―4日目・日中―
「よ〜し唐突だがみんな、サッカーやろうぜ!」
言葉通りに突然、テンション高めにカズが
サッカーボール片手にMSF隊員と江戸の面々を誘い
誘いの言葉に反応を示して
「おおサッカーですか!」
「久しぶりだな!」
中米出身の隊員達は熱狂していたのだが
反対に、万事屋トリオは何故か冷めていた。
「サッカーですか・・・」
「あんまりいい思い出がないアル。」
「つーか球蹴りに何でそこまで熱くなってんの?」
「俺達の国では熱狂的なファンが多いんだよ。」
疑問に答える隊員の言葉を、別の隊員が笑って引き継ぐ
「そうそう、サッカーの試合でのいざこざが原因で
戦争が起きたって言われてるからな。」
「そんな理由で戦争が起こったんですか!?」
「実際はきっかけの一つにしか過ぎなかったがな。」
以前から戦争の起きた二国は緊張関係にあったのだという
補足を聞いても、新八は驚きを隠せなかった。
「どのようなものか分からぬが楽しそうだな
・・・殿?気乗りせぬようだがいかがしたか。」
「いや、まあうん気にするな・・・」
へそう返してから、は間もなく立ち上がる。
「よし!午後からはサッカーだ!各自準備怠るな!」
『了解!!』
試合の許可が降りたので、隊員達は大いに張り切り
正午過ぎからの炎天下のもとで準備を行った。
第7話 超次元とか十二等身じゃない
普通のサッカーしようぜお前ら
コスタリカとニカラグアとでチーム分けもすみ
江戸の四人はコスタリカチームに入った。
「当たり前な事なんですけどサッカーゴール
必要ですよね、あるんですか?」
ヒューイは自信を持って新八の疑問に答える。
「大丈夫!こんな事もあろうかと
簡易的ではあるけど研究開発班が造っておいたから」
「準備いいな博士!」
「こういうの"才能の無駄遣い"って言うアルな。」
「だな。」
正式な大きさのコートでは無いものの準備が整い
中央のラインとそこに置かれたボールを挟んで
選手も全員滞り無く並んで頭を下げる。
「よし!じゃあ早速試合w「た、大変だジャック!!」
開始の合図を遮ったカズに、選手と審判
そしてギャラリー代わりの隊員達から非難の声が上がる。
「んだよこんな時に空気読めヨパチモン銀ちゃん。」
「み、水を差して悪いとは思うが一大事なんだよ・・・
拘留していたザドルノフが姿を消した!」
「またか!」
「おいオメェらホント仕事してんの?まったく
何処ぞの税金泥棒じゃねぇんだからよ」
「あんたに言われたくないですよ。」
「そうネ銀ちゃんもどっこいどっこいアル。」
従業員二人の発言に激おこぷんぷんしかかる雇い主を
無視し、はため息混じりに確保へと動く
「すまん!試合はみんなで楽しんでてくれ!」
そう言い残し、彼を乗せたヘリは空に消えていった。
一旦仕切りなおして審判は ヒューイとが
替わって担当することにして
「では、試合スタート!!」
開始のホイッスルと同時に、ボールが行き交った。
本職の選手ではないためラフプレイが多いものの
普段鍛えている彼らの動きは見応えがあり
応援団のエキサイトも加えて大盛り上がりを見せる。
「いっけー!そこだ!!」
チコの隣で、パスも一緒になって応援していた。
選手のポテンシャルも高く、試合に熱が入るが
経験がある万事屋トリオのおかげか
流れとしてはコスタリカチームが押していた。
「何だよ日本の連中、めちゃめちゃ強ぇ!」
「あたいを舐めんじゃねーヨ!行くアル!!」
ニカラグアチームのゴール前に躍り出た神楽は
