―8日目・午前―





海外派遣されたMSF隊員が 任務を終えて帰還し





よし、アルファチーム、ブラボーチーム共に無事帰還したな。
双方共 任務成功ご苦労だった。今日は上がっていいぞ」


『ありがとうございます、ボス!』





解散していくのを見届けて 他の仕事へ取りかかろうと
歩き出したへ、一人の隊員が呼びかける。





ボス・・・少し、お時間をいただけますか?」


言いながら取り払われた覆面の下から


つややかに揺れる金髪のロングへアーと、軍人とは
思えぬほど美しい顔
が露になる。





「ガゼルか、どうした?」


「個人的にですが、折り入ってお話が・・・」


「いいだろう、隊員のメンタルケアも上の仕事だ。」





個室にて、二人きりで相談が行われ・・・・・・





「そうか、わかった。俺が話をつけてやろう。」


「よろしく・・・お願いします・・・!」


話を聞き終えたボスは、ガゼルの涙に動かされ
決意を瞳に満たして立ち上がる。







―8日目・午後―





もわもわと熱い湯気が充満している室内で





「フ〜ンフフフフンフンフ〜ン





鼻歌響かせ、気持ちよさそうにシャワーを浴びるカズの
隣にあるシャワーへがやってくる。


よう!ジャックじゃないか。」


「カズ、例の施設が出来たんだったか?」


「あ〜あサウナか?そうなんだよ、アレのおかげで
フィンランド出身の兵士達の士気向上につながった。」





と自慢げに話すカズであったが、の表情は険しい。





「カズ、ここで怪我人が出たってな?」


ん?ほんの打ち身程度だ。」


「尾骨骨折、診療所に1ヶ月だそうだが、誰だ?」


「アルマジロだ。」


「その時お前もその場にいたんだってな?」


「あ、ああ・・・急に転んだんだ。」


話す内に相手の口調がしどろもどろになっていくのを
彼は 見逃していない。





「転んだ?あのアルマジロが、人一倍慎重で
戦車より重心の低いあいつが。」


「あまりの振動でマザーベース中のウミネコが
飛び立ったそうな「カズ、言いたいことはないか?」





逃げられない そう感じたカズは、彼をサウナへ誘う。










第11話 ヴィヒタは正しく使いましょう











それでもの追及は止む事がない。





「お前、内腿に傷が付いてるな。」


「ちょ、どこ見てるんだジャック・・・!」


あわててごまかすカズだが、その傷がすぐに

"引っかき傷"であると彼は看破していた。







フィンランドサウナ独特の 熱した石にかぶった水が蒸発する音

発汗や血の巡りを促すため、"ヴィヒタ"と呼ばれる
白樺の葉で身体を叩く音に紛れて


二人の話し声が挟まる。





「カズ、お前・・・モテるか?」


「は?」


「グリーンベレー時代に、一度聞いてきたろ。
モノにした女の数だったか?」


「あ、ああ・・・」


「あれから数年経ってるが・・・どれくらいになった?」





カズはうなり声を上げながら、指を折って数えていく。





「これくらいか?」





数年前に聞いた数より大幅に上がっている、と感じ
彼はヴィヒタで金髪頭を叩く。


「どうやったら数年でそんなに増えるんだ、この生活で。」







答えはなかったが、構わずは顔を険しくして


カズ、俺はここの連中の惚れた腫れたに首を突っ込む気はない
個人の自由、自己責任だ。俺もそうだ。」


「ほう・・・さすがだな。」


「だが自分の、それぞれのスタッフの責務や
精神に悪影響がないのが大前提だ。」



「あ、ああ俺はそろそろ上がるt「カズ。」


逃げようとするカズだが、肩を抑えられ捕まって





「お前、ここの副司令なら、弁えたらどうだ?」


「何だよ?」





向かい合うようにして木の椅子に座らされ
そのまま説教を続けられてしまう。





「ガゼルから相談があってな、ミッションが終わってすぐに
折り入って話があるとな・・・

彼女は ここにいるのがもったいない位美人だよな?」


「ほう。」


「お前らデキてるんだって?」


「そう言ってたか?」





ヘラヘラしだすカズに、一層険しい表情を作り
顔と同じぐらい険しい言葉を浴びせる。





「ガゼルは、お前がスワンといるところを見ちまったそうだ。
スワンもここには惜しい娘だ。」


「ま、まあ二人でいることくらい・・・」


「入ったのか?」


「へ?」


「スワンと二人きりで、シャワー室に入ったのか?」


「ああ・・・ええと・・・」





目を泳がせる相手の様子に、堪忍袋の緒が切れて


彼は手にしたヴィヒタで思いっ切りひっぱたいた


「いった!?」


「どうなんだ?
そう聞いたぞ・・・石鹸プレイをしていたとな!


