壁を壊し、押し迫っていた"奈落"の奴等をも
吹き飛ばして現れたのは


見廻組の隊員達を引き連れて





「何をやっているんですかアナタ達」


拳銃片手に先頭に立つ・・・佐々木!





さんまでいながら・・・アナタ達が
そのザマでは、こちらの首まで飛んでしまう。」


「てっ、てめーら・・・」


見廻組!!何でお前達がここに・・・」


「部下が一人で頑張っている以上、局長と言えど
おめおめ寝てはいられないと思いまして。」


「つくづく因業の深い男だ。」


「その言葉も、そっくりアナタに
お返ししてよろしいですか?」






互いに表情変わらぬ嫌味をお見舞いし





「さて・・・外も大概ですが城内はもはや
物騒極まりないですね、暴行傷害致死
殺人未遂 銃刀法違反
のオンパレード」


こちらの隙を伺う連中を、視線だけでぐるりと
一瞥した佐々木が淡々と呼びかけた。





警告です
おとなしく武器を捨て投降しなさい」





直後 外から連続した爆発音と





「・・・構わんん!!
賊ごと奴等を討取れいぃぃ!!



幕府軍のものらしき掛け声をきっかけに
大勢のざわめきが城を揺らす。







そちらには見向きもせず





「おや、どうやらあちらでも始まったようですね」





次々と突入する見廻組の隊士に合わせて


佐々木が、城が包囲されている事を告げた


・・・ついでに投降の呼びかけが
ウソであったことまでぶっちゃけやがった。





「ホントに捨てないでくださいね

一応警察なんで、無抵抗の人間
皆殺しにするのは何かとマズいので。」


「てっ・・・てめぇ・・・」





コイツ・・・あわよくば混乱に乗じて俺達を
定々一派ごと消す気か?










第8話 同舟相救う











「・・・遅い」


「申し訳ありませんね、のぶめさん

局長不在の間 よくぞ一人で任務を全うしてくれました
コレ差し入れのドーナッ」


労いの言葉が終わるのを待たず


すさまじいスピードで懐から取り出された
ドーナツへ信女が食いついた。





「おお・・・手負いのはずなのに
信女殿の動きが見きれなんだ」


「彼女もエリートですからね、所でのぶめさん
私の手ごと食らいついてますが?


感心するトコそこじゃねぇ!
つーか腹を刀で貫かれたって聞いてたが」





俺の問いへ、諸々に動じず奴は答える。





「いえね エリートですから
傷の方は急所を避けたんですが、毒を抜くのに
手間取ってしまいまして。」





・・・ご丁寧にも刀に毒が塗布してあったとは


てゆか、信女食いついたままなんだが





「片手で信女殿を上下させるとは・・・やるな。」


何がじゃ!?というか、その言い方
もしやわざとじゃあるまいな」


「何故ゆえ?」





わざとじゃ・・・ないんだろうな、きっと。





「まぁあんなものカレーうどんの染みを
抜くのに比べれば、楽なものでしたがね」


言いながら、埒が明かず佐々木が
信女を腕ごと床へ叩きつけようとして


察知したらしい信女が寸前で飛び退い

おい今、右手ボキッつったぞ!?





「坂田さん方も、ウチののぶめがお世話になったようで
どうやら大きな借りができてしまったようですね。」


「足手まといだった。」


「仕方ありませんよのぶめさん
彼等は私達エリートと違って凡人ですから。」





ホント 息をするように嫌味を垂れる男だ


それより右腕それ大丈夫なのかよ?





「しかし・・・その様子ではもう本当に
役に立ちそうにありませんね。」


「・・・へへ、ぬかしやがる

流石は真選組(ぼんじん)の手ぇ借りてまで
まい戻ったエリート様は言う事が違ぇや」


「好き好んでではありませんよ。
さるお方に頼まれましてね」


「それはまさか俺の「違うとだけは
お答えしておきましょう。」





即座に否定し、何事も無かったように
プラついてた右手を直しやがった・・・





じゃあるまいし、本当にアイツ人間か?


サイボーグとかじゃないだろな?





