・・・屋根に落ちた二人の内
まず見えたのは、とっさに銀さんが
突き立てておいた木刀に胸を貫かれた朧
そして銀さんは落下の衝撃で跳ね飛ばされ
少し離れた場所に 仰向けでめりこんでいた。
・・・・・・戦いは終わったようだな。
「ここは任せた、私は銀時の様子を見に行く」
「ああ・・・行って来い」
やっぱりというか何というか
槍を使い、降りて行ったアイツは
窓から出てきた神楽に踏み台にされる形で墜落した
「踏み台にする必要あった!?」
「・・・あやつも、よくよく災難な女子じゃ。」
下での新八君のツッコミに、月詠が思わずと
いった形で正しい認識を返す。
「まぁ、その内起きるから大丈夫だろう。」
あの二人については、もう心配はいらない
・・・むしろ 問題はここからだ
「かわいい定々(にんぎょう)のピンチに
重い腰をあげたってワケ」
「残念であったな 一橋の犬に異国の男よ
あともう一息ではあったが、その手
天には届かなかったな」
到着した船から、今の俺達と同じ姿の
天導衆の兵士達がぞろぞろと出てくる。
「言ったであろう 私を裁く事は誰にもできない
裁かれるのは貴様らなんだと」
せせら笑う定々に銃弾でもぶち込んで
黙らせてやりたいが
これだけの勢力が相手じゃ、迂闊には動けない。
・・・やがて代表格らしい黒マントの男が
船から降り、こちらに近づいて来た。
第11話 国に集うは
「あえて理由(ワケ)はきくまい。
理由の如何にかかわらず天下の政道たる殿中で
これ以上騒ぎを起こすは 双方 本意ではないはず」
白々しい事を淡々と並べて、こいつらは
予想通り 争いの原因となった定々の身柄を
確保する事を口にする。
「冗談じゃない、定々の身柄もこの星も
お前らの都合のいいように操るつもりだろう」
一歩進みでて、俺は真っ向から代表の男を睨む
「そんな事は国連が・・・
いや、この俺がさせない。」
この星は 俺達地球人のものだ・・・!
だが、天導衆のこの男は
微塵も態度を変えずに 淡々と話を続ける。
「身内の事は身内で片付ける、そなたらの介入は
事をいたずらにあおり争いを生むだけだ。」
「そんな言い訳が通用するとでもっ」
「今成すべきは政道を正す事より
この争いをおさむる事であろう。」
もっともらしい事を言いながら
こちらの主張を一切合財拒否して
奴らは定々の身柄を抑え 投薬を施していく。
「その処遇は十分な詮議の上、慎重に
とりはからうべきではないか・・・
政道を正すためとはいえ
これだけの騒ぎを起こした そなた等の処遇もな」
好き勝手に、言いたい放題言いやがっ
「その必要はござらん」
なおも文句を吐きだそうとした俺に代わり
「これは我々の国で起きた問題
我々で処するが筋というもの。」
「しっ・・・茂々!?」
そう答えたのは・・・将軍様だった。
「しかしよろしいのか
これは貴殿を思っての提案なのだが」
嘲笑うように、汚れ仕事を任せてきた
定々を処断できるのかと奴らは訊ねる。
けれど・・・将軍様は一歩も引かず
「その者らは 主君に剣を向けてなどいない」
"国賊"と呼ばれ、国中を敵に回そうと
俺や銀さん達が護り通そうとしたモノが
「己(おの)が信念という法 己が魂という
主君がため、彼等は戦ったのです。」
幾ら汚名を着せられても・・・
為政者にも将軍にも、何者にも汚せない
強いモノだと 言ってくれた。
「私がそれを罪と定め 彼等を裁くとあらば」
語る最中に挙げられた手を合図に
後ろから近づいて来た真選組や見廻組
メリルやカズ達MSFの面々が
一斉に・・・将軍様へと刀と銃口を向けた。
「暗愚な私(しゅくん)に剣を向けた
我が軍は 全て罪人にござる」
「しっ・・・茂々貴様ぁぁぁぁ!!」
唖然とする俺や定々に構わず
彼は、罪があるのは俺達ではなく
主君となりえなかった将軍家だと口にして
「伯父上 あなたを止められなかった私も
・・・責を負う覚悟はできております。」
自らの覚悟の証―"解官証書"を床へ放る
「しっ・・・茂々・・・
まさか貴様 将軍を辞する気・・・」
「将軍様、いや茂々さん・・・!」
きっと俺の表情は、膝を崩して証書を拾った
定々とさして変わらなかっただろう。
