崩壊したターミナル内で、俺と銀さんは
ヴァンプとの死闘を繰り広げていた。





ヴァンプは不死身のナイフ使い


どれだけ脳天に銃弾をぶち込もうが どれだけ
致命傷を与えようが瞬時にして回復してしまう。





果敢に攻めるが未だに打開策が見出せないまま


こちらの体力だけが減っていく。







くそ・・・!こいつどんだけぶちのめしても
起き上がるな、ダルマかこの片乳首ヤロー。」


「あの時は偶然倒さずに脱出出来たが・・・・
どうにもならないな・・・・」


「どうした?俺を殺してくれるんじゃなかったのか?」





ヴァンプは瓦礫の高台に跳び移り余裕の表情を見せる。





「ったく、したり顔しやがって 大体不死身の奴には
弱点があったり意外なもので解けたりすんだよ。
DQ5のジャミしかりゴンスしかり・・・後あったっけ?」


「無理やりネタ出そうとしなくていいって・・・・」





いや、待てよ・・・・現実はゲームじゃない。


完全な不死身なんて有り得ない。





可能性があるとすると・・・・・・まさか!?





「銀さん!!もう一回奴を倒してくれ!!」


「やっと何か思いついたか!うっし気張るか。」


「何を企んでるか知らないが俺を早く殺してくれ!!」


「言われなくてもしてやるからちょっと待ってろ!!」





俺はM4でヴァンプを攻撃し、怯んだ所に銀さんが
木刀の一打を浴びせて気絶した所で


素早く奴の後ろへと回った。





「おい!本当に大丈夫なんだろうな!」


「今はこれに賭けてみるしかない!!
確証はないんだが・・・」


何でもいいから一発かませ!!
テメェ賭け事は妙にうまくいくんだからよぉ!!」





そしてヴァンプが起き上がった隙を見計らい


CQCで捕まえ首にナオミからもらった注射を打った。





「グ・・・・!?」


よし!!効いたぞ!!」


「おお!
流石だな、オメェならやってくれると思ったぜ。」


「な、何をした・・・・・!」





驚愕の顔でもがくヴァンプに、注射器を見せる





「お前にこの注射を打った。
これはナノマシンの活動を抑制する注射


本来はFOXDIEのためだが、どうやら
ナノマシンにも効果があったみたいだな!」





「さっきから全然わけわかんねぇこと並べやがって
こちとらジャンプの間が空きすぎて話の流れに
取り残されてる読者管理人の気分だぜ。」


「例え長いって・・・だがこれでお前もただの死者だ!」


フン・・!だが、ただの死者を殺せるか!」





戦う意思を捨てぬヴァンプに俺達はまた身構える







が、そこに自爆型の月光部隊が出てきた。





「やばい!?もう着いたのか!?」


「やべって!!
あんな奴らとまでやり合う体力残ってねーよ!!」





奴等がセミの鳴き声を上げながらカウントダウンを始める。





『間もなく爆発します。
5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・』



同時に俺達を踏みつぶそうと足を振り上げ





直前で月光部隊が、全て切り刻まれた。











ACT−13 ゾンビやヴァンパイアも
近頃は不死身気取れないってば












『全く世話の焼ける奴らだ。』


フォックス!?良かった助かったよ。」


「あれ?お前あん時の・・・・?」


『説明は後だ、ジャック悪いのだが・・・・
こいつは俺に倒させてくれ。


「え?」


『ナオミに用がある・・・・・
だからお前を倒してナオミを取り戻す!!』





現れたフォックスに、何か気が付いたらしく
ヴァンプが叫ぶ。





「まさかお前・・・そうか!貴様が博士の弟か!


