一人の少女からもたらされた中南米での一件が解決し
MSFがカリブ海へ築いた洋上プラント
"マザーベース"の活動も軌道に乗った頃・・・
「よし、みんな行くぞ。」
と万事屋達も含めた七人は、その洋上プラントに
招待されて赴くことになったのである。
「また妙な仕事押しつけるとかじゃねーだろうな
俺もどきから何か聞いてねーのか?」
「さあな、着いたら教えるって本人が言ってるんだし
現地で聞けばいいんじゃないか?」
「けど、あそこに行くの久しぶりですね。
・・・あれ?どうかしましたか?」
新八の問いかけに、彼女は無表情のまま
どこか浮かない様子で答える。
「・・・本当に、私が行ってもいいのだろうか」
「心配しすぎね、エセ銀ちゃんは大歓迎だって言ってたし
ヅラの代わりってコトで何とかなるアル。」
「そうよ、それにお兄さんだって
海の向こうを見てくればって言ってたじゃない?ねっ」
江戸から空をまたぎ、ニカラグアの空港から
港でMSFの船舶に乗って海を超え
青い海と熱帯の森に囲まれた海岸に設置された
マザーベースへと到着すれば
「ようこそみんな!MSFの拠点、マザーベースへ!」
満面の笑みを浮かべたカズが全員を出迎えたのだった。
第1話 「思えばアレが全ての始まりでした」
ってテンプレはネタバレに近い
「久しぶりだな、カズ殿。」
「おお、ホントに来てくれるとは嬉しい限りだ。」
手慣れた動作で接近してハグをかまそうとするも
回避余裕でした、な流れをひと通り見てから
はちょっと悔し気な招待者へと問いかける。
「おいカズ、俺は"みんなに見せたいものがある"って
聞いているが・・・」
「ああ、実は前々から進めていた娯楽ベースがつい最近
完成したからな。それのお披露目とモニターのために
銀時達を呼んだんだ。」
それを聞いて、万事屋トリオは目を輝かせる
「キャッホー!ここで遊ぶこともできるアルか!」
「前はエライ殺風景でつまんなかったからなぁ。」
「さん、知ってたんですか?」
「ああ、娯楽が少なかったら隊員の士気に
関わるってことで許可はしていた。」
「へぇ〜・・・で、その娯楽ベースでどこです?」
「ああ、案内しよう。こっちだ。」
カズに案内され、娯楽ベースの全容を目の当たりにし
・・・は眉間にシワ寄せて ようやく口を開く。
「なあ、カズ。」
「何だ?」
「まあ確かに許可はしたよ。」
「不服か?」
「そうじゃなくってだな・・・・・・」
大はしゃぎしたり、呆気にとられている者達を
よそに彼は頭に怒りマークをつけ
「こんな巨大テーマパークレベルで造れとは
一言も言ってないだろ!!」
軍の要塞にしては不釣り合いなほど・・・まさに
某映画テーマパークばりの娯楽ベースを見て怒鳴る。
そこには流石に遊園地につきもののジェットコースター
メリーゴーランドの類はないものの
作者の近くにあったル/ネス○沢のような温水プールの
レジャーランド、隣にはゲームセンターにカラオケ施設も
並んでいて かなり充実しているようだ。
「いや〜予算とか特に制限されてなかったし・・・」
「これ、相当GMPかけてるだろ?どんだけかかった」
「え〜と・・・3000万GMP・・・位・・・」
気まずそうな呟きから間を置かず、は何処からか
取り出したハリセンでカズの頭を叩く。
「お前ここを潰す気か・・・!これだけの規模だと
設備の維持だけでもかなり負担になるってのに・・・」
「し、しかし隊員の士気も大幅に跳ね上がった。
利益は建設前より格段に上がったし・・・
これでお釣りがくるくらいなんだぞ・・・!」
「はぁ・・・で?何でまた温水プールなんだ」
「このプラントの性質上、海水を汲み上げ ろ過して
飲料水にしてるが それだけで汲み上げるのは
コストも無駄だし何かに使えないかと思ってな。」
着眼点の良さと行動力、そして軍人としては
間違ってる努力の方向に少し呆れていたが
すでに楽しむ気満々の銀時達、特に弾けるような
笑顔ではしゃいでる神楽とサニーを目の当たりにして
「・・・・・・まあいいか。」
彼も楽しむ方向へ考え直したようだ。
「ジャック。」
話しかけられて振り返れば、通りかかったパスが
穏やかに微笑みかけてきた。
「パスか、元気そうだな。」
「ええ、ジャックのおかげよ。」
「パスは糧食班として活躍しているんだ。
おかげで隊員の士気も向上している。」
誇らしげにカズが紹介していると、皆と若干
ノリが合っていない少女の緑眼がパスを捉える。
「・・・その者は?」
「ああ、パスに会うのは初めてか。」
「パス・オルテガよ、よろしく。」
「なるほどお主が・・・よろしくパス殿
と申す。」
歩み寄り、簡単に自己紹介をしつつ握手をした所で
は・・・微妙にどこか不思議そうな顔をする。
「どうした?」
「私の手が何か?」
「・・・いや、年頃の女子にしては」
「!何してるアルか!」
「早く遊びに行こうよ!」
が手招きで呼んでいる神楽とサニーに視線を
移した時には、平素の無表情に戻っていた。
「今行く。ではパス殿、これにて」
「え、うん・・・
じゃ私もこれから用があるから、またね。」
「ああ。」
レジャーランドへ向かったとカズから別れて
パスは、居住ベースへと歩を進める。
・・・と、その一角で隊員とチコが何かに群がっていた
「どうしたの?」
