銀さんが朧と睨み合っている間
俺はパトリオットの照準を定々へと合わせて撃ちこむ
が、放たれた弾丸は着弾する手前
見えない何かに護られるようにして弾き落とされた。
「何だ!?」
「・・・殿、妙な気配を感じる!」
笠から出てきた針を避けた銀さんへ朧が
飛びかかっていくのと同時に
定々の前から 顔面がバイザーで覆われた
頭髪のない三人の兵士がこちらへと降りてくる。
「ハゲが増えた」
「ああ・・・だが奴らは俺達をご指名らしい。」
「、無理はするな」
周囲から押し迫る"奈落"の連中をしばし
月詠と信女に任せて俺とは
目と鼻の先まで距離を詰めた三人と対峙する。
「ゆくぞぉぉぉ!!」
すかさず銃口を奴らへと向け直すが
発砲と同時に左右に分かれてかわされ
息つく間のない反撃に合う
互いに防ぎながら距離を取り
俺は共和刀に持ち替えて切り払うが、奴ら
すんでで後ろへ退避し
微妙に死角へと回り込みながら再び攻撃してきた
「くっ・・・何なんだこいつらの動きは!」
相当の訓練を積んでいるであろう事は
間違いない、と踏んではいたが
挙動の一つ一つに迷いがなさすぎる・・・
まるでSOPによって統制されていた兵隊
いや、それよりも運動能力は高いか・・・?
「ビビってんのか?」
「どうしたお嬢ちゃん、怖いのか?」
奴らの表情は分からんが、揶揄するような
物言いのはずなのに妙に乾いて聞こえ
まるで無人機とでも戦っている錯覚に陥りそうになる
猛攻を防ぎながらも攻めるチャンスを伺う中
突き出された短刀を掻い潜るようにして
懐に潜り込んだの槍が
兵士の胴へ深々と刺さった、その直後
「・・・ぬ!?」
吹き出した返り血は―真っ白かった
第7話 対立
刺されているにも関わらず、兵士は反射的に
痛がることすらせず短刀を振り下ろす。
引き抜き様に反転させた槍の柄で
敵の身体をカチ上げ
飛び上がり真上から心臓を貫き が叫ぶ
「殿、こやつら人ではない!」
「なっ・・・サイボーグ!?」
何で定々がこんな奴らを・・・!?
驚きながらも目前に迫っていた一刀を
身を反らして受け流し
接近してきた一体を幾重にも斬りつける事で機能停止させた。
機密保持のためか二体ともが爆発を起こして
立ち上る煙を縫って、残る一体と"奈落"の手の者が
数人ほど向かってくるのが見える。
侮っていい連中ではないが・・・
敵の動きに慣れた今なら、油断しなければ
十分対処が可能と理解し
刀の仕込まれた錫杖を弾いて
「遅い!」
みぞおちに蹴りを叩き込み、奴らの背後から
現れたサイボーグ兵へ斬りかかる。
切り傷を負ってもなお怯むことなく
こちらへの攻撃を伺っているようだが
足元から斜めに突き出たが如くの槍の刃が
気づく隙すら与えず 奴の首を斬り落とした。
「首を落とせば死するは同じか。」
―――――――――――――――――――――
スネーク達から無線で連絡を受け
ビッグボスの指示の下、俺達はMSFの兵を
集められるだけ集め準備を行っていた。
「近頃、本国で起こってる奇妙な動きに
気を取られていた隙を突かれたか・・・!」
他の仕事やマザーベースの運営と並行し
ストリート・チルドレンの誘拐事件や
各地の戦場で行動している"異様な兵士"の
一件にかかりきりになっていた事が悔やまれる。
本来なら、今からでも俺が直接乗り込んでいって
ジャック達を助けに行きたい所だ
日本に駐在している兵士達と連携を取るよう
現地に向かう連中へ繰り返し伝えながら
緊急時に備えて偵察に向かわせた部隊へ通信する。
「そっちの様子はどうだ?」
『江戸城へ到着し、内部での交戦を確認!
