「SOPシステム?」
「そうだ、正式名称は
『サンズ・オブ・ザ・パトリオット』システムだ。」
とある基地の通路を歩きながら、キャンベル大佐は
俺の問いかけに答えを返す。
ワケあってアメリカへと帰国している為、この基地は
当然アメリカにある軍用施設だ。
「軍事関係者と兵士にナノマシンを埋め込み あらゆる兵器
航空機、船舶といったモノを人工衛星でID管理するシステムだ。
無論、兵士のナノマシンIDが一致しなければ
それらは使用出来ん・・・操縦はおろか 銃弾も撃てはしない。」
「いつのまにそんなシステムが・・・」
「実は戦前から開発されていたものでな、
戦後はPMCが完成させ、世界各地に導入したのだ。」
PMC・・・民間軍事請負企業か。
確かに世界中に拠点を置いてるPMCなら世界導入は簡単だな。
「このシステムは各兵士の状態とミクロ単位による
戦況の把握が出来、本部も高精度な指揮を可能とした。
そのナノマシンが出す分泌物には多少の痛みも感じず
精神状態も管理されている。」
「操り人形みたいだな・・・」
「悪く言えばそうなるが このシステムがあれば
戦場においての無駄な感情はなくなり、任務遂行力が上がる。
それに兵士同士での無線的なコミュニケーションが
可能になって市街戦や屋内戦でも絶妙なタイミングを
図ることが出来るようになった。」
確かに、市街戦ではいかに敵に悟られないかによって
戦況が変わってくるからな。
「しかも、周辺の友軍情報や残弾数
脈拍まで知ることが出来るので迅速な対応も可能だ。」
「そこまで優れたシステムなのか・・・
だが問題もあるんじゃないのか?」
説明する大佐のトーンが、少し下がる
「ああ、感情をコントロールする余り ナノマシン制御が
停止すると蓄積された感情や感覚が沸き上がり・・・
それにより精神が圧迫され発狂し、ノイローゼに陥る。」
下手をすると廃人か、重大すぎる問題だな
「解決策はあるのか?」
「今の所はないが、これはあくまで予測だ。
現時点ではナノマシンが停止するなど有り得ん。
メリル達ラットパトロールもこれのために組織されたのだ。」
それなら心配ないだろうが・・・・下手をしたらこれ
戦況を丸ごとコントロールできるって事じゃないのか?
今のPMCが何かしでかしたら『戦争経済』が
あっという間に復活してしまうぞ。
しかし、これなら敵に武器が奪われても
反撃は出来ないから生存率は上がるだろうな
「・・・所で気になっていたのだがジャック。」
「何だ大佐?」
「後ろにいる連中は・・・何なのだね?」
歩く俺達の後ろには・・・・はしゃぐ銀さん達がいた
ACT−1 外国のニュースは日本にほとんど来ない
「あ・・・いや・・これは・・・・」
「おいおいスゲェなあ。あちこち機械だらけだぜ?」
「銀ちゃん!これ中々いけるアルよ〜!」
「ちょっと神楽ちゃん!何持ってきてるの!?」
「何か倉庫に缶詰みたいなものがあったネ!
少しぐらい持ってきてても怒られないアル」
「いや怒られるって!それ少しのレベル超えてるし!!」
「オィオィ何この柿山みたいなモン?俺ぁ基本的に
糖分オンリーなんですぅ、甘いもんなかったのか甘いもん?」
「字ぃ読めなかったから適当に持ってきたアル。」
もっさもっさと口中に何か頬張ってる神楽を見やり
青筋立てつつ信じられないといった様子で大佐が叫ぶ。
「おいいいぃぃぃぃ!それ軍用レーションだから
勝手に持ち出してくるんじゃないっ!!
そもそもジャック!何で江戸のこやつ等がここにいる!?」
「いや・・・話せば結構長くなるんだけど・・・・」
実は帰国の際、自家用旅客機でアメリカに飛んだんだが
・・・どこで嗅ぎつけたのか銀さん達がちゃっかり
機内に乗り込んでいたのだ。
気付いた時には既に引き返せる状況ではなかったので
仕方なく一緒に連れてきたんだけど・・・
ここまで騒がしいなら、機体に縛り付けておくべきだった。
「じいさん!!食堂ってねぇのか?
