エメリッヒ博士、久しぶりね。」


「ナオミか、ここに来ていたんだね。今まで何を?」


「ヘイヴン社の医学部に所属していたの、今日は
その医療物資の搬入のため。」


「ああ、そうだったんだ。」







ある一室で オタコンとナオミが話していた。







「ねえさっき会ったサニーって子だけど
彼女何かの教育 受けてたの?」

「え?何でだい?」


「何でって・・・あの年で核物質を全て暗記していたし
・・・それにコンピュータの扱いも他に比べたら・・・」


「ああ、彼女は天才でもあったんだけど
賢者達の英才教育を受けさせられていたんだ。
それであの年でも・・・」


「そうだったの・・・・」





そこでナオミは ふとオタコンの前にあった
パソコンの画面に映っている女性に目がいく。





「あら?この人誰?」


「ああ、僕の妹さ。」


「へぇ・・・博士にも妹さんがいたのね。
恋人かと思ったわ。」





何気なく言ったつもりのその一言にオタコンが
少しドギマギしつつ答える





「いや・・僕に彼女は・・・エマは優秀なプログラマーだったんだ。
シャドーモセスのシステムを破壊したのも彼女なんだ・・・・・」





そこで急に、彼の表情が沈む。





「彼女は・・・ヴァンプに殺された。


「ご、ごめんなさい。」


「いや 君が謝る必要はないよ。僕も同じなんだ。
僕・・・アニメオタクだったんだ。」


「それで、オタコンって?」







やや離れた場所に立つナオミへ





「ああ、SFアニメに憧れてこの世界に入ったんだ。
でも、現実は違った。科学が・・自分の研究が人を
不幸にするなんて・・・そんな事になるなんて考えてもなかった。」





オタコンはやや寂しげに、そう語った。





「え?」







ゆっくりと彼は立ち上がり言葉を続ける。







「僕ら科学者は・・・誰も悪魔崇拝者なんかじゃない。
でも、自分に悪意がなくても誰かの悪意に利用されるんだ。」



「あ・・・・博士・・あのね」


「あ、これもサニーが造ったんだ。」





何かを尋ねようとしたナオミの言葉を遮って


オタコンがずっといじっていたパソコンの画面の前に
座り直し、Mk.Vを見せる。





「へえ、これもサニーが?」


「これはジャックの元にあるものと同型の予備だよ
研究機関のLANに潜り込んで極秘資料やパテントを漁って
創ったんだ。正直、腕は僕より確かだ。」


「そうだったの・・・」











ACT−14 オタクはそーいう雰囲気に超オクテ











「サニーは生まれてすぐ賢者達に捕えられたんだ。
肉親には一度も会ったことがない。
・・・彼女はずっと、ネットの内側で育ったんだ。」


「それで人見知りしたり・・・言葉が上手く話せなかったり?」





もう一度立ち上がり、彼はここにいないサニーを
思い浮かべて言葉を紡ぐ。





「うん、電脳こそ彼女の生きる場所なんだ。
彼女は内側からしか外を見ることができない。


彼女はいつも内側から自分と自分の家族を探しているんだ。
・・・自分が誰で、何処に向かおうとしているのか・・・」







少し俯いたナオミが 胸元に置いた自分の手を握り締める





「自分と・・自分の家族を探してる・・・・・」


「ケーブルで世界と繋がった機械の中に答えがあると
信じて毎日その中を飛び回っている。
だからサニーにとってここが家なんだ。」


「いいえ、それではダメよ!


「え?」





戸惑うオタコンに構わず、ナオミは言う。





「彼女をそろそろ外側に出してあげなくちゃ。」


「・・・それはジャックと一緒に江戸に住んでいる。
それじゃダメなのかい?」


「それだけじゃまだダメよ、彼女はまだ生まれていない。
まだ子宮の中にいるのよ 本当の命を授けてあげなくちゃ」


「でもサニーはあれ以上外に出たがろうとしないんだ。
正直、僕も不安なんだ。サニーを外に出すのが・・・」







ナオミは首に下げていたUSBを持ったまま





画面に映された 寝ているサニーを見つめた。







「・・・・・この子なら大丈夫な気がする。」


「上手くやっていけるかな?」


「いえ、そうじゃなくて。この子なら科学を
上手くコントロール出来そうな気がする。」


「そう・・・・で、さっき何か言いかけた?」


「え?ええ・・・その・・・サニーに料理を教えても?」


「ああ、いいよ。
でもここにはロクな材料はないけどね・・・・」





照れつつオタコンがメガネをかけ直そうとした時


ナオミがそれを手で止めた。





「メガネを掛けない方が素敵よ。」


「・・・・・・そうかな?」





しばらく見つめあっていた二人がキスをしようとしたが
直前で音が鳴り スッっと離れた。







しばらく気まずい空気が流れる。







「あ・・・博士?」


「え?」


「寝室空いてないかしら?今日はもう遅いし
チェックインも出来そうにないし・・・・」


「ああ、空いてるけど・・・・・・・・・・・・」







重い沈黙が再び流れ、しびれを切らしたように
ナオミが切り出す。







「あの・・・私・・・これでも、女なの。
分かるでしょ?


