―12日目・朝―





夜が明けて、再びザドルノフの捜索が行われたが





「ったくどこいんだよあの海苔野郎が!


「とっとと観念して酢昆布よこすヨロシ!」





手がかりすらゼロのまま捜索が難航しているせいで
銀時と神楽のイライラはかなり溜まっていた。





「気持ちは分かりますけど、そんな殺気だってたら
向こうにバレますって 落ち着きましょう二人とも。」


「そうとも、報いは生け捕った後でも」


「スイマセン言葉の端から殺意漏れてますさん。」





盛大にキレた手前、何もいえないもまた
ザドルノフを捕まえようと 射撃訓練場へ足を運ぶ。







「ここは人の出入りが激しいが、もしかしたら・・・」





金属製の床を極力鳴らさぬように歩を進めながら
油断なく、周囲を見渡して彼は





一瞬だけ 風景に馴染まぬ不自然な茶色のコートを
視線の上方にて捕らえる。


注視すれば・・・それは壁に張り付いたザドルノフだった





あの脱走フェチが・・・!ついに見つけたぞ!」





ついに追い詰めた、と息巻くはすぐさま
近くの階段から上がってゆく。










第14話 つじつまは、合わせるモノです











ザドルノフの近くまで距離を詰めたと同時に





「雷電!」


叫びと銃声が耳をかすめ、弾丸がすぐ右の壁にぶつかって
小さな火花をちらつかせた。





すっと壁から身を現したザドルノフの手には拳銃が





「いつの間に・・・抜け目ないヤツめ。」





口の端を歪め、両手で構え直して狙い済ました
相手の銃口がへと向けられ







「「三百万いただきぃぃぃぃぃ!!」」


「どぅあ!?」


緊張の一瞬も攻撃のチャンスも一切合財


駆けつけ様の銀時と神楽による飛び蹴りで阻まれ
床に這いつくばったザドルノフだが


受難はまだ終わらない





「よーやく見つけたぞ、さんざん逃げ回って
手こずらせやがってバンキシャナレーさんよぉ!」



「テメェのせいでこちとら腹ペコなんだよコノヤロー!」


「ちょっとちょっと二人共、やりすぎだって!」





新八が咎めるが、ひたすらザドルノフ踏みにはげむ
二人はまるで止まる気配がない。


いつもの事ながらその光景にはも冷や汗を垂らす。







ひとしきり踏みつけてスッキリしたトコロで、ようやく
二人が卒倒しているザドルノフから一歩下がるが





「私の・・・役目は終わった・・・」





倒れたままでザドルノフは そう呟く。





「あん?」


「まだ何か言いたいアルか?」







見下ろす彼らを無視し、ザドルノフは残った力を振り絞り
赤い義手をへと向ける。





「勝利のV・・・ロケットピース!!





Vサインを形作った義手の根元から火が吹き


曲げた手首から、右手が一直線に放たれた。





「な!?」


さん危ない!!」





完全に予想外の攻撃に新八の注意も間に合わず


軌道を変えずに進む義手は、防御の遅れた
の顔面へと到達して







平行に伸ばされた二本の指が刺さる直前


間一髪で駆けつけたが、槍で義手を叩き落す。





殿、怪我は?」


「ああ、大丈夫だ。」


「な・・・!」





仕留められず、悔しげな表情を浮かべたザドルノフは
力尽きてその場に倒れこんだ。





側へと寄り・・・気を失っていると確認した後


彼はカズに通信を入れる。





カズ、ザドルノフを確保 攻撃されたが無事だ。」


「まさか義手がロケットパンチになるなんてな・・・」


「私達もビックリしたよ。
が間に合わなきゃ危なかったアル。」


『よくやった、ありがとう。





だが、ザドルノフ確保が終わっても彼は
いまだ違和感を拭いきれないでいた。





「・・・どうも引っかかる。仲間がいるかもしれん。」





先程の"私の役目は終わった"というセリフを鑑みて


脱走こそがザドルノフの目的とすれば・・・
導き出される答えは、おのずと絞られる





「でも、何のために時間稼ぎをしてたんでしょうか?」


「これほど度重ねての脱走ともなれば・・・
見合うだけの大きい目的があるに相違ない。」


「同感だな。だが何にしてもやはり内通者の説が確実か。」


『ああ、すぐにでも調査を・・・・・ん?


カズが唸り声を上げた その直後





5人のいる射撃訓練場が揺れだした。





「じ、地震!?


「カズ、何が起きてる!?」


『ZEKEが動いている!』


「ZEKE・・・あの巨大な機械か?」


「ああ、AI自体は完成していても戦闘を行うには
まだ時間がかかるハズ・・・なのに何故・・・





けれども、現に動き出しているのは事実であり





『とにかく全員
メタルギアZEKEのデッキまで来てくれ!』






考えるヒマなど無いまま5人はその場を後にする。







倒れたまま放って置かれたザドルノフの、傍らに転がる
義手は・・・裏向きピースサインを示していた


まるで 何かを暗示しているかのように。











急いでデッキへと到着した彼らが見たのは


昇降口から上がってくる ZEKEの機体だった。





「一体誰が動かしてるネ!」


「お前は!!」





二人の叫びに、スピーカーから発せられた声が答える。







『遅かったわね、雷電。』





声の主は・・・・間違うことなく





「「「「「パス(さん・殿)!!?」」」」」





"平和"の名を持ち 平和を愛する少女だった







「何をしている、危ないから降りろ!





