早く撃ってみな。」







お言葉に甘えて 俺は適当な壁に銃を向けて
引き金を引いた・・・・・・





だが引き金はピクリともしない。











ACT−2 兵器で騒ぐのは大抵ミリタリーマニア











「撃てないぞ?」


あれ?おかしいな?」


「何がおかしい?」







首を捻るドレビンが、急に何かを思い当たり
俺を指差して笑う







ハッハーン、分かったぞ
アンタまさかナノマシン入れてないな?」


「ナノマシン?SOPシステムの干渉に必要なやつか?」


「そうだ、米軍なのにナノマシンを入れないなんてな・・・」







その言い方は、妙にシャクに触った







あのな 俺はモルモットじゃない。
ナノマシンなんかなくたって」


あれ?聞いてなかった?SOPシステムが導入される前
大戦中からID銃が普及されてたんだぜ?


ただ表沙汰になってないだけで実際はもうアンタが
他で購入した銃はナノマシンなしでは撃てないはずだ。」







何だって!?聞いてないぞ!





あ、まさか大佐この事を伝えるの忘れてたな!
あのボケ老人・・・・!







ちょっと待ってくれ!ホントに撃てないか確認してみる!」





そう言って俺はバックパックから銃を有りったけ取り出す。







「おいおい、アンタのバックパックは四次元ポケットかよ
・・・何処に入ってたのRPG−7なんて?」





問いかけを無視して、手当たり次第引き金を引いてみた。







・・・結果 言葉通り撃てるのは
パトリオットだけだと分かった。





おお!それパトリオットだろ!?
コブラ部隊のザ・ジョイの愛用銃、弾切れがないんだって?」


「ああ、そうだが・・・・ホントに撃てないなんて・・・
昔から持ってるM1191A1も撃てない。」


「あーあ、これじゃノンID銃でも撃てないわけだ。」







やばいぞ・・・・対抗できる武器がパトリオット・・・・





これだけでも充分なのだが俺としては状況に応じて
武器を換えたいから戦力的に問題が・・・・







悩む俺を他所にドレビンが口を開く。





「俺の本業はATセキュリティの社員でね
製造管理部門を担当している。
ID登録されて出荷される前のチップが入手できるんだ。」







ATセキュリティ・・・前々から聞いていた
SOPシステムのID銃セキュリティを確立した会社か。







そういえばSOPシステムのネットワークを開発したのは
DARPA所属のシギントだったな。





確か『世界を繋げる仕事をする』と言っていたし


・・・・・・夢に一歩近づけたのかな?









「ナノマシンがこの先ないときついぜ?
どうだ?ビジネスの話をしないか?


「ビジネス?」





コクリ、と相手が首を縦に振る。





「そうだ、役に立つぜ?
江戸はシュルツ少将のせいで武器が満栄している。


アンタは揉め事に合いやすいと聞いたもんでな・・・・
その時に色々と銃器を手にするはずだ。
ID銃であってもそうでなくても。」







確かにそうだな・・・シュルツが大幅に手を回したせいで
最近では江戸も独自の銃火器を製造しているからな。







田足みたく、他の星からの武器商人が
兵器を流しに来る事も増えてくるだろうしな・・・









「あんたが手に入れた余分な銃を俺が買い取ろう。
そのポイント分だけサービスを提供する。」





ポイント制か、まあこっちの方が管理はしやすい。





「で、そのサービスとは?」


「ID銃を洗浄してロックを解除してやる。
それから俺が入手した武器の販売だ。」


「武器の販売か・・・」


「そうだ、ちょっと来てくれ。」







ドレビンにそう言われ、俺は
ストライカー装甲車の中を覗く。







・・・そこはまさに武器の宝庫だった。







うおぉぉぉ!!!M63にM60E4!!
それにM870カスタムにVSS!!
すごいじゃないかドレビン!!」



「アハハハ・・・・噂には聞いてたが
まさかこれほどマニアだと思わなかったな・・・・
だがそっちの方が俺も助かる。」





苦笑いしながらやや身を引きつつ、ドレビンは
何かペンのようなものを取り出した。





「ノンID銃を使えるようにするにはナノマシンを
入れる必要がある。こいつを打たせてくれ。」





・・・ナノマシンの注射器か。





思わず眉をしかめたのが、自分でもわかった







構わず注射しようと伸ばされたドレビンの手を
俺は反射的に止める。





「安心しろ、痛くはない。」


「・・・そうじゃない。」


「注射は苦手か?」


「そうじゃない。SOPシステムは感情の制御
戦況の制御も可能だと聞いている・・・
俺は 操り人形になるつもりはない。







こちらの言葉にドレビンは、首を横に軽く振る







「大丈夫だ、これはシステムハック用のナノマシンだ。
完全にSOPシステムの管理下に置かれる事は
まず有り得ない・・そういう顧客も中にはいるんでね。」





なるほど、これはただ単に武器を使えるようにする
ナノマシンってことか。


それならと納得し、その注射を打ってもらった。





・・・・結構痛いな。





よし!これでノンID銃も大丈夫だ!」







早速装甲車から降りて、再びM4を撃ってみる


今度はうまく撃てた。





「ほら、撃てただろ?」


「ああ、だが・・・これで規格に合わない銃弾を
見つけても武器がこれだったら・・・・」


「大丈夫さ、その時は銃弾も遠慮なく買い取らせてもらう。


この先『LOCKED』と表示されたID銃を手に入れたら
いつでも俺に言ってくれ。どんな銃でも洗浄してやるよ。」





LOCKEDか・・・・何処に表示されるんだ?