再びヴィヒタがカズの身体に叩きこまれる





「せっけんていたっ!?「言え!!」
わ、悪かった・・・つい・・・」


ついぃ!?それをアルマジロが見た!
スワンはアルマシロのガールフレンドなんだって?」





言葉に怒りを、手に力をこめ、


繰り返しヴィヒタで音が鳴るほどカズを叩き続ける。





「ぎひぃ!!」


「そりゃ驚くよなぁ・・・
重戦車並みの安定感を誇るアルマジロが!」


「ぎゃふっ!!「引っくり返るくらいだからなぁ!!」
ぐあぁ!!」



「そりゃあマザーベース中のウミネコが飛び立つわ!!」


「うぼあぁぁぁ・・・!!」





ヴィヒタの連続攻撃に耐え切れずカズは床にひれ伏し





二股、共用施設の乱用、あげくスタッフの負傷!
お前何やってんだ・・・!」


「ボ、ボォスゥ・・・!」


「俺に・・・こんな説教をさせるなぁ!!


ついに怒りを露にし、我慢できなくなって
カズを思いっきり握りこぶしで殴り飛ばす。





「ぶるぁぁぁ!!」





その拍子に 転がっていた椅子が破壊された。





「い、いまのはグーだぁ・・・!」


「これだけじゃないだろ!
お前、ドルフィン、ピューマ、コットンマウス、エレファント!
一体何人に手を出した!?ここを潰す気か!!



「やりやがったなぁ・・・このぉ!!





これだけやられて黙っていられるワケも無く


立ち上がったカズが、を殴り返した





「ぐわぁ!!」


同様に 彼が倒れた拍子に椅子が壊れて





「貴様ぁ!!根性叩き直せぇぇ!!」





それが・・・二人の殴り合いの合図となった。











そんな事態になっているといざ知らず、再び江戸組と
オフの隊員達がレジャープールで寛いでいた。





・・・ちなみに昨日の酒がたたっているので
泳がず壁際の日陰でじっとしている





「この前はあんなに飲まされて災難でしたね・・・
大丈夫ですか?」


「問題ない・・・心配させてすまぬな新八」


とは言うものの、その顔色はどことなく悪く

移動の際もふらついているようだ。





「マジで気をつけるアルよ?
ただでさえは三途に行きやすいアルから」





そんな神楽の忠告をあざ笑うかのように


彼女の背後の壁に亀裂が入り・・・破壊された





「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


ガレキと一緒にすっ飛ばされたカズがを巻きこみ







唐突過ぎる展開に全員が驚いた。





さあぁぁぁぁんんん!?」


「つか何してんだパチモンの俺は!?」


「カズ・・・そこを動くな・・・!」





注目が集まる壁の向こうから、拳をペキパキ鳴らして
がカズを睨みつけている。





「ボ、ボス落ち着け、動物には本能ってもんが・・・」


「ここは秩序ある人間社会だ!」


「つーかカズさん!下見て下!!」


は?下って・・・」


新八にそう言われ目線を落とした彼は





そこでようやく、自分のケツの下敷きになっている
作務衣少女に気がついた。






「汚らわしいよエセ銀ちゃん!ボサっと
してねーで早くの顔からどくヨロシ!!」



「いや、これはこれでいいような気も・・・」


よくねえよ!どんどんさんの顔が土色に
変わってんだろうが!!手遅れになる前にさっさと
そのケツどけろぉぉぉぉぉ!!」



「つーか、何でテメェら裸なワケ?まさか
ついにそっちに目覚めたとか?」


「目覚めてねーよ近藤さんと一緒にすんな!!」





この場にいないゴリラの非難をする間





「今だ!」


カズが隙を見て逃げ出した。


のだが、はすぐにタイルの床を駆けると





「イナズマキィィィック!!」


「ごぺばぁ!!」


勢いの乗った飛び蹴りを食らわしてカズを外まで
蹴飛ばし、馬乗りしてその首を締め上げる。





「ま、待て・・・首が絞まる・・・!」


「火照った身体に気持ちいいだろ・・・海風が・・・!」


「お前が・・・熱くて・・・
背中になんか当たってるし・・・!


「カズ・・・真剣に考えろ・・・女か、俺達か・・・!


