戦館内に江戸からの協力者が集まり、各々着席して
ブリーフィングを受けていた。





・・・俺は酸素マスク片手で席に座っている。





「ヘイヴンは毎時33ノットで太平洋を南へ向かい潜航中
本艦はヘイヴンに毎時ごと凡そ2海里ずつ引き離されている。」


随分遅ぇな、もっと急げねーのか?」





土方さんがやや不服げにメイ・リンへ言う。





「残念ながら今の彼女(ミズーリ)にはこれが限界なの。」


「メイ・リン殿、敵の目的はわかっておられるのか?」


「ソリダスの標的は
デブリに偽装された米軍事衛星『J.D』。」





メイ・リンは差し棒で 画面に映った衛星を指す。





「ヘイヴンはレールガンをJ.Dに向けるために必ず浮上する。」


「J.Dの軌道が分かれば・・・・・
ヘイヴンの浮上ポイントも予測できる・・・・」


ジョニーが右腕にあるコンピュータで計算を始めた。





「わっちらは難しいことは分からん・・・
分かりやすく言うとどうなるんじゃ?」


「楕円同期軌道を描いているJ.Dが最接近するのは・・・・・」





考えてる最中で差し棒を落とし、メイ・リンが慌てて拾っている所で


「出た!15時間と6分12秒!」





ジョニーの叫びが室内に響いた。





「あまり余裕がないんですね・・・・・」


「そう、15時間後のベーリング海峡から
494海里離れた洋上の上空。
ヘイヴンはそれを狙ってその海域で船位保持するはず。」


「そこまで近づかないと撃てないの?」





メリルの呟きに、しばしメイ・リンは戸惑っていた。











ACT−17 会議中のトイレ申告とかクシャミってさー、気まずい











そこに オタコンが前に出てきて答える。





「REXのレールガンが撃ち出す核弾頭の加害範囲は
せいぜい半径300メートル。」


「だったら適当に狙えば破壊できるんじゃねぇですかい?」


「そう簡単にはいかない。
相手は秒速10キロで移動中の衛星だ。
可能な限り近づかないと精度が得られないだろう。」


「ソリダスはJ.Dが最接近するまでは
核を発射しない。ミズーリはその間に遅れを取り戻す。」


オィ・・・んなのんびりして間に合うのか?」







低くささやいた声の主は、ブリーフィングルームに
鬼兵隊を引き連れて入ってきた高杉。







「高杉!?何故貴様がここにいる!?」


「聞いてねぇか?俺も奴を倒すのに協力するってな。」


「な、テメェに背中を預けられるか!





刀に手をかけつつ立ち上がる土方さんへ
メイ・リンが叱責を飛ばす。





待ちなさい!彼も彼なりにソリダスを
倒そうとしているの。協力してあげて。」


「チッ・・・・」







悔しげに座り直す土方さんや、室内の皆に聞こえるように





心配すんな、俺ぁ奴が世界をぶっ壊すのを壊すだけだ。
それ以外は眼もくれねぇんだよ。
・・・壊すのはこの俺だ 誰にもやらせねぇ。」


「私は晋介様に付いてきただけっスからね!!」


「フェミニストとして我々の仕事を邪魔されるのは
腹が立つんですよコンチキショー。」





高杉達は淡々と宣言した。





「それならいい・・・・メイ・リン、続けてくれ。」







メイ・リンは気を取り直して説明を再開する。





「ええ、ヘイヴン停止後追いつくのに1時間


本艦はその後ヘイヴンが発射するまでの間に
攻撃を仕掛ける必要がある。


本艦には最低限の設備しか積まれていない・・・
電子兵装は一切ないの。
レーダーもあらゆるハイテク兵器も使えない。」


「だったらどうするアルか?」





手を上げた神楽に答えてか、彼女は手で自分の目を指す





「敵の捕捉は・・・目視で行う。ヘイヴンは
J.D破壊に艦橋部のレールガンを使う模様


核弾頭射出のためにカバーを開いた瞬間が
こちらにとって唯一の突入のチャンスになる。」





ややかったるそうな声音が 水を差す。





「突入だ?おい姉ちゃん
そんなの外側からぶっ壊せば早いんじゃね?」


「銀さん、それは無理だ。ソリダスがシステムを
握ったまま物理的にG.Wを破壊してしまったら


・・・サンズ・オブ・ザ・パトリオットの優先権限
ソリダスに残ったままになってしまう。」


「そう、だからこそヘイヴン自体を攻撃する前にまず
ヘイヴンに搭載されたG.Wを破壊する必要がある。」


「まるで『デススター』だな?」





皮肉げにスネークがそう呟いた。







「いい?ヘイヴンはレールガン発射のために必ず浮上してくる。
本艦はそれを確認して急速接近、突入部隊を送り込む。」





歩きながら話すメイ・リンが 俺の肩に手を軽く置いた。





我々の目的は核弾頭発射の阻止と、G.Wの電子的破壊
・・・敵は電子的索敵手段に頼りきっている
海上に出るまで本艦を補足できない。」







言ってから彼女が前に戻ろうとした時


ジョニーがメイ・リンの尻に触ろうと手を伸ば・・・・


ってんな時に何やってんだあいつ・・・・!







