馬に乗った徳川 茂々が姿を現し
「バッ・・・バカなっ・・・」
「そっ・・・そんな事が!!」
もはや奴らは烏合の衆へと成り果てていた。
「うっ・・・将軍(うえ)様ぁぁぁ!!」
「何故将軍(うえ)様が
このような所にぃぃぃぃぃぃ!!」
『なさけねぇ連中だな、城に大将がくんなぁ
当たり前ぇじゃねぇか なぁ将ちゃん?』
馬を引っ張ってきた真選組の奴が持ってる
無線機からの声が、それに答える。
・・・他の連中ともども 安全な場所へ
避難するよう真選組に保護させてたが
自分から前線へ戻るとはな
『どうする?特に問題がないなら
俺達は定々の確保に向かいたいんだが』
「少し時間をもらいたい・・・私に任せてくれ」
無線越しにカズへそう答えてから
茂々は、自分の兵へ向き直る。
「武器をおさめよ
くだらん争いはこれまでだ」
説得に 幕府軍の奴らは定々と茂々
どちらの命令を聞くか困惑していたが
「武器を捨てよと申しておるのだ」
この一声に後押しされ
全員持っていた武器を捨て、その場へ
手をついてひれ伏した。
それを確認して・・・茂々は馬を下りる
「どいてくれるか。」
周囲を護っていた真選組が左右へ身を引く
俺達も、それに習った。
第9話 清浄処の守人
「いっいけませぬ!!」
「その者らは国に仇なした逆賊!!
それ以上近づいては危険にござ・・・」
制止を聞かず、メガネ少年の目の前まで
やってきた茂々が 頭を下げた。
「しょっ・・・将軍様…!!」
「余がふがいないばかりに迷惑をかけた
礼を言わせてくれ。」
語りかける言葉に反応し、背負われた
舞蔵がゆっくりと目を開く。
「そなた達がいなければ私は・・・」
遠くから、目に涙を溜めたお姫さんも
息を切らして駆け寄ってきていた。
「私達は 大切な育ての親を
見殺しにする所であった。」
「じいやぁぁぁぁ」
すがるお姫さんの様子を見て
メリルと少年が、ゆっくりと舞蔵を地面へ降ろしてやった。
"すまなかった"と茂々は自分の忠臣へ謝る。
「お前はその人生をかけ、将軍家のために尽くしてくれた・・・
なのに将軍(わたしたち)は お前を苦しめる事しかできなんだ。」
そうして一歩、舞蔵へ近寄り
屈みこんで茂々はこう問いかけた。
「爺(じいや) 今からでも間に合うか
約束の刻(とき)に・・・」
・・・ただの傀儡だとばかり思ってたが
俺はこのボウズのデカさを
少しばかり、見誤っていたようだな。
「そよ 爺(じいや)の事を頼む」
「はい兄上様」
「必ず・・・助けてあげてください。」
「約束しよう。」
メリルへ答えて、伏せたままの兵へ
道を開けるよう将軍は言う。
少年らや真選組の連中と肩を並べ
俺達三人も 油断なく将軍の身辺を固める。
「伯父上に、話がある。」
将軍とともに歩き出した直後
MSFの隊員数人を引き連れたカズが
後ろからこっちへ合流してきた。
「すまないが茂々さん、先に定々の身柄を
確保させてもらっても構わないか?」
「待たせてすまぬ・・・ただ連行する前に
きちんと話をさせてもらいたい。」
「もちろんだ その機会は必ず設ける。」
許可をもらい、カズが先行しかけて
「・・・この私であろうが!!
この徳川 定々こそが国家の父であるぞ!!」
城から響く定々の怒声に、俺達は足を止める。
「我が覇道はこの国家を護らんがためのものだ!!
