―2日目・午後―
ヒューイに連れられ、達が格納庫へ向かえば
完成したメタルギアZEKEがそこにあった。
「おお、完成したのか!」
「ああ、ジャックが江戸にいる間に完成したんだ。」
「ヒューイ殿、この巨大な機械は?」
「君は見るの初めてだっけね、これは僕達MSFが
大国と対等な交渉を可能になる為の抑止力さ。」
続けて彼はAI兵器の装備として、クリサリスのレドームとレールガン
ピューパのブースターに、コクーンの装甲を追加したのだと説明し
「バランスのいい仕上がりになったよ、ちなみに
塗装も自由に変えることが出来るんだ。」
「マジでか!?ちょっと私にやらせるアル!」
「いいけど・・・あまり無駄使いしないでくれよ?」
目を輝かせた神楽が嬉々として研究開発班に
塗装を頼み、そして・・・・・
茶混じりの黒っぽいカラーリングが施された。
「・・・って何なのこれ神楽ちゃん?」
「メタルギアZEKE・酢昆布カラーネ!」
「んな見るからに酸っぱい色にしてんじゃねぇよ
こーいうのは俺に任せとけって。」
次に仕上がった塗装は、なんと・・・
某彗星並に真っ赤(実際はワインピンクっぽい)で
ツノとかついたら危なそうなメタルギアZEKEに
「見える・・・私にも、敵が見える・・・!」
「アウトォォォォォ!見えねぇよ!
銀さんも悪乗りしてるだけでしょ!?」
「うるせぇな、だったらお前が塗ってみろよ。」
「そうアル!新八も何か頼んでみるヨロシ!」
「えっとじゃあ・・・・」
なんという事でしょう!新八の頼んだ塗装によって
某ヴィクトリーを彷彿とさせるトリコロールカラーが
とても目を引くメタルギアZEKEに生まれ変わ
「ってテメェも意識してんじゃねぇか!!」
「そうネ!酢昆布カラーに戻せヨ!」
「待て待てお前ら!
これ以上塗装したら塗料がなくなっちまうぞ!」
慌てて注意するに構わず、万事屋トリオは
カラーリングについて口論しており
アホらしさにヒューイも呆れる始末
「はぁ・・・でも塗装はそろそろ決めてしまわないと
いけないんだけど・・・ジャックはどうする?」
「俺か?そうだな・・・MSFのトレードカラーである
ダークブルーがいいかもな。」
「うん、そっちの方がしっくりくるね。そうするよ。」
第3話 悩むのは結構だが、君達ちと
語りが長すぎるんでないかい?
あっさりZEKEのカラーが決まったのを
見計らったかのごとく、カズが話しかけてきた。
「少し・・・相談したいことがあるんだが?ボス。」
「どうした、改まって?」
「ラゴ・コシポルカから、ピースウォーカーに
積まれていた核弾頭を引き上げた。」
意図せず声を落としてささやいてはいたが
耳聡く聞きつけ、万事屋トリオはケンカをやめる。
「え、あれ引き上げたんですか?」
「別にほっといてもいいんじゃないアルか?」
楽観的な神楽の言葉をカズは否定する。
比較的安定した状態にあるものの核弾頭は放射性物質の塊であり
いつまでも湖の底に放置しておけば、湖が汚染されるのは明らかで
万一にもテロリストの手に渡ったりしたら・・・
「だからホワイトハウスがどうケツを拭くか
迷ってるうちに、俺の方で手を打たせてもらった。」
「そりゃご苦労さん、で?その物騒なミサイル
どーするつもりだ俺もどき」
「ZEKEに搭載する。」
「何だって!?」
「当然だろう。ZEKEは俺達が国家の干渉から
逃れるための「抑止力」でなきゃならない。」
核による脅しに屈しない為には自分達が核を持つしか無い
望まないなら廃棄もできるが、後から新たな核を手に入れるのは
困難なため これが貴重なチャンスであることをカズは主張する
だがは、不服な顔をして唸るばかり。
「廃棄はいつだってできる。荒っぽくてもいいなら
漁船に乗せて、外海にでも放ってくればいいんだ。
誰も気づきゃしない。」
「気づかなければ、何をしても許されるのか?」
予想外の根本的な詰問にカズが僅かに言葉に詰まる。
「いやそれはモノの例えで・・・とにかく、だ
それでも廃棄するというのなら お前の命令に従うよ」
はしばし無言のまま思考を続け・・・
ややあって、答えを出した。
「いや、いい。核という力が世界に存在している限り
俺達が国家と対等であるために、これは必要だ。」
意を得たカズの表情が明るさを増し
「そうさボス!俺達は国家に属さないからこそ
国家と対等な存在でなくてはならないんだ!」
MSFもある意味では国、そして自分達は世界で
第7の核保有国になった・・・と力強く言い放つ。
「でも・・・ホントにいいんですかさん?」
「散々苦しめられた兵器を自分が持つって
・・・皮肉だよなぁ。」
江戸の面々の視線を受け、彼は深いため息と
共に言葉を吐き出してゆく。
「俺達は国を棄てた。だからこそ、国と
対等な立場に立たなければならない。
もちろん核は使う気はない。だが・・・」
「黙ってやられるわけにもいかない。
俺達が核で滅んだとしても、報復は行う。」
自らの理論を口にするカズの、サングラスの奥に
隠された瞳は強い意志をまとっていた。
「そして世界に知らしめるんだ・・・
「俺達は、国家や思想に踊らされず自分達のために戦う。」とな。」
―2日目・夕方―
ZEKEのお披露目も終わり、夕暮れの通路を
歩いていたとが
外を見ながら頬杖をつくチコを見かけて歩み寄る
「はぁ・・・・・・」
「どうした、チコ?