俺が注意する前に、隣にいたメリルが腕を掴んだ。





「馬鹿!!」


「ああ・・ごめん・・・・」







・・・あれ?心なしかこいつら仲良くなってないか?







「ヘイヴンの装甲カバーが開くタイミングに
あわせて突入部隊をカタパルトから射出


突入部隊はG.Wの物理サーバールームへと侵入し
ワームクラスターを流し込む。」


はい!その間にJ.Dをシャットダウンされる事はないの?」





テリコが手を挙げて質問する。





ソリダスは賢者達のネットワークに既に潜り込んでいる。
その状態を維持してないとJ.Dを破壊しても意味がない。
彼らにG.Wはシャットダウン出来ない。」


「だったらソリダスは突入部隊を全力で阻止してくるはずよ?」





今度は ヴィナスがそうたずねる。





「ええ・・・・G.Wへと繋がる通路にはマイクロ波の一種である
指向性エネルギー兵器が搭載されている。」


「マイクロ波だって!?」


「銀ちゃん、マイクロ波って何アルか?」


「あれだろ?それを当てると縮むんだろ?」


「違いますよ銀さん、マイクロ波って言うのは
電子レンジに付いてるものですよ。」


「そう・・・生身の人間は瞬く間に蒸発を始めてしまう・・・・」







彼女の言葉に 全員が黙り込む。









「その電子レンジの中にね・・・まさに決死隊。」







重い空気が漂う中 俺は、口を開いた。







俺にやらせてくれよ?うってつけじゃないか。」


君!ダメだ君は!そんな身体で
電子レンジの中に入ったら死んじまうぞ!」


「だからだよ、知らない奴が多いだろうから言っておく
・・・俺は後3ヶ月で殺戮兵器に成り代わる。」







知らなかった近藤さん達は、驚きを隠せずにいた。







「な!?君が殺戮兵器に!?」


「ああ、俺の身体の中にウィルスがあって
それがアンタらにも発症するようになるのが
3ヶ月後だ。ちなみに俺もそれで半年後に死ぬ。」


「だ、旦那の余命が後半年しかないんですか!?」


・・・テメェどうする気なんだ?







右目を細め、高杉がボソリと呟く。









・・・俺は半ば自暴自棄になっていた。







もう どうでもよくなってきたのだ・・・・







「・・・言わなくても分かるだろ?」


!!貴様死ぬつもりか!!」







桂さんの怒号も、この時の俺には届かなかった。







だったら何だ!俺のせいでアンタらが
死ぬ事になってもいいって言うのか!


俺はそんなのゴメンなんだよ!!
俺のせいで近しい人が死ぬくらいなら俺は自ら死を」







言い切る前に 銀さんが俺を思い切り殴り飛ばす。







「万事屋!!テメェ何してやがんだ!!!」


旦那!!の旦那は病人ですぜ!!それを」





土方さんと沖田君に取り押さえられながらも


銀さんは、俺を睨みつけたままだ。





オイ、悲劇のヒーロー気取ってんじゃねぇよ。
殺戮兵器になるから死ぬだ?
俺達に何も言わずに死ぬつもりだったのかよ?」


「・・・・当たり前だろ・・・・
俺がいなけりゃ みんな死ぬ事はないんだからな。」





吐き出した声は、自分でも驚くぐらい弱々しかった。







ざけんじゃねぇぞテメェ!!!
俺達がそんなんでテメェを避けると思ってんのか!
んなちっぽけなモンで迫害すると思ってんのか!!



大体 テメェが死んだらはどうすんだ!!
俺達が慰めんのなんてそれこそゴメンだぞ!!!」








俺は、ようやく気付かされた。







そうだった・・・・・


一番大切なことを忘れていた・・・・・・・







俺がいなくなったらあいつは・・・・・
は・・・この後何を糧に生きればいいんだ・・・・






けど・・・・どの道 俺といればFOXDIEで・・・







俺は一体どうすればいいんだ・・・・・!