呉越同舟というやつですかね おっとスイマセン
凡人のアナタ方には難しすぎましたね。」


「周りくどいぞ片メガネ殿」


「要するに、映画版ドラ○もんののび太とジャイアンのように
敵対するもの同士も危機を同じくすれば
利害の一致する上で 互いを道具として利用するのです。」


「「ドラ○もんそんなブラックな話じゃねーよ」」


「つまり・・・」







いつの間にか、一度はしまっていた銃を向け


何一つためらう事なく 佐々木が
銀さんへ向けて引き金を引いた






「坂田さん アナタはもう使えないゴミです。」







―――――――――――――――――――――





真選組と城外で交戦中のスネーク達や


彼等の手助けで城内への侵入を果たした
見廻組と合流したジャックへ


こちらが駆けつけている旨や


新たに入った"情報"を無線で伝え





「ビッグ・ボス、ZEKEのレールガンの
発射準備が整いました。」






整列したMSF隊員一同を引き連れた
カズヒラが、敬礼と共に私へ報告した。





ご苦労 警察庁長官も準備が整ったそうだ。」





・・・答えて、私は咥えた葉巻の煙を 深々と吸い込む









ジャックやスネークの報告を耳にし





『日本は美しい国、人情あふれる
豊かな国だと思っていたが・・・』





定々という男の実態と、天導衆や
怪しげな軍事組織との癒着に気付かされ


自らが老いていた事に悔いを抱いた。





実質、あの国の全権力を掌握する奴を
日本の法で裁けず・・・どころか


こちらの介入が"違法"とされるならば


最悪 日本との全面戦争となり
無用な争いが生み出されてしまうだろう。





彼らを救うべく戦力を募るも・・・軽々しく動けずにいた我々へ







『国は違えど、そなたらも余と同じく
平和やこの国を心から愛してくれる者達だ。』





保護されていた現将軍・・・徳川 茂々





『不甲斐ない余に代わり どうかその力
この国のためお貸し願えぬだろうか。』



無線を通じて助力を請い、頭を下げた。





その一言が どれだけこちらの後押しをしてくれたか
計り知れない。







「あの若者こそが・・・
日本という国に、相応しい頂点だ。





頼もしき未来に思わず口元が緩むが


気を引き締め、短くなった葉巻を捨てて
居並ぶ全勢力へと呼びかけた。





愛国者達CEOである私が命令する!


徳川 定々を確保し、国連の法の下で奴を裁く!
責任は、全てこの老いぼれが担おう!」



『了解!!』







―――――――――――――――――――――





抜き打ちで放たれた弾丸に 一瞬面食らったが


俺へと群がる"奈落"の兵を蹴散らしつつ
上から銀さんの被弾箇所へ目を凝らし





・・・胴体へ刺さる"注射器"


真っ先にたどり着いた月詠の背後から
迫る敵を、片腕で打ち払った銀さんが見えて


ようやく あの男の行動に納得がいった。





活醒の経絡です、しばらく痺れは
とれないでしょうが少しは動けるでしょう」


「動けなかったらどうしてたんだよ」


「ご心配なく 針には血清も仕込んであります
エリートに抜かりはありませんから。」





パトリオットで敵を撃つこちらへ、佐々木は
自らへかかる火の粉を払いながら返す。





これで貸し借りはナシって事で
さっさと凡人達の所へ帰りなさい。」







容赦の無い減らず口に





「冗談よしやがれ・・・こんだけ返却遅れて
延滞料金の一つもナシかコルぁぁ!!