突入に備え侵入口を探っていた所・・・』
『門を開け 見廻組の者達が複数の民間人を
引き連れてこちらへ接触してきました!』
「何!?」
どうやら江戸城へ到着した時点で数名ほど
見廻組の隊員を見かけていたらしいが
つい先程 気を失っているそよ姫を始め
着物姿の女性や明らかに小間使いっぽい男など
城内にいたであろう"全ての非戦闘員"を
俺達の軍で保護するよう 引き渡したとか
『バンダナを巻いた兵士に連れられ
真選組に保護されていたようですが・・・』
「やってきた見廻組の連中が役目を引き継いだ、と?」
画面の向こうの兵士が深く頷く。
真選組の元まで彼らを案内したのは
間違いなく、スネークだろうが・・・
「真選組の奴らはどこに?」
『もちろん 城(あそこ)ですよ』
無線の応答へ割り込んできたのは
凛々しい青年を伴った、白い隊服の男だった。
―――――――――――――――――――――
経穴を毒針で突かれ、動けなくなった
銀さんを月詠と信女が護る中
三人へ近づく奴らを少しでも減らそうと
俺とも左右へ走り回って戦ってはいたが
・・・いかんせん数が多すぎて、段々と
押される内に5人まとめて囲まれてしまった。
「フッ 随分と手こずらされたものだな」
余裕じみた薄汚い笑みでこちらを見下ろす定々が
「卿を前にして、これ程長く生きた者も
稀であろう・・・朧」
そう尋ねた直後 奴がかぶっていた笠を
脱ぎ捨てて素顔を晒した。
白髪に、深い隈を刻んだ人と思えぬ冷たい眼光
顔の左側から眉間を通って斜めに走る
古い刀傷が否が応でも目立つ
「いえ、以前にも一度・・・
天照(てん)に抗いし 修羅(おに)が一匹」
目を見開いている銀さんへ
この男は、平淡な声音でこう言った
「変わらんな
お前のその目は・・・白夜叉」
呼びかける月詠に対して見向きもしない
銀さんに代わって 定々が朧へ問う
「おや、知り合いか 朧」
「・・・殿 寛政の大獄の遺児にございます」
「寛政の・・・大獄?」
「そなた吉原の者か
ならばしらぬのも無理もない」
開国当時 侍達は幕府を"売国奴"と蔑み
こぞって攘夷運動を行いだし
「天人との関係悪化を懸念した
幕府(われわれ)は侍共を弾圧
以来この国は長らく内戦状態へ突入した」
・・・思い出してきた
戦争が終結した後も
しばし攘夷浪士達による活動が活発で
長期化する氾濫を鎮圧するため・・・
天人の台頭として"天導衆"が作られ
「そして天導衆指揮の元 幕府がとり行ったが
世紀の大粛清といわれる」
「寛政の大獄」
江戸での作戦を開始するまでの準備期間中
実際に江戸での生活が始まってからも
この国の情報を集め続けてきたが
当時は不満を感じこそすれ・・・
ここまで憤りを覚えたりはしなかった。
「・・・各地に散らばる攘夷を扇動した活動家や
不穏分子を、大名公家にいたるまで容赦なく
粛清の対象としてお前達は根こそぎ狩りとった」
「外国の者にしては詳しいな、流石は
"雷電"と呼ばれた伝説の傭兵と言うべきか」
睨むこちらに構わず 奴は粛清によって
攘夷運動が急激な衰退をたどったと続ける
同じように定々を睨む緑眼に宿る闇が
一層の濃さと暗さを増したのが感じ取れた。
の父親も・・・攘夷戦争によって粛清された
犠牲者の一人と言えるだろう。
「殿 侍達はあれで終わったワケではありません」
指導者を失い侍達が剣を捨てていく中
自分の師匠・・・吉田松陽を助け出す為に
決起したのが、銀さん達だと朧は言った。
「銀さん・・・」
「ぬしも、師を・・・」
だが定々は彼の師を覚えていない所か
"芋虫の死骸"とまで罵る
「その男、一体何をしでかしたというのだ。」
「はて・・・私も覚えておりませぬ」
そらとぼけた奴らの言い草も
子供達のため行動していただけの人間を
"罪人"として処刑するやり口も胸くそが悪い
「成程 私の見立てに狂いはなかったようだ
吉田松陽・・・
かような不届き者を生んだが、その罪よ」
「黙れ貴様・・・!」
「そなたとて似たようなものであろう?