惑う俺に気付き、銀さんが怒りを納めて
メイ・リンへと向き直る。





「・・・悪ぃな姉ちゃん、続けてくれ。」


「え、ええ・・・・ええと・・・・何処まで話したかしら?」


「確か殺戮兵器がどうのこうのと仰ってましたね。」


「先輩違うっすよ、電子レンジがどうのこうのでしょ?」


「そ、そう。通路の外は相当数の兵力、通路内は
仔月光と呼ばれる無人兵器が待ち受けているはず。」


「この情報源は何処だ?」







痛む頬を押さえ、俺は椅子に座り直しながら聞く。







ここまで詳細な情報があると言う事は向こうに
スパイがいるか、誰かが情報提供する以外有り得ない。





「それと、本当にG.Wを破壊する術があるのか?」


「・・・それについては、彼女が道しるべを残してくれた。」


「彼女?一体誰が?」


「・・・・ナオミが準備を進めていたんだ。」





ポツリと呟いたのは オタコン。





「ナオミが・・・・?」


「ヘイヴンの内部情報も彼女が遺したものだ。」


「だが・・・一体どうやって俺達に遺したんだ?」


「一度 ナオミが僕の部屋に泊まったのは教えたね?」


「そこであの女とネチn」


神楽ちゃん!こんな時にその手の発言はナシ!!
あの人じゃあるまいし状況考えてよ!!」





神楽に殴られる新八君を余所に、オタコンは続ける。







「その時僕の部屋に来た理由は・・・僕だったんだ。







そうか・・・・その時からもうソリダスの計画
本格的に動いていたという事か。





「だけど彼女は、結局サニーに目をつけた。」


「サニーだって・・・?」


「そう言えばと一緒にいたガキがいたよな?
何でそいつに目をつけたんだよ?」


「土方さん、そんな事も分からねぇのですかい?
だからアンタはモテねぇんでさぁ。」


「んだとテメェも一緒だろうが!!」


「トシ、総悟やめろこんな時に!!」





斬り合いに発展しそうな二人を宥める近藤さんも
無視して オタコンは言葉を紡ぐ。





「・・・・自分の計画を、サニーに託したんだ・・・」


「本作戦は彼女の情報に基づくものなの。」


「・・・・ナオミは、どっちの味方なんだ・・・?」


「・・・・彼女がどういうつもりだったのかはもう分からない。
でも、ソリダス達を止める意志があったのは間違いない。」







オタコンは・・・少し泣きそうになっていた。


ナオミの事を 思い出してしまったのだろう・・・・・









明りが灯り、部屋にはしんみりとした空気が漂う。







「・・・・気休めでもいい!何かいい話はないの?」







耐え切れずにメリルが叫んだのも無理はない。







確かにこんなムードでは この後の作戦がやり辛い。







はい、注目。中国にはこんな言葉がある。」





雰囲気を変えるべく、メイ・リンが切り出す。





「鳥の将に死なんとするや、其の鳴くや哀し
人の将に死なんとするや、其の言うや喜し。」



「・・・・えっと・・鳥の・・・
何だって?おい何だよこれ新八?」


「僕に聞かないで下さいよ銀さん・・・・・」


「・・・・・さあ、他に質問は?」







そこに誰かが手を挙げた・・・スネークだ。





「はい、スネーク。」


「・・・・・誰か、煙草をくれないか?」


『・・・・・・・・・はあ・・・・・・・・・』





室内全員のため息が 奇跡的に唱和した。







こんな時に何を言い出すと思ったら・・・・・・







「俺のならあるぞ そっちと合うかどうかわかんねぇけどな。」


「ああ、スマンな。」


スネークが土方さんの煙草を取ろうとした瞬間







何者かの手が伸びてきて煙草を取り上げた。







「ダメ!」





取り上げたのは、室内に入ってきたサニー


彼女は近くにあった禁煙マークを指さして言う





「艦内は禁煙です!」


「な・・・・・!」


「・・・・分かった、悪かったよ。」





サニーの後ろには・・・・もいた。





!?サニー!?
何でお前らがここにいるんだよ!?」



「・・・あなたがこんな状態で戦おうとするから
ここに来たのよ。私も戦うためにここに来たの。」


「ダメだ!早くサニーを連れて離艦しろ!」


「いやよ!!
今回ばかりはあなたの言う事は聞かない!!」






強く言うの眼には 涙が浮かんでいる。





護られてばかりなのはもう嫌なの!!
私もの役に立ちたいの・・・だから・・・!」


「・・・・・分かった、これ以上は何も言わない。」


「・・・ありがとう・・・」





俺達は 互いに見つめ合う







・・・・・・こんな雰囲気で二人きりならば
キスの一つもしただろうが





「おい、いっちゃえよ。」


「え?何を?」


「何も言わずともこの後する事は分かっているだろう?」


「いっちゃえよ色男!!」





生憎 ここはやたらと人のいる室内で


しかもいつの間にか俺の周りを、銀さんと桂さん
そして近藤さんが囲んで


ヘラヘラと笑いながら肘で突っついてきている。





「な・・・無理だっての!人前でそんな出来るわけが・・・!」


「んだよ度胸ねぇなお前。」


「うるせぇよモテねぇ野次馬三人組!!」


「「「誰がモテねぇんじゃコラァァァァ!!」」」







気がつくと 周りから笑い声が響き渡っていた。





・・・・・・やっと重い空気が軽くなった。


これで・・・気持ちの整理がついたかな・・・?








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後書き(退助様サイド)


退助「さあブリーフィングも終わり
次回いよいよ敵の本拠地に突入です!!」(予定)


新八「(予定)って何ぃぃぃぃぃぃ!?」


退助「いや、ちょっと尺が
どれだけ行けるか分かんないもんで・・・・」


銀時「つーかオッサン、あの状況で
煙草吸おうとするってどうよ?」


スネーク「仕方ないだろ?ニコチンが切れたんだよ。」


土方「分かるぜ、ニコチン切れたら
是が非でも吸いたくなるってもんだ。」


サニー「でも艦内は禁煙です!!吸うなら外で吸ってください!!」


新八「流石にサニーちゃんはしっかりしてるね。」


退助「まあただのアンチスモーカーなだけなんだけどね・・・・・」