立ち上がった銀さんが、間を置かず
佐々木に向かって全速力で駆けていく。





「またたかりですか 望みは」





銃での反撃に対する迎撃を試みる直前で


床を蹴り、跳んだ銀さんが奴の頭
飛びくる"奈落"一味の二人を踏み台にして





テラス部分の手すりへ器用に着地した。





「定々(しょうぐん)の首」





性懲りもなく銀さんへ針を放ちかかった
黒法師二人を片付け





「エリートの威信にかけて何人たりとも
上階(うえ)へあげてはなりませんよ。」



鼻持ちならないエリートは、しばらくの間
こちらの味方へとついたようだ。









・・・動けるようになったとはいえ
銀さんの状態は 万全とは言いがたい





それを理解していたのか





「その身体では無理と言ってもゆくのじゃろう
ならば、わっちもゆく


月詠と信女が、行く先の両脇に姿を現す。





おいしい所だけもっていかせない
ドーナッツは最後の一口がおいしいの」





もちろん開いている隙間は俺とが埋めている





とびっきりの情報をもらったからな
急ぐにしても、人手は多い方がいい。」


「・・・もったいぶってんじゃねーよ


いつも通りの対応に少しばかり安堵する。





案内は任せろ、こっちだ」





くるりと踵を返し 歩き始めた
自信あり気な作務衣姿を追いかけながら


カズが無線で伝えてくれた情報


"天人とこっちの技術で、高度なステルスを
施した脱出艇が接近している"
事実を伝える







「おい、これ本当に道あってんの?
いつの間にか三途に着いてたとかナシだぞ。」





何度か妙な所を通っていたので
若干、不安はあったが





「警備を避けて忍び入る内、江戸城の構造は
あらかた頭に入ってしまっている。」






こちらを見ずに言い切った
のその言葉に間違いはなく





先に逃げたハズの 定々と朧を追い越して





俺達は、城の頂上
・・・屋根に当たる部分へ到着していた。





「ぬし、この後はどうするつもりじゃ?」


「待っていろ」







開閉式の屋根の操作と 奴の警護をすべく
配置されていたであろう"奈落"の一人へ





物陰の死角を利用し、足音を殺して


気配すらも断った作務衣姿が槍底を向けた
槍を投げつけ・・・自らも並走する。





気づくも流石に予想外の攻撃へ出たアイツへの
反応へ遅れてそいつが急所を強打され


集まってきた四名も身を捻り気味に
首や顔面を的確に打ち据えられ


程なく青い顔で、鼻血を出して倒れこんだ





血の出ない殺り方も出来るのね。」


「ひと通りはな」


「にしても片足がそれで無茶するな」





黒衣を剥ぎ取りながら、は平然と俺へ言う





「たかが片足だ・・・大仕事が残る
お主らに比べれば、露払いなど訳無し」







―――――――――――――――――――――





門の位置からの二箇所の爆撃音と一緒に


メタルギアZEKEの鳴き声が聞こえ


闇に紛れそうな、メタリックブルーの巨体が

私達の場所からでもハッキリと視認できた。





「たっ・・・大変です!!
北門 南門より軍勢が・・・」


「なっ・・・何ぃ!!」


「バカな!!奴等の他にまだクーデターに
・・・一体何者だ!?」






幕府軍が、完全に動きを止めたのを


横目で眺めて・・・真選組の局長とか
副長がニヤリと笑い出す。





「やれやれ、やっと来たか。」


「ったく気を持たせるオヤジだぜ。」





まるでそれが合図かのように、再び砲弾
城の一部へと着弾する。





「む、無茶苦茶するわね・・・」


「まぁ それが松平のとっつぁんでさ。」


・・・つくづくロクでもない長官ね。







『レールガン、発射』





ストレンジラブの機械音声が耳に届いて
似たような爆発音が地面を揺らして


鳴り出した無線から、カズの声が響く





『待たせたなお前ら!助けに来たぜ!!





これまたタイミングよく幕府軍からも
駆けつけた兵士が報告を上げた





「巨大な機械と共に、見慣れぬ外国の者どもも
城壁を取り囲んでおります!!」



何だと!じゃあ攻めてきたのは」


『けっ・・・警察機構 全軍!?





驚嘆の声へ、スネークが楽しそうに訂正を加えた





"米軍日本駐在部隊全軍"が抜けているぞ。」


"MSFの精鋭メンバー全員"もだよ。」


「てめーらんトコだって同じ穴の狢じゃねぇか」


狸オヤジを狩って国を取るなら、コレぐらい
派手な方が都合がいいんじゃないの?」


「嫁ゴリラの言う通りヨ」


ちょっと、誰が嫁ゴリラよチャイナ娘







「バッバカなぁぁ!!警察組織そのものが
反乱を起こしただとぉぉ!?」



「反乱どころかそんな人員、ましてや
外国の兵器を日本でなど 大殿(うえ)の
認可なしに動かせるワケが…!!」


一人だけいるよ 警察でも外国の軍でも
なんでも好き勝手動かせる人が」





そう・・・白も黒も、私達の軍勢さえも


"彼"の意志によって ひとつになった





「まだわかりませんか 定々公」







真選組の隊員が開けた道を進み


"彼"は白馬に乗って、現れた。





「国に仇なした国賊は アナタです」





十四代将軍・・・徳川 茂々が








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:容赦する気ないんなら、投降の呼びかけ
全くの無駄じゃないですかーヤダー


異三郎:一回言ってみたかったんですよ


スネーク:全く・・・ふざけた男だ


メリル:あの子、意外な所で活躍するわね・・・
けどワザワザ斬りつけずに相手を倒したり
奴等の服を剥ぐなんて 何をする気なのかしら?


のぶめ:仕上げに必要だから頼んだ


異三郎:まあ、凡人の皆様方はエリートの策を
次回じっくりとご堪能いただくということで


月詠:主従揃ってぬしら、一々に障りんす