貴様は、貴様らはまたしても・・・
この父を裏切るかぁぁぁ!!」
「・・・ずいぶんと勝手な事を吠えてくれる」
『貴様が護ってきたのは、国ではなく
自らの地位と身でしかなかろう!』
この親父(ビッグ・ボス)の指摘ももっともだ
「あの男の正体をすぐ見抜けなかったのは
恥ずかしい限りだな、お互い。」
『ああ・・・だが同じ過ちを
繰り返す気はないぞ 息子よ。』
今度は否定せず、笑うだけで留めておいた。
・・・だが
「あ!あれは何だ!?」
誰かの上げたつぶやきにつられて
次々と、周りの連中が空を仰ぐ
漆黒の空間に "突如"として現れた船が
すでに城の屋根へと迫ってきていた
くそ・・・もう来やがったか!
「急げ!定々を逃がすな!!」
万一、奴が天導衆の元へ逃げ延びれば
こちらが手出しする事が出来ない。
いや・・・定々は奴らにとって
もはや"邪魔な存在"とも言える
定々を殺し、今回の一件の責任をすべて
押し付けられてしまえば
事件は闇に葬られ 追及すらも不可能になる。
「そんな急がねぇでも、あの船をちょっくら
撃ち落とせばすむ話でぃ」
『そーいうこった 的がでけぇから
かえって吹き飛ばしやすいぜぃ、テメェら砲撃準』
『撃つなぁぁぁぁぁ!!』
俺達の声が一つになって響き渡った。
それでも諦めきれず、真選組隊員のボウズは
バズーカを担いでいる。
「あんだけ距離あって正攻法で間に合うと思ってんで?」
「だからってあんなデカブツ撃ち落としたら
こっちにも被害出ちゃうじゃん!」
「大事のためなら多少の犠牲はやむなしでさぁ
ねっ?将軍」
「大体そんなしょぼいバズーカや短小な大砲が届くわけないアル
それなら私の人間カタパルトのが、まだ見込みありネ。」
「ないって!てゆうか僕とジョニーさん
投げる気満々!?腕放してぇぇぇ!!」
「ちっ・・・こうなったら土方さん
俺らも対抗して人間大砲で行きやしょう」
「よし、じゃ栄えある一発目はテメーな。」
ったくこんな時に緊張感のない・・・
『そうだ!そちらのあの大きな機械で
あの船に攻撃するというのはどうでしょう?』
『いいねぃ姫様〜てことでお宅らご自慢のデカブツで
一発ぶち込んでチリにしちゃってアレ』
「『無茶いうんじゃねぇぇぇ!!』」
被害が出るっつってんのに話聞いてたのか!?
てゆうか定々の生死はいいのか!!
・・・ついでに将軍が今にも泣きだしそうな
情けないツラで俺らを見つめているが
それについては、見ないフリをしておいてやる。
「大体レールガンはまだ充電中だ
発射が整う間に逃げられちまう。」
『そこを何とか』
「んーむ・・・姫様の頼みならしょうがない
代わりに人間パチンコで」
『お前もかぁぁぁぁ!!』
カズの野郎・・・こいつらから変な影響
受けすぎなんじゃないのか?
ともかく下手に攻撃できない以上
船が逃げる前に、俺達が定々を捕まえに行くしか・・・!