茂々さんは・・・いや将軍様は
その名に相応しい佇まいで、凛然と言い放つ
「お引きとりを
ここは 侍の国にござる」
・・・・・・しばしの沈黙を挟んで
「・・・貴殿がそこまで申されるなら
我々は、これにて失礼させていただこう。」
天導衆の連中は、定々をその場に残し
船ごと撤退してゆく
登りだした朝の光が・・・江戸城を照らし
長かった戦いの終わりを告げた。
呆けたようになった定々の身柄は獄舎へ移され
MSFへしかるべき手続きで引き渡されるまで
江戸の警察機構と、合同で警備を務める事となり
銀さんは新八君や神楽に連れられて
万事屋へと戻っていき自宅療養
は屋根から拾われ メリルらの処置で
ほどなく蘇生して家へと帰った
そして俺は・・・
真選組や見廻組、松平さん達同様に
カズやスネークと連携を取りつつ指示を出し
受け持っていた本来の任務と並行して
上記の手続きや警備、戦闘の後始末に奔走
一息つけたのは 夜になってからだった
「茂々さん・・・大丈夫だろうか」
あの時、天導衆の連中が撤退した直後に
俺は彼へと問いかけたが
『その覚悟は立派だが、何も将軍を辞めずとも』
『心遣い痛み入る・・・だが、これは
余が自ら決めた事なのだ。』
決して変える事の出来ない"侍の魂"が
宿った瞳を見て
・・・それ以上何も言えなくなった
それでも一橋派の連中が
彼の辞任を機に、都合のいい政権を
ぶち上げてこの国を操るのが目に見えていて
成り行きながら 彼の辞職の一端を担った俺は
何かできないだろうかと、一日中
ずっと考えを巡らせつづk
「っと、メールか・・・」
[入院しててヒマだお〜寂しす(T0T)
キンちゃんとお話ししたいです、お返事ください]
スマホの画面のアドレスと 何十回目かの
その文面に最早ため息しかでない。
事態が収拾され、当然ながら佐々木は
病院へと逆戻りしたのだが
ほぼ一日中 微妙に内容を変えたメールが
やたらと俺のスマホに送られてくる
・・・多分、も同じ目にあってんだろうな
むしろ携帯嫌いのトラウマが増えるんじゃないだろうか
こんだけメール送られまくると
「てゆうか変えたアドレスもスマホの番号も
教えた覚え 無いんだが・・・」
ぼやくこちらにお構いなしに
新着メールがまた一通
[キンちゃんキンちゃん!ぜひぜひ伝えたい
ニュースがあるんだお]
アンド、読んでる途中で間髪入れず電話
「しつっっけぇよ!用件は何だ!!」
『すみませんね、仮にも共同戦線を張ったと
いうのにお見舞いにも来れない程お忙しい中』
「そう思うならメール攻撃をやめてくれ
・・・もういっそメール散弾と言うべきか?」
恨みがましさをありったけ込めてやるが
電話口の声は、まったくもって
ムカつくぐらいに落ち着き払って答える。
『いえ、フェアリーな真選組のお二人が
お見舞いに来た際にもお話したので
せっかくだしさんにもお伝えしておこうかと』
フェアリーって何だよ・・・よりによって
あの人らに、もっとも似合わねぇ呼び名だな
とか考えていたら無線まで鳴り出して
『ジャック!大変だ!』
「ちょっと待ってろ・・・どうしたカズ」
『屋根にあった朧の死体が、消えたんだ!』
数秒ほど、俺は両手に通信機器を持った
奇妙な状態で固まっていた。
―――――――――――――――――――――
"クライアントがとっ捕まった"と情報が入り
気になったお偉いさんからの指令で
俺は天導衆とやらの船へ潜入
「己の地位に執着するあまり、自らの足元が
崩れゆく音にも気づかなんだか。」
「こうなっては奴の復権は最早望めまい」
「元より一橋の若造に遅れをとる愚物に
執政者としての価値はない。」
散々に狸ジジイを叩く、高みの見物気取りの連中を
闇に潜んで眺めていた
「・・・いや"雷電"は今後の我らにとって
障害となりうるだろう。」
やるねぇ・・・これであの男も名実ともに
こいつらのブラックリストに載ったってワケだ。
「奴に目を付けられるとは面倒な・・・」
「使えぬ傀儡(にんぎょう)は早々に
切り捨てるべきだったのだ」
「傀儡(にんぎょう)としての価値はなくとも
アレにはまだ、餌としての価値があります」
だだっぴろい部屋の中央、円形の床が
競り上がり…膝をついた男が一人 現れる