驚く彼らと怒鳴るを見下ろし、パスは静かに笑う。





『危ないのはどっちかな?』


「パス殿の様子がおかしい・・・普通ではない」


『私は正常よ・・・
そう、本当(ネイキッド)の私を見て





余裕を崩さぬ言葉と共に、正面に空中モニターが
展開されると・・・・コックピットらしき物と


そこに座る水着姿のパスが大写しになった。





「大胆だなオイ、まさかの公開露出プレ「言ってる
場合かぁぁぁ!カズ、ZEKEを止めろ!」



『ダメだ!遠隔制御が効かない!』


あれってたしか無人でしょ!?
一体どうやって動かしてるんですか!?」


『私が改造した・・・これは元来、人が操るべきなの。』


コックピットのレバーを彼女が引くと、ZEKEは
その場で足踏みをしてみせた。





「改造だって?パス、君は一体・・・!」


『意外とメカ好き?』





からかうような口調でパスが笑い、カズが感づく





『そうか、ザドルノフの脱走は囮・・・本命
こっちだったのか!?』


「そんなのどうでもいいヨロシ!
パス!それをどうする気アルか!?


『返してもらうの』


「返すとは・・・誰にだ?」





神楽との問いに、彼女は静かに言葉を吐く。





『私達の指導者・・・CIPHER(サイファー)。
この兵器はCIPHERの所有物なの。』



「知るかよ、つーか子供がそんなモンに乗っちゃ
ダメでしょうが?早く降りなさいこのバカチンが〜!


「銀さんふざけてる場合じゃ
『うるさい!!私はパシフィカ・オーシャン!』





新八のツッコミを遮る様に、ZEKEは咆哮する。





名前も、年齢も、計画も、CIPHERに与えられた!
私はこの計画のためにだけに、この世に生かされている』


言いながらパスは口に指を突っこむと


中に入っていた煙草を吐き捨てた。





『嗅ぎ煙草も、見え透いた平和の使者も、お馬鹿な
夢見る十代(ティーン)のフリも、これでおしまい!』



「・・・やはりか」


さん、やはりってどういう意味ですか?」





問いかける新八へ、少女は表情を変えずに言う。





「握手の折に気づいた・・・あの手は戦いを知る手だ。」


「お前ホント変なトコ敏感だよなぁ〜相変わらず。」


「確証もない故、特に訊ねはせなんだが・・・
今のパス殿の行動が証拠になりうる。」


『その呼び方はやめろ!反吐が出る!!』


発言が気に食わなかったか、パスがZEKEを操り
激しく踏みこんで黙らせる。





『あなたに感づかれたと思った時は肝を冷やしたけど

・・・全ては予定通り これでようやく
本来のピースウォーカー計画が完遂されるの。』


「本来の・・・計画だと!?」





まるでおとぎばなしでも読み聞かせる母親のように


パスはの問いかけに応えて話す・・・







―昔々、ビッグ・ママという英雄を敬愛する
二人の若者がいました。


その母なる空(CIPHER)を突然亡くした二人は


悲しみを受け入れることが出来ず
英雄の遺志を受け継ごうとしました。


ところが二人はそれぞれの解釈を分かち

果ては対立し、彼らの出発点であったゼロ
二つに分裂しましたとさ・・・







『それがあなたの過ちの「はじまり はじまり」





4人はその話を、ただ不思議そうに聞いていたが


彼だけは・・・何かに気づいて顔を歪ませる。





そんな5人の様子など意に介さず パスは言う。





『このままじゃ、「幸せに暮らしました
(ハッピーエバーアフター)」
にはならない。

だから・・・CIPHERの意志に従いなさい!








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後書き(退助様サイド)


退助「えー毎度毎度この手の展開話が長すぎなので
ここで切りました。」


銀時「管理人から指摘受けてたもんなお前」


神楽「また元ネタそのままになってるネ」


退助「だーからその部分仕方ないって言ってんでしょうが
後、言ってることは一緒でも中身は違うからね!


新八「え、違うんですか?」


退助「原作では、遺志を継いだ二人は
ネイキッド・スネークとゼロ少佐のことを指してたけど
ここでは違うからね。」


カズ「まあそこらへんは追々判明するだろう。」

パシフィカ「大して変わらない気もするけど・・・
いい加減、私の名前表記変えてくれないかしら?


退助「いちいちパシフィカ打ち込むのめんどいので
ご勘弁を・・・あ、ZEKEのレールガン向けるの
やめて下さい死んでしまいます。」