「必殺シュート!ヘルズ・ファキナウェイ!!」
某サッカーアニメの如くわけの分からない必殺技を
口にしボールを思い切りシュートする。
「どんだけ中二設定引きずってんだぁぁぁぁ!!」
新八のツッコミをよそにボールはものすごい突風を
巻き起こしながらゴールネットに突き刺さって
コスタリカチームに無事ポイントが入った。
「おい何やってんだ取れよキーパー!」
「む、無茶言うなって・・・あんなの取れるわけ・・・」
それもそのはず、夜兎の蹴りで凶悪化したボールを
止められる者など誰一人としていない。
「よし今度こそ!」
それでも めげずに意気揚々とボールを蹴って
点を狙うニカラグアチームであったが
他の選手にルートを遮られた隙をつかれ
「よっしゃもらいネ!」
幾度と無く神楽にボールを奪取されてしまう。
チームプレイといえど最強のアタッカーとして
機能している神楽がいる以上
コスタリカチームの優勢は動かしようがなかった。
「いっけー神楽!」
「やらせねぇよ!!」
必死で追いすがるニカラグアチームの一人が
阻止しようとスライディングで突っこみ
・・・そこで、両者の足がぶつかってしまい
神楽は大きく宙を舞って甲板に叩きつけられた。
「か、神楽ちゃん!」
「大丈夫か、神楽!」
近くにいた新八とが駆けつけて、倒れた
神楽の怪我をみたのだが
骨折は免れていたものの勢いがついた衝突のせいで
捻挫し、まともに歩けない状態となっていたようだ。
「うぐっ・・・めっさ痛かったネ謝れヨ!」
「ワザとじゃねぇんだしギャーギャー騒ぐな
それぐれぇでちょうどいいハンデじゃねぇか」
「人を傷つけ開き直るなど、男の風上にも置けぬな」
辛辣なの物言いに、しかし当の本人は
反省するどころか不貞腐れて居直った。
「だーかーら、事故だっつってんだろバカ女ども
化け物相手じゃ加減間違っても仕方ねぇだろが!」
「おい何だその態度!仮にも子供に対して
大人気ないと思わないのか!?」
と見ていられなくなったコスタリカチームの
一人が、相手に文句を言う。
「あのなーフェアじゃないんだよどう見ても
お前だってこんな試合嫌だろ?」
「何!?」
「オイオイてめぇら大人気ねぇな。」
ぶつかりあう両者の間に、銀時が割って入る。
「仕方ねーだろこういうメンバーになったんだからよ
言うなりゃチーム決定の時点で、てめぇらの負けは
決まってんたんだよ・・・すでによぉ〜」
どっかの波紋使い二世みたいな口調から
不敵な笑みを顔に貼り付けて、銀時は厳かに言った。
「諦めてもそこで試合終了だよ!」
「何その黒い安 西先生!?
ていうか蒸し返してどうすんですかぁぁぁ!!」
もちろん思いっきり相手チームの神経を逆撫でしたので
これを皮切りに、両チームでつかみ合いのケンカが勃発した。
「何だとコノヤロー!!」
「おいやめろって!」
「ちょっとみんな落ち着いて!」
が沈めようとコートに入るのだが
聞く耳を持つどころか間違って殴られかけ
作務衣少女の肘鉄で助けられて、どうにか退避して
成り行きを見守しか出来ずにいる有様で
コート上の乱闘を 周囲の人々もただ見ているだけしか
出来ずにいたのだが・・・・
「みんなストーップ!!」
叫んだヒューイの言葉とホイッスルが
乱闘していた選手全員の動きを止めた。
「僕達は国を捨て、この惑星と一体になったはずだ!」
普段の頼りなさがウソのように、力強い声で
ヒューイは両チームに呼びかける
「国の優劣を競っているわけじゃない、国益をかけて
戦っているわけじゃない!
