牢へ放り込まれて程なく、新八君達も押し込められ
「銀さん!さん!!」
「何が一体どーなってるアルか!!」
俺達はお互いに情報を交換し合った。
「お主らは何をやっているのだ。」
「それはこっちのセリフじゃ・・・にしても
全てがあの男の手の内とはな」
「それじゃ佐々木さんの件も、今までの要人殺害の罪も
僕らに着せられたって事ですか!?」
「どころか将軍暗殺の容疑もかけられている
可能性が高いわね…確実に私達を処刑するために。」
「はぁ!?じょーだんじゃねぇぞ!!」
頭を抱えた銀さんが、ぐるりとこちらへ顔を向けて
「、お前今こそあの微妙な設定の出番だろ
肩外して窓から檻出て鍵盗んでこい鍵!」
「槍もなく警備を抜けるのは無理だ」
「よしんば首尾よく鍵を手に入れたとしても
俺達の立場は変わらん、慌てて抜け出しても
捕まってその場で処刑されるのがオチだ。」
「マジかよ使えねぇぇぇぇ!!」
叫びながらガシャガシャ檻引っ張ったって
取れやしないっての、うるせぇなもう
「おいヒゲ、お前あのジジイに雇われたのに
どーにもなんないアルか。」
「無駄だろうな、証人がいたとしても
奴に"裏切り者"として言い切られればそれまでだ。」
確かにこの城内では定々の立場が上・・・
不満気なスネークの態度も、分からなくはない
「僕ら、このまま殺されるんでしょうか。」
「お腹も空いたしマジやってらんねーアル」
落ち込んだ新八君とふてくされた神楽が
壁に背を預けて腰を下ろす。
第4話 お泊り会ではパジャマの柄も要注意
月詠とメリルもどことなく気落ちしているようだ。
「・・・大丈夫?」
「平気よジョニー、ありがとう。」
スネークと信女 それとも黙ったまま
壁へ寄りかかっているが
油断なく周囲へ気を配っているのが雰囲気でわかる
流石にこういう状況は手慣れたものか、と
思いながら俺も彼らに習う・・・が
「おいすましてんじゃねー!
オメェも濡れ衣を晴らす努力ぐらいしろっての!!」
ったくこの人は緊張感ねぇな。
案の定、目の前の門を守る兵に注意がてら
明朝の処刑を短く伝えられ
牢の中の空気が更に険悪さを増す。
・・・と、門が開いて光が差し込むとともに
入り口に近藤さんと土方さんが佇んでいるのが見
「あっ 近藤くん!!土方くん!!
こんな所で会えるなんて奇遇だね!!
丁度いい所に来てくれた ちょっと話があるんだけど」
笑顔で手を上げてる銀さんとは真逆に
凍りついた顔した二人が・・・静かに門を閉じた。
「殺すぞ腐れポリ公ォォォ!!」
まあ・・・同じ立場なら多分俺もそうするだろうな
「何ガン無視くれてんだ!!話位きけボケェェ!!」
キレた銀さんは近藤さんのストーカー行為やら
さっきスカした時ちょっと出てる事を告白しだす。
てか何でソレ知ってんのアンタぁぁぁ!?