「帰ったか 天(あま)が遣い八尺烏よ」
「遅れて申し訳ありません、致命を避けるため
歪めた経絡の回復に手間取りまして」
確か・・・こいつとやり合ったのは
"白夜叉"と呼ばれた攘夷志士だったな。
侍も、なかなかやるじゃねぇか
「定々は攘夷戦争暗部の象徴
アレにしか釣れぬ獲物もあるという事です。」
一橋派はクライアント同様 傀儡で
奴らを擁し中央に近づく"真の敵"を
炙り出すためにクライアントが必要だ、と
澄ましたツラで 奈落の首領は進言する。
「なるほど、ウチのクライアントは
アンタらの餌に過ぎなかったと・・・ねえ。」
「何奴!?」
声と共に無数の針がこちらに放たれるが
刀でちょいと軌道をずらして弾いてやれば
最小限の動きだけで、事足りた。
「そう慌てなさんなって、俺はあんたらと
やり合うつもりはこれっぽっちもない。」
「朧の針を全て防ぐとは・・・何者だ?」
闇に身を隠したままで、俺は答える。
「そうだな・・・
デスペラードとだけ名乗っておこうか?」
「デスペラード・・・"無法者"か」
「我等の船に、奇妙なモノを
紛れ込ませたのも貴様らの差し金か。」
「悪いな、クライアントたっての依頼でね」
わずかにどよめく上のヤツらとは逆に
烏と呼ばれた男は 何の感情も見せずに言う。
「紅き刀を持つ男よ・・・貴様も聞いていたと
思うが、奴でしか連れぬ獲物があるのだ。」
「お前さんに怪我を負わせた男の同類、か?」
返事はないが、そう間違っちゃいないようだ
・・・実際に目にしたワケじゃないが
どんなヤツかは正直興味がある。
だが、アゴをさすりながら俺は聞き返す。
「そうか・・・だが、その餌
浮きはちゃんとついてるか?」
「何?」
「この状況だ、もうとっくに
獲物が食らいついてるかもしれないぞ?」
―――――――――――――――――――――
俺達の姿を目にして・・・牢の中にいた
奴の顔に、生気が戻ってきた。
「随分と遅かったではないか 待ちわびたぞ」
檻へと近づくにつれ、定々は自らの復権を確信して
外へ連れ出すよう言い始める
「誰にも・・・天にも!!
私を裁く事などできはしな・・・い?」
そう・・・貴様を裁くのは将軍でも天でもない
刀を腹に突き刺され、膝から崩れ落ちた
定々の真正面に佇んで
「お前を裁くのは このオレだ」
笠を取った高杉が・・・殺意に満ちた顔を晒す。
「きっ・・・貴様はぁぁぁぁ!!」
「思い出す必要はねぇよ、いずれ天導衆・・・
ふざけた烏ども・・・いや」
少しでも逃げようと後退りする定々だが
「世界の首ひっさげて
地獄(そっち)へいくからよぉ」
高杉は・・・ゆっくりと距離を詰めながら
「先生に よろしくな」
振り上げた刀を、脳天へと打ち下ろした。
・・・予定通りに 他の連中が
辿りつく前に現場を離れてから
着替え終えた高杉は、俺へと問いかける。
「一ついいか・・・
何故テメェは鬼兵隊(おれたち)に協力した?」
SAAの点検を二丁とも行いながら
小さく笑って、こう返す
「俺も付き合ってみたくなったのさ
貴様らのいう"大法螺"とやらにな。」
「・・・テメェも酔狂な奴だ。
ビッグ・ママ(あの女)と同じ眼をしてらぁ」
同じように、高杉も口角を釣り上げ
「まあいいぜ、テメェがの敵だろうが
関係なく 俺ぁただ壊すだけだ。」
笠を目深にかぶり・・・どこかへと去っていった。
奴が俺に対して思っているのと同様に
これもまた、高杉とは行く先が並んでいる
協力関係にしか過ぎない。
「世界は、今こそ変わるべきだ。」
呟いて俺は、無線を手に取り―
――――――――――――――――――――――――
後書き(管理人出張)
狐狗狸:6話以来の謎の人物の登場ですが
・・・正直、Rやった人には誰だかモロバレですな
銀時:つーかパチスロ何やってんの?
カズ:それは今後のお楽しみってヤツだぜ銀時?
ま〜作者の話を気長に待っとけ、なっ
佐々木:とはいえ肝心の退助さんの
音沙汰がないのが気がかりですがね。
土方:連絡らしい連絡も寄越さねぇし
まさか・・・消されたんじゃあるめぇな
高杉:おいおい、物騒なこったな。
のぶめ:口封じなんて穏やかじゃないわね。
スネーク:お前らが言うな。