そこならなんかあるだろ、こうパフェ的なものが!」
「誰がじいさんだ!軍の食堂にパフェなんぞ
あるわけないじゃろうがバカモンが!!」
「あぁ?こっちはずっと飲まず食わずでいい加減
糖分限界来てんだよジジィこるぁ!!」
ちょ・・・初対面で大佐にメンチ切る奴なんて
恐らくアンタが初めてだよ!
「銀さんいくらなんでも・・・すいません、あの・・・」
「キャンベル、ロイ・キャンベルだ。」
「キャンベルさん。僕らここに来たの初めてで・・・」
「普段なら一般人は入れないハズなんだがな・・・
の知り合いだから許されていると思え。」
「うるさいネ、ジジイ。いいから食堂に案内するヨロシ。」
「誰がジジイじゃこら!!!」
「まあまあ大佐、いい年してカッカしてると体に障るぞ。」
大佐を宥めつ 俺はさっさと三人を食堂へ向かわせるべく
近くにいた兵士に話しかける。
「君、この3人を食堂に案内してくれるか?代金は俺が払う。」
「了解です、ビッグ・ボス。皆様こちらです。」
「ああ、お願いします。」
やれやれ・・・食堂なら少しは大人しくなるだろ。
三人の姿が遠ざかったのを見届け、大佐はため息と共に呟く
「・・・話を戻そうか・・・・」
「すまんね大佐。ところで衛星でID管理すると言ってたが
その衛星の名称は?」
「基本は4つの衛星で管理されているが、大元の衛星は
『J.D』(ジョン・ドゥ)だ。だがこれはお前の名前ではなく
アメリカの伝説の兵士『ネイキッド・スネーク』の本名だ。」
スネーク・・・あの時会った・・・
そうか、スネークと同じ名前を付けてくれたのか。
大佐は少々寂しげな顔をして ぽつりと言う。
「実はな・・・彼とは同期だったのだよ。」
「え?スネークと同期?」
「ああ、彼は当時どんな劣勢でも諦めず仲間のために
命を張る男だった・・・だから周りから信頼されていた。」
そうか・・・・俺と違って強かったんだな・・・・
「それと、君は知らないだろうが
彼も『ビッグ・ボス』の称号を持っていた。」
「スネークが?確かに初耳だな」
「戦争を終結に導いた功績が称えられたのだ。
もっとも、彼はあまり喜んではいなかったがな・・・」
そうか・・・・じゃあ俺は2代目ビッグ・ボスって事か
「ああそうだジャック、この先の研究室に行けば
懐かしい顔に会えるぞ?」
「懐かしい顔?」
「まあ、ついて来るといい。」
そこで大佐に案内され、研究室の扉を開ける。
「ナオミ君、ジャックが帰ってきたぞ。」
・・・そこにはシャドーモセスの研究室にいた
ナオミ・ハンターの姿があった。
「ジャック 久しぶりね。」
「ナオミか・・・ここにいたんだな。」
「いいえ、私はPMCの医療部所属なの。
今日は医薬品搬入の為にここに来たの。」
「そうか・・・」
ナオミはあの時、シャドーモセスで生物兵器開発を
協力させられていた。
リキッドがいなくなった事で開発は中止になったと
聞いていたが・・・あの後PMCに入っていたとはね
案内が終わった時点で大佐はこの場を俺に任せて去り
俺はナオミとしばし取りとめの無い話を交わした。
「そう言えばね、さっき女の子に会ってきたの。」
「女の子?あ!まさか、チャイナ服の・・・」
「違うわ、サニーって言う子・・・あの子すごいわ
あの歳でスーパーコンピュータを使いこなせるなんてね。」
「何でも100年に一度出てくる逸材だとか聞いたけどな。」
言われてみれば竜宮城等の件でも助かったな。
だが賢者達がその力を使って何をしたかったのは
まだ分からず仕舞いだが・・・
「あ、そろそろ行かないと・・・」
「そうか、またいつでも来いよ。」
「ええ、それじゃあ。サニーにもよろしく伝えておいて。」
「分かった。」
PMCの飛行機に乗り込んだナオミを見送った直後
血相を変えた兵士が俺の元へと飛び込んできた。
「大変ですビッグ・ボス!!!」
「どうした?」
「先程ご案内した人達のせいで、食堂の食料庫が
もうすぐ底を尽き掛けています!!」
