ダマリンス!とよく分からん叫び声を頼りに
やたらと人溜まりの多い路地に目を凝らせば
銀さんと月詠とメリル や百華の女達が固まって
騒いでいるのが見て取れる。
「お、いたいた!」
その背に駆け寄りながら、新八と神楽が叫ぶ
「銀さーん!やりましたよ!」
「バーさんの客についていい情報が入ったアル!」
「お黙りんす!!」
何でかしらんが怒鳴られた・・・何があったんだよ?
すると月詠とメリルも、何故かは知らんが
嫌味っぽい笑みを浮かべながらこう言い出す。
「ほうそうか奇遇じゃな、主もダマリンスを買いにきたのか?」
「それ以上ザラザラになって手入れとか
大変になるんじゃなぁーい?」
「ダマリンスじゃねーオダマリンスだ!
天然パーマが直るんだよ!」
「いや直んないでしょ〜手遅れだって、無駄無駄」
「オダマリンスなら直るんだっつの!
つーかうっせ!オメーらもお黙リンス!」
「貴様の方こそ黙りんす!!」
一体どーいうケンカなんだよ!てゆうか黙りんすとか
お黙リンスとか何言い合ってんだよ!!
「お主ら、痴話喧嘩なら後でやれ」
「「「お黙りんすぅぅぅ!!」」」
空気を読めないの発言は叩かれたが
それをきっかけにして、新八君達が下らない口論をなだめだす。
「あーもういいですよ。三人とも素直じゃないな」
「銀ちゃんもツッキーもバーさんが死ぬ前に
一目約束の男と会わせてあげたかったんでしょ。」
「素直じゃないなぁ隊長。」
それによりメリルは我に返ったようで
気恥ずかしそうな顔して口ごもり始めるけど
「「は?」」
月詠と銀さんは 声を揃えて異を唱えだす。
「わっちは吉原の女の心を踏みにじった卑劣漢に
ケジメをつけに来ただけじゃ」
「いや何恐ろしい事企んでんのォこの人ぉぉ!!」
「約束・・・・・・しちまったからな
男に会わせたらためこんだ遺産全部くれるって」
「ウソをつけぇぇぇ!!
何勝手に約束ねじ曲げてんだァァァァ!!」
黒い事しか考えていない二人を非難する新八君と
アレな提案で口出すは
一切合切無視して、エドが問いかける。
「隊長は、何故こんな事を?」
メリルは目を閉じてから、開いて静かに答える。
「死ぬ前にひと目でも逢いたい人がいた・・・
けど、親父は逢えなかったのよ。」
昨日頭によぎった"ある事"が、その一言により
俺の中でようやく確信へと至った
「勝手かもしれないけど、だからこそ私は
鈴蘭さんの願いを叶えてあげたい・・・それだけ」
メリルの瞳はどこまでも澄み渡っていて
俺とジョニーは、自然と笑みを浮かべていた。
「素敵なことだと思うよ。」
「頭達も、これぐらい純な動機だったらねぇ」
全くだ、と俺達は頷きあって・・・
「いい雰囲気のトコ悪いけど、その銀ちゃんと
ツッキー止まる気配全く無いアルよ」
「「ちょっとちょっと待ってぇぇぇ!!」」
ワザとこっちを無視するように、ロクでもない事
呟きながらスタスタ歩き出す二人に
俺と新八君が必死で待ったをかけた
「いや実は昔の鈴蘭さんの顧客情報に
たどりついたはいいんですが」
「その客が・・・大変厄介な客で・・・」
ある時期を堺に、客としてついていた旗本達の
足がパタリと途絶えたのは
鈴蘭さんのせいでも、旗本達の資金が
尽きたのでもなく・・・あるウワサのせいだった
「鈴蘭は あの方のお気に入りだと」
誰かと訊ねる月詠に、言い難そうにはしていたが
やがて決意して新八君が 城を指して答える
「江戸城(あそこ)に住んでる人です」
・・・そう、出てきたのは先代将軍の名前だった
第2話 じいやはおはようからおやすみまで
ついてくるからいやー!
数として目立つので百華のほとんどと
エドとジョナサンを 一旦引き上げさせ
適当なビルの屋上から城内を双眼鏡で
偵察するが、いつにも増して警備が厳しい
相手は元征夷大将軍
会うどころか声をかけるのすら至難の業だってのに
「よし作戦が決まったぞ、まずは月詠とゴリラ
警備のスキをついてお前ら城に忍び込め
そのスキに俺は警備にそれを密告し将軍から
褒美をもらう これで完璧だ」
隣で双眼鏡覗きつつ、しょうもない事
言い出してた銀さんは
「「こうすればもっと完璧に(なりんす・なるわよ)」」
早速 月詠とメリルに消されそうになっていた
「大体会った所で何て言うんだ?」
「アンタが昔吉原で暴れん坊将軍やってた頃の
元カノが会いたがってますよってか」
「「地獄で元カノが会いたがっていると伝える」」
いや俺達にまで将軍暗殺の片棒担がすなよ
てか鈴蘭さんまだ死んでねーからな!?多分
「さん、やっぱり侵入は無理そうですか」
「そこかしこに見張りがウジャウジャだ
ありゃ何かあったな」
下手を打てば最悪、その場で殺されても文句は
「ふむ…定番だがやはりここは陽動で警備を
撹乱させて 少数で一斉突破とゆくか」
「それで行きましょうか、ジョニー!」
「わかったよメリル!トラップなら任せろー!」
「「ヤメテ!!」」
押し入る気満々かお前らぁぁぁぁ!