まあ撃てない銃のことだから現物を取れば分かることか。





「ポイントは戦争価格の変動に応じて
洗浄するごとにいただくけどな。」


「洗浄もポイントが掛かるのか・・・ていうか戦争価格って
江戸ではあんまり関係ないような感じがするんだが。」


「あれ?そうかい?ああ、こりゃ悪かったな。
江戸にいる間は一定価格にしとくよ。」





ちょっと動揺してないか?怪しい・・・・・


誤魔化すようにドレビンは炭酸を口に運び
即座にゲップをしていた。





「やっぱ炭酸がきついなぁ・・・」


「繁盛してそうだな。」


「まあな、PMCや正規軍にID銃を売りながら
テロリストや非正規軍には裸の銃を売る。
しかもID銃は横流しが出来ない。


このシステムは、はなから武器屋が儲かるよう
作られているんだ。」







そうかもしれないな・・・・





厄介なシステムを回避できる手段があれば
そこに食いつく奴は いくらでもいるからな。







「この先軍隊の民営化が進んでPMCが肥大化し
肥大化したPMCは兵士と民間人の境界
曖昧にしていくだろう。」







そう言ってドレビンがコーラが入っていたバケツを
装甲車の中に入れ、扉を閉める。





「やがて全人類が戦争生活者(グリーンカラー)になる
いや、全人類が代理戦争に加担する。」








全人類が戦争に加担・・・・・







「だがこれはあくまで憶測だ、そうなるとは限らない。
だが、戦争経済のおかげで俺は美味い飯が食えるんだ。


あんたもグリーンカラーの一人になるが、あんたなら
一生飯に困らないだろ?」


「・・・どういうことだ?」







じっと、こちらの目を見返されながら答えが返る







「わかるよその眼、ずっと戦場を見てきた眼だ。


「知った様な事を言うな。」


「照れるなよ・・・俺もそうさ、戦場で育った。
外の世界には興味がない。」





呟いてドレビンが、俺の肩を叩いて言う。





「さて、必要ならいつでも呼んでくれ。
うちはスピード経営も売りの一つでね。」


「行くのか?」


「ああ、他にも顧客がいてね。」







乗り込んだドレビンが装甲車のハッチを開けて
こちらを見た。





「EYE HAVE YOU!」





言いつつ2本指で俺を指差した後
中へと飛び込み 猿がハッチを閉めて


装甲車を走らせ、何処かへ行ってしまった。









"いつもお前を見ている"・・・・・・・・





何か、意味深な言葉だな・・・・







おっと!もうこんな時間か。
早く行かないと銀さん達にどやされる。









俺は急いで戻り、旅客機に乗り込んだ。







そこで見たのは・・・・・







「おい ムシャムシャ遅かったじゃねぇか
バリバリ俺らがどんな思いでグビグビ待ってたと
思うんだガブガブコノヤロー!」


「そうアル ・・・私がどんな苦しい思いして
待ってたと思うネ・・・」







そこに何故かお菓子をバリバリ食う銀さんと
妊婦以上に腹が膨れた神楽。





新八君は・・・・寝てるのか気絶してるのか
分からない状態だった。


恐らく何か注意して神楽に一発やられたに違いない。







あれ?これ確か帰りに食べる機内食のはずじゃ・・・・





「ってアンタら何勝手に機内食食べてんだよ!!
それ出発してから食べるものだぞ!!」



「だってお前が遅いからいけねーんだろうが。
待ってるっつったら大抵」


おしゃべりか寝るかだろうがぁぁぁぁ!
何でそこで食欲に当てるんだ!!」


「いっぱいヒーヒーフー・・・ご飯ヒーヒーフー・・・
あったからヒーヒーフー・・・・」


腹式呼吸するほど食べるなよ!
これ明日の朝の分もあったんだぞぉぉぉ!!」







まあ今更どうしようもできず、改めて食糧を
補充してもらい 出発することになった。







ていうか俺、こいつらのためにいくら使ったんだ?


家賃肩代わりしたあれを除いてせいぜい・・・・
日本円で百万は使っただろうか・・・・・







それはそれでため息モノではあったが


俺にはもう一つ、気を重くする事がある。







ドレビンの言っていた言葉・・・・





『全人類が代理戦争に加担する』





この時は、その言葉がやけに気になっていた。








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後書き(退助様サイド)


退助「さあついに登場しました。
武器洗浄屋ドレビンさん!


ドレビン「いや〜、出れて嬉しいわ 俺はてっきり
出れないものかと思ったぞ。
シギントと顔も声も被ってるし。」


銀時「ちなみに言うとあの痔忍者もな。」


神楽「おいオッサン、言ってる事さっぱ分からんアル。
お子様にも分かりやすいように説明するヨロシ。」

新八「駄目だって神楽ちゃん!!失礼でしょ!!
すみませんドレビンさん・・・」


ドレビン「いやいや、中々元気のいい娘じゃねーか。」


新八「ハハ・・・あ、所で全人類が戦争に加担するって
どういうことです?」




ドレビン「あー・・・簡単に流れを言うとな


全世界に展開しているPMCに入社して
仮想戦場訓練システム『VR訓練』を受けさせられるが
戦闘に参加しないと言えば販売や搬送の仕事に付く。


つまりPMCに入社したら最後、何かしら戦争に
加担してしまうってことだ。」




新八「うぇ!?そ、そんな恐ろしい会社だなんて・・・」


ドレビン「PMCなら今の景気状況に影響されず利益を上げる
戦争がある限りいくらでも利益を上げ続ける。」


退助「皮肉なもんだね・・・戦争で潤う人間が
出るなんてね・・・PMCについてはこれからまだまだ
出てくるので ここまでにしときます。」