「あ、ああ・・・・・・・・・・・」


「ごめんなさい・・・我がまま言って・・・
少し一人になりたかったの。」


「そ、そうだよね・・・案内するよ。」





頼りない足取りでオタコンが空いている寝室に案内する。







半開きのドア越しに 手を握りながら彼女は言った





「おやすみ・・・博士。」


「うん・・・寝心地が悪かったらいつでも言って。
ずっとそこで作業してるから。」


「ありがとう・・・・」


「その・・・・」


「何?」





顔をジッと見つめ、もう一度キスをしようと
唇を寄せるオタコンだが







やはり勇気が出ずに寸前で顔を背けてしまった。





ハルって・・・・呼んでくれ・・・」


「え、ええ。」


「おやすみ・・・・・」





誤魔化すように彼はドアを閉め、しばらく背を向けて
その場に立ち尽くしていたが・・・・・







じれったくなったのか、程なくドアが開き


ナオミがオタコンを 部屋に引き入れた。









・・・・・・そして夜が明けて。







「ナオミ、僕のデータベースいじったかい?」


「え?いじってないけど?」


「そうか・・・ごめんね こんな事言って。」


「セキュリティの強化しておいた方がいいかもね。」


「・・・・そうだね。」


「じゃあ私これで行くから、さようなら・・・ハル。」















俺達がターミナルから脱出した、その数十秒後





ナオミがいた階層が大爆発を起こした。







「ナオミ・・・・・・・・・・・!」


これで良かったんだよ、あいつが何したかったなんざ
俺達にゃもう分からねぇ・・・けどあそこで止まるよりゃ
報われたに違いねぇさ。」







銀さんがそう呟いた後、オタコンが重い口を開いた。







『ジャック・・・それに銀さん・・・分かったよ。
失うばかりじゃない 僕にはまだやる事がある。


「ああ・・・お前が必要だ。」


『もう泣いてはいない・・・涙は既に枯れている。』





言いながらメガネをかけるオタコン。


その姿は、俺にはナオミの呪縛
断ち切ったように見えた。





「でこれからどうすんだ?結局 奴らの大将に
関しちゃ何も聞き出せなかったしよぉ・・・」


『メリル達がソリダスを米軍の総力をあげて抑えると
言っていた。ここはメリル達と合流しよう。』


「オタコン、位置は分かるのか?」


『そこの水道を通った先にいるみたいだ。』


「分かった。フォックスはどうする?」


『俺は一度周囲を警戒しに行く。もしかしたら
逃げ遅れた民間人がまだいるかもしれんからな。』


「分かった、そっちも気をつけろよ。」





俺達はフォックスと別れ、メリル達の合流地点に急いだ。









周囲を警戒しつつ進んでいき・・・合流地点付近の
船が止まった波止場のような場所に差し掛かる







そこに見慣れた男が、背にオクトパスのような
アームを生やし 葉巻を吸って待っていた。




「お前は・・・!」


何だ?こいつが江戸を襲った大将か?」


「そうだ・・・ソリダス!ここまでだ!」


「フン、誰に向かって言っている。」







戦闘態勢を取った瞬間、周りから強化兵が
現れてこちらに銃を突きつけてきた。







「銃を降ろせ、ジャック。もう手遅れだ。」


「何・・・・?」


「惜しかったな・・・・私の勝ちだ。」





奴は悠々とした足取りでこちらに歩み寄る。





「前ビッグ・ボスが吸っていたとされる葉巻だ。
どうだ?吸ってみるか?」


「悪いな、俺はアンチスモーカーだ。」


「そうか・・・私も今日でこいつとはおさらばだ。」





ソリダスがそう言って俺に葉巻を投げてくる。







ソリッドアイに当たった瞬間


何か仕掛けると思って先手を取ろうとM4で
CQCをかけるべく動き出すが





逆にM4を奪われ、銃口が腹に当てられた。







グッ!?くそ・・・!」





ナイフを取り出し、刺そうとしたがこれも返され
俺の右肩に深く刺さった。





「ぐあぁぁぁ!!」


!!」


「動くな!」





助けに入ろうとした銀さんが、強化兵に
後ろを取られて 静止させられる。





「無駄だ、私は前ビッグ・ボスの完全なるクローン。
CQCはこちらが上だ。」


「た、たとえSOPを手に入れたとしても所詮は
賢者達のシステムの一部・・・軍部を掌握したに過ぎない・・・!」


ハン!それが何だ?
もはや全てを手に入れるのは時間の問題だ!」





ソリダスは背中に取り付けられたアームで
俺の首を掴んで持ち上げる。


ギリギリと 力を入れて首を絞められた





「ぐあぁぁぁ!!」


「テメェ!!」


