あれからドレビンの協力の甲斐合って
戌亥大使館に辿りつく事ができた。





ここまで倒した月光の数は数十体・・・・


機械クーデターでもあそこまで多くはなかったな
・・・・しかも武装もしていたし





とにかく、俺は大使館内に入る事にしたが


・・・・・やけに霧が濃いな・・・・・







内部に潜入し、少し進んだ先にある扉の奥から
聞きなれた声が耳に届く。





「早く私達を解放しなさいよこらぁぁぁぁ!!」


「ぎゃぁぁぁぁ!!?」





これってもしかして・・・・・・・


俺は扉を蹴破り、中にいたPMCの兵士を
麻酔銃を撃ちこんで眠らせた。





思った通りそこにいたのは、


「スナックすまいる」のキャバ嬢達と
九兵衛さんと東城さんだった。





さんか!良かった無事だったか。」


「みんなはどうしてここに?」


「ワケわかんないのよこいつら!
女は殺さず隔離しろとか意味不明なことを
しきりに言ってくんのよ!死ねっつーの!


「姉上、少しは落ち着きなさいよ。」





巫女姉妹も二人とも揃っているようだ。





しかしホントにここは女性ばかりか・・・一体何故だ?





殿、この者達は一体何者なのです?」


「こいつらはPMCという軍需産業の兵士だ。
戦争で商売をしている。」


戦争で商売とは、中々穏やかな話ではないですね。」


「まぁな・・・東城さんはこの人達を頼む。
俺は外の敵を倒しに行く。」


「分かり申した、そちらはお願いします。」





返事を返そうとして 突然外にいる
カラスの鳴き声がけたたましくなり始める。





「何?突然外が騒がしく」


「グ!?」





またあの発作が起こりだし 身悶える。







発作の間隔が、狭まってきてる・・・・


薬の抵抗が出来てしまったのか・・・・





すぐに首へ注射をして発作を抑え込んだ





さん!?どうしたんですか!?
突然苦しみだし『ジャック・・・見つけた・・・・』





お妙さんの言葉を遮り 不気味な声が響き渡った。


まさか・・・ビースト!?











ACT−11 日本に熊はいんのにオオカミは
もういないっておかしくね?












みんなここを絶対に動くな!!
俺が敵を倒してくるまでは!!」







俺はすぐに外に出て敵を探したが・・・





霧が濃すぎて見えない







『泣けっ!泣いていいんだ!』





恐らく声の主はクライング・ウルフだな・・・・・





『声を上げて泣いてみろぉぉぉぉ!!』







その声と同時に俺はその場で転がり、直後
近くの壁が爆砕された。







あの威力・・・・間違いない。


フォーチュンと同じレールガンか・・・!









落したライフルを取ろうとしたが


肩にレールガンの弾がかすめた。





「うわ!?」


『さあ・・・・涙だ・・・・涙だ・・・!
泣け!!泣きわめけぇぇぇぇぇ!!!』








痛みを堪え身を起こす合間に、何かがこちらへと
走り寄る音が聞こえてくる。







『哀しい・・・・哀しい・・・・哀しいぞ!
哀しくて死にそうだ!!ウオォォォォォォォ!!』






狼の遠吠えが木霊し、ソリッド・アイの
感覚レーダーに複数反応を示した。







ヘイブン・トルーパーか・・・・・





厄介だな。俺一人じゃ・・・・







とにかく、集団で来られたら面倒なので近くの物陰に
隠れて強化兵を倒していく事にしたが・・・





これじゃいくらやってもウルフが現れない・・・・







『ウオォォォォォォォ!!』





突然遠吠えが聞こえ、後ろから何かに掴まれ倒される。





まずい!!後ろを取られていたなんて・・・・!


このままじゃ・・・・!





『ジャァァァァァァァック!!!』







ウルフが俺を踏みつぶそうとしたその時





何かがウルフに当たり 飛ばされて俺の前に倒れた。







『グワアァァ!?』





よろけながらも身を起こし、ウルフは態勢を
立て直して走り去って行く。









「な!?一体何が・・・!」


さん大丈夫ですか!?







俺へと駆け寄るのはお妙さんに九兵衛さん
東城さんにあの巫女姉妹と、ちっさい定春だ。





ていうか何で定春が2匹もいるんだ?子供?


・・・なわけないか そんな話聞いて・・・あ





気付けば近くに丸太が転がっていた。


ちょうどウルフが倒れた辺りくらいに







まさかと思うが これお妙さんが・・・・?


ってそれどころじゃねぇ!





