・・・やられた、完全にこちらの不手際だ。





「すまないジャック、あともう少しだったのに」


「いや・・・お前のせいじゃない。」





真選組と合同で処理を行いつつも調べた結果





檻の中に残されていた定々の死体


それと被害にあった警備の傷や、かろうじて
生きていた者から得た情報は





あるひとつの可能性を示していた。





「まさか・・・高杉が・・・!?





目的は・・・師の敵討ち、か?





「しかし、いくら奴でもこちらの警備状況を
把握して攻撃するなんて・・・」


「とにかく・・・断言できない以上は
口にするべきじゃないだろうな。」


「・・・そうだな」





と、血相を変えたメリルとジョニーが
室内へと駆けこんでくる。





「二人とも、どうしたんだ一体」


大変なんだよジャック!
将軍様の今後が決まって、それと」


「鈴蘭さんの様態が・・・!」







・・・・・・夜が明けて


日輪さんの店で 月詠と待ち合わせた俺と銀さんは


ほどなくやってきた沖田君と、ビッグボスから





「これも因果応報って奴ですかね。」


「暗殺で全てを築いた定々(おとこ)が
暗殺で終わりを迎えるとは、な・・・」






奴が暗殺された事と、表向きは"病死"として
発表された事を改めて聞いた。










第12話 潰えぬ絆











「下手人は?」


「さて、捜すつもりがあんだかねーんだか
さっぱり進展せずですよ・・・ねっ旦那方」


「「鋭意捜索中だ」」


「内部の犯行か天導衆に 口封じに始末されたのでは」





月詠の問いかけは、"奴ら"が定々を取り戻す
機を狙っていた一点により否定され


二人は・・・今回の定々暗殺を


一橋から天導衆への宣戦布告だ、と告げた。





「その証拠に、天子から
ある勅命が下りましてね」


「将軍様の辞意が 取り消されたんだろ?」


「ご存じたぁ人が悪いや、の旦那」


「ま、今頃 城に行った新八や神楽や
そよ姫から聞いてんじゃね?」


「何にせよ・・・いい事だとは思うが。」


「なーんて バカどもは喜んでるでしょうが
勅命の裏で天導衆が動いていた事は明白





沖田君の言う通り・・・天導衆は
一橋をと定め、政権奪取を阻止する為


茂々さんを暫定政権として繋ぎ止めたのだろう。





「幕閣の歴々にはまだ天導衆の息のかかった者
ウジャウジャいる・・・いずれ一橋に対抗する
手駒が出来るまでのつなぎでしかない。」


「その一橋とやら、政権を奪取するために
天導衆とやり合うつもりなのか」





銀さんの頼んだ団子を一つ失敬し


沖田君は、月詠にこう答える。





「政権奪取のためなのか、それとも幕府ならぬ
世の中ひっくり返そうとしてんのか」





俺の脳裏に・・・高杉の姿が浮かんで消える。





「いずれにしても闇はまだ深しって奴ですよ」


「一橋と天導衆の権力争い・・・これは
幕府は荒れるだろうな。」







舞蔵さんは 一命を取りとめはしたものの


重症の身であり、あの騒動と定々暗殺
そして幕府の状況を鑑みて


吉原に行く事はおろか


・・・城から一歩も出られないだろう





「城中は厳戒態勢下で、将軍にまで見張りがはりつき
一切の出入りを禁じられてる始末ですから。」





沖田君とほぼ同時に立ち上がったビッグボスが


真剣な面持ちで、俺達へと向き直った。





重ね重ねすまなかった・・・私の考えが
至らんばかりに、今回の事態が起きてしまった」


「仕方ないさ・・・奴等が俺達の考えている以上に
強大な組織だっただけだ。」





天導衆にしても、定々の背後にいた謎の組織にしても


・・・賢者達を遥かに超えているのは確実だ。





立ち去る二人の背を見送る俺達の耳に





「こうなるのはわかっちゃいましたけどね」


呟いた、彼の言葉がやけに虚しく残った。





「俺達ゃ一体 何のために戦ったんでしょーね」







―――――――――――――――――――――







今は落ち着いているけれど・・・医者の見立てでは
もって今夜いっぱいだ、と言われ


私とジョニーは鈴蘭さんの枕元に付き添っていた。





「そんな顔しないの よく・・・頑張ったよ
鈴蘭さんも・・・アンタ達も


その言葉に、私達は顔を上げた。





「私がアンタ達が裏でコソコソやってる事に
