ブリーフィングが終了し、協力者達が出て行っても
俺とオタコンはまだ部屋に残っていて
・・・・俺は ライバルを読んでいた。
ちょうど今月号で『モンキーハンターオラージュ』が
終わるからな・・・・・
それに、もう2度と読めないかもしれないし・・・
オタコンは黙々とMk.Vに細工をしている。
ふと 疑問に思った事を聞いてみた。
「そのプログラムはサニーが創ったのか?」
「・・・彼女の功績は3分の1だ。ナオミは
完成間近のG.W破壊プログラムをサニーに託した。」
「残りの3分の2は何処から?」
「サニーは完成させるためる為に僕のライブラリを
漁って使えそうなソースを探し出したんだ。
見つけたのは・・・エマのワームクラスターだ。」
エマのワームクラスター・・・・
シャドーモセスのシステムを破壊しようとした
コンピュータウィルスか。
「サニーはエマのコードを元にナオミの情報を
組み込んだ。完成したクラスターを隅々まで
見る時間はなかったけど・・・
見ているうちにエマを思い出したよ。
構造に彼女の面影が残っている。」
その言葉は、どこか懐かしむような響きがあった。
「・・・・そうか・・・・・」
「でもサニーが創り出したワームクラスターは
エマ以上だ。」
「どう違うんだ?」
オタコンは淡々と説明する。
「エマのはシステムの知能をバラバラに分解するだけだった。
それと違ってサニーのはAIの知能を破壊
アポトーシスを起こさせるプログラムだ。」
つまりは 自滅させる事が出来るわけか・・・・・・
「これをG.Wに落せば確かに効果がある。」
俺は、少し試みてみようと思ったことを口にする。
「・・・・オタコン、葉巻か何かあるか?」
「え?ジャックは煙草吸わないんじゃ・・・・・」
「今さら健康に気を使う必要はない・・・グ!?
ア、アア・・・!」
また発作か・・・・!これで何度目だ・・・・!
すぐに注射を取り出して打ち、発作を止めた。
ACT−18 自分の作品に自分出演は
誰だって一辺はやらかす
「打ち過ぎだよ・・・・・・・」
オタコンの呟きが、やや聞き取り辛かった。
俺の視界はぼやけ まともに物を見られなくなり
何が何処にあるのか・・・もう分からなくなっていた。
薬の副作用か・・・
それとも俺の死期が近づいている証拠なのか・・・・・
「ジャック・・・どうしてもヘイヴンに行くのかい?」
「・・・・それが・・・どうした・・・?」
「誰かに任せればいいじゃないか!
銀さん達が・・・・たくさん仲間がいる!君が行く必要はないはずだ!」
ぎこちなく、それでも俺は首を左右に動かす。
「・・・・俺には、ライバルを読む以外に
やるべき事が残っている・・・・」
そうだ・・・こんな所で燻っている位なら
最初から こんな事はしない。
「オタコン・・・お前こそ離艦したらどうだ・・・?
勝手にこんな事に巻き込まれて」
「止めてくれ、僕にはライバルを読まないかわりに
まだやるべき事が残っている。」
「・・・そうか・・・ならもう止めない。好きにやってくれ。」
そして・・・ついにヘイヴン突入作戦が始動した。
ミズーリは目標に向かって進んでいる。
メイ・リンが ブリッジに入った。
「艦長、敵艦深度300まで浮上しています。
なおも上昇中。」
「機関の調子は?」
「問題ありません。」
「間もなく全力航走に移る。突入部隊の準備を急いで。」
「アイアイ、艦長!」
奥にいた乗組員が敬礼し、ブリッジを出た。
「浮上まで何分?」
「およそ20分!」
「ヘイヴン浮上タイミングに変更なし。
装甲全開に合わせて本艦を突入させる。」
「アイ!」
メイ・リンの隣にいた乗組員が、ブリッジを
出る前に立ち止まった。
「・・・艦長?」
「何?」
「僕・・・初めての実戦なんです・・・・」
「ええ・・・それが?」
「この艦に配属された時、落ち込んだんですけど・・・
実はほっとしたんです。」
そう言って乗組員は 顔を下に向けて震えだす。
「艦長・・・僕・・・怖いんです。」
メイ・リンが、その乗組員の肩を持った。
「大丈夫よ、私も怖いわ。私も初めてなの。
でも考えるのはやめた、ここで逃げる方が怖いから。」
乗組員を自分の方に向かせると 諭すように
けれど力強く彼女は言う。
「誰も死なせない、私の艦は無事ハワイに帰還する。
いい?約束する。」
「はい!ありがとうございます!!」
乗組員が敬礼し、ブリッジを出ていく。
「・・・新八君と山崎さん・・・って言ったわね?