あいつら・・・・・・8割方神楽の仕業だな
考えが甘かった事を反省しつつ、急いで食堂に向かった。
やたらと山積みにされた食器類のテーブルの側に
項垂れる銀さんと戸惑いまくっている新八君
そして腹を膨らまして椅子の上に寝そべる神楽がいた。
「あんたら・・・何してんの?」
「お前からも命令してくんねぇか〜材料あるんだから
パフェ作れるだろってつっても作ってくんねぇのこの姉ちゃん。」
「だから・・・・パフェなんてないって言ってるのに・・・・
もうこの人達どうにかして下さいビック・ボス〜」
泣きべそかきながら従業員が俺に縋りつく。
「止めないでよ、もう少しで全メニュー
1種10個食べる伝説を完遂出来るアル・・・・」
「いらんわそんな伝説!銀さんももういい加減にしてぇ!!」
ああもう・・・・・連れてくるんじゃなかった・・・
こいつらだけは強制送還してでも帰すべきだった・・・・・
激しく自分の判断ミスを後悔していると、TVから
ニュースを読み上げるキャスターの声が滑り込む。
『・・・続いてのニュースです。昨日未明、行方不明の
ロシア高官が遺体で発見されていることが発覚しました。
被害者の名前は・・・・』
その名前が耳に入った時、俺は思わず画面を見て
・・・驚愕した。
「何!?まさか・・・・!?」
「あん?どした?」
「さっき被害者の名前言ってた時に驚いてましたけど
・・・知ってる人ですか?」
「ああ、あの高官は・・・・いや、何でもない。」
間違いない・・・被害者の高官は賢者達の一人だ。
賢者達の詳細は一部の人間を除いて全く知られていないし
教えるわけにもいかないので咄嗟に誤魔化したが
内心ではまだ動揺している
「しかしそんな偉い高官が何で殺害されたんでしょう?」
「分からん、だが裏があることは確かだな。」
「んな難しいことは俺達にゃ分からんさ。
じゃ気を取り直してパフェを・・・・」
「「だから軍の食堂にねえっつってんだろうが!!」」
全く何処に行ってもこいつらは・・・・・・
用事も終わり、いい加減江戸に帰らなければいけないので
騒ぐ三人を引きずって旅客機へ押し込む。
「痛たたた、痛いですってさん!」
「何するネ!私もうちょっと遊びたいアル!」
「俺なんてまだアメパフェ食ってねぇのにぃぃぃ!!」
「んなパフェねぇから諦めろ!
元々俺の用だけだったんだしさっさと帰るぞ!!」
アメパフェって・・・アメリカのパフェっつー意味か?
パフェなんて何処も一緒だろうが・・・
約二名からのブーイングの嵐が巻き起こる中
一人の兵士が寄ってきた。
「ボス!お客様がお見えです。」
「客?」
「はい。ストライカー装甲車で基地に来ております。」
ストライカー装甲車?民間企業でも使われてはいるが何でそれで?
「銀さん!悪いがちょっと待っててくれ!」
言い置いて、俺はすぐに場所を案内してもらった。
折角来た客を待たせるのもあれだからな・・・
しかし、俺に用があるなんて・・・・一体誰だ?
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後書き(退助様サイド)
退助「さて始まりました新長編!」
新八「なんか良く分かんないんでしたけど・・・
結局どんなカンジなんです?あのシステム。」
退助「ああ、SOPシステムね。平たくかつ悪く言うと
戦況がコントロールされてしまうシステムです。」
銀時「て事は何だ?結野アナにその変な機械入れたら
いつでもどこでも俺の意のままに出来ると?」
退助「最悪な言い回しだけどそんな感じ。」
さっちゃん「銀さぁぁぁん!この注射受けて
そして思う存分私をいたぶり倒してぇぇぇぇ!!」
銀時「ぎゃぁぁぁ!俺注射は嫌いなのぉぉぉ!!
針こっち向けんなドM豚ぁぁぁぁぁ!!」
退助「おいぃぃぃぃぃぃ!それナノマシン注射器!!
何処から持ってきたの!?」
神楽「銀ちゃんに打ってもチャランポランは直らないアル。」