「りょ、両方・・・!」





首を絞める腕の力が緩んだ一瞬を逃さずカズは抜け出し





「待てぇぇぇぇぇ!!」


追いつき、巻いていたタオルが剥がれ落ちたのも
気に留めず二人は・・・殴りあいを続けていた。







互いに急所は外しているが あちこち血だらけ





「この!少しは!懲りろ!!


「俺が!モテて!何が悪い!!


「「おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」





雄叫びを上げて振るった拳が両者の顔面へヒットして


二人は、お互いに大きく後退する。





「ちょ、二人して何してるの裸で!?


「ほら言ったでしょアマンダ、彼って意外とセクシーでしょ?」


「いやセシール今気にするトコそれじゃないって!」





事態を聞き駆けつけたやアマンダ達が殴り合いを
目の当たりにして驚くも、その声は彼らに届かない。







「いいパンチだ・・・だが、俺には効かん・・・!」


「さ、さすがだなぁ・・・伊達に化け物だらけ
江戸で生き残ったワケじゃないってコトか・・・!」





口から垂れた血を拭い、言う
血を吐き捨てたカズの持っているモノに気が付く。





「お前・・・何を持ってる?」


全裸で空の旅はどうだ?ジャックゥ?」


にやついた表情で詰め寄ったカズは
フルトン回収装置を取り付けようと素早く動き





「ふん!!」


完了する前に、彼は装置を蹴り上げた。


もちろん今の状態でそんなコトをすれば・・・

アレが丸見えになるのは 自明の理


他の隊員達の驚く声と黄色い悲鳴が響き渡る中

いち早く銀時は神楽の目を塞いでいた。





ともあれその一撃で怯んだところへ、右ストレート
決まって カズはノックアウトされた。





はあ・・・はあ・・・はあ・・・」


も力尽きたか その場にへたり込んでいた。





「・・・全員に謝れ・・・」


「ああ・・・」


「少しは慎め・・・」


「ああ・・・」


「サウナ掃除一年・・・」


ああ・・・」





よし、と呟きボスは呆けている隊員達を見る。





「お前ら、何やってる。」


「え!?」


「持ち場に戻れ」


彼らは正気を取り戻し、それぞれの持ち場へ走りだす







ため息をついては のびているカズの方まで
歩み寄り・・・・手を差し伸べる。





「ほら、立て。」


「・・・へっ、なかなかやるようになったな。」


「お前こそ、いつのまにそこまで鍛えてた?」


「俺の親父、誰だか忘れたか?」





二人は、静かに笑い出し・・・やがて





「「ハハハハハハハハハハハハ!!」」


それは大笑いへ変わって、抱き合いながら
お互いの健闘を称え合う有様へと転じた。







「・・・銀時、あれは一体何事だ?」


「知るか、つか俺に聞くなピーマン娘。」





いつの間にか息を吹き返した
銀時に尋ねるが、返事は素っ気無い。





「私、何か服取ってくる。」


「待ちなさいなローズ」


「アマンダ、何で?





彼女は首を横に振って、へとこう言った。





「しばらく放っておきなさい・・・あたしらには
分からないを確かめ合ってるんだから。」


「絆ってアレか?こんな感じの?」┌(┌ ^o^)┐


「これは絵文字というヤツだな、してこれは
何を表しているのだ?銀時」


「だー!さんソレは聞かなくていいから!!」





変な方向にボケ始める彼らを余所に


この日、とカズの間にある "戦友の絆"
より深まるのであった。








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後書き(退助様サイド)


退助「パスの日記とドラマCDの内容が
若干違うような気がしたが、そんなことはなかった。


セシール「アマンダあんなこと言ってまだジャックの
スェクスィーなボディ見ていたんじゃなかったの?」


アマンダ「な、そんなわけないでしょ!?
あんたと一緒にしないで!!」



神楽「全裸で殴り合いとか
とんでもない変態アルなあの二人、ねえパス?」


パス「え!?う、うん・・・
でもちょっと負けたような気がしたな・・・」


新八「え、何で?」


パス「え!?あ、いやこっちの話!」


銀時「何?オメェも立派でたくましい
アームストロング砲
に撃ち貫かれ」


カズ「俺ぁどっちかつーと乗るより乗られる方が」


新八・神楽「「黙っとけ変態共がぁぁぁぁぁ!!」」


銀時・カズ「「ウボァァァァァァ!!」」


退助「えー・・・毎度毎度、が変態に
蹂躙されてしまい誠に申し訳ありません。