「弟!?」


『今はその話をする必要はない。
ジャック、自爆型月光部隊の増援はまだ来るぞ。
お前達はそいつの相手を頼む。』


「分かった、このレールガンなら
月光を一撃で倒せるだろう。」


おい待てサイボーグ野郎、俺にもやらせろや。」


『加勢は必要ない、お前はジャックと共に月光を』


「ちげーよ、誰がテメェの加勢なんざするかよ。
俺ぁただ江戸でヤンチャした奴等の親玉の居所聞き出して
そいつのツラぁボコボコにしてぇだけだ。」







木刀を掲げる銀さんを一瞥し、フォックスが口を開く







『・・・・・・・・・分かった
だが間合いには気をつけろ。こちらもそう
気配りできるほど器用じゃない。』


「ヘッ、俺の木刀に当たっても知らねぇからな。
というわけで テメェは牛の始末頼むわ。」


「・・・・・分かった。」





俺は少し離れた所でレールガンを構え
月光の進軍に備えた。







銀さんとフォックスは高台に昇り、お互いの剣を構える







「話に聞いていたが強化骨格改造をしたようだな
・・・・・お前も死ねない身体か・・・・
どうだ死ねない男!お前も死にたいだろ!!


『違う!死を恐れていないだけだ!
そしてまだ死ぬわけにはいかん!』



「ったくそんなに死にてぇなら練炭自殺なり
硫化水素なり首吊りなり勝手にしやがれよ。」





いや、硫化水素はやめとけ 処理困るし・・・





出来れば早く決着をつけてくれよ二人とも。









間を置かずに月光がワラワラと数体現れる。


すぐにレールガンで排除したが・・・・数が多いし
ドンドン出てくるからキリが無い。







向こうも ヴァンプとの斬り合いで
フォックスと銀さんが体中血まみれになっていた。







特にフォックスがひどい


あれじゃいくら強化骨格とはいえ長くは持たない。







ナイフの連撃で膝をついてしまったフォックスに
トドメを刺そうとマチェットで斬りつけるヴァンプ







「俺を忘れてもらっちゃ困るぜ、変態穴野郎ぉぉ!」





そこに銀さんの木刀が飛び、間一髪助かり


逆に怯んだその隙を突いて フォックスが
高周波ブレードでヴァンプの腹を刺した。







しばらくしてからブレードを抜き





銀さんとフォックスが、並んで刀を構える。





「これで終わりだな変態不死身野郎。」


『これで終わりにするぞ、吸血鬼。』


「さあ・・・・・殺せ・・・・・・


「今度ここに来る時ゃ血を吸う相手を選ぶこった!」


「殺してみろぉぉぉぉぉぉ!!!」





雄たけびと同時に足場を蹴り、二人の刀は
ヴァンプの身体を違わず斬りつけた。








血を流してふらつき、ヴァンプはそのまま
高台から落下して仰向けに倒れる。







不死身のヴァンプの最後・・・・・・・か・・・・







折りよくこちらも最後らしき月光を撃ち落とし
ヴァンプの元に走った。







「ったく手間かけさせやがってこのエガチャンもどき」


「だからヴァンプだって銀さん・・・・それにしても
ヴァンプの不死身の秘密はナノマシンだったとは・・・」


「いいえ、ヴァンプは不死身なんかじゃない。
体内に埋め込まれたナノマシンが治癒力を高めていただけ
度重なる戦いで、それももう限界に来ている。」





軽い足音を立てて現れたのは・・・ナオミだ。





「ナオミ・・・・!」


「おい尻軽女、テメっよく俺達の目の前に
ノコノコ現れやがったな あん?」


待て ナオミ・・・俺が分かるか?』





フォックスが俺達を手で制してから、顔のバイザーを
開いて素顔を見せる。





「あなた・・・・フランク!?フランクなのね!!」


「フランク?」


『俺の元の名前だ、フランク・イェーガー
それが俺の本当の名前。』


「何故あなたがここに・・・・!
ジャックに殺されたんじゃ・・・!」





俺がフォックスを殺した?どういう事なんだ?





『端から殺されていない、むしろジャックは俺を
助けてくれたんだ。俺を絶対兵士から人間にしてくれた
・・・だからもう復讐なんてやめてくれないか・・・?』


「そうだったの・・・・私、てっきり・・・・!」







ナオミは涙を流してそう呟いた。





あれ?今復讐って・・・







「ナオミ、復讐ってどういうことなんだ?」





訪ねると 彼女は少し顔を俯かせる





「実は・・・シャドーモセスでリキッドに脅されて
FOXDIEを埋め込んだんじゃないの・・・・
ホントは・・・弟であるフランクを殺された復讐としてあなたに・・・・」


