―11日目・日中―
ザドルノフを確保した、その翌日
「平和の日?」
「そうだ、所謂お祭り・・・フェスティバルだ。」
カズからの提案に、銀時達とが目を丸くした。
企画内容は"普段戦っている自分達だが、年に
一度くらいは平和に過ごそう"と言うモノらしい。
「平和にって、具体的に何をするんですか?」
「また酒飲み交わすんじゃーあるまいな?」
「飲むだけじゃないさ、歌って踊ってのお祭り騒ぎだ。
ほら江戸でもやってるだろ?そーいうの。」
ソレを聞いて、新八はカズがやりたい事をなんとなく悟る
「ああ!雪像祭りとか色々やってるから
その辺のノリを意識してるんですね?」
「その通りだ!日本の祭りが一番平和的だからな。」
「そうね、私もいいと思うわ。」
賛同するパスへ、カズはおもむろに向き直ると
何かが書かれている紙を差し出した。
「そこでパス、君にぜひ一曲
歌ってもらいたい歌があるんだ。」
「え!?私に・・・歌?」
驚きながらもパスが受け取った歌詞カードを
横から覗きこんで神楽が訊ねる。
「コレもしかして偽者銀ちゃんが書いたアルか?」
「いい加減その呼び方やめてくれないかな・・・
ああそうだ、俺が作詞・作曲した。」
「ほう・・・カズにそんな才能があったなんてな。」
「ジャック〜?お前に言われたくはないな。」
感心する彼も、自分が歌を作れるほど器用ではないと
知っていたので 咎められて一声唸る。
「つーか俺モドキよぉ、パスの歌で印税儲けようとか
考えてんじゃねーだろなぁ?」
「そんなつもりはない あくまで祭りのために
歌って欲しいだけだ!CDは売るかもしれんが。」
「でーたー、最近多いんだよね〜それに総選挙だとか
握手権だとかいらない付録つける あざとい悪徳商法」
「さり気にA○○ディスんなコラァァァァァァ!!」
銀時の一言に激怒している新八を、少女は
無表情のまま首を傾げてに問いかける。
「何故新八はあそこまで怒っているのだ?」
「は知らなくていい。」
夢主同士の掛け合いの後、カズはこう言った。
「とにかく、平和の日の日時は決定した。みんなも
出し物があれば遠慮なく申し出てくれ。」
第13話 脱走しすぎもフラグだよね
「キャッホー!だったらサブちゃん歌うネ!」
「神楽ちゃん、外人相手じゃ通しないよ。
ここはお通ちゃんのニューシングルをだね」
「うっせーよメガネオタク!
そんな歌なんて誰も聞きたかねーんだヨ!」
「お通ちゃんの悪口は許さんぞコラァァァァァ!!」
・・・余計な口ゲンカを差し挟みつつも
MSF全体が、祭りの日に向け何をするかを話し合う。
隊員達はもちろん、様々なベースでも独自の
出し物についての提案や準備が行われ・・・そんな中
「今こそチューリング・テストを皆に広めるチャンスを!」
研究ベースで、握り拳を作り高らかに豪語したのは
ストレンジラブであった。
「どうしたのストレンジラブ、そんなに声を荒げて?」
きょとんとするヒューイを無視し、彼女はなおも続ける。
「最近ある科学者がこう発言した・・・
『チューリング・テストは、機械が思考できる
ということを証明するものではない』とな!」
「ああ、ジョン・サールの
チューリング・テスト反論の論文かぁ。」
「機械が思考を持つのは既に証明されている!」
遮るように、ストレンジラブは更に声を荒げる。
「なのにこの男はAIに知性はないとほざいた
チューリングを全否定されて私は悔しい!!」
「・・・そうか、ストレンジラブは
チューリング博士の下で勉強してたんだっけ。」
と、言葉を続けようとしていたヒューイの肩を
彼女は真正面からがっしりと掴む。
「ヒューイ!こうなったら私達の手で
アラン・チューリングの無念を晴らすぞ!」
「え!?き、君とかい!?」
いきなりの展開でキョドる彼などお構い無しに
ストレンジラブは恐ろしい表情で迫る。
「何だ不服か?
