「要するにテメェがやりてぇのは世界征服か?」
「当たらずとも遠からずと言った所だな。言っただろ?
賢者達の統制を解放し ヘイヴンを築き上げると!」
「だったら何で江戸を襲う必要があった?
何を目的で江戸の連中を巻き込んだ?」
「江戸には事実上の支配者、天導衆が
いるそうではないか。賢者達の次に権力がある
こいつらの始末をしたかったのだ。」
「そんな勝手な理由で江戸を戦場に・・・・!!」
「だが天導衆は何処を探してもいなかった。
流石に危機を察知したのか、何処かに逃げたようだ。」
言いながら、奴の視線は俺へと向けられた。
「まぁ天導衆は2の次だ 本来の目的・・・・
それは貴様の排除だ、ジャック。」
俺を殺す為だけに 江戸を戦場に・・・・・!
「たった一人殺す為に江戸を戦禍に巻き込んだってか?
とことん腐ってやがるなテメェは。」
「フン・・・侍には
敬意を払ったつもりだったのだがな・・・・・」
ソリダスは腰に挿している刀に手を置いて呟く。
そういえば何でソリダスは刀を・・・・
しかも2本も持っているんだ?
「リキッドは侍を前時代の遺物として忌み嫌っていたが
私はそうは思わん。侍は侍なりの強さと言うものがある。
現に貴様はここまで生き延びた。
強化兵だけでも侍には敬意を払い、銃火器での
攻撃を禁止させた。」
解せないとでも言うように銀さんがため息をつく。
「ったく、んな事すっからここまで
邪魔されるんだろうが。ボケてんのかテメェ?」
しかしソリダスは余裕を崩さない。
「並の剣客程度では強化兵にすら歯が立つまい
だから、それを見事に勝ち抜いた侍は賞賛に値する。
現に私も腰に刀を挿しているだろう・・・
刀は世界で最も切れ味のある刃物だ。いくら技術が
優れていてもこの切れ味を再現するのは不可能だ。」
確かに・・・・時々強化兵と侍の斬り合いを見たが
逆にマチェットや高周波ブレードの方が斬られていた。
ホントに刀は切れ味が高い。
ソリダスは銀さんへこう言い放った。
「どうだ侍?私とヘイヴンを築き上げないか?」
ACT−15 戦争経験したジイちゃんほど
怒らすと怖いもんはないぞ
「何?」
「この国は天人によって支配された。貴様は天人を
一掃するために戦ったはずだ、なあ白夜叉?」
銀さんが白夜叉だと知っている・・・
どれだけ情報を持っているんだソリダスは・・・・
「どうだ?私と天人を皆殺しにし、この星から
天人を追いだし二度とこの星に来れないように」
言葉半ばで銀さんは木刀をソリダスへ振りかぶるが
刀で攻撃が防がれ、距離を置いて着地する
「ふざけんのもいい加減にしやがれクソジジィ
俺ぁそんなもんの為に戦ったわけじゃねぇ。」
「国の為でもない、まして天人が憎いわけでもない。
・・・なら貴様は何の為に戦っていたというのだ?」
正眼に木刀を構えた銀さんの眼が 鋭い光を放つ
「・・・護るもんが・・・・あの人が信じた世界を
護る為に戦ったんだ・・・テメェみたいに
やっすい感情で戦ってたわけじゃねぇんだよ!!!」
「・・・・所詮は衰退した侍か・・・失望したわ!!」
ソリダスが背中のアームで銀さんを弾き飛ばした。
「ぐわ!」
「銀さん!!」
「ボス。」
強化兵の一人がソリダスを呼び
「・・・・役者が揃ったようだな・・・・ジャック
そして白夜叉!見届けるがいい、我々の勝利を!!
