定々が、城の頂上へ現れた脱出艇で
逃亡してしまう前に何としても捕えるため
将軍と一緒に城へと全力疾走していた僕らは
浮かんでいた船が、爆発を起こして
破片を飛び散らせるのを見て立ちすくむ
「あっ あれは!!」
「メリル・・・!」
ひょっとして、ジャック達が・・・!
同じ事を考えてたみたいで、メリルやスネークも
深刻な顔で頷いている。
アレくらいで彼らが死ぬなんて思えない
「まっ・・・まさか、アイツ・・・!!」
けど、船から上がる煙はひどく
こんなに遠くからでも爆発のすさまじさが
ダイレクトに伝わってくる。
「、、ツッキー・・・!」
青ざめた顔した万事屋二人の視線も
いつ墜落してもおかしくない様子の船が
側にある 城の屋根へ釘付けになっていた。
「ぎっ 銀さぁぁぁぁん!!」
第10話 違えぬモノ
爆発により、船がひどく揺れた時は
墜落するんじゃないかと一瞬焦った
すさまじい煙を上げているせいで
下にいる銀さんは見えないが
おそらく俺達同様に無事だろう。にしても
「信女のヤツ、派手な事を・・・」
「まったくじゃ わっちらでなくば
共倒れになっている所でありんす。」
あーうん・・・だと下手すればこれで
三途に行く危険性が微レ存なんだが
っと、今は余計な事を考えるのは後だ。
「もう逃げられはしないぞ定々公
お前の目論見は、これまでだ」
この手で撃ち殺せないのは残念だが
俺の役目は、この男をカズ達へ引き渡し
しかるべき場へ送り届ける事だけだ。
「・・・!あれを見なんし!」
不意に月詠が叫ぶ
つられて視線を向ければ・・・
この船へと近づいてくる 幾つもの戦艦が見えた。
「まさか、あの船は・・・!」
「てっ・・・天導衆・・・まっ・・・
まさか馬鹿騒ぎを聞きつけ自ら・・・!!」
くそっ、手持ちの武器じゃとてもじゃないが
ヤツらの船の撃退なんて出来ない!
所か手を出せばここが戦場になってしまう・・・
カズ達が来るまで、いや来たとしても
このままでは定々が天導衆の手に渡る事は避けられない
「お・・・終わりだ・・・
きっ貴様らは もう終わりだぁぁぁぁ!!」
・・・奴らに渡すくらいなら
いっそこの男を、今ここで
脳天へ定めた銃の引き金へ力を入れた俺を
止めたのは 再び起きた爆発だった。
あわてて見下ろせば
噴射口から起こる爆風を防ぐ朧を目にして
連鎖して引き起こされた爆発の振動と
熱風とがこちらにも伝わってきた。
「銀さん!?一体何を・・・」
「視界を封じ、あの男の針を防ぐ気じゃろう」
なるほど・・・理屈は分かるが
奴ほどの相手にそれが通用するのか?
だが、収まりようのない黒煙の合間から
一瞬だけ銀さんと目が合って
・・・俺も腹を決めた。
「加勢は、無駄じゃろうな。」
月詠も また彼の意図を汲み取っていた。
「加勢できないなら、できないなりに
この状況を利用してやろうじゃないか。」
いまだに壁に張り付いたままだった定々を
引っぺがして 抱え上げる。
「きっ貴様ら!何をする気「黙りんす」
言葉半ばで口にねじ込まれたクナイで
定々を沈黙させ
煙に紛れて船を下り 針を打たれて
佇んでいる朧へと接近する。
・・・一度受けた技を返すだなんて
あの人も本当、器用なこった
「ここが鬼(おれ)と化物(おまえ)の
地獄(デートばしょ)だろーがよ」
あわよくば攻撃の機会を狙ってはいたが・・・
気配に気づいた朧が定々を蹴り飛ばした瞬間
遠くへ退避するのがやっとだった。
「オレの技がオレに通ずるとでも」
悔しいが・・・奴の実力は本物だ
「我が暗殺術(わざ)は敵の経絡を読み、攻めるものではない
・・・己(おの)が経絡を操り
「剄」を最大限に引き出すもの」
言いながら体に刺さる針を引き抜いていた朧が
定々の姿を認めた瞬間 足を止める。
「そのへんにしておけよ」
呼びかけて奴の背後へ近づいていく
銀さんと目配せをして、俺も口を開く。
「確かに地獄じゃ足りない奴だが」
「てめぇで作った法で裁かれるが
そいつにゃ似合いだ」
「きさっ・・・」
突きいれられた木刀によって、屋根へと
吹っ飛ばされた朧を銀さんが追う
動けはしないだろうが
俺と月詠は、定々から目を離す事が出来ず
その場に残った。
右肩へ手の平の打撃を受けた直後
振りかぶった銀さんの右腕が、目に見えて
動きを鈍らせて・・・木刀を落とす
「経穴を突くは毒針だけではないわ!!」
朧の奴、素手で経穴を叩き込めるのか!?