お前もチューリング博士の影響を受けたのだろ?」
「た、確かにそうだけど・・・」
「なら断る理由はないな、早速準備にかかるぞ!」
言い切って、平和の日に向け張り切る彼女の後ろで
ヒューイは・・・嬉しそうに微笑んでいた。
「へぇ〜、いい歌詞じゃないですか。」
パスのもらった曲を見て、新八がそう言って笑った。
「感情を上手く表現できない女の子の、切ないラブソング
・・・パスさんにぴったりな曲ですね。」
「らぶそん?すまぬが横文字は分からん・・・」
「平たく言えば、恋する女の子の歌ですよ。」
その答えに、は改めて感心する。
「なるほど・・・恋歌というものだな
・・・できることなr「言わせねえよ」
分かりきったセリフが出る前に、銀時は
相手の頭をどついて黙らせた。
「悪くないけど、ちょっとパンチがないアルな〜
もっとエグい歌詞盛っちゃってもいいと思うヨ」
「待て待て神楽、ここは俺にまっかせなさーい。
お通ちゃんの作詞も手伝った手腕でイケてるフレーズ」
「ダメですよ銀さん!ここは寺門通親衛隊隊長の
僕がやります!ここはチョメチョメってつけて」
危ない方向へ歌詞を改悪されると感じたパスは
3人から歌が書かれた楽譜を取り上げ
「ああ私、ちょっと練習してくるね!」
それを持って 部屋から走り去っていった。
3人が呆気に取られる中・・・ただ1人だけ
ほんの数秒ほど複雑そうな表情を浮かべていた。
「どしたネ?」
「いや・・・何やらパス殿が悲しげに見えたものでな・・・」
「悲しげだぁ?」
不思議そうに見つめる銀時達とは別に
は、パスが立ち去った方を見つめていた。
―11日目・夕方―
「ジャック、まただ!!」
司令室へ駆けこんだカズの用件が何かを既に察して
は用意していたジャンプを読んで無視を決め込む。
「お願いだ聞いてくれ!
てゆうかライバルはどうした!?」
「・・・ちょっと、飽きてきてな。」
「ああ、読みたいヤツなくなったって言ってたからな
・・・って違う!頼む、聞いてくれ!!」
別の方へ飛びかけた話を戻し、説得に入られたので
彼はため息をついてジャンプを閉じる。
「拘留していたザドルノフが・・・
またいなくなった・・・・・・・!」
出てきた予想通りの報告には・・・・
怒りに身体を震わせると、ジャンプを両手で持ち
「あの脱走フェチがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
一気に分厚い冊子を真っ二つに引きちぎった。
「いい加減にしろよ!あんだけ過剰なセキュリティーにして
おきながら脱走されたぁ!?一体何してたんだウチの隊員共は!
あっちもこっちも無能兵だらけだっていうのかぁぁ!!
仕事終わんねぇよチクショおぉぉぉ!!」
ノンブレスでこれだけのセリフを怒鳴るボスを前に
カズは冷や汗しかかけなかった。
彼がある程度の落ち着きを取り戻した辺りで
ようやくカズは言葉を紡ぐ。
「もはやMSF内部に協力者がいるのは確かだ
・・・だが調べようがない。」
MSFの人口規模は小国並みとなっており
全員を調べるには 時間がかかりすぎてしまう
本当に内通者がいるのかも怪しいので、今まで内部は
ノーマークだったのである。
「ったく人騒がせな奴だ、で、今度は何処だ?