「ムダですよ旦那。」
横手の通路から現れた沖田君が、持参した椅子に
腰かけながら俺達へ告げる。
「また何 厄介事に顔つっこんだかしりやせんがねィ
流石に今度ばかりは相手が悪かったようで」
悔しいが彼の言う通り・・・将軍様と事を構えるのは
得策でない以上、俺達の言葉に耳を貸す者はいない
思わず怒る神楽の手を交わしながら
「何故に総悟殿達がここへ?」
「佐々木の旦那やられたろ?その後釜でぃ」
さらりと真選組がいる事情をに教えて
沖田君は、座り込んでいた信女へ目を向ける
「おっかしーな なんで将軍襲った賊に
エリート様がいらっしゃるんだろう。」
どこからともなくドーナツ出しつつ
「将軍様にチクったら
どうなっちゃうんだろうね見廻組」
白々しくも、言葉は続く
「あっ そっかゴメン、んな事しなくても
もう潰れたんだっけ見廻組(おまえら)。
勝手に自滅(ヘマ)して」 「沖田君!それは」
言い過ぎだと注意している途中で
信女が立ち上が、彼の頭をワシづかみにして
「ポンデリングよこせェェェェエエ!!」
「「そっちィィィィ!?」」
ああ、これがこの国のことわざで言う
"身から出た錆"っつーヤツか
檻を利用した股裂きの刑を食らう沖田君と
神楽と信女が一緒になってのドーナツ強奪を静観しながら
「やっぱり・・・相手が悪過ぎですよね。」
ため息をつく新八君へ、俺達も言葉を重ねる。
「唯一事情を知り定々公に目をつけていた佐々木は
見廻組と城中から共に一掃」
「事情を伝えようにも取調べすらなし」
「明朝には全ての罪を着せられたまま
処刑ってんですから。」
新八君とジョニーがため息の二重奏をもらした直後
大人しくなった銀さんが、舌打ちして呟く
「こうなると入城した時に得物を
没収されたのも罠かと勘ぐりたくなるぜ。」
「ああ、武器さえ十分にあればこんな事には・・・」
「じゃあ没収されて正解」
ドーナツを食う手を止めず、信女が奴らの正体と
"抵抗したら死んでいた"と語る。
「天照院「奈落」 古くから時の権力に利用され
影より国の采配に関わってきた暗殺組織」
「聞き覚えがある・・・あまりの冷酷無比な仕業から
泰平の世に中央から除かれた禁忌の存在、と」
八咫烏の刺青・・・確かに、俺達を捕らえた
侍達の腕にそれらしいモノが見えてはいたが
お庭番衆を廃した定々がそんな連中と繋がり
自らの謀略に利用していたとはな。
「幕臣暗殺は定々主導の奈落によるものなのは明白
あとは古狸をひきずりおろすだけ。」
「・・・こんな状態でどうやって 大体見廻組はもう」
だけどコイツは、檻の外を見つめてハッキリ言う
「異三郎は 生きてる」
一瞬だけ・・・が何とも言えない顔で
信女の背へ瞳を向けていたのに気がつく。
「・・・血染めの将軍か」
しばらく黙っていた月詠が、淡々と口を開いた
「鈴蘭の待つ男など・・・どこにもおらんかった。」
彼女は知っていたのだろう・・・定々を拒めばどうなるか
秘密を知る自分が、吉原を出ればどうなるか
きっと あの心中立ての"真意"さえも
「・・・最初から鈴蘭は 誰も待ってなど
おらんかったんじゃ。」
否定しようとして、結局メリルは口をつぐむ
「ただ夢の中にしか 居場所がなかったんじゃ」
再び牢獄に沈黙が降り、意識を取り戻した
沖田君もいつの間にか立ち去っていて
眠りについたり 或いは落ち込んでる六人を他所に
俺は、努めて小声で問いかける。
「スネーク、外と連絡は付かないのか?」
「ご丁寧にも無線等の通信機器は全て没収されている」
「念のいった事よね ジャックと私も入城の時
銃一丁隠すのがやっとだったわ。」
「僕もだよ、せめて手元に擬装用のアイテムがあれば
一芝居打って牢屋から出られそうなのに・・・」
鈴蘭さんの望みに添えなくとも
このまま定々を放っておくわけにはいかない。
だがどうにか弁明の機会を得るにしても
武器を奪い返して、強攻策に出るにしても
残されている時間が少ない以上
全員でここを出なけりゃ話にならん。
門の内側にいた見張りはいないってのに
この格子の厚みじゃワイヤーも使えない・・・
「その形だけの侍がなけりゃ士道どころか
護るモンも護れねーんだよ!」
無線か連絡手段があればMSFへの介入要請も
可能なんだが、今は手も足も出ない
「その護るもんが
今ここにあるってのがわかんねーのか。」
檻越しにCQCで看守を締めあげて首尾よく
鍵を奪えても、この人数じゃ脱走が目立
「こんのわからず屋が!!
