CIPHERの意思を、パスが自らの口で代弁する。
『国境を持たない軍隊が戻るべき場所は
"国境のない国家"・・・"国境なき統治世界"』
「国境なき・・・」
「統治世界?」
オウム返しで呟くとへ、彼女はこう返す。
・・・もうすぐこの世界は混沌の時代が訪れる、と
『宇宙海賊春雨 天導衆 世界規模のテロ
戦争経済とかとかとか!』
だから、これらを防ぐべくCIPHERは提案する。
対立している諜報機関全てを電子の世界に統合し
その全ての情報を自分達側へ集める事、そして人々の
無意識下で世界を見張り、意識を誘導する事を
誰も逆らえず 抗うこともできない
人類史上初めての、ひとつの意志による世界統治。
『それを受け入れるのなら、部隊もZEKEも
今まで通り、あなたの管轄下に置かせてあげる。』
「それが、お主の提案か。」
「ちょっと待ってくださいよ!世界中の人の意志を
統治って・・・そんなの本当に可能なんですか!?」
戸惑う新八へ、パスはいともあっさりとこう告げる。
『要らない心配しなくていいわ、意思統一はナノマシンで行うの。
流石のCIPHERでもナノマシン無しでの統治など無理だから』
「それではSOPの二の舞だろう!!」
怒鳴るだが、彼女はまるで動じない。
『あれは各国の軍とPMCの契約兵士(コントラクター)
だからできたこと、言わばSOPはデモンストレーション
・・・CIPHERの糧となる捨て駒』
歪んだ笑みと思想に憤る彼らの、その横で
「パス・・・何でこんなことをするネ」
ずっと黙っていた神楽が口を開き ZEKEへ向かって
数歩前へと出る。
第15話 グダグダ言う前にまず行動!
「私、パスと一緒に遊べて嬉しかったヨ、地球来て
江戸以外で出来た友達だってパピーに自慢してたネ。」
語るうち悲しみを露にしつつある神楽を
見下した表情のまま、パスは黙って耳を傾ける。
「平和の日の歌も楽しみにしてたのに・・・なのに
一体何やってるアルか!どーしてお前ら
みんなで仲良く歩いてこうとしないアルか!!」
『うるさい!!!』
歯を噛み締めてパスが吠え
続くようにZEKEの機銃が、神楽の周囲を
薙ぎ払うように撃ちこんで威嚇する。
『ガキが・・・みんなでお手手繋いでヘラヘラして
平和になるんなら・・・私達の存在自体が必要ない
この世界を知った風な口で語るな!!』
「パス・・・どうして」
「神楽、離れてろ!」
微動だにせず立ち尽くす神楽を、銀時が強引に
引っ張る事で続けざまの機銃を回避する。
「銀さん、神楽ちゃんをお願いします。」
「ああ。」
ベースの中へと神楽を誘導した銀時を見届け
入れ替わってが、槍を構えて前へ出る。
「パス殿・・・謝る気はないのか?」
『何を?この際ハッキリ言うけど、人間なんて原始から
今に至るまで争いを繰り返す愚かな生き物よ?
意思が統一されれば争いは起こらない・・・そう思わない?』
「難しい事など知ったことか。」
小馬鹿にするようなパスの言葉を、は眉一つ
動かさぬまま切り捨てる。
「ほんの一部を見た程度で断じれるほど人間は」
『その一部って誰の事ぉ?田足?伏木?歩執守?