有守流使いの娘よ」
歯噛みしていた俺達をすり抜けて
いつの間にか立ち上がっていた銀さんが
朧に向かって特攻していく
「っ待て銀時ぃぃぃぃぃ!!」
振るった木刀はかわされ、助けに入る間もなく
朧の一撃が銀さんを階段まで吹っ飛ばす
程なく階段がすさまじい音を立てて半壊した
「銀さん!」
「「銀時ぃぃぃぃぃぃぃ!!」」
晴れていく煙の向こうに見えたのは
腕と足に針を刺されて、標本のように
身動きがとれなくなった銀さんと
彼を見下ろしている・・・朧
「そこで己の血が腐るまでみているがいい」
奴の言葉を合図にして、様子を見ていた
"奈落"の連中が再び動き出す
「お前の護ろうとしたものが
あの時のように、全て壊れていく様を」
応戦している合間も朧の声は耳に届いてくる
「松陽もまた見ていよう・・・
己の命を賭して護った弟子(もの)が
何も護る事もできずに無様に壊れていく様を」
跳んで二階に戻り、定々と去ろうとする
その背を追いかけようと踏み出すが
当然ながら奴の部下が許しはしない。
「・・・待ちやがれぇぇぇ!!
てめーらはっ・・・てめーらだけはぁぁぁ!!」
恐ろしい形相で叫び続けていた銀さんの
鼻と口から、血が大量に溢れだしてゆく
「マズい!毒が・・・」
「ぎっ、銀時ぃぃぃぃ!!」
抜き差しならないこんな状況でさえ
邪魔をしてくるこいつらのせいで、仲間の側へ
近づくことさえも出来ない
「「貴様ら・・・そこを退けぇぇぇぇ!!」」
俺に・・・こんな人垣を高々と飛び越せる程の
強い素早い足があれば
解毒剤を持ってくる事も 今しがた逃げた
二人組に追いつく事も出来るのに!
自分自身の無力さに何度目かの苛立ちを感じるが
とにかく今は、応急手当をしなくては
銀さんの命が・・・!
「!」
とっさに月詠が叫ぶのが聞こえて
斬り倒したハズの一人が投げた刀に気づくが
間に合わず、かわしそこねて右肩を貫かれた。
―――――――――――――――――――――
持病の腹痛に散々邪魔をされながらも
どうにかメリルやスネーク、万事屋の子達と
協力して敵を倒してたけれども
・・・幕府軍の人数の差は圧倒的すぎた。
「チッ」
「そんな、こっちも弾切れ!?
もう時間がないのに・・・!」
神楽って子の傘から出ていた弾丸が止まるのと
メリルの持ってたアサルトライフルが
撃ち止めになったのは、ほぼ一緒のタイミングで
「メガネをカバーしろ!」
銃を捨ててCQCに移るスネークに習って
僕らも接近戦闘の対応へ切り替える。
舞蔵さんを背負う新八君から
出来る限り敵を近づけさせないようには
していたけど、限界があった。
「神楽ちゃん!」
攻撃を受けて転倒した彼女を新八君が助けに入り
「きゃあっ!」
「メリル!!」
打ち据えられたメリルへ迫る連中を思わず
蹴り飛ばすけれども、すぐに囲まれてしまう
分担された僕ら五人は
戦う意志を捨ててなんかいなかったが
『死ねぇぇぇぇぇえええ!!』
襲いかかる幕府軍の攻撃に
最悪の想像を、抱かずにはいられなかった。
・・・響いた二回の爆音に目を開けると
周りにいた幕府軍の兵達が、足元に転がり
うめき声をあげていた。
残っている兵隊全員と僕らの視線が
爆音の原因だろうバズーカを担いでいる
『こんばんわ』
少し前に別れたばかりの・・・
真選組の人達をしっかりと捉えていた。
『お廻りさんです』
――――――――――――――――――――――――
後書き(管理人出張)
狐狗狸:冒頭のサイボーグ兵戦で、ウチの子が
白い返り血浴びた際エロい方面で考えた人・・・
怒らないから手をあげなさい
近藤:それ百パー怒ってる時の台詞だよね?
沖田:にしてもアイツも好きものだねぃ
これでぶっかけられんのは三度目でさぁ
土方:好きでやられたワケじゃねーだろ、てーか
どれにしたって現場にいねーじゃねぇかお前!
カズ:男三人相手の素人娘か・・・これは
薄い本が厚くなるフラグ
土方:じゃねぇぇぇぇぇ!帰れエロ軍人!!
近藤:いやいやいやイカンぞ!ちゃんが
そんないやらしいマネなんて・・・
沖田:近藤さん、鼻血たれてまさぁ
狐狗狸:結局全員アウトー(デデーン)