てめーの組織論にはもうウンザリだ。」
「てめーこそキレー事ばっかり並べやがって
大体元将軍(しょうぐん)なんて
逮捕できるワケねーだろ!!」
・・・何か外が騒がしくなってきたな。
どうやらここの門の前で見張ってた近藤さんと
土方さんがケンカしだしたらしく
他の隊士達が集まって仲裁してるようだが
収まるどころか余計にヒートアップしてきてる。
「うるせェェェェェ
眠れねーだろクズどもォォ!!」
「人が明日処刑されるってのに呑気なもんですね」
ん?門が開いた・・・って、そよ姫!?
「そっ・・・そよちゃ」
神楽の口を銀さんが塞ぐ
何をしに来たんだ?まさかこの混乱に乗じて
オレ達を助けに・・・?
「あのっ一人じゃさびしく眠れなくて
一緒に寝てもいいですか。」
なわけ無いよな つか友人がいるとはいえ
檻の前へ布団敷いて寝るとか変なトコ度胸ある子だな
「よかった〜最近はいつも のぶめさんが一緒に
寝てくれてたから、なんだか恐くて眠れなくて。」
「いや恐くて眠れないの僕らなんですけど」
「なんだかお泊まり会みたいでドキドキするね。」
「いやドキドキしてんも僕らなんですけど
明日処刑されるんですけど。」
「大丈夫 皆さんの無実はG嫌(じーや)が
きっと証明してくれるから。」
・・・穏やかな見た目に騙されてたが
この子、結構人の話聞かないっつーかドSかも
姫様はありがた迷惑にも、眠れない俺達の為に
G嫌(じーや)直伝の寝物語を聞かせてくれるらしい
「とってもつまんなくてスグ眠れるんです。
あのね むか〜しむかし」
瞬間、信女と神楽が床に倒れこんでイビキをかく
「「どんだけつまんねーんだてめーら!!
失礼だろォォ!!ちゃんときけっっ!!」」
「そよ姫殿、私は聞いていますぞ。」
「あらさん起きてたんですね
まだ寝ててもいいですよ。」
俺と新八君のWツッコミにも、のKYにも
動じないこの返し・・・天然のドS恐るべし
てか起きてたのなお前 静かだしてっきり寝たと思ってたよ
「むかーしむかーしある所に 殿様とその家来がいました
この殿様の奥方は国一番の美しい姫で
とっても殿様を大切にしていました。」
そうして何事も無く再開された寝物語は
「でも殿様は姫のそんな気持ちを利用し
彼女を牢獄に入れ ヒドイ事ばかりをやらせていたのです」
どう聞いても・・・鈴蘭さんと定々公、そして
「だから姫様は毎日牢獄で泣いていました。
そんな姫様が哀れで、家来はいつも
姫様の涙をふいてあげていたのです。」
語り部である舞蔵さんの事を指し示していた。
「そう、いつからか彼は・・・
姫様に恋心を抱いていたのです。」
叶うはずのない身分違いの恋を、胸にしまい込み
彼女の涙をふき続けた彼へ
あの男は・・・鈴蘭さんを殺すよう命じた。
「主人の命令は絶対・・・逆らえば命はありません
でも彼は愛する人を殺める事などできませんでした」
代わりに交わされたのが・・・あの"心中立て"か
寝たフリをしている奴らも、寝息一つなく
姫様の言葉に聞き入っている。
「でも次の満月の晩も その次の満月の晩も
姫様の元に彼が来る事はありませんでした。」
全てを知っていた"殿様"は"家来"の左腕を切り落とし
「会えば姫さまを殺す・・・二人の約束は
死よりも重い鎖に変わりました。」
その一言に、月詠とメリルが同時に眼の色を変える。
「だから彼は決めたのです」
いつの間にか・・・外のケンカが収まっていたが
敢えて口にせず、俺は話に耳を傾ける