それとも子供を事故でなくした哀れな女科学者ぁ?』
「黙れ」
『指図しないでよ、結果と規模の差はあれど
世界を掻き乱した連中を愚弄して何が悪いの?』
嘲笑交じりの彼女の声に、明確な敵意と殺意を見て取り
眇めていた緑眼から 僅かに残っていた
交渉の意思と人間らしさが消え去った。
「悪いが"平和の使者"(おためごかし)を語る気も資格もない・・・
私は兄上と仲間の敵となる者の、首を刈るのみ!」
常人ならば耐えられぬ殺気を叩きつけられても
パスの態度は、一寸たりとも変わりはしなかった。
『アナタなら私の気持ち、分かってくれると思ってた
けど・・・とんだ思い違いね。
やっぱり日本の連中は平和で、腐った、愚かな種族だわ。』
「パス・・・いい加減にしろ」
身体に雷を纏ったが、紅く光る眼でパスを睨む。
『ジャック、ビッグ・ママは生業である銃を投げ出した
その教え子である雷電、あなたは銃を棄てることが
いつまでもできない。銃を棄てることが怖いからよ。』
図星を突かれて怒りを殺がれるも彼は
確固たる信念を、言葉に乗せる。
「俺は・・・戦うために創られた。俺は銃そのものだ。」
『そうなの!?
じゃあ、ZEKE(これ)も銃だってわけっ!?』
今まで余裕な口調で話していたパスが、声を荒げた。
『下手な欺瞞ね、こいつはあなたの恐怖心が
生み育てた"怪物"じゃないの!』
「パスさん、それは違うよ。」
眼鏡を上げて、新八が彼女へ異を唱える。
「それは、ここにいる皆を護るため創られたモノですよ
そのために力を持つ事は矛盾してます、けどね・・・」
先程の神楽への仕打ちに、穏やかな新八も
憤りを隠せずにはいられないようだった。
「この人はアンタらみたいに力を、何の罪もない人達を
押さえつけるために使うなんて間違った事はしない!」
『罪もない!?今置かれているこの世界を知らずに
のうのうと生きていること・・・
無知ほど愚かな罪はない!!』
「似た様な戯言なら聞き飽いた・・・散った愚か者と
貴様らの組織、何が違うというのだ?」
彼らの否定を、パスは更に否定で返す
『でも、CIPHERは違う!』
CIPHERは銃を管理するだけでなく、人の思考
意識をも管理する手段を手に入れた・・・と続ける
『それは・・・抑止力とは異なる、平和幻想への
最後のアプローチ!』
「銃を管理することでも限界があった
そんな事出来るはずがない!」
『ぶっぶー!交渉決裂、残念でした!
提案は終わり、これが最後通告よ。』
その言葉と同時にZEKEが駆動音を響かせる。
『ZEKEはもう核攻撃態勢に入った。』
「何!?」
『お前達が創ったこの兵器で
・・・これから合衆国東海岸を核攻撃する!』
「馬鹿な、狙いはなんだ!?」
『ピンポーン!交渉が決裂した場合の答え』
クイズ番組でもやっているかのように、彼女は
核攻撃の目的をすらすらと口走ってゆく。
『国家に帰属しない流浪の愚連隊(ノーマッド)が
どれだけ危険な存在か世界に知らしめる!』
核攻撃により、MSFは汚れた名を歴史に遺し
この世から消える。
MSFは世界のために戦う英雄ではなく
"核を見境なく撃つ過激な武装カルト集団"と化す。
そして、その事実が、世論が、国際社会が
新たなカルト集団を創らせない"抑止力"となる。
これが、パスの語る・・・CIPHERのシナリオ
『さあ、気に入った?私のシナリオが、雷電!』
「めちゃくちゃですよ!そんな事して、アンタらの
言う平和が本当に訪れるとでも」
「新八・・・言うだけ無駄だ。」
刺すような二人の言葉に、パスは歯を噛み締める。
『所詮、平和なんで幻よ・・・ゲームはゲーム!
ゲームは、勝つか負けるか!結局、戦うしかないのよ・・・!」
彼女は 彼女自身の確固たる意志を持って
敵対した彼らへと宣言する。
『私を阻止できるならやってみろ!ピースマークの
Vは、勝利のVなのよ!!セイ・ピース!』
裏向きのピースサインを見せたのを最後に
空中モニターが切られた。
代わってカズからの通信が入る。
『パスは核を撃つ気だ!