ブリッジの護りお願いします ここを叩かれたら艦はお終いです。
でも、命は大切にお願いします。」
並んだ二人が 姿勢を正して返事をする。
「はい!」
「任せて下さいよ!
の旦那のためならどんなことでも!!」
「・・・・そう・・・・」
メイ・リンは ブリッジから俺達がカタパルトに
向かっていくのを見降ろしていた。
まるで映画のワンシーンだ・・・
アルマゲドンにこんなシーンがあったような・・・・
あ、そんな事より
「そういえばフォックス・・・いや、ヌルは?」
「ヘイヴンを抑えていた衝撃で強化骨格がいかれてしまったんだ。
到底参戦は無理だ、休ませてあげよう。」
「そうか・・・・」
周りに真撰組隊士や桂さん率いる攘夷志士が
歩いていたが、米軍兵士はどこか落ち着きがない。
「SOPシステムの保護を失くしたお陰で
みんな平常心を欠いている。SOPの後遺症が
強すぎて離脱した兵士も多いみたいだ。」
「そうか・・・・メリルの部下であるエドと
ジョナサンが抜けてるからな・・・無理もない。
頼りになるのは江戸の人たちと艦に残るFOX部隊・・・
突入部隊のメリルと・・・・」
ジョニーと歩いているメリルへ視線を向けると
ジョニーがメリルのケツを触り、案の定
速効でバレてメリルに睨まれていた。
あーあ、つーかメリルにあんな事するなんて
度胸があるな・・・・
あれ?普段のメリルならしばいているはずだよな?
有無を言わさず断末魔コースだよな?
・・・本当に 江戸で何があったんだあの二人?
「・・・彼は未知数だね。」
「まあ・・・下痢しないのを祈るしかないな。」
「奴には裸のバレットM82を持たせておいた。」
上から、ここ最近で聞き慣れた声が降ってくる。
顔を上げると主砲の上に座っていたのは
・・・ドレビンだった。
「やあ、奇遇だな。」
「ドレビン!ここで何をしている?」
「アンタらFOX部隊のIDを洗浄して
それから 裸の銃を提供させてもらった。
あんたらの乗るカタパルトもな。」
ドレビンが三つあるカタパルトを指して言った。
カタパルトは簡単に言うと・・・人間大砲のようなもので
あれでヘイヴンの、ハッチが開いた所から
突入するようになっている。
飛距離も申し分ないし 威力に関しては大丈夫だろう。
「SOPを手に入れてからというもの、ソリダス軍からの
追加発注は来なくなった。
世界中の武器兵器がロックされている今、それでも
戦おうってのはあんたらくらいだからな。
各地の戦場は俺の銃で装備を揃え直すと
“採算が合わない”そうだ。
だからわざわざ出張までしてやったってわけだ。」
戦場にも関わらず、口調はひたすらのん気だった。
「ドレビン、お前状況を理解しているのか?」
「ああ、もちろんさ。」
ドレビンが主砲から降りると前かがみのポーズで
着地した。隣にいた猿もマネをしていた。
ってこれHELO降下した時の
俺のポーズと一緒じゃん・・・・・
「ウプッ。」
ゲップかよ・・・しまらないなぁもう・・・・・・
「所詮、世の中はこの炭酸のようなものだ。
気が抜ければ用はなくなる 商品価値はゼロになる。」
一体何が言いたいんだこいつは・・・・・
「俺は必要とされる側に付く、分かるな?」
そう言ってドレビンはコーラを渡そうとしたが
俺は 首を横に振った。
その内、コーラは猿が持っていく。
「要る物があったら言ってくれ、しばらくは
ここで出店を構える。」
ドレビンが一本の葉巻を取り出して差し出す
「ほら、ネイキッド・スネークが吸っていたものと
同じ葉巻だ。吸っとけ。」
「あ、ああ・・・・」
俺が葉巻を持つと ドレビンは指から
火を出して葉巻の火をつけた。
すごいな・・・・・
何かのマジックでもなさそうだが・・・・
「それが最初で最後の一服かもな?」
「いや・・・これが最初で最後の一本だ。」
火のついた葉巻に口をつけようとして
足元にいたドレビンの猿が、呼びかけてくる。
「何?コーラと交換しろってか?」
・・・・どうやら引き下がる気はないらしい。
本当にこいつ、猿なのか?