その眼で世界が変わる瞬間を焼きつけておくがいい!!」
奴等が 傍に止めてあった船へと飛び乗る。
「出せ!!」
ソリダスの合図と共に 船が出港していった・・・
『大丈夫かい二人とも!?』
「あ、ああ・・・俺は大丈夫だ・・・・」
「あのクソジジィ・・・!早く奴を追うぞ!!」
「ああ・・・・・!」
身を起こした俺達は、水路を進みソリダスを追う。
奴が乗り込んだ船が左に旋回し
直後 その船が突然ライトに照らされた。
『ソリダス!!そこまでよ!!』
辺り一帯にメリルの声が響き渡る。
『ただちに銃を降ろして下がりなさい!!』
「うん?」
ソリダスが前を見るとそこに船が数隻・・・・・・
良く見ると アメリカ国旗が見えた。
米軍が来たか・・・
上空にはヘリが3機飛び交い、橋には
数えきれないほどの軍用車が止まっており
周囲で無数の兵士が 武器を構えていた。
米軍の船がソリダスの船を取り囲むと
乗っていた兵士が、次々にソリダスの方へ
武器を向けて構え始める。
その中にちらっとテリコやヴィナスの姿もあった。
陸軍の陣頭指揮を執っているのだろうな・・・
しかしこの数はすごい・・・この場所に
兵士だけでも数百人はいる・・・
『全員銃を捨てて、両手を見えるように上げなさい!!』
「メリル・・・!」
俺と銀さんはメリルが乗っている船に乗り込んだ。
スネークも既に乗り込んでいて、俺達に気付き
手を上げて挨拶をする。
「随分フラフラだな若造?」
「あれ?アンタあのジジィに似てね?」
「それは後から説明するよ銀さん・・・
スネーク、これは一体・・・・」
「陸、空、海軍の混同部隊だ。精々300人か
ソリダスを倒すために集められた。」
300人・・・この包囲網を抜けるのは不可能だな
これでソリダスはお終いだ。
船が動き、ソリダスの近くまで寄っていく。
そこに見えたのは両手を広げて
空を仰いでいるソリダスの姿だった。
おかしい・・・・何故あそこまで余裕を見せれるんだ・・・・・・
訝しがる俺を余所にソリダスが右手を軽く上げた。
「構え!!」
メリルがそう指示を送ると周りにいた兵士が
一斉に武器をソリダスの方に向ける。
が、それでもソリダスは表情を崩さない・・・・
やはりおかしい 普通なら少しは躊躇するはずだ・・・
何故こうまで冷静に・・・・・まさか!?
俺の脳裏に 最悪の可能性が過ぎった
「やめろ!!ソリダスゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
「撃てぇぇぇぇぇ!!」
メリルがそう叫んだ瞬間、ソリダスは
右手を前に振りかざした。
引き金は引かれ 鳴り響くはずの銃声は・・・・
一つとして聞こえなかった。
同時に、ソリダスを照らしていたライトが消える。
メリルは必死にデザートイーグルの引き金を引いたが
全く弾が出ない。
他の兵士も、同様に引き金を引いても
銃弾が出ない事に困惑していた。
「システムはとうに頂いた!!
銃も兵器も、もはや貴様らのものではない!!」
なんて事だ・・・・!
もうシステムが乗っ取られたのか・・・・!
「おい何やってんだテメェら!!早く奴を撃てよ!!」
「出来ればそうしている!!少し黙ってろ天パ!!」
「んだとコノヤロー!!
アメリカでも天パは嫌われてんのか!!ええ!?」
「関係ないだろ今はそんな事!!」
俺がツッコミを入れている間にソリダスは
手で銃の形を模り、手を振り上げる。
「見よ、これが・・・
『ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』だ!」
奴の右手は、ヘリに向かって撃つような真似で動く。
「んだありゃ?本格的にボケたのかあのジジィ?」
「いや・・・・・違う・・・・!」
まるでその動きに呼応するように
全てのヘリの様子がおかしくなる。
2機は周辺の建物に墜落、爆発炎上を起こし
もう一機は味方の船スレスレに通り過ぎ
着水した後、爆発を起こした。
まさか、あの動きだけでシステムを操り
制御不能にしたのか・・・・!?
「フハハハハハハハハハハハ!!!」
「な、何なんだありゃぁ・・・突然ヘリが・・・・」
「システムを乗っ取られただけで
こうなるなんて・・・・・!」
高笑いをしていたソリダスが、手をこちらへ向ける。
「死ねぇ!!!」
強化兵がこちらに向かってP90を撃ってきた。
「伏せろ!!」
船から撃ちだされた銃弾が辺り一面に飛び交って
エドとジョナサンが被弾した。
メリルとジョニー、スネークと俺達は
何とか当たらずに済んだ。
銃声が一旦止み、ソリダスが自分の頭に向かって
撃ち真似をした直後 メリル達はおろか
周りの兵士が頭を抱えて苦しみだした。
もちろん この俺も例外じゃない・・・・・
けれどジョニーは何故かこれが出ていないのか
その症状を見せず、ただ戸惑うばかり。
「エド!ジョナサン!隊長!」
「グ・・・・ぐあぁぁぁぁ・・・・・・!」
「おい!大丈夫かよ!?おい!!」
これがSOPの制御が切れた結果か・・・・!
自我を保てないほど苦しむとは・・・!
悶える俺達へ、トドメと言わんばかりに
強化兵達が銃を周りの兵士に向かって乱射する。
逃げる暇もなく倒れていく兵士達・・・・
逃げ惑う中でも容赦なく強化兵の攻撃が繰り返される・・・・・
これはもう虐殺だ・・・・・この世の地獄・・・・・・
「ハハハハハハハハハ!見たか、ネイキッド!!