何だって・・・・!じゃあ最初から
俺を殺そうとしてたってことなのか!!」


「だっからわけわかんねぇんだっつーのさっきから!
俺にも分かりやすく説明しろい!!」



「分かったわ、私から説明するわ。」







ナオミは俺に埋め込まれたFOXDIEの事





そしてそれのせいで俺の命が残り少ない事
銀さんに全てうち明けた。







「そりゃまたエライ話だな・・・・・・」


「銀さん・・・・・」


「で、オメェそんなウィルス打ち込まれて
こいつを恨まねぇのか?」


「・・・・・・・・・いや、今はそうでもない。」


「そうか・・・・・・・・」


「博士・・・・・・」





仰向けのまま、ヴァンプが弱々しくナオミへと手を伸ばす。


彼女はその視線を返したままヴァンプの傍に座り込む。





『ナオミ・・・・サニーから伝言を預かっている。』


「サニーから?」


「何て?」


上手に焼けた、それだけだ。』





上手に焼けた?半年前にサニーに会ったのは
聞いていたが・・・・何をしてたんだ?







「そう・・・・・よかった・・・・
完成したのね・・・・サニー・・・





言葉と共に ナオミの目に再び涙が零れる。









ヴァンプが悶え始めた時、ナオミが注射器を取り出した。





「・・・・・ダメ、私にあなたを助けることが出来ない・・・・・」


「ナオミ、一体何をするつもりなんだ?」





俺の問いにも答えず、ナオミは
ステルスを解いたMk.Vに注射器を手渡す。





「エメリッヒ博士、これを・・・彼に。」


『え!?』


「仇を討つのではなく、終わらせてあげて。」







そうだ・・・・ヴァンプはオタコンの妹である
エマ・エメリッヒを殺した。





奴の命を終わらせる権利を持つのは・・・
その役目に相応しいのは、オタコンだ







Mk.Vが注射器を受け取り、それと
悶え苦しむヴァンプを交互に見つめる。





打つのを躊躇していると


ヴァンプが注射器を奪い 自分に打った。





「う!?グアアアア!アアァァァァ!!


「元の自分に戻れるの!楽になれるわ!」


「お・・・・・・・・俺は・・・・死ねるのか・・・・・・?」





奴の身体を支え、ナオミが首を縦に振った後







「グアァァァァァァァァァァァァ!!」





轟くような断末魔を響かせて





ヴァンプは・・・そのまま息を引き取った。







「ごめんなさい・・・・・・・」


何も変わらない・・・・どうして・・・・・』


「過去を・・・消すことは出来ない・・・・
過去を・・・許すことはできない、だから・・・
終わらせることしか出来ないの・・・・」





ヴァンプ・・・・・・お前はただ苦しみから解放されたかったんだな・・・・・





ヴァンプは不死身なんかじゃない。


ただ・・・・
死ねない自分を解放されたかっただけ・・・・・










「ジャック、ソリダス達はここを出ようとしているわ。」


「何だって!?」


「賢者達のシステムを奪って
彼らの眼を逃れ、箱舟を作った。」


箱舟・・・・・・?』







ヴァンプの身体をそっと床に横たえさせ
ナオミが オレの目を真っ直ぐに見て続ける。







「いかなる土地からも・・・国家からも・・・法律からも・・・
電脳網からも独立した戦艦


賢者達の束縛から真に解放される。彼らが唯一自由を
感じることが出来る場所。『アウターヘイヴン』


「アウターヘイヴン・・・・・・・・」


「で、その戦艦で奴さん達は何をするつもりなんだ?」


「ソリダスはそこから核を発射する。」


核だって!?
だが今はシステムで核兵器はロックされてるはずだ!」


「そう・・・・システム管理下の核は・・・・
でもただ一つだけ管理下ではない核兵器が存在する」





まさか・・・・・・シャドーモセスのREX!?


あの時レールガンが無かったのは、全ては
その計画の為だったというのか・・・・!







その瞬間、ターミナルが揺れだし月光の鳴き声が聞こえた。





まだ自爆部隊が残っていたのか!?