「あ、パス!見てみろよこれ!」
隊員が指差す先へ注目すると、そこには2本足で立ち
器用に歩きまわる猫がいた。
「あら珍しい!猫が立って歩いてるなんて・・・」
「そ、そんなに珍しいかニャ?」
「しゃべった!?な、何なのこの猫?」
驚く彼女へ、チコが自慢げに答える。
「アイルーだよ、獣人族っていう種類の生き物なんだ。
だから言葉も話せるし結構頭いいんだ。」
「へぇ・・・」
「にしても可愛いよなぁ・・・」
「そうだよなぁ・・・よーしよしよしよし」
「男に言われても嬉しくニャい、気安く触るニャ。」
つれなくされてもアイルーにデレデレしている隊員を
少し呆れた表情で眺めるパスへ
ふと思いついたようにチコが言う。
「なあ、こいつに名前つけてよパス!」
「え?」
「話聞いたらこいつ、まだ名前も決まってない
はぐれ者らしいんだ。」
「しばらくは厄介になるつもりだし、名前なしじゃ
居心地悪いからニャ。何かいいのを頼むニャ。」
少し戸惑ってから、パスは目を閉じて悩み・・・
「・・・ニューク・・・ってどう?」
彼らは、顔を見合わせて口々にこう返す。
「ニュークか・・・」
「いいんじゃないか?」
「よし!こいつの名前はニュークだ!」
「ニューク・・・悪くない響きだニャ!」
「フフ・・・生き物を思いやる気持ちが
戦争への抑止力になる・・・私はそう思うな。」
その言葉に場の全員が納得し、彼らはアイルーの
名前が決まったことをへ報告しようと動く
「パスも来る?」
「ああ・・・私は後ででいいよ・・・」
「そっか・・・じゃまたね、パス!」
隊員が手を振りながら、娯楽ベースへと向かってゆく
・・・ゆえにこそ彼らは気が付かなかった
離れてゆくチコ達を見て、パスが複雑な表情を浮かべていたことに。
早速娯楽ベースで遊び始めていた8人へ
チコがニュークを引き連れて駆けてくる。
「ジャック!アイルーの名前決まったよ!」
「へぇ、名前決まったんだ。何て名前?」
「ニューク、パスが付けたんだよ!」
「おお〜パス意外とセンスあるネ!」
「ニャ?ニャんかめっちゃ見つめてるけど・・・
オイラの顔になにかついてるのかニャ?」
「む、すまぬ・・・人語を話す猫を見るのは初めてでな」
ニュークを取り囲み喜ぶ子供らのその隣で
急に思考にふける彼に気づき、銀時が訊ねる。
「どした?」
「いや・・・パスが名付け親にしては
・・・意外だなと思って」
「別にどこもおかしくないと思うが?」
「行為じゃなく名前の方だよカズ
"ニューク"・・・・・・・核って意味だぞ。」
「核?何でパスがそんな物騒な名前を・・・」
「さあな、気にしすぎじゃねぇのか?」
それでもどこか疑念が拭い切れないだったが
「アンタがここの主だニャ?しばらく厄介になるんで
一つ仲良くしてほしいニャ」
「あ、ああ・・・よろしくなニューク」
ソレを表に出さないようにしながらも 挨拶してきたアイルーに答え
「っておい神楽!食糧調達難しいんだから
あんまり食うんじゃねぇぞ!!」
「うっわ目ざといアルな!」
どさくさに紛れて暴挙に走りかけていた神楽へ
しっかりと釘を刺していた。
一息ついたタイミングを見計らって
「そういえばジャック。」
カズが、声のトーンを落として彼へささやく。
「何だ?」
「ザドルノフなんだが・・・」
「ああ、奴はどうなった?」
問いかけに、相手は口をへの字に曲げて首を横に振る
「どうにもこうにもいかない状況だ
他の兵士のように容易く仲間にはならない。」
「そうか、奴が加わればロシア出身者の兵士の
士気向上に繋がると思っていたが・・・・・」
気落ちしていた両者の姿を見かねてか
「!早くこっちこっち!」
「ジャックも楽しもうよ、ねっ!」
彼女ら二人が率先して呼びかけてくる。
アイコンタクトを取ってから、は応じるように
仲間達の輪へと入っていった。
「ああ、分かってるさ。」
―1日目・???―
静かで薄暗い、収監ベースの独房で
ザドルノフが義手のバーナーで扉を焼いて
こじ開けると 息を潜めて外へ出ると
・・・通路の死角、闇に紛れるようにして
彼の視線の先に一人の人物が佇んでいた。
「・・・見張りは?」
「大丈夫。」
「時間稼ぎはする、何としても任務を遂行しろよ
・・・パシフィカ・オーシャン」
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後書き(退助様サイド)
退助「PW編も終わり、難なく始めれました
恋の抑止力編!お待たせしちゃいましたかね?」
銀時「難なくじゃねーだろ、約1年だらけてたくせによ」
桂「しかも何故俺をハブる・・・作者には後で直談判を
してくるとして、よかったな名をつけてもらって。」
ニューク「けどまさか、特集での登場が
今回に繋がるとは誰も分からなかったと思うニャ。」
銀時「いや大方予想はついたけどな。」
神楽「ちゃっかりピーマンまで参加させて収集つくアルか?
マジでヅラの代わりとか?」
退助「いや参加に理由あるから、それと
四天王編とかバラガキ編のお礼も兼ねてんだよ。」
新八「でも今回目立った敵もいないし・・・
ただの短編集で終わるなんてこと、ないですよね?」
退助「そんなこと言ってられるのも今のうちですよ
・・・・ウッシッシッシ。」
銀時「うーわまた笑い方が古臭い・・・」