気づかないとでも思って」


「バレて・・・たんですね」


「まったく無茶やらかしたもんだよ

アンタもさぁ最近銀さんに似てきたから
危ないと思ってたのよ。」





頬を赤く染める月詠さんに構わず


日輪さんは、口を滑らせないように
気を付けてたけど無駄だった・・・と言った





「ひっ・・・日輪さんまさか」


「最初から鈴蘭の待つ男を知って・・・」


「さぁね でもこれだけの長い間
迎えに来るのを待ってた位だ」





私達の問いへ彼女は笑みを浮かべて





きっと素敵な男(ひと)だったんだろう
それだけはしってるよ
・・・ねぇ」


鈴蘭さん、とこちらに呼びかける。





「日輪ちゃん、そろそろ
化粧・・・お願いできるかい


そろそろあの人との 約束の時間だ





車椅子からそっと枕元へ降ろしてあげれば


テキパキと、慣れた手つきで日輪さんは
鈴蘭さんの顔に化粧を施した。





けれども月詠さんは・・・着物の前で
手を握りしめて、震えたまま





約束を果たせないまま逝かせてしまうのか


そう思って迷っているのが・・・
背中越しでも、分かるような気がした。





けれど何も言えなかった私に代わって





「月詠ちゃん その心中立ては
・・・いい男(ひと)とのものかい


言葉をかけたのは 鈴蘭さんだった。







「だったら 最後まで信じておあげなさいな」





とても優しい、穏やかなその一言へ





「いい男ってのは、必ず約束を
護るもんだ・・・そうだろ?」


「・・・あぁ その通りじゃ





月詠さんは振り返り・・・泣き笑いのような
キレイな顔で答えた。





「日輪さん、月詠さん・・・私も手伝うわ。」


「ああ、頼む」





無線に耳を傾けていたジョニーが
晴れ晴れとした笑顔で、私達に言う。





「ジャック達の方も、準備は整ったみたいだよ」





―――――――――――――――――――――







城へ通してもらった後、無線を終えた俺は
茂々さんへ苦笑交じりに詫びを入れる。





「こんな協力をさせてしまってすまないな」


「何、から昼間
そなた達が遊びに来る知らせを受け取っていたからな。」





・・・警備をすり抜けるのは骨だったろう

本当、よくやってくれたもんだ。





近藤さん達や、カズとも打ち合わせて


それぞれの位置へと移動した後





銀さんを先頭に俺達は、佐々木の背後へ
缶を放り込んで座敷へと上がった。





「缶蹴りする人 この指と〜ま〜れ


銀さんの呼びかけから間を置かず


両側から、真選組とMSFの混合軍


将軍とそよ姫が顔を見せて





『はーい!!』


一斉に座敷の中へとなだれ込んでくる。





当然ながらあっけにとられた後で


我に返って厳しく詰問する佐々木を、新八君と
スネークとカズが取り成す横で


お構いなしに 缶蹴りの鬼を決めていく。





「この人数でジャンケンすんのもアレなんで
鬼は土方さんって事で」


「ふざけんなこの人数だぞ
100パーイジメみたいになんだろが!!」



「まあまあ土方さん、どうだ?
ここは一つ折中案でカズを鬼にすれば」


「ボスぅぅ何処が折中案んんん!!?」


「ふむ・・・しからばマヨ殿とカズ殿で
鬼をやれば万事解決だな。」


何一つ解決してねぇよ!つーか俺
参加するなんて一言も言ってねーけど」






・・・多少ボケは挟んだものの


将軍の権限により、鬼は舞蔵さん
引き受ける事になった・・・だが





いい加減にしてください 外部の人間の
侵入を許した上、職務放棄までするつもりですか」


当然の如く 佐々木が責任問題だと





言い出した減らず口を、蹴り上げられた缶が
立てた轟音が黙らせる。






固まったアイツへ・・・蹴った張本人の信女が
しれっとした顔でこう言った。


「さっさと缶拾ってきて」





それを合図に、俺達はバラバラに逃げ始め





病み上がりには辛かろう・・・エリート殿は
精々動かず安静にしているがいい」


すり抜け様に言ったの挑発で





ようやく・・・佐々木も観念して缶蹴りに
参加し始めたようだ。











少しばかり適当に逃げ回っている辺りで





ん?おい、何してるんだ?」


殿 ちょうどよい所に」





妙なトコで突っ立ってるがいたんで