物騒な作戦を実行しかかってた女二人を止める
俺の横で、銀さんが眉をしかめて言う
「幾ら昔は江戸一番の花魁だったとはいえ
わざわざ将軍様が吉原に通うかね」
「・・・鈴蘭さんの常客だったのは
まだ将軍職に就く前の若かりし頃だぞ」
「それに銀さん、知らないんですか
十三代将軍定々様の事を」
この国に住む新八君は元より
俺も江戸へと潜入する際に事前知識として
先代将軍の情報は知っていたが
「かなり偉いのだな」
「間違っちゃいないが・・・」
神楽はともかく、コイツらはなんで知らないんだ
「でもなぁあのババアは男と吉原から抜ける約束をしてたんだぜ?
それ程の地位があるスケベ将軍ならババアを落籍してかこえるだろう」
「確かにそれは気になるが・・・」
「それは家中の目とかがあったのかもしれませんね」
まあ、次期将軍を約束された男が商売女・・・
もとい、遊女に入れあげるなんて
世間体としてはよろしく無いだろうな
「果たすつもりもない約束に整合性なんていらないわ」
遊底をスライドさせるメリルに合わせ
「百戦錬磨の太夫が客の戯言に惑わされたのも
相手が次期将軍だったとすれば納得がいく」
キセルを吹かしながら月詠も言葉を続ける
「奴はその地位を利用して、鈴蘭さんを
もて遊んで捨てたのよ・・・許しがたいわ」
「「標的(ターゲット)は将軍で決まり(ね・じゃな)」」
「「標的(ターゲット)って言い方止めてくんない」」
つか姉妹かってくらい意気投合しすぎだろ
「決まりね、見つけ次第股間を撃ち抜くわよ」
「何を言っている、鈴蘭の怨念を晴らしてから
股間を貫くに決まっておりんす」
「「「「どっちのタマを殺(と)る気なの!?」」」」
黒いオーラ垂れ流しで話し合う作戦はもはや
将軍抹殺にシフトしてたので
「いくらなんでもヤバすぎますって!」
「気持ちは分かるが思い止まれ!
冷静になれ二人とも!頼むから!!」
必死で説得を続けると、思い留まったのか
ひとまず間に漂っていた抹殺オーラは収まった
「ゴメンなさい、私ったらつい熱くなって・・・」
だが、落ち着きを取り戻したメリルから背を向け
「無謀は百も承知 それでもわっちはゆくぞ」
月詠は振り向きもせずに歩き出す
「オイ!!」
「わかっておる・・・将軍に罪はありんせん」
今更昔の約束を掘り返して押しかけるのは
野暮と知っていながらも
来る事のない相手を待つ鈴蘭さんを放ってはおけない
「遊女(おんな)は吉原のために一生を尽くした
ならば吉原も遊女(おんな)がために尽くそう」
彼女の"夢"を叶えたいと決意する月詠と
「・・・っ私も行くわ!」
それに従い共に歩き出すメリルへかけてやれる
言葉など、俺達にはなく・・・
「待たれよ二人とも」
「その夢 無謀なんかじゃないアル」
城へ向かおうとする二人を呼び止めたのは
自信満々そうなと神楽だった
「開門んんんん!!」
・・・・・・門の見張りに何を言ったか知らんが
通用口越しに見張りと見廻組の人間が連絡とったと思ったら
すんなり城門が開いて姫様直々にお出迎えって
これは一体どーいう事なんだ!?
「神楽ちゃーん!!さーん!!」
「そよちゃん」
「久し振り元気にしてた!!」
「姫様!人前で抱擁などはしたないですぞ」
二人してめっちゃ笑顔で抱き合ってるし
思いっきり仲良しっぽい雰囲気出してるし
しかもまで加えて楽しげに回りだしたし
おまけに無表情から珍しく照れてるし
・・・アイツら いつの間に一国の姫とコネクション築いてんだよ
「オレの記憶が確かなら姫様はあんな小汚い
ハイジとユキちゃんとヨロレイホーとかやんないよ」
卑屈なオンジ思考はともかく
銀さん達同様、あまりにも信じられずに
解放されたらしいへ事情を聞くが
「お忍びの姫と会って以来、文通などしているぞ
私も縁あって手紙や伝言などを引き受け」
『経緯を話せぇぇぇぇ!!』
肝心な部分を省いて関係を口に出されて
俺達全員の心の声が見事なまでに唱和した
が、神楽は構わずこちらを"友達"として紹介し
「今日はよくぞいらっしゃいました
銀ちゃんさんですよね」
そよ姫は銀さんへ頭を下げるが・・・
「ホントにモジャモジャだね」
「あの神楽ちゃん何余計な事言ってんの」
「じゃああっちの
人間かけてるメガネがぱっつぁんさん」
「人間かけてるメガネって誰ェェ!?逆!!