「みんな!何で出てきたんだ!!出るなと言って」


「あなた、あんな身体で戦おうとしていたんでしょ?」





真剣なその眼差しに 俺は一瞬言葉に詰まった





「何でその事を・・・・!」


「全部この人から聞きました。」







彼女がその手に持っていたのはMk.Vだった。







合流しようとしてあの部屋にでも入ったのだろう・・・・





そこでバレたか







『ジャック・・・ごめん、パラメディックの
解析結果が出たから言おうとしたらこの人達に・・・・』







・・・・これだけは黙っておこうとしてたんだが・・・・・・







「何で私達に教えてくれなかったんですか!
私達 仲間でしょ!」


「それとも僕らを信用してなかったとでも?」



違う!!俺は・・・ただ・・・」







言葉を失う俺に、彼女達は・・・気丈な笑みを浮かべた。







「そんな事で誰がさんを避けようとするもんですか
心配しなくても私達そんなやわな体じゃありません。」


「そうよ、あんたはと同じで
誰にも言おうとしないんだから。」


「ホント、似てますよねさんと。」


殿、とにかく雑魚は我々に任せて
あなたはあの機械に集中を。」


「・・・分かった、みんなありがとう。」


『ウオォォォォォォォ!!』





ウルフの遠吠えが聞こえ 天狗兵が刀、カエル兵が
マチェットを出してこちらに向かって来る・・・が







そこに東城さんが立ちはだかり、瞬時に
強化兵を全て斬り捨てていった。





「ぐああ!!?」


「若と若の御友人方に手を出す事は
この柳生四天王が一人、東城歩が許しません!」






あれ?この人こんなに強かったっけ?







ちょっと驚かされたのも束の間、ソリッド・アイに
熱源反応が遠くから確認される。


まさか!





「みんな散開しろ!!」


『声を上げて泣いてみろぉぉぉぉ!!』





レールガンの弾が飛んできたが、間一髪で
全員が被弾せずに済んだ。







危なかった・・・あれの威力は戦車の装甲
破壊出来るからな・・・・当たればひとたまりもない。





それに・・・・霧が濃いのに奴には俺達が見えている。







隠れて狙撃するのはスナイパーウルフに似てるな・・・・


いや、より厄介になったと言うべきか









巫女姉妹二人が顔を見合わせ 立ち上がる。





「百音!
こうなったら狗神の力、使うしかないわよ!!」



「仕方ありませんね、事態が事態ですから。」


「・・・何する気なんだ?」


今から狛子を覚醒させてこちらに突っ込ませる!
その隙に攻撃すれば倒せるはずよ!」


「このちっさい定春を覚醒?」


「では頼む。」





そう九兵衛さんが言うと、二人はいちごと
コーヒーに入れるミルクを取り出して


ちっさい定春に食べさせた。





「行くよ百音!!」


「はい姉上!」





ってそんなんで覚醒できんのホントに?