声をかけたら、少し先の縁側を指ささ


「少し前からいたようだが・・・缶蹴りに誘」
「わない方がいいだろ、そっとしとけ。」





いつの間にかスタンバってた桂さんは
この際、見なかった事にした。







城を出てゆく辺りで・・・


俺は、今回の戦いで自分が結局

何も護れないダメな奴だった事を口にした。





まっとうな人間じゃないクセして・・・オレは
強さも、心も半端なままだ」





だが側にいる相手は、決して笑わず


俺を見て真剣に・・・人でなくなっても

武士(もののふ)の魂を持つ仲間だと言ってくれた





「案ずるな、もし道を違えたなら

お主の因果は私が終わらせてやる



「斬るのなら私の出番ね」





ひょっこりと、俺達の間に顔を出した信女に
危うく叫びそうになった・・・ちょっとビビった。


本当 なんなんだこの女は





「悪いが割り込まんでくれ信女殿」


そう、早くしないと鬼が逃げる」





とっとと去っていく白い隊服を一瞥し


気を取り直し、先に出てた銀さん達と合流する。





「テメーらおっせーぞ」


「すまぬな さて行くか。」


「急ぎましょう、鈴蘭さんが待ってます。」





俺達は、月詠達から聞いた"一本桜"
あった場所まで駆けて行った。







―――――――――――――――――――――





体力が持つか、とても不安だったけれど


一本桜があっただろうポイント
連れてきた鈴蘭さんの元へ





舞蔵さんが駆けつけてきたのを見届けた。





「・・・よかった、間に合わないんじないかと思ったよ。」


「月詠達も、ありがとうな。」


「何・・・わっちはぬしらを信じていた。





少し照れたような顔をしてる月詠さんが
ちょっとだけ、かわいく見えた。


・・・メリルには怒られるから言えないけど





「初めてお見受けしたが・・・鈴蘭殿は
心根の、美しい女人なのだな。」


「金○シワシワでも一途な男がいるだなんて
伝説の花魁は伊達じゃないアルな」


「女の子だから自重しろ神楽」


「つーか重てぇよ神楽、さっさと退け。







ジャック達と影から二人を見守っていたけれど





「・・・舞蔵様 これは夢?

また月と共に消えてしまう、一夜の夢?





鈴蘭さんの、その問いかけに


耐え切れなくなったようにメリルが駆けだす。





ジョニー、行ってやれ。
ああ見えてメリルは・・・弱い所がある。」


「・・・わかった。」





後をみんなに任せて、僕はメリルを追う。







彼女は・・・数十メートル離れた路地で
隠れるようにして すすり泣いていた。





そっと近寄れば、見上げる瞳は涙に濡れている





「ジョニー・・・これでよかったの・・・?」


「メリル・・・」


「せっかく、ようやく会えたのに・・・!





僕は・・・首を横に振り、微笑んで答える





「鈴蘭さんと舞蔵さんは待ち続けた最期に
やっと出会えたんだ・・・

きっと 未練は無かったハズだよ。





あんなに、幸せそうな顔をしていたんだもの





「大丈夫だよメリル、僕らのやった事は
決して無駄なんかじゃないから。」



「・・・ジョニー!


胸に飛び込んできた彼女をしっかりと
抱きしめながら、僕らは月を仰ぐ





・・・とても眩しく 優しいその光は


少しだけ、涙でぼんやりと滲んで見えた。








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後書き(管理人出張)


狐狗狸:諸々の要望やら伏線やらひっくるめた
MGS成分増量の[B面]、これで完結です!


カズ:ご拝読感謝だボブルアッ!?


メリル:ご拝読、感謝するわ!


ジョニー:め、メリル?!仮にも副指令を
足蹴にして台詞を奪うのはマズイって!!


神楽:出番の少ないエセ銀ちゃんはこれ位の
扱いで十分アル なっ嫁ゴリラ。


メリル・ジョニー:誰が嫁ゴリラ(だ・よ)!


沖田:こっちはジジババの代わりにバカップルがかっさらってて
画面的に変わり映えがしやしねぇ


月詠:ぬしは青いな、敢えて往年の二人
若き二人の対比を置いて表現しておるんじゃ。


カズ:いや、作者にも管理人にもそんなテクとか
腹積もり全くないから、庇わなくていいか


茂々:そう言う事にしておこうではないか。


(全員 無言で頷く)