僕の事どんな風に伝わってんの!?」
この反応を見る限り、どうやらロクでもない事を
神楽から吹きこまれているようだ
「あ、アナタはさんですね
あの時はご挨拶出来ずに申し訳ありませんでした」
「いっ!いえそんなお気遣いなさらずこちらこそ」
同盟会談でチラッと顔を合わせてはいるが
こうして改まって話をするのは始めてだな・・・
「この二人は俺の仲間でメリルとジョニーだ」
「「よろしく」」
「ちなみにその二人は新婚ホヤホヤのリア充で
ネオ秋葉でコスプレデートも」
余計な事言いかけた神楽の頭をどつく
が、懲りずにコイツは月詠が将軍暗殺を
企てていた事を言いかけて 本人に口を塞がれる
「いえ わっちはその・・・アレ・・・」
「アレですコイツは吉原から将軍悩殺しに来た
デリバリーヘル・・・「どんなフォローじゃ」
頭にクナイを刺された銀さんは当然だが
「姫様!!やれデリバリーヘルスだぁ
ファッションヘルスだとはしたない!!」
「いや誰もそこまで言ってないですけど」
「せめて略してデリヘルさんとお呼びくだされ!!」
「何も変わってませんよ!!」
この爺さんも少し自重してくれないものか
色々あったが、俺達は無事に城内へと通された
ついで廊下にて教えられた幕府要人の襲撃事件は
記憶に新しく、城内には厳戒令が敷かれているとか
「なるほど・・・警備が厳しかったのはそれでか」
「も・・・申し訳ありません、何か大変な時に
お邪魔しちゃったみたいで」
「いいんです、この所お城全体が暗い雰囲気で
心細かったから 皆さんに会えて元気が出ました」
「そうですか」
聞き覚えのある声は、縁側に腰掛けている
白い制服の男が発していた。
「本来ならこんな事態ですから姫様のご友人とはいえ
お帰り願わなければと思っていたのですが」
見廻組の人間がいたからまさかとは思ったが・・・
「特別に見逃しましょう
私の友人(メルトモ)もいるみたいですしね」
こんな形で異三郎(このおとこ)とかち合うとはな
―――――――――――――――――――――
このところ何者かによる幕府要人の襲撃事件が続き
幕臣暗殺が繰り返されている。
「では、ご協力お願いします。」
「ええ、我々の警護があれば安全でしょう。」
その為 見廻組による厳戒態勢だけでなく
アメリカ外交官を含めた警護が俺達に依頼された。
・・・それは構わんが、この正座という
座り方はどうにかならんものか
「やはり正座には慣れませぬか?」
「いえ、これも日本独特の文化と心得ております。」
「お分かり頂けますか・・・ところで、あなた方は
親子ですかな?顔が非常に似ておりますが」
「ええ・・・親子なのは間違いありませんな。」
定々へ笑いかけ、ビッグ・ボスが俺を見る。
だが俺は答える気になれず・・・短く唸るのみ
「頼り甲斐がある息子さんを持たれて幸せですな。」
好々爺のように穏やかな老顔をしているが
その眼差しは、どこか鋭く油断がならない
天人襲来の折 心労で倒れた十二代将軍に代わり
執政につき、開国を推し進め幕府を立て直した この男は
売国奴と蔑まれる一方 名君と呼ばれてもいる
将軍職を持した今も相談役として城中で
絶大な権威をもってはいるが
遊び好きであり良からぬウワサも多いとか・・・
適当な挨拶を交わして定々と別れ、廊下を歩く最中
「殺された幕臣の共通点、気づいているか?」
拾いきれるギリギリの声でささやかれ、鼻で
小さく笑ってから答える。
「一橋派だけが狙われている・・・何か裏がありそうだな」
「すまんが、しばらくここで探りをいれてくれないか?
ジャック達も応援につかせる。」
「大丈夫だ、俺一人でなんとかする。」
口の端だけで小さく笑い、ビッグ・ボスは言う
「頼んだぞ、我が息子よ。」
「・・・アンタに息子扱いされたくない。」
――――――――――――――――――――――――
後書き(管理人出張)
狐狗狸:じいや成分がこっちじゃ少ないですが
許してください・・・マジすんませんでした
銀時:許してやるよぉ!・・・とでもいうと思ったのか?
神楽:銀ちゃーん、一発ぶん殴っていいアルか?
なんでか最初の方のセリフすごい腹立つネ
スネーク:やれやれ・・・騒がしいのが来たもんだ
ビッグ・ボス:まあそう言うな、思いがけず
応援に現れてくれて何よりだ
新八:合流もっと後ですから・・・A面と展開が
半分くらいズレてますけど大丈夫なんですか?
狐狗狸:多少のズレは諦めてもらいたい・・・
けど、大体は揃うよう調整するつもりはあります