疑問に思いつつも 仕方なく葉巻を渡し
コーラと交換した。
「最初で最後の一服はお預けのようだな。
じゃあな。」
ドレビンは2本指で俺を指し示すようにした後
何処かへ去って行った。
手の中に残った缶の処遇に悩んでいた所
一人の兵士が通り過ぎようとしたので引きとめた。
「ほら、やるよ。俺は炭酸が苦手でね。」
「は・・・はい・・・」
カタパルトへ乗り、突入の準備を進めていると
『ジャック、聞こえるか?』
無線から大佐の声が聞こえてきた。
・・・・この無線は江戸からの協力者にも
装備させているらしいから、全員が聞いているはずだ。
『ソリダスの戦艦アウター・ヘイヴンはロシアの賢者達が
開発を進めていたアーセナルギア級を奪い改造されたものだ。
これもメタルギアの一種と思っていい。
中には月光を初めとする無人兵器群を搭載
ナオミが残した情報では各PMCから選りすぐりの兵士を
集め 強化させた大隊を配備しているようだ。』
合間にオタコンからMK.Vが手渡され
受け取ったのを確認したオタコンはブリッジに向かう。
『J.Dを破壊し賢者達のシステムを完全に
支配した暁には、ソリダスはヘイヴンを旗艦として
傘下のPMCを世界中に展開するつもりだ。
・・・そして、武力による制圧を開始するだろう。』
話の途中で何かが・・・・ヘイヴンが浮上してきた。
「ヘイヴン出現しました!」
「主砲射撃用意!!」
メイ・リンが命令したのか、ミズーリの主砲が
ヘイヴンに向けられる。
海の中から ヘイヴンが完全浮上した。
『よく聞くんだ。ソリダスの世界制圧を止める
これが最後の機会となる。』
戦艦を見た兵士が、うろたえていた。
隊士や志士のほとんども 同じく。
『メリル、聞こえるか?』
唐突に大佐の声が遠くから・・・
メリルの無線から、聞こえてきた。
周波数をメリルだけに絞ったのか
『メリル・・・命の限り、務めを果たすんだ。
いいか?私は最後まで見守っている。
お前に何があろうと・・・お前は私の誇りだ・・・・』
それを聞くメリルの眼には 涙が流れていた。
やっぱり、大佐との関係を諦め切れてなかったのか・・・・・・
徐々にヘイヴンのハッチが開き
レールガンが露わになった。
「レールガン露出・・・!」
「あれが・・・・裸の核兵器・・・・・」
メイ・リンの呟きが やけにハッキリ聞こえた気がした。
ここで・・・何もかも終わらせる・・・・
ソリダスが起こした罪に俺にも責任があるのなら・・・・
全ての罰を俺が受けるべきだ・・・・・・
覚悟した途端、無線から何故か銀さんの声が聞こえてきた
『おい!聞こえるか?』
「銀さん!?無線なんて使えたか!?」
『あんま見くびんなよ!銀さん意外と器用なんだぞ!』
ひとしきり文句を言ってから 銀さんがこう続ける。
『、これだけは約束してくれよ・・・
必ず生きて帰ってこい。俺達の為とはいわねぇ
や・・・オメェのことを待っている人のために勝ってこい!』
その一言は 何よりも心に沁みた
「・・・分かった、必ず帰ってくる。」
力強く呟いて、無線を切る。
そうだ・・・・俺はこんな所で死ねない・・・・
もうすぐ4月30日・・・・
に会って伝えることを伝えてから・・・・・・
いや、今はヘイヴンの突入することだけ考えよう・・・
そして・・・全てを終わらせるんだ・・・・・
全てを・・・!
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後書き(退助様サイド)
退助「え〜、尺の問題で ここで切らせてもらいました。」
新八「結局余っちゃったんですね・・・・」
高杉「にしても無謀すぎはしねぇか?
んとこの奴らも平常心じゃねぇし。」
オタコン「それでも・・・ソリダスを
倒さなくちゃいけない。何があっても・・・」
退助「つーかアンタらは艦内の何処にいるわけ?」
高杉「俺らは真撰組や桂一派と離れた所にいるぜ・・・
あんま信用されてねぇみたいだからな。」
退助「そりゃそうでしょうよ・・・・・
あ、実は言うとメイ・リンに励まされてた乗組員は
本編では監督自らCVを担当しています。」
新八「ええ!?そうなんですか!?」
退助「それ以外にも結構出てるので
探してみてはどうでしょうか?」