ウルフを倒し、ドレビンからの無線を開いた。
『ボス、さっき拾ったレールガン。洗浄しておいたぜ・・・・今回もロハだ。
あんたの好きに使ってくれ。』
「仕事早いな、一応礼は言っておこう・・・・」
『ボス、今のクライング・ウルフもやはり
戦争の犠牲者だ。』
「戦争の?
ちょっとあなた、詳しくお聞かせくれませんか?」
『いいぜ、レディーには紳士的にってな。』
こいつの何処から 紳士とかいう言葉が
出てくるんだ・・・・・・
『民族浄化の名のもとに悲惨な民族紛争がアフリカで続いている。
彼女はその戦場となった国の生まれだ。』
アフリカ・・・確かにウルフはケニア人によく似ている
『敵対する武装組織に村を襲われ、親兄弟を殺されて
幼い身で難民になった後の事だ。』
「可哀想に・・・・・江戸の外でそんな事が
あったなんて信じられないわね・・・・・・・」
阿音さんの言う通りかもしれない
江戸の人間には、このような情報は流れてこない。
だから分からないのも無理はない。
『彼女はただ一人生き残った乳飲み子の弟を抱いて
戦火を逃れていた。ある日、彼女は敵部隊を見つけ
弟を抱えて廃屋に身を潜めた。』
「立派な少女ですね。弟を護る為に・・・・」
「東城さん。これで終わるほど
彼女のトラウマは小さくない。」
俺の声に無線のドレビンも同意する。
『そうだ・・・・その時、弟が泣き出したんだ。
敵がその声を聞きつければ二人とも殺される。
彼女は必死で弟の口を押さえた。
やがて敵の足音が消え、彼女は我に返った。』
まさか・・・・・・・・・・・・・
『弟の呼吸が止まっていたんだ。』
お妙さんが口を押さえ驚いた。
ショックを受けて当然だ・・・・・
助けようとした弟が・・・故意ではなかったにしろ
自分の手で息絶えたのだから・・・・
『狼は、死んだ自分の赤子を食らうらしいな。
弟の亡骸を抱えながら戦禍をさまよう彼女の傍らには
狼の幻影が付きまとっていた。』
「それで狛子ちゃんが狼に見えてたんですね・・・・」
『狼は毎晩、まるで
あの日の弟のような遠吠えで泣いた。』
いつの間にか、お妙さんと九兵衛さんは涙を流し
彼女のことを想い悲しんでくれていた。
それだけでもウルフを弔う事が出来る・・・・
しばらく何も言わず、黙っておいておこう。
「ドレビン・・・・・続けてくれ。」
ACT−12 セミ爆弾は地味に怖い
『はいよ。やがて、弟の骸も朽ち果てた頃
彼女は政府設営の避難所に辿りついた。
そこには自分のような難民達と、そして
弟のような子供達がひしめいていた。
見知らぬ赤ん坊の泣き声が容赦なく
彼女の心に突き刺さった。』
淡々としたその言葉に
東城さんが不安そうに彼女達を見やる。
「若、お妙殿、辛いのでしたら席を外されても・・・」
二人は頑として動こうとはしなかった。
「いえ、ちゃんと聞くわ。」
「彼女がどんな思いをしていたのか僕らは知らなきゃいけない。
僕らでもそんな悲劇を起さないように 食い止められるように・・・・」
『続けるぜ。傍らの狼が、彼女の悲痛な叫びに応えた
避難所にいる赤ん坊を、その一人ずつを・・・・
黙らせていったんだ・・・・・・』
ビーストになった瞬間か・・・・・・・
『彼女は狼を必死で止めようとした。
だが彼女には狼を止めることが出来なかった。
数日後、避難所が敵に襲撃される前夜には
子供達は一人もいなくなっていた。
生き残った大人達も傷だらけだ。』
ここまで来ると、流石にみんなは黙って聞いていた。
戦争が人を変える・・・・・
けれど彼女達はあまりにも変わりすぎた・・・・・・
『勿論、そこには狼なんて一匹もいなかった。
赤ん坊達を殺めたのは、彼女だった。
だが彼女にはどうしても認める事が出来なかった
狼の咆哮を自分の口から吐き出しながら
次々と赤ん坊を殺してゆく己の姿を。』
余りの無神経な語り口に 思わず俺は無線にむけて怒鳴る。
「ドレビン!あまり彼女達をあおるな!!」
『悪かったよ・・・過剰演出しすぎた・・・・・
クライング・ウルフとして、戦場を駆ける
ビーストになってからもずっと、な』
それで・・・・ずっと泣いていたのか・・・・・・
『ボス、ウルフはあんたと戦うことで初めて
自分のしてしまった事を 自分で受け入れられるようになったんだ。
彼女もまた、あんたに浄化されたんだよ。
戦場に聞こえる泣き声がこれで止むのなら
それを止めたのはあんただ。全く見事だったよ。』
「あまり茶化すな、俺はそんな大層な人間じゃない。」
言うと 無線機の向こうで微かな笑いが漏れた。
『そう照れるなよ。ビーストはあと一人、マンティスだけだ
だがボス、彼女は全てのビーストを操っていた
戦場のビーストそのものだ。気を抜くなよ?』
「・・・言われなくても分かっている。」
『じゃあな。』
そう言って ドレビンは無線を切った。
近くで全てを聞いていた彼女達は、みんな
涙を流していた・・・・・・・
ウルフ・・・・
赤の他人がお前の為に悲しんでくれている。
寂しがる事はない・・・・・
「ウルフさん・・・・・弟さんと仲良く暮らしてね・・・・・・」
「僕らも、必ずあなたのような者を出さない為に努力する・・・・・」
二人とも・・・・・ありがとう・・・・・
そんな切ない状況などお構いなしに
月光の雄たけびが 高らかに響き渡る。
ったく!!こんな時になんだよ!!
