傷だらけの身体を無理やり動かし、俺は
ソリダスを追い・・・・港に着く。
「うん?もう追いついてきたか・・・・・
流石は夜王鳳仙と対峙しただけの事はある。」
「な・・・何だと・・・・!」
「一度吉原に来た事があってな・・・夜兎の力を
利用しようとしたがとんでもない頑固な老人だった。
この私に戦いを挑んできたのだからな。」
それでも夜王鳳仙と戦って生き延びている・・・・
なんて強さだ・・・・
ソリダスは鳳仙同等・・・またはそれ以上か・・・?
「しかしもうそんなものは必要ない。システムは
手に入れた、これで恐るべきものは何もない!」
「まだだ・・・・!
ここでお前を倒せば全て終わる・・・!」
フラフラになりながらも
俺はパトリオットをソリダスに向けた。
システムが掌握された今
使える武器はこれしかない・・・・
けどこれがあれば十分・・・!
「パトリオット・・・・ビッグ・ママの愛用銃か
・・・・撃てるものなら撃ってみろ。」
なめやがって・・・・・・!!
歯を食いしばり、パトリオットの引き金を引き
ソリダスに向かって連射するが・・・・
一発も 当たっている様子がない。
くそっ、奴もフォーチュンが持っていた
電磁兵器を持っているのか・・・・・
「フフフフフフ・・・無駄だ、貴様に私は殺せん
それにFOXDIEの事もある 無理をするな。」
「お前に何が分かる・・・・!」
「分かるさ、教えてやろう。貴様の体内にあるFOXDIE・・・
貴様が蛇の眼になる時が一番活動が活発になる状態だ!」
何・・・・・・・・・・!?
ACT−16 特殊能力にリスキーな条件はつきもの
「貴様は蛇の眼になると身体能力が格段に上がり
蛇さながらの能力を得る事になる。
・・・しかし、いい事ばかりではない。
その瞬間、貴様のFOXDIEの侵食スピードが
数十倍に跳ね上がるのだ!!
つまり貴様が蛇の眼になり戦闘力が上がるのは・・・
苗床を護るFOXDIEの自己防衛プログラムに過ぎん!!」
俄かには信じられず、俺は奴の言葉を突っぱねる。
「ハッタリかますなら
もっとまともにしやがれ・・・・!!」
「ハッタリではない!全てナオミが教えてくれた事だ。
最新の解析結果から推測すると・・・
貴様の発症期間は半年に縮まっているそうだ!」
「な・・・・・!?」
「しかし、FOXDIEが無差別発症を起こす期間が3カ月・・・・・
どの道貴様には命を絶つ以外 残された道などない!!」
ソリダスの言葉が終わらない内に、海から
動物のような鳴き声が木霊する
海が荒れ狂い そこから何かが顔を出す。
現れたのは・・・・・・巨大な戦艦
何なんだあれは・・・・!?
戦艦の巨大なハッチが開き
降ろされたワイヤーにソリダスは乗っかった。
「これが我らが勝ちとった自由!!
アウター・ヘイヴンだ!!」
これが・・・ナオミの言っていた・・・・
アウター・ヘイヴン・・・・!!
昇っていくワイヤーに捕まった奴を狙い撃つが
結果は先程と全く変わらなかった。
・・・・・そして力が失われ
俺は パトリオットを手から離してしまった。
「見ろ!この呪われたレールガンでJ.Dを破壊する!!
それで全てが終わり、全てが始まる!!」
何とか顔を上げると 露出して見えたのは
シャドーモセスのREXが装備していたレールガンだった
やはり俺達がモセスに来る前に回収していたのか・・・!
「だがジャック!!
貴様はこの記念すべき江戸で墓標となるのだ!!」
ヘイヴンが急旋回を始めたその時、俺は
あの発作によって力尽きて倒れてしまった。
もう限界か・・・・・・・・・・
「ヘイヴンで潰してやる!!!」
真正面に向いたヘイヴンが こちらに向かって
一直線に突進してくる。
逃げ出そうにも もう身体が思うように動かない
長いこと発作を抑え込んだ代償なのか
全身の力が抜けてしまっている・・・・
ヘイヴンが地面を割って俺へと迫る・・・・
今度こそお終いか・・・・・・・・・・
諦めて目を閉じた
が・・・途中で地を割る音が止まる。
何も 起こらない・・・・・?
ふと眼を開けるとそこには・・・・・フォックスと神威がいた。
「な・・・・・・!?」
「ダメだよお兄さん、こんな所で死んでちゃ。」
神威は両手で、フォックスが背中で
ヘイヴンの進行を抑えている。
不思議な事に戦艦は ピクリとも動かず留まったままだ。
「そっちのお兄さんもきつそうだね・・・大丈夫?」
『見くびるな・・・・!追い詰められたキツネは
ジャッカルより凶暴だ・・・!!』
「ったく団長も無理しやがるぜ・・・・・」
言いながらどっこいしょ、と片腕で俺の肩を持つのは
神威の部下である阿伏兎。
「ほら早く逃げねぇと団長ごと潰されっぞ?」
「待て・・・!あいつらを置いて・・・・!」
「あー大丈夫だって、団長なら」
「ちょっとキツいかもしんない・・・・・・!