ため息なんてついてお前らしくない。」
「あ、ジャックに・・・さんだっけ?」
アンニュイな眼差しの少年は、全身から
"悩みがあります"オーラを漂わせていた。
「悩みでもあるのか?」
「え?別にそんなこと、ない・・・わけじゃない、かな?
・・・・・なあ、ジャック。」
「なんだ?」
「女の人って、変わってるよね・・・何考えてるか
よくわからないし、気ままだし。やっぱ男とは違うのかな・・・?」
「・・・どうした突然?」
チコが口にした事に対して、唖然としていた
が気づくより早くが口を開いた。
「チコ殿・・・もしや懸想する女子でもおるのか?」
「そ、そんなんじゃないって!ただ・・・・」
「ただ、なんだ?俺達でよければ話を聞くぞ。」
視線をせわしなくさまよわせて、しばらく
黙りこんでいたチコだったが
やがて意を決して・・・打ち明けた。
「俺、パスと話そうとすると、なんだか・・・
ドキドキしちゃって上手くしゃべれないんだ。」
「それは頭に血が昇ってはうまくしゃべれまい。」
「、似てるがその怒気じゃないから・・・・
しかしパスとか・・・まあ、お前と年齢も近いか。」
「二人にもそういう事ってさ、あったりする?」
両者は間を置かずに頷いて
「ああ、誰だってある。」
「私はあn「あー悪いがお前のは今は参考にならんから黙ってろ。」
「ど、どうすれば上手くしゃべてるかな?」
「・・・・難しいな
・・・意識せず、普段通りでいいんじゃないか?」
「それがうまく出来ないんだ。パスの前に出ると
身体が硬くなっちゃう、パスと目が合うと
なんだか顔が熱くなっちゃって・・・」
「それは別の病では?風邪とk「だからお前のは
参考にならんって言ってんだろうが!」
KYを発動させているへ脳天チョップを
食らわせて黙らせ、はこう答える。
「・・・・慣れるしかないな。戦場と同じだ。
最初は緊張するが、場数を積めば自然と慣れる。
頑張って話をするようにしてみろ。」
「う、うん・・・分かった・・・
でも、女の子はUMAより謎に満ちてるよな・・・」
「確かに。」
チラリと男二人の視線が一瞬向けられたと同時に
作務衣少女は懲りずにKY発言を繰り出した。
「なんと、私はUMAだったのか!?
して殿 UMAとは何だろうか?」
「だーからややこしくなるから黙ってろって
言ってんだろうがぁぁぁぁぁ!!」
―2日目・夜―
メタルギアZEKEに搭載するAIの確認をすべく
は研究室のストレンジラブの元へ赴く。
「こんな遅くまで起きていて平気か?」
「少し仕事も押したし、寝付けぬまま
他の作業をしていたら たまたま遅くなったんだ。」
「苦労をかけるな・・・
それでストレンジラブ、AIの開発は?」
「お前の部下に回収させた記憶板で順調に進んでいる
実戦配備までそうかからないだろう。」
ZEKE用のAIはピースウォーカーのものと違い
人の思考を移植していないので核報復の判断機能は無い
だが代わりに指揮官の命令に従って、高度な自律的
戦闘行動が取れるため 歩兵を守り敵を殲滅しつつ
もしも司令が降りたならば・・・・
「核を撃つ・・・?」
「そんな機会がこないことを祈ってる。」
「ああ、それは俺も同じだ。」
ひと通りの説明の後、彼女は笑みを浮かべて続ける。
「私はこの技術を発展させ、もっと小型化した
高度な判断ができるAIを創り上げたい。」
「創ってどうするつもりだ?」
「ロボット工学も進歩していっているからな
ヒトの姿に似せたアンドロイドが作れるくらいには。そうなれば・・・」
「そうなれば何だと言うんだ?」
「言わなくてもわかるだろう?」
は、一つの嫌な答えに辿り着く。
「まさかあんた、ママそっくりの機械人形を・・・」
「お前も一度は考えたことがないか?