ぼやく合間にも月光が数体現れた。
装備されていたのは・・・・・・分からないな、何だこれ?
『間もなく爆発します。間もなく爆発します。』
爆発・・・・・・・・これ自爆型か!まずい!!
てか何でセミの鳴き声上げてんだ!?
「みんな逃げろぉぉぉぉぉぉ!!!」
『5・・・・4・・・・・3・・・・・2・・・・・・1・・・・・』
わあああああ!!!間に合わな
刹那、月光の頭がふらつき・・・全て切り落とされた
爆発しない所をみると・・・助かったみたいだ・・・
代わりに現れたのは見覚えのある刀と
そして・・・機械の体の・・・・・・・・
「ヌルか!?」
『違う、俺はグレイ・フォックス。』
「いやそんなのどうでもいいわ。とにかく助かった。」
『今ここに米軍が来る、捕虜の避難をさせるんだ。』
「米軍が!?何で米軍がここに来てるんだ!?」
『大統領が本格的にPMCの制裁を表明したのだ。
これで、戦争経済も終わりだ。』
よかった・・・・・これでこの戦争も終わる・・・・
『とにかくここは俺に任せてターミナルに行け。
そこに奴はいる。』
ソリダス・・・・・!
「分かった・・・・でも体は大丈夫なのか?」
『心配ない・・・・だから早く。』
「分かった・・・無理するなよ。」
俺はヌル・・・いやフォックスに彼女達を任せ
ターミナルに向かった。
途中で無線が入り、その場で立ち止まる。
『ジャック!大変よ!!
ターミナルが占拠されてしまったわ!!』
「何!?いくらなんでも早すぎる・・・・!」
『でも何かおかしいの、その後PMCの兵士は
一斉退去してそのままなのよ。』
そのまま?占拠地をカラにしていたら
すぐ幕府に取り返されるだろ?
これは何か裏がありそうだな・・・・
「分かった、そこは俺が何とかする。」
『そう・・・それと本格的に米軍が動き出したわ
いつでもソリダスを確保出来る。』
「そっちもソリッド・スネークが偽名だと分かったか。」
『ええ、本物に会ったからね。
もし向こうが抵抗しようとしてもシステムでロックすれば完璧よ。』
簡単にいけるとは思えないが・・・・・
「分かった、俺はターミナルに行ってみる。
そっちは頼んだぞ。」
『ええ。ジャック、あまり無理しないで。』
「分かってる。」
無線を切った直後、また発作が起こった。
「ぐ・・・・!くそ・・・!」
すぐ注射を打ち発作を止めたが、また
いつ起こるか分からない。
回数も増えている・・・気をつけなきゃ・・・
そこにMk.Vからオタコンの声が聞こえてきた。
『ジャック、言いそびれてたけど
さっきのパラメディックの検査結果だけど・・・』
「言ってくれ、覚悟は出来てる。」
『新型のFOXDIEの侵食速度から見て・・・
半年で全身に同化するらしいんだ・・・』
「ということは・・・俺の命は後半年かもしれないと?」
画面の向こうのオタコンは、黙り込んだまま
「オタコン、どの道殺戮兵器になるんだ。
俺の命は半年もない。」
『・・・・・・・分かったよ、でも今は』
「分かってる、この戦争を止めるまで俺は死なない。」
『ターミナルに急ごう、何かありそうだ。』
「ああ。」
ようやくターミナルの前に着くとそこにあったのは
幕府軍の戦車の残骸、警備隊の死体の山だった。
くそ・・・・!
ここまで犠牲者が出ていたとは
絶対この人達の為にもこの戦争を・・・・!
俺は中に入り、周りを警戒しながら
ターミナル内を探索する。
度重なる戦闘のせいか瓦礫がそこいらにあり
今にも崩れそうな所も数多く見受けられ・・・
そこに、いきなり上から月光達が落ちてきた。
これは自爆型・・・・!