我々の勝利!!これが・・・
『ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』だぁぁぁぁ!!」
ソリダスの咆哮だけが天へと木霊していた。
・・・やがて兵士達の断末魔が消えたのを確認し
強化兵が一斉に攻撃をやめた。
終わったかと思った刹那、ソリダスの船に
積んであった2連副砲の筒先がこちらへと向けられる。
「邪魔だ!!!」
奴の叫びと共に砲弾が発射され
乗っていた船が 砲撃で沈められた。
『うわぁぁぁぁぁぁ!!!』
衝撃で、俺達は川に投げ出される。
「そのまま朽ち果てるがいい・・・・・・
スネーク、そしてジャック・・・・」
ソリダスを乗せた船は 悠々とその場を去った。
・・・・気がついた俺が見たのは
まさにこの世の地獄だった。
辺りは死んだ兵士達の血のニオイと何かが
焼け焦げたニオイで埋め尽くされていた。
『ジャック・・・良かった・・・・』
Mk.Vが寄って来て、モニターにオタコンが映し出される
「オタコン・・・・・・ソリダスは・・・・?」
『あのまま港に向かったよ・・・・でももうやめよう。』
「・・・・どうして・・・?」
『相手が悪すぎたんだ・・・・!システムも奪われ
米軍に匹敵するほどのPMCと無人兵器がある・・・!
認めよう・・・僕らの負けだ・・・!』
「オタコン・・・・・・・・・」
『倒せるような相手じゃなかったんだ・・・・・・・!』
項垂れるオタコンに、俺は首を横に振った。
「オタコン・・・・・・・勝ち負けじゃない・・・・・
俺の・・・俺達の親が起こしてしまった事なんだ・・・
俺には止める義務がある・・・・・・」
黙り込んでしまったオタコンを残し、俺は立ち上がる。
例え勝ち目がなくても・・・・・
例えここで負けてしまっても・・・・・
俺には・・・奴を止める義務がある・・・・・・・
親の始末は子が付ける。
ネイキッド・スネーク・・・・
アンタはこんなことは望んでなかったはず。
俺が・・・なんとしてもソリダスを止める・・・・・!
何としても・・・・・・・・!!
俺はソリダスを追いかけるように
重い身体を引きずり歩いた。
その頃、からやや離れた場所でジョニーは
命からがらメリルを引き上げたが
メリルに意識はなく グッタリとしている。
「メリル・・・・!メリル・・・!」
ジョニーはマスクを取るとメリルに口をつけ
人工呼吸を施した。
続いて心臓マッサージをするが意識は戻らない。
「メリル・・・!!しっかりしろ・・・・!!」
応急処置を続けるも、いまだに目は固く閉じられたまま
「メリル・・・!!しっかりしろ・・・!!!」
必死に呼びかけながら再び彼が口をつけようとした
まさにその瞬間
メリルが水を吐き、意識を取り戻した。
「ゴホ・・・ゴホ・・・」
「メリル!メリル!!」
ジョニーは彼女気がついた事を喜んでいたが
メリルは瞬きをして、口をさする。
どうやら応急処置を施された事に気付いたらしい
「あ!いや・・・これは・・・・その・・・・・・」
咄嗟の事とはいえ大胆すぎる行動をしてしまったと
うろたえ始めるジョニーへ
メリルからキスをしてきた。
「!?」
「アキバ・・・・ありがとう・・・」
「あ、あの・・・・よかったら・・・・
ジョニーって・・・呼んでくれないか?」
「・・・・・・・・ええ・・・・・・・」
メリルとジョニーは互いを見つめあい
また口付けを交わした。
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後書き(退助様サイド)
退助「さあこれでもかと言う位に
大変なことになってまいりました!」
銀時「何なんだったんだよさっきのあれは?
何でまで突然苦しみだしたんだよ?」
退助「それはシステム管理から遮断された結果です。
1話目でもあった通り、蓄積していた感情が
一気に表面化しノイローゼに陥ってしまいます。
の場合はそこまでシステム下にいなかったので
軽くで済んでます。」
新八「そんな状況で僕ら勝てるんでしょうか・・・・・」
神楽「んなことどうでもいいアル、
とだけでなくこいつらもいちゃつきやがって
マジでくたばれヨコノヤロー。」
新八「神楽ちゃんもこれでもかと言う位に
すさんじゃってる!?」
メリル「それは・・・・悪かったわよ・・・
私だって一応女なんだから・・・・」
銀時「何?体格に似合わずツンデレか?」
メリル「体格関係ないでしょ!!!」