彼女が再び我々の元に現れることを。」
「やめろ!そんなものは紛い物だ!」
「そう、潔癖なことね。」
胸の内に沸いた怒りをこらえ、は
気を落ち着かせるため違う話を切り出す。
「そういえば、ママが乗っていた白馬・・・」
「アンダルシアンのことか?」
「あの馬がどうしてコスタリカに?」
「私が探し出した。
口は利けなくても、彼女の最後の証人だ。」
一緒に亡命したものかと考えていた彼の予想を裏切り
八方手を尽くして探した結果・・・アンダルシアンは
最終的にイギリスの乗用馬マーケットで発見されたらしい
「イギリスに?ソ連領内から、ウラル山脈を越え
海を渡ってきたとでも言うのか。」
「さあな。誰かが連れ出したのかも知れん。」
「見た目が似ているだけの
別のアンダルシアンだとは思わなかったのか?」
「確証はない・・・いや、なかった、と言うべきか。」
「どういうことだ?」
「お前が一番よく知っているだろう。
・・・・あの馬は 決して誰も乗せなかった。」
ここまで連れてきたストレンジラブでさえ
何度も振り落とした、気高き白馬は
主人の愛弟子だけを その背に乗せた。
「・・・認めたくないが、そういうことだ。」
「かもな・・・おかげで無理をさせた・・・」
「だが最後の走りは、とても老馬とは思えないものだった
かつての主人を追って力の限り走る
・・・馬としては本望だったのかも知れない。」
暗い顔をしていたが、思考を切り替えが訊ねる。
「もう一つ聞きたいんだが・・・」
「何だ?」
「あんたはどう思ってるんだ?
ピースウォーカーの最後の行動を。」
ストレンジラブの解答は、迷いも淀みもなかった。
「私は彼女の思考を完璧に再現した。
あれはまさしく彼女自身の判断だ。」
最も優れた共感脳が過去を熟慮し、地球規模で
思考した結論は・・・報復ではなかった。
「それがわかっただけで、私は満足。」
「・・・つまり、平和に抑止力はいらないと?」
「そうは言ってない。大切なのは平和を願うことだ。」
"国家"という巨大な怪物の思想の前では、MSFも
身を守る力が必要になる・・・生きていくためには
現実的な考え方も欠かせなくなる。
だとしても理想は持ち続けなくてはならない、と
彼女はハッキリと言い切る。
「理想と現実のギャップに苦しみ、それで理想を
失えば・・・その時は、MSFもそこまでだろうな。」
「なるほどな・・・・・・・・」
一理あると考慮し、しばらくZEKE用のAIを眺め
ふと脳裏をかすめたある事について は
いい機会だからストレンジラブへ聞いてみる事にした。
「ママとは・・・いつ知り合ったんだ?」
「お前がまだ両親の元にいた時にだ。
あの人は、宇宙を見た話を?」
「ああ、少しだけ・・・な。」
「私も同じ宇宙を見た 彼女とともに。」
"ソ連に先を越され、アメリカは有人宇宙飛行の
実現を急いでいた"という前置きの後
「話してもらえないか、その時のことを・・・」
「ええ、あなたにも聞いておいて損は無いと思うわ。」
デスクの椅子に腰かけたへ、相対するように
座ったストレンジラブが
・・・"彼女が見た宇宙"についての話を始める。
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後書き(退助様サイド)
退助「マザーベース・・・国境なき軍隊なのに
平和過ぎなのは気にしない方向で。」
銀時「気にしろよ、ていうか働けよ。」
新八「けど正直意外でした、まさかさんが
核を持つことに賛成するなんて・・・」
カズ「お前にはわからないだろうが、歴史は力を持たない国から
滅ぶんだ・・・だからこそ滅ぼさせないための力がいる。」
新八「理屈は分かるんですけど・・・」
カズ「もちろんこちらからは一切侵略はしない。
あくまで核は"対抗手段"としての抑止力だ。」
神楽「そんな兵器よか未来のバカッポー3号のが
今は脅威アル、さっそく潰しにかかるネ!」
アマンダ「ちょっと私の弟に何するつもり!?」
ストレンジラブ「ところで・・いつになったら
と絡み合・・・・絡めてくれるのだ?」
退助「どっちもやらしく聞こえるのは気のせいにして
・・・いつかはやるんでご了承を。」
新八「それだけはやめた方がいいんじゃ・・・」
セシール「え、でも悪くはなかったわよ。」
カズ「ぬぁんだとぉぉぉぉぉぉ!?」
銀時「そこ敏感に反応すんなパチモンの俺!」