まずい!!まさか俺を消すための罠!?
『間もなく爆発します。間もなく爆発します。』
くっ!数が多すぎて・・・・!!
『5・・・4・・・3・・・2・・・1・・・』
カウントダウンが終わりそうになる直前
全ての月光の頭が また切り落とされた。
フォックスが助けてくれたのか・・・・?
いや、あいつは戌亥大使館で別れたはず
駆け巡る思考の中 そこ見えたのは
見慣れた銀髪天然パーマの
「銀さん!?」
「ったく何が爆発しますだ。
爆発すんのは股間だけで十分だっつーの。」
「銀さん何でここに!?今まで何処にい」
言いかけて、俺は気が付いてしまった
・・・目の前にある厠の文字が書かれた札と
銀さんの気まずげな顔に。
「・・・・・・・・まさか銀さん・・・・・・」
「・・・・新八達には内緒の方向でたのm」
無論 みなまで言わせる事無く
銀さんの顔面に思いっきりパンチを入れた。
「あんた今まで見ないと思ったら
1カ月以上に渡って厠に入ってたのかよ!!」
「いや〜、だって糖が近く」
「なりすぎだろうがぁぁぁぁぁぁ!!ていうか
何でわざわざターミナルの厠使ってんだよ!!」
「だって手頃の厠がなかったんだよー
それくらい分かれや。」
「分かりたくもないわぁぁぁぁぁぁぁ!
つーかよくPMCの兵士に気付かれなかったよな!」
全くこの人は・・・・・・・
ホントいつもしまらないんだから・・・・・
「全くこんな時にお気楽な奴らだ!」
轟いた声にそちらを見やると、そこにいたのは
・・・・ヴァンプだった。
「お、あれ吉原の時にいたエガチャンもどきの
変態穴男じゃね?」
「違う違う、ヴァンプだ銀さん。」
うん?後ろにもう一人・・・・・・
ヴァンプにすり寄りながら姿を見せたのは ナオミ。
「ナオミ!?」
「誰だあの姉ちゃん?あいつの愛人か何かか?」
「ナオミ!何で俺達を罠にはめようとした!!」
問いかけるが彼女はうすら笑いを浮かべただけで
全く口を開かない。
あいつ・・・・・・・!後で覚えてろ!!
「ここが貴様らの死に場所だ!クイーンもそれを望んでいる!」
「ナオミ!!てめぇ!!」
『僕らをだまして・・・ジャックを罠にはめて・・・
やっぱりシャドーモセスにいた時から疑うべきだった!!』
「んだよ二人で話盛り上がっちゃって・・・・
もしかしてオタク野郎とあの姉ちゃんとで3○でも
一発しけこんでる隙に財布パクられたとか?」
「こんな時にふざけるなよ銀さ
『え!?あ・・・・・いや・・・その・・・』
あながち間違いじゃないのかよ!!
やっぱりあの時何かされたんだな!?
こっちも後で聞き出したる・・・・!!
「増援の自爆型の月光部隊がこちらに向かっている。
もうすぐここは跡形もなくなる!」
「やっぱり俺達をおびき寄せる為の・・・・・!」
「何?そんな大変なことになってんの?」
「後で説明する。」
「任せたわよ。」
素っ気なく言ってナオミは何処かに立ち去る。
「待てナオミ!!」
変わりにヴァンプがこちらに向かって跳んできた。
「、どうやらこいつとやり合わにゃ
あの姉ちゃんから話聞けそうにねぇらしい。」
「だな・・・協力してくれ。こいつは不死身の体を
持っているが二人でやれば・・・!」
「不死身だか絶倫だかしらねぇが、勝手に
人の国襲っといてただで返すわけにゃいかねぇな!!」
「フン!初めての侍との対決か・・・・
さあ!愉しませてくれ!!」
俺と銀さんは武器を構え ヴァンプとの戦いに備えた。
「さあ!俺を殺してみせろ!!」
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後書き(退助様サイド)
退助「ウルフの過去発覚&どうにか銀さんと合流まで行けました。」
銀時「てか待てや!!!柳生篇と同じだろ
俺いなかった理由!!俺そんなイメージ!?」
新八「え?そうじゃないんですか?」
神楽「ホントネ、銀ちゃんは厠の住人アル。
餓鬼椿でも一日こもってただろテメー」
妙「それ以外に何があるとでも?」
退助「ひ、ひでぇ・・・・そこまで言わなくても・・・・」
ヴァンプ「早く・・・・・・早く俺を殺してくれぇぇぇぇ!!」
退助「ここまで来て暴れるな!!
次回たっぷり暴れさせてやるから!!」
銀時「つーかオタク野郎のくせに結構盛んだな。」
退助「それを言ってやるなや・・・状況が状況だし・・・・」