周囲へ目を走らせたその一瞬に







『ナオミ!』


「どうした!?」








慌てて視線を戻すと、ナオミは注射を手に
少し身体をふらつかせていた。







「ジャック・・・・・私もヴァンプと同じ・・・・
ナノマシンによって辛うじて生かされている身体・・・


それに・・・私はナノマシンに溺れ
ナノマシンに捕らわれた愚かな女・・・」


『ナオミ・・・どういうことなんだ!』





彼女は、フォックスにゆっくり顔を向ける。





「フランク・・・
今まで黙っていたけど・・・・癌なの。


『何!?』





そんな事・・・・一言だって・・・・!





「もう・・・生きてはいないはずだった。私はヴァンプと同じ怪物・・・・・
そして戦争経済の火種となった、ナノマシンを産み出した魔女・・・・・」


「ということはヴァンプを不死身にしたのも
SOPシステムのナノマシンもお前が・・・!」


「そう・・・・ナノマシンで進行を抑制していたけど
・・・・それももう限界 ナノマシンを止めれば
・・・私の凍りついた時間は再び流れ出す。


『何だって!?』







ナオミはMk.Vの・・・オタコンの方に向き 薄く微笑んで呟いた。





「さようなら・・・・ハル・・・」





直後、首に注射を打ち込む







『ナオミ!』


「う・・・・ああ・・・・・あ・・・」


「ナオミ・・・・何で・・・・・」


「サニーに・・・よろしくね・・・・・・」





死の間際なのか、ナオミの身体が震えていた。





『ナオミ!!やめてくれ!!』


『ナオミ!!』


「・・・泣いてるの・・・・私の為に・・・・?」





画面のオタコンを見つめながら、彼女は
もう一度注射を打ち込んだ。







『ナオミ・・・・!何故なんだ!!





ナオミはそのまま倒れこみ、Mk.Vを掴んで
オタコンを喰いつくように見つめる





「きれいな・・・・・瞳・・・・・」







Mk.Vと一緒にナオミが横向きに倒れ


その手が 優しくモニターを撫でた。





「許してね・・・・・・」


『ナオミ・・・!ナオミ・・・・!ナオミィィィィィィ!!







機械越しのオタコンの悲痛な叫びを
掻き消すように 瓦礫が吹き飛ばされる。







『月光が!?』


「さあ!行って!!」





倒れたそのままで、ナオミはMk.Vをこちらに向かって弾いた。







「オタコン・・・・・」







拾い上げようと俺がMk.Vに手を伸ばすが


電磁ワイヤーで跳ね除けられてしまった。







!!モタモタしてると奴らの餌食だぞ!!」


『どうして・・・
どうしていつもこうなるんだ・・・!』


「オタコン!」


『今度こそ・・・
今度こそ好きになれると・・・・!


「オタコン!!!」


オイいい加減にしやがれオタク野郎!!
あの女のことを想うんなら、少しでもあの女を
愛してたんなら・・・踏み台にしてでも生きやがれ!!」


『ナオミ・・・・何故だ!どうして・・・・!!』


時間がない!!無理やりにでも連れて行く!!』





痺れを切らしフォックスがMk.Vを持ち上げ


俺達は、ターミナルから脱出するために走った。







Mk.Vのカメラは・・・・見えなくなる最後まで
倒れたナオミを捉えていた・・・・・











「必ず・・・私達の意志を・・・・伝えて・・・・」





去っていく達に手を伸ばしたナオミは







そのまま動かなくなった











ナオミ・・・お前が何をし
何を伝えたかったのかはもう分からない。







・・・けど俺は最後の最後まで生き続ける。





この戦争を止めるまで・・・・・・絶対に・・・・








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後書き(退助様サイド)


退助「ヴァンプも倒し、ナオミは
自分の罪を償うために自ら死を・・・・


新八「でも何で死ぬ必要が・・・・」


オタコン「ナオミはナノマシンを造り上げたナノマシンの権威
彼女がいないとナノマシンは開発できない。
もう2度と彼女やヴァンプのような人間が生まれないために・・・・」


フォックス『ナオミ・・・・・せめてジャックに
FOXDIEを埋め込む前に出会いたかった・・・・』


桂「しかしナオミ殿はまだ何か隠しているな・・・・」


退助「それはまた出てくるのでこのままでお願いします。」