熱帯雲霧林か?それとも遺跡内部か?」
「それが・・・
発信機も気付かれて、破棄された・・・」
つまり、何処にいるのかわからない ということらしい。
気まずそうな面持ちでカズは、人差し指同士を
つんつんさせてに訊ねる。
「ジャックゥ・・・さ、さ・・・捜せる?」
その態度は気に食わない、が放っておける
問題でもないので 彼は渋々立ち上がった。
「仕方ない・・・他への示しがあるからな。」
「その通りだ、既に交通手段は断ちマザーベースから
出られないようにした。
いるとすれば、マザーベース内の何処か、だ。」
「それなら、アイツらにも頼るか。」
アイツらとは・・・・無論のこと
「は?あの海苔オヤジを探せって?」
万事屋トリオであった。
「ああ、恥ずかしながらまた脱走されてな。」
「けど変じゃないですか?あのセキュリティシステムって
さんかカズさんしか解除できないんでしょう?」
新八の指摘も最もである。
仮にハッキングされたとしても解除に時間がかかり
その間にも警報が鳴って、最終的にシステムは
シャットダウンされるように設計されている。
「それでもザドルノフは脱走できた・・・一体何故だ・・・」
「殿、お主らの他に独房へ入った者はおらぬか?」
問われて彼は しばらく考えて・・・答えた。
「たしか・・・面会したいと言っていた
パスにチコ・・・それくらいか?」
「、何か感づいたのか?」
「カズ殿・・・もしや、その二人が」
「いやそりゃお前考えすぎだろ?あんな子供に
何ができるってんだ?」
楽観した態度で言う銀時だが、彼女はどこか
腑に落ちないと言いたげな雰囲気をにじませている。
「とにかくザドルノフを捕まえるのが先だ。」
「、もちろん金は入るんだろうな?」
「ああ、万事屋への依頼として三百万で手を打とう。」
金が入るとなると現金なもので、銀時と神楽は
張り切ってウォーミングアップを始める。
「よっしゃこれでしばらくは食うモンに困らねえぞ!」
「酢昆布半年分はかたいアル!」
「二人共相変わらずだなあ・・・まあ近いうちにお通ちゃんの
ニューシングルが発売するから、僕もちょうどいいんだけどね。」
息巻いて万事屋トリオが部屋を出て、間を置かず
がへと顔を向けて言った。
「殿、私もザドルノフとやらの捜索に
協力いたすが・・・よろしいか?」
「ああ、それは構わないが・・・」
「何だ?お嬢さんも何か入用かい?」
からかうカズだが、真剣な面持ちは崩れない。
「・・・何か、違和感のようなものを感じるのでな。」
「違和感?」
「うぬ、何かと問われれば確証はないが・・・」
こうして4人の助っ人を加え、姿を消した
ザドルノフの捜索が始まったのだが
予想に反して 難航を極めたまま時だけが過ぎた・・・
―11日目・深夜―
「ああ・・・全然寝られないよ・・・」
寝付けないのか、チコはZEKEの格納庫へ
こっそりと立ち入っていた。
モニタールームから 完成されたZEKEを眺めて
「やっぱスゲェよなボスは、こんな
デカいバシリスコを造っちゃうんだから!」
目をキラキラさせていると・・・かすかに、だが
ハッキリと 金属がぶつかり合う音が聞こえ
「何だろう・・・
ZEKEはもう完成してるって聞いたのに・・・」
不審に思ったチコはZEKEの足元まで降りると
音の正体を、確かめようと近づく
「誰かいる?」
闇に紛れて ぼんやり見える屈んだ人影は
小柄な体格で、MSFの隊員ではないように思える。
「誰だい?」
話しかけたことで、ようやくチコに気づいてか
その人影は身体を起こすとチコの方を向き・・・
差しこんだ月の光が、人影を照らし出した。
・・・目の前に現れたのは
チコにとって、信じられない人物だった
「何で・・・何で君が!?」
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後書き(退助様サイド)
退助「やっとここまで来れました。
次回から完全シリアスに突入します。」
銀時「つーか牢屋新設して赤字出したってのに
よく俺らに三百万も出せる余裕があるなぁ?」
カズ「知らなかったか?俺達はジーンから受け継いだ
資金でも動いてるんだぞ。MSFの収支では
大赤字だが、貯えがある。それを削るのは忍びないが」
退助「まあ要するにもしものための貯金から
引き落としたってことだね。」
新八「ホラやっぱり貯えは必要なんですよ
これを機に定期預金作りましょうよ銀さん。」
神楽「んなもん貯えても腹の足しにならないネ。」
新八「その腹の足しのために貯めろって言ってんの!」
貯金は過剰と思う位の貯えが必要です・・・
あ、これは作者の体験談ね
新八「んな生々しい体験談いらねぇ!」