これは戦争じゃない、サッカーは平和のスポーツだろう?」
隊員達はその言葉を聞き行って、我に返ると深く頷いて
「ああ、そうだったな。」
「俺達はMSF・・・国境も国の思想も関係ない・・・」
「それなのに・・・」
「こんなとこ、ボスに見られたら
こっぴどく怒られるところだな。」
自らの行いを省みて、その醜さを恥じた。
そうして冷静になった全員が 口々に謝り握手を交わす
「ごめんなチャイナ娘、俺も大人気なかったよ。」
「ううん、こんな怪我どうってことないネ。」
「最初っから謝りゃいいんだよ、ったく煽り耐性も
ねーんだからどうしようもねーなお前ら。」
「火に油注いだアンタに言う資格はありません。」
「そうだぞ銀時、お主はもう少し恥を知れ。」
「何この空気?俺がKYピーマンになってんの?」
仲直りも済んで、試合を再開しようとしたが
捻挫した神楽に試合続行は不可能なので
抜けた穴を埋める代わりの選手として、ヒューイは
パスに参加してもらうよう促す。
「パス、彼女の代わりに入らないかい?」
「え、私ですか?」
「そうだ!パス、ぜひ出てくれ!」
「パスなら大歓迎さ!」
あまり乗り気では無さそうだったが、隊員達からの
賛同の声もあってコスタリカチームにパスが入り
ホイッスルが鳴って選手がコートを駆ける。
再開後からの流れは最強アタッカーが抜けた分
互角の試合となり、かえって白熱していた。
髪を大量の汗で濡らしながら パスもまた
縦横無尽に転がるボールを追いかけてゆく。
敵陣で味方チームからのボールをもらい
「いけ、シュートだ!」
「パスやっちゃるネ!!」
神楽だけでなく、敵チーム応援のはずのチコからも
声援を受けて彼女は思い切りゴールへシュートする。
が、相手のゴールキーパーに阻まれ届かなかった。
「よっしゃ!これなら取れるぞ!」
思ったよりも弱いシュートになったからか、パスは
悔しさをあらわにして顔をふくらませる。
「もう!次は負けないから!」
・・・・・そして試合終了のホイッスルが鳴り響き
結果は、コスタリカチームの逆転負けとなった。
何度かゴールのチャンスがあったパスだが
1点も取れずに終わってしまい、残念そうだった。
「いや〜、いい試合だったよ!」
「一悶着あったが、面白かったぜ!」
健闘をたたえ合う彼らは、常時日差しに熱された
甲板の上で動き回っていたので汗だくだ。
なので日陰を見つけて 各々横たわって休憩する。
「あっち〜、夜兎にはキツすぎるアル・・・」
「みんな、水分補給はしっかりとな。」
一息ついていると 通りかかったが彼女へ言う
「ご助力感謝いたす、お疲れパス殿」
「あ、その、私の方こそ・・・楽しかったよ?」
短く言葉を交わして別れ、パスも適当な日陰に
身を横たえて涼んでいた。
強く海風が吹いて心地よいその場所は
ニュークもお気に入りらしく、軽い挨拶をして
パスと一緒に寝そべっている。
「いい天気だニャ〜・・・」
呟きに空を仰げば、突き抜けるような
澄んだ青さに ひつじ雲の白が通り抜けてゆく。
そして同じ空の下、ザドルノフ捜索に
駆り出されたはと言うと
「あっち〜・・・!」
ジャングルの高湿度・高気温にやられ、今にも
干からびそうになっていた。
まとわりつく空気とベタつきに苛立ちながらも
壁に張り付いているザドルノフを発見し
あんまりにもいらだっていたからか、ゴム弾を
ドタマに撃ちこんで気絶させて襟首掴む。
「ったくおいコルルゥアァァ!このクソ熱い時期に
手間かけさせんじゃねーぞ海苔オヤジが!!」
キャラまで崩壊しかねない気温のせいなのか
かなり荒い口調で締め上げつつ、はすぐに
フルトン回収を行なって本部へと戻った。
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後書き(退助様サイド)
退助「多分掲載されてる頃にはサッカーが賑わっている
・・・はずの展開で書いてました。」
銀時「皮算用乙。つかホントになんだよこいつら
いい加減働いてるトコ見せろって軍人なんだし。」
新八「そう言う銀さんもいい加減働いてください。」
神楽「最近万事屋らしいこと一つもしてないアル。
無線でもババアが家賃払えって怒鳴ってたヨ。」
チコ「なんか大変だねお互い」
カズ「チコ、こいつらと一緒にしてもらっては困る。」
次回 ピーマン娘の貞操の危機・・・!
ストレンジラブ「ふ、ふふ・・・いよいよだ・・・!
この時を・・・この瞬間をm」
銀時・カズ「「待ってねーよ!!
つーか逃げて超逃げてぇぇぇぇぇ!!」」