動くな侍、さもなくばこいつの命はないぞ?」





ソリダスは俺にP90を突きつけて脅す







銀さんは どうしようもなく立ち尽くしていた。







「ジャック、システムを管理しているAIの一つは
今はわが軍にある!」


「な、何だって・・・・・!」





ニヤリとソリダスが不敵な笑みを浮かべる。





「SOPシステムを管理しているAIの一つ
『G.W』(ジーダブリュー)、『J.D』管理下の
4つのAIの中でトップの存在だ。


それを『J.D』のネットワークの内側に潜伏させた。


この私の身体が役に立った。
G.Wを奪取するのにこの身体が
あらゆるセキュリティをパスしてくれた。」





という事はセキュリティパスの情報は生体情報・・・


ネイキッド・スネークの生体情報がトップの
セキュリティパスになってしまったという事か・・・!





「賢者達のシステムも所詮はただの機械
ネットワーク上に存在するG.WをJ.Dが
外敵と認識できるはずはない。


私はJ.Dを核攻撃によって破壊し、賢者達の
ネットワークを手に入れる!


そして全ての統制から解放された
ヘイヴンを築き上げるのだ!








その口振りは、まさに独裁者のそれだ。







「ソリダス・・・!賢者達に成り代わる気か・・・!!」


「ジャック、私達は賢者達によって創られた。
あのリキッドも・・・ジーンも・・・いやジーンと
貴様は副産物に過ぎんかったかもな。」


「どういう事だ・・・!」


「究極の兵士を創り上げるための計画『創造者計画』があった
だがそれは賢者達のカモフラージュに過ぎん!
真の名は・・・・『恐るべき子供達計画』!」







恐るべき子供達計画・・・それが真の計画の名か・・・!







「元々のコンセプトは大戦中の英雄『ネイキッド・スネーク』の
クローンを創り上げる計画だった。


度重なる失敗作の元、リキッド、ソリッド
この私ソリダスが創られた。


しかし、ネイキッドはリキッドに殺され・・・
その復讐にとビッグ・ママは貴様を創り上げた。」







ママもあの時、復讐の為 俺を創ったと言っていた。







「では・・・ジーンはどうしてそれに該当しない・・・!」


「ジーンはただの発展形だ。この計画を追うように
ビッグ・ママの遺伝子を継いだ兵士を創り上げた。
それがジーンだ。」





なるほど・・・それで合点が行くな・・・・・・







「創られた理由がある限り、私達の存在理由は
賢者達しかない!!」








叫びに呼応し、俺の首へと巻きつけられたワイヤーが
一気に締め付けられていく。







「ガ…ガァァァァ!!」


「私達は次の世代の繁栄を阻害するシステム・・・
しかし!私はもう運命には逆らわない!


賢者達を全滅しネイキッドを殺し、自分が賢者達・・・
いや、愛国者となる!!







急激に気が遠くなり、ソリダスの声が
やけに小さく聞こえてくる。







「全ては奴『ネイキッド・スネーク』から始まった。
生きるのなら運命を全うする。


全てを裸(ネイキッド)に戻し、そこから生まれ変わる!


貴様にはその糧となってもらう!!」








駄目押しでワイヤーの力が 更に強くなった。









ここまでか・・・・・・・・・・・・


何も出来ずにここで・・・・・







戦争と止めるなんて大層なことを言った割には
あっさりした結末だ・・・・・・・







やっぱり ただの1兵士が足掻いた所で
何もならなかった・・・・・





俺は所詮・・・・ここまでの人間だったんだ・・・・・









覚悟を決め 眼を閉じた瞬間。







アームに何らかの衝撃が加わり、拍子に
首に巻きついていたワイヤーが離れた。










「オイさっきから俺を省いて 何ベラベラ
自分に酔って語ってんだクソジジィ。あん?」






俺の前に見えたのは・・・銀さんの足元だった





「今度はこっちの番だな、俺にも言わせろや。」








――――――――――――――――――――――――
後書き(退助様サイド)


退助「さあオタコンの回想&ソリダスの真の目的が
明らかになり、物語も本格的に終盤に突入です!


新八「あのさんがああも圧倒されるなんて・・・
やっぱり最強の兵士のクローンは伊達じゃないですね」


銀時「ああいう奴に限ってオリジナルより
劣ってる設定があんだよ。そして倒される相手もオリジナルだ。」


新八「ってそのオリジナルってもういないですよね?
殺されてますよね?」


神楽「あのオッサン ベラベラ難しいこと喋って
分けわかんないアル、お子様にも分かりやすく説明するヨロシ。」


退助「いやこれ元々子供がやるゲームじゃないから
最低でもR15指定のゲームだから。」