「オンマカヤシャバザラサトバ!!」


「ジャクウンバンコンハラペイシャーワン!!」






何だこのわけのわからん呪文は・・・・・・
としきりに眉を潜めていたが







「「目覚めよ狗神ぃぃぃぃぃ!!」」





彼女等の叫びが唱和したその瞬間


激しい光が走り、ちっさい定春が変貌し始めた。







すごい・・・・これが狗神・・・・・・






・・・・・・・・・・・・・・・って





ちっさ!顔ごつくなっただけじゃねーかよ!!
全然変わってねーよ!!」





しかし阿音と百音は同時に首を横に振る。





狗神は攻めを司る者と守りを司る者
必ず2体存在するの
・・・狛子は守りを司る狗神
ちょっとやそっとじゃ抜けないわよ!」


「え、という事は・・・・・まさか定春も
・・・・狗神?」


「そうよ?」


「えええええええ!!?」





ま、マジでかよ・・・・・なら神楽は
攻めの狗神を飼っている事になるのか・・・・・


そりゃ神楽じゃないと飼えないわけだ・・・・・







『泣きわめけぇぇぇぇぇ!!』





またレールガンが飛来してくるも、今度は
狛子が結界を張り、弾を防ぐ。





「すごい・・・・・・」


『ウオォォォォォォォォ!!!』







効かないことを察知したのかウルフが
こちらに跳びかかってきたが それも結界で防がれた。







今よ!!なんでもいいから早く倒して!!
これじゃそう長く持たない!」


「九兵衛さん!!奴の動力源は後ろ脚の付け根だ!
そこを攻撃してくれ!!」



「はあぁぁ!!」





気合と共に九兵衛さんが後ろ脚の付け根を
刀で斬り 動力源を露出させた。


俺は間髪いれずにその切れ目に向かって
M82をぶちかます。





『グワァァァァァァァァ!!』





攻撃が功を奏し、ウルフはそのまま倒れ静止した。







「若!!お見事です!!」


「あの・・・とどめ刺したの俺なんだけど・・・」







動かなくなった機械の中から、ずるりと
女性が滑り出てくる。





ウルフが出てきたか・・・・念のため弾を・・・・・







フラフラの身体で立ち上がったウルフの
顔を隠していたメットが取れた。





「あら・・・きれいな人・・・・」


「もしかしてこんな人が
これを動かしていたというのか・・・・・・」





長い髪をなびかせた、浅黒い肌の彼女が言葉を紡ぐ







『泣き声が聞こえる・・・・
赤ちゃんの・・・・泣き声が聞こえる・・・・』



「何言ってんのこいつ?
そんなの全っ然聞こえてこないわよ 耳おかしいの?」


「違うんだ阿音さん・・・・こいつらは
戦争のトラウマでこうなってしまったんだ・・・・」


「まあ、可哀想な人・・・・・」







ウルフはふいに、有りもしない方向に顔を向ける。





やめて・・・・!泣きやんでちょうだい・・・!
お願い!さあ泣きやんで!!」





言葉が途切れ、狛子へ視線を移した彼女が
怯えた表情を見せた。





「・・・狼・・・!」


え?狛子のこと言ってるの?
違うわよこの子は狼じゃないわ。」


「クーン・・・?」





狛子はその場でただ首を傾げた。







「向こうに行って・・・・!
こっちに来ないで・・・・・!」







けれどウルフは蹲り、頭を抱えて泣いた。







「ごめんなさい・・・!怖かったの・・・・・・
私を許して・・・・!ごめんなさい・・・・!


「一体何があったのこの人に・・・・
こんなに怯えて・・・・」


「お妙さん、一旦離れててくれ。
あいつは・・・・またこっちを襲ってくる。」


「あの状態でまだこちらを・・・!」





俺は特殊弾が装填された拳銃をウルフに向けた。





泣いててもいい・・・・・!うう・・・・」







泣きやむと 彼女が俺の方に向かって来る。







「私の涙はいらない・・・・私は泣きつかれた・・・・
だから・・・・・・ずっと泣いててもいい・・・・・
ずうっと・・・・聞いていてあげる・・・・





待ってろ・・・・すぐに楽に・・・・・


と思い照準を固定させるが、発砲を止めたのは





殿、流石に丸腰の女子を撃つのは・・・・
いかがなものかと。」


離してくれ東城さん!
こいつは俺が浄化してやらないと・・・!
じゃないと後数分で死んでしまう!」


だからこそです、ここは彼女を少しでも
生き長らえさせる事が一番ではないのですか?」





こんな時に呑気な事を言いやがるこの糸目・・・・!







小競り合う内、案の定ウルフが東城さんに抱きついた。


ったく・・・こいつは一度痛い目見ないと
分からないからな 少し思い知るといい


・・・・あ、でも痛めつけても
九兵衛さんの嫌がらせはやめないか





「わ・・・若・・・・・力が抜けていきます・・・・」


「だからさんの言う通りにすれば良かったのだ!」





そう言って九兵衛さんが 東城さんから
ウルフを強引に引き剥がし


間を空けずに俺は特殊弾をウルフに当てた。





「ああああああ!!」







一瞬のけぞり、ゆっくりと悶えながら彼女は倒れる。







そして・・・前の二人と同じように自然に蹲った。







さん・・・・
この人、死んでしまったんですか?」


「ああ・・・でもこれでよかったんだ・・・・
戦闘マシンで生きるよりはずっと・・・・







一応、地面に落ちていたウルフの武器「レールガン」を
もらっておく事にした。





後でドレビンに頼んで洗浄してもらおう・・・・・







噂をすれば 奴からの無線が入った。





今度はどんな話が飛んでくるんだ・・・・・・








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後書き(退助様サイド)


退助「3人目のBBも撃退し、物語は終盤に突入です!」


妙「あの人・・・・ホントに何があったんですか?
狼が見えたり、赤ちゃんの泣き声が聞こえたり・・・」


退助「今までのBBもそうだけどウルフも
結構悲惨な体験をしてるからね・・・・
ホント戦争は恐ろしいよ。」


九兵衛「全く、敵に色目を使うから
あんな目に合うんだぞ。」


東城「違います若!!
私は単に哀れな女性を楽にしてあげようと」


阿音「それが裏目に出ちゃってるから
あんな目にあったんでしょうが。」


東城「うぐ・・・・・反論出来ない・・・・」


百音「それにしてもさん・・・・かっこいい・・・」


阿音「何のろけてんのよ、あの人には
もう彼女がいるんだからね。」


百音「あら、結婚してないから
まだ私にもチャンスがありますよ姉上?」


阿音「ロクに恋愛もしてないくせに
生意気言うんじゃないよ!!」


退助「ドロドロな恋愛をしている人に
言われたくないかも・・・・」