地球にまだこんなものがあったなんて驚きだネ・・・」
「あらら?そうでもないみたい?」
「呑気なことを言ってる場合か・・・・!!」
あのままじゃ・・・二人が潰される・・・・・!
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
思わず発した叫びと共にヘイヴンの近くに水柱が立った。
何だ!?何かの砲撃のようだが・・・・・・
「うん?」
背後を振り返るソリダスの眼が、一隻の戦艦を捉える。
あれは・・・・大戦中の戦艦『ミズーリ』・・・!
現役を引退したはずの船が何でこんな所に・・・・・
「フン!化石め・・・!」
ソリダスがそうぼやくとヘイヴンが後退し
海中に消えていった。
一息ついて フォックスと神威が寄ってくる。
「大丈夫かい御二人さん?」
「平気だヨ阿伏兎。」
「何故・・・俺を助けた・・・・!」
「吉原で約束したでしょ?
俺に殺されるまで死なないでねって。忘れた?」
「何が約束だよ!こちとら変な爺さんに
絡まれて大変だったんだからな!」
不満げな阿伏兎に対し、神威は笑みを崩さない
「別にいいだろ?あの夜王鳳仙と戦って
生き延びたその力を見てみたくてね。」
「だからそれのせいで死にかけたんだろうが!
少しは遠慮ってもんを覚えろコンチキショー!!」
ったくこんな時に呑気な奴ら・・・・・・・
「ガ!アァァァァ!!!」
『ジャック!?どうした!?』
苦しい 今まででデカイ発作だ・・・!!
「おいちょっと兄ちゃん?どうした突然?」
早く・・・早く注射を・・・・・・
注射しようとする直前で注射器が手から滑り落ちる
拾う事も叶わず・・・視界が暗転し
「ちょっと?お兄さん?ねえ?」
神威の声が 何処か遠くに聞こえた・・・・・・
眼を覚ますと そこは何処かの病室だった。
「・・・・・・・・ここ・・は・・・・?」
「大丈夫?」
最初に眼に映ったのは・・・・
艦長服と帽子を被ったメイ・リンだった。
「メ、メイ・リン・・・・!何でお前がそんなカッコ・・・・」
「私、数ヶ月前からミズーリの艦長をしているの。
シュルツ少将が解任されたでしょ?
その時にある提督に気に入られてね・・・・」
「・・・・・そうか・・・・・」
メイ・リンは真剣な顔つきでこう言った。
「さん・・・・・・
今あなたの仲間達を集めている所なの。」
「え?」
「今米軍が全機能停止、他の国もほとんど停止状態なの
だからあなたのために協力者を募っているの。」
協力者・・・・・・・一体何故・・・・?
疑問が顔に出ていたらしく、彼女は答えてくれた。
「あのね・・・・・今ソリダスを追えるのは
私達だけなの。だから・・・」
「分かってる・・・・・
奴を止めるのはこの俺だ・・・・・」
突然 メイ・リンの無線が鳴り出した。
「どうした?・・・・・ええ!?そんなに!?
・・・・分かった、すぐ艦内に案内しなさい。」
かなり驚いているみたいだが・・・・一体何が・・・・・?
「さん・・・・よく聞いて あなたの仲間の一部が広い範囲で
呼びかけを行ったみたいなの。それで多くの協力者が集まるみたい。」
「そ、そうか・・・どんな奴がいる?」
彼女は手の指を折りながら告げる。
「攘夷志士、真撰組、吉原自警団、鬼兵隊・・・
数えきれない位いるわ・・・・」
「何・・・!
吉原はともかく何で鬼兵隊が・・・・・!」
「自分から来たみたいなの、何故かはわからないけど・・・・・」
元々は敵同士の上 何か腹積もりがありそうなのは
見え見えだが・・・とにかく、今は戦力的に乏しい
なりふり構ってられないか・・・・・・
「とにかく、ブリーフィングは12時間後に行います。
それまでゆっくり身体を休めて・・・・」
「あ、ああ・・・・・・・・・」
頷き 俺が眼を瞑った瞬間
メイ・リンが突然キスを・・・・・・・
「お・・・おいおい・・・・・・・!」
彼女は少し顔を赤くして離れる。
「・・・実は・・・シャドーモセスの頃から気があったの・・・・・・
でもローズさんがいるって聞いてからどうしても
・・・・・その・・・・」
「わ、分かったから早く行って行って・・・・」
「ごめんなさい・・・・・それじゃ。」
メイ・リンは病室から足早に出て行った。
全く・・・・・・エヴァもそうだったが
意外にモテるんだな俺って・・・・
い、いやいや今は身体を休める事が最優先だ・・・・・・・
ソリダス・・・・・・
何としても核攻撃を阻止しなければ・・・・・・
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後書き(退助様サイド)
退助「さてさて急展開ラッシュが続いております!」
新八「さんホントに大丈夫なんですか?
あれでまだ戦おうなんて・・・・」
神威「大丈夫さ、あのお兄さん鳳仙と同じで頑丈だから。」
神楽「てか何での前に
馬鹿兄貴がしゃしゃり出てきてるアルか!!」
神威「言っただろ?
あんな所で死んでもらったら困るって。」
阿伏兎「だからって奴に喧嘩売ってどうすんだよ!
こちとら刀で斬り殺されそうだったんだからな!!」
神威「え〜?でも何とかなったじゃないか?」
阿伏兎「運が良かっただけだろスットコドッコイ!!」