―――――――――――――――――――――
格納庫の役割を果たしているらしい屋根の部分から
俺と月詠は、血の出ていない死体を運び出して
適当な部屋に隠していた。
『私達は屋根で待つ』
『船が現れた後、乗りこんで暴れる故
お主らも続いてくれ。』
にしても・・・まさか奴らに成りすますとは
「、銀時を一人で残して大丈夫なのか?」
「・・・いざとなったら
船から降りて俺も援護に入るつもりだ。」
月詠へそう答えた所で
窓から見える、何もない夜空に
デカい船が現れたのと
下から騒ぎ声があがるのが確認できた。
「来たぞ」
「分かっておりんす!」
ロープをくくりつけたクナイを月詠が
窓から船へと投げつける
見事な直線を描いたロープは
船のパイプへと巻き付いて・・・
しっかりと固定された状態で引っかかる。
握りしめたロープをたどって
俺達が船へ乗りこんでゆくと、船はすでに
混乱状態へと陥っていた。
「何だ!?」
「・・・敵だ!」
"奈落"の連中と同じ格好で、笠をかぶり
どれほど奴等の群れが 入り乱れていても
上へ下へと奇妙な動きで駆け回りながら
槍を自らの腕以上に、自由自在に
閃かせて敵を倒すあの姿は
どうやったって 間違いようがない。
クナイと刀で助太刀をしながら近づけば
笠の下から覗いた緑眼で俺達を認め
が・・・微かに口角を上げた。
「遅くなったな」
「ここは任せい。」
頷いてアイツが船の中へと
飛び込んでいったのを見届けてから
「わっちはここで定々を待つ、
ぬしは船を制圧せい!」
「分かった!」
二人で残っている"奈落"の軍勢を
あらかた蹴散らし
船のブリッジへ向かった俺の前へ
再びサイボーグ兵と、何故か仔月光が現れるが
「・・・どっからでもかかってきやがれ!」
"紅蛇眼"を活用し 一気に片を付けた。
・・・何で"奈落"の船にいたかはわからんが
大方、定々がこっそり乗せていたとか
そんな所だろう
とはいえ奴らの出所と、少しばかり
動力室に向かった信女が気になったが
もいるし、まあ大丈夫だろうと
考え直してブリッジへ向かい
・・・無事、船の制圧を完了させた。
甲板も 月詠以外に立っている奴はいない。
合図を交わし、タイミングを合わせるべく
屋根内に取り付けた盗聴器を受信する
『・・・の地でそなたらの忠臣を示してみよ』
感度は良好のようで何よりだが
定々の奴、何をさせる気だ・・・?
『鈴蘭を殺せ 奈落(そなたら)の力を
もってすれば吉原など一夜にして落ちよう。』
俺は耳を疑った
『あの裏切りが全ての元凶
あの裏切りから全ての裏切りが生まれた』
あろうことか奴は
この事態を起こした原因として
鈴蘭さんと、舞蔵さんを恨み
『お前達の約束を完膚なきまでに砕き
この因縁に終止符を打ってやろう』
二人を殺す事に執念を燃やしていた。
『私を裏切った全ての者達に
目にものを見せてやる。』
なんて奴だ・・・!
思わずここからライフルで
頭をぶち抜きたい衝動に駆られるが
怒りをこらえ、打ち合わせ通り
確保を月詠に任せて俺は待つ。
『殿を案内せよ 私も後からゆく』
上手い具合に朧が屋根に残り
橋から上がってきた"奈落"の一人と定々が
甲板へ足を踏み入れたのを見て
雷を放ち 橋を屋根から引き揚げ
呆然とする定々の隣にいた兵を狙撃し
『当船のゆき先は極楽ではなく』
聞こえてくる銀さんの声を耳にしながら
俺と、甲板の月詠は被っていた笠を高々と放り投げた。
『地獄行きだコノヤロー』
間髪入れずに月詠のクナイが
逃げようとする定々を壁に張り付けて
怒り任せの錫杖がその股間のすぐ下へ刺さる
駆けつけざまに奴へ銃口を向け
俺も、月詠の隣に並んで立った。
――――――――――――――――――――――――
後書き(管理人出張)
狐狗狸:こっちじゃ二手に分かれて侵入してましたが
原作じゃきっと、屋根から入ったんでしょうね
近藤:うん・・・まぁステルスとかって
仕掛けとかも無かったしね、原作は
沖田:おまけにんトコのメカまで勝手に
乗せちまってて、吊し上げられても知りやせんぜぃ?
狐狗狸:いーんだよフィクションに輪をかけた
捏造小説なんて現実や原作に一切関知しないし
松平:どーだかな?近頃法律がうるせぇしよぉ
土方:万一お縄になったら介錯ぐれぇはしてやる
そよ姫:大丈夫ですよ!ここの注目度は
すごく低いから簡単に見逃してもらえますよ
狐狗狸:・・・・・・最後の二人の台詞が
一番ダメージデカいな、特に姫様(死)