ジャック、全力で阻止するんだ!指揮を執ってくれ!!』
『さあ・・・止めてみろ!!!』
メタルギアZEKEが攻撃態勢に入り
デッキに残された3人も、それぞれ獲物を相手に向けた
「俺とでZEKEを牽制する、カズ!」
『わかった!新八は付近の操作盤を使って
マザーベースの主砲を操作してくれ!
ロックオン・マーキング銃で主砲の狙いを定められる!』
「わかりました!」
彼らは目で合図を送り、地を蹴って駆け出した。
マザーベース内に避難した銀時は
「今回ばかりはオメェにゃ荷が重い。ここで待ってろ。」
泣きじゃくっている神楽の頭を撫でて、立ち上がる。
その間も・・・マザーベースはごった返していた。
「ロケットランチャーをもってこい!!」
「ダメだ、いつの間にか全て廃棄されている!」
「用意周到ってことか・・・このままじゃボスが!!」
対抗できる武器は事前に破棄されており
隊員達は戦う手段を失い、指をくわえて見ている状況に
追いやられていた。
それでも何か方法を模索している中
ロシア出身の兵士だけは、何もしようとしていない。
「おいテメェら、そこでなーに遊んでやがるんだ。
外出てあいつ助けに行かねぇのか?」
水を向ける銀時へ、帰ってきたのは否定的な答えばかり
「聞いてなかったのか!?
ZEKEに対抗できる武器が見当たらないんだ!」
「恐らくパスがあらかじめ廃棄したんだろう。」
「このままじゃパスはZEKEの核を撃つ!
だが俺達が出てってもボスの足を引っ張るだけだ・・・!」
「それに、俺達は行き場をなくしてここにいるだけだ。
ここのボスがどうなろうと・・・」
場違いな発言に、聞きつけた他の隊員達が詰め寄り
一気に場のムードは険悪なものと化す。
「お前ら・・・ボスに救ってもらった恩を
仇で返すつもりか!!」
「資本主義の出の人間の言う事は信用できん!」
「貴様ら・・・やっぱりロシアの連中は」
木刀が床を穿つ音が、隊員達の激しい口論を黙らせた。
「テメェら、ここがどこか忘れたわけじゃあるめぇな?」
普段の見慣れた姿とは全く違う、銀時の剣幕に
「がいつも言ってんだろ?ここは国家や国の思想や
イデオロギーもない 平和を望む者達の抑止力だ、って」
彼らは言葉を失って、息を呑む。
「あいつぁ誰に頼まれてでもなく戦争を止め続けてきた
・・・あいつがいなかったら、俺もテメェらも
今頃この世界と一緒にオダブツだ。」
研ぎ澄まされた魂を持つ 侍の眼差しでそう語り
「なのにテメェら雁首揃えて、棄てた国がどうの
うだうだのたまわりやがって情けねぇ。」
言いながらズボっと木刀を引き抜いて踵を返すと
「能書き垂れるヒマあんなら さっさと鉄砲玉でも
なんでもなって、助けに行きやがれ。」
銀時は ZEKEのデッキへと歩いていった。
黙ったままで彼らは顔を見合わせ
・・・そして、
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後書き(退助様サイド)
退助「次回から本格な戦闘シーン勃発!
恋の抑止力の歌もあってかなり盛り上がる部分です!」
銀時「ここの連中もつくづく無能揃いだなオイ。」
神楽「そのウチきっと松明振り回すサルに後ろから
爆弾くっつけられたりエロイモアにかかるネ。」
新八「神楽ちゃん何なのその例え!?」
パシフィカ「けど、よくあの部分を上手く改変したわね
原作だとSOPそのものを指してるから」
退助「ただ改変したわけじゃなく、ちゃんと
後々のことを考えてやってるからね。」
カズ「へぇ、そんな思考回路を持っていたのか。」
退助「・・・の兄貴にチクるぞ」
カズ「すみませんあのこのことはお兄さんにけっして
言わないでくださいお願いしますやめてください
たのみます死んでしまいますぅぅぅぅ!!」
新八「カズさんがトラウマってるんですけど!?
一体、あの人と何があったのねぇ!!?」