「たとえシワだらけの醜い老人になろうとも
たとえ姫様が彼を忘れようとも・・・
彼女と会える日まで 生き続けようと。」
きっとそれは、腕と証を失った彼だけでなく
囚われていた彼女もまた、同じように
吉原で生きてきたのだろう。
「そうして家来(かれ)は今も
三本の足で はいつくばりながら生きているのです」
丁度、こうして空に浮かぶ満月を
何度でも目にして・・・
その日の約束の想い出を心の支えに 今日まで
「そして、姫様と家来は・・・」
「・・・いい もう結構です姫様」
断る月詠へ、姫様は苦笑して返す。
「やっぱり眠れませんでしたか」
「いや、そうではありませんよ」
冷たい石の床から身を起こし
銀さんが、俺の言葉を引き継ぐ。
「そっから続きは もう知ってんのさ」
俺も含め、次々と他の奴らも目を覚まし
起き上がって牢の入り口へと集まりだす
「他国といえど犯罪者は捨て置けんな」
「・・・舞蔵殿の左腕(ウデ)の無念も
晴らさねばな」
「そろそろ時間です
そこを開けていただけますか姫様」
「え?開けるってどうやって」
布団から出て、困ったように訊ねるそよ姫へ
神楽が 床に転がっている鍵の束を指摘する
「そよちゃんが入ってくる時 放り込まれてきたネ」
・・・多分、ケンカしてる辺りからあの人達は
こっちに協力するつもりだったんだろう。
閉ざされていた門が三度開いて
「・・・何モタモタやってんだ
出てこい 処刑の時間だ」
真剣な顔をした近藤さんと、後ろに居並ぶ隊士達が
こちらへ視線を投げかけてきた
「え!?ちょっと待ってください
まだ夜は明けてな・・・」
うろたえる姫様に構わず
彼は俺達の荷物を全員分投げ込んで
くるりと背を向けてこう続けた。
「さっさと白装束に着がえやがれ」
・・・なるほど、この人にしちゃ気が利いている
鍵を開けてもらい、牢から出て
各々の装備を手にしながら
「メリルとジョニー、それとスネーク
少し頼まれてくれないか?」
「何でもいってちょうだい、ジャック。」
「・・・成り行きではあるが 協力してやる」
俺は三人へ、真選組の人達と組んで
自軍への報告を行ってもらうよう頼んだ。
当然のように先頭を担った銀さんへ
「旦那 処刑台は予約入れときやしたぜ
ちゃんと首つけたまま戻ってきてくだせーよ。」
「もそこの槍ムスメも
せいぜい処刑にふさわしい罪稼いでくるこった。」
入り口に控えた沖田君と土方さんが
普段通りの軽口を叩いて
ついでのように、こう問いかける
「ちなみに罪状は何だ」
城を見据えて・・・銀さんは迷わず答えた。
「殿様の 下のマゲもぎとった罪(ざい)」
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後書き(管理人出張)
狐狗狸:さんらはこういう状況下では、基本
体力温存しながら状況整理と解決に努める感じかと
新八:流石にその道のプロだけはありますね
神楽:ムダに騒いでた銀ちゃんとは違うアルな
銀時:ドーナツ女と一緒に沖田君へ襲いかかってた
てめーが言うんじゃねぇぇぇ!!
スネーク:さて、裏切り者の汚名を着せようとした
あの男には相応の仕返しをせんとな
メリル:狸ジジイにピッタリな処刑法は何かしら?
のぶめ:皮を剥いで剥製にして、肉は狸汁がいい
ジョニー:えっ!?ちょっ、リアルに恐いよ!!
狐狗狸:狸は種類ちゃんと選ばないと臭くて
食べられ「「アドバイスズレてるぅぅぅ!!」」