足の裏へ手の平が打ち付けられた瞬間
銀さんの左脚の傷口が、激しく出血する。
だがそれに構わず左手に握られた木刀が
奴の左肩を貫いた
両足で組み付いた朧が銀さんを
屋根へ叩き落とすけれど
下から突き上げられた木刀が屋根を壊して
足場を無くした朧が、再び宙へと放り出され
「殿!銀時は・・・!?」
気づけば船から脱出した信女とが
俺達の側へと駆け寄ってきていた。
「あそこだ」
目で示して、二人も屋根を見下ろす
上下が入れ替わった銀さんの両肩と足へ
針がいくつも撃ち込まれ
愛用の木刀が 手を離れた
「まずい」
「「銀時!」」
「終わりだぁぁぁぁ!!
白夜叉あああ!!」
壁を蹴り 落下に加速を乗せて
右手に刀を握りしめて朧が迫ってゆく。
「銀さん・・・!!」
落ちてゆく二人の身体が
ひどく・・・ひどくゆっくりに見えた。
こんな距離からじゃロクに見えず
聞こえるはずがないのに
銀さんの身体がきしむ音が
強い決意と、悲しみの滲んだ表情が
「あぁ 約束だぜ」
動かないはずの左腕を上げて―
俺達の"約束"を絡ませた五本の指のうち
小指を持ち上げて笑ったのが
ハッキリと、分かった。
空中へと投げ出されていた木刀を握り直し
「先生ぇぇぇぇえええ!!」
二人の刃がぶつかり合って 根元から
刃を折り飛ばされて砕けた。
―――――――――――――――――――――
一度目の爆発から、さして間を置かずに
引き起こされる爆発や
すさまじい破壊音を伴って響き渡る振動を
将軍の茂々さんを始めとする俺達全員が
最上階を目指しながら感じていた
「いやはや不謹慎ながら壮観ですね
真選組だけでなく米国の方々と肩を並べ
将軍(うえ)様の供回りを務められるとは」
この男と会うのは、ジャックに連れられた
真選組との合同演習以来だが
・・・とてもじゃないが
重傷を負った怪我人とは思えんな
銀時やもそうだが
日本人はひょっとして、案外頑丈に出来てんのか?
「せっかくですし、今後のために
副司令官殿のメアドを教えていただいても」
「いやジャックのだけで十分だろ」
「メル友のメル友は
みんなメル友と言うじゃありませんか。」
言わねーよ!てゆかコラ!
勝手に人のスマホをいじるんじゃない!!
「どんだけがっついてるアルかお前
やで満足しとけヨ」
「チャイナ、それ以上言ってやるねぃ
佐々木の旦那は基本ぼっちなんでさぁ」
「失礼ですね 私はエリートとして
仕事上でも役立つよう交流の場を広げようと」
「今やる事じゃねぇだろ!!」
怒鳴る土方をなだめている隙に
奴の手から 俺のスマホを取り返す。
・・・一応後でアドレス変えとこ
「おいカズ、このままみすみす定々を
奴らにもっていかせる気か?」
「そのつもりは毛頭ないが・・・」
スネークの問いへ、俺は言葉を詰まらせる。
俺達が城へ侵入してほどなく
無線から"複数の戦艦が接近した"との
報告を受け取ったばかりだ
まず間違いなく 天導衆の援軍に違いない
正直、奴らに介入される前に定々を
確保して連行したかったが
今となってはそれも困難だろう・・・
「あ、アレは・・・!」
「どうした新八く」
声を上げた新八とジョニーにつられて
俺達が窓の外へと目を向ければ
砕けた刀の刃を手にした銀時と
もう一人の、白髪の男が
闘いながら下へと落ちてゆくのが一瞬見えた。
「「銀(さん・ちゃん)!!」」
少し間を置いて・・・下の方で何かが砕ける
すさまじい音がして
銀時達が、屋根へ墜落した衝撃が城を揺るがす。
不安でいてもたってもいられない、と
言わんばかりの顔をしている二人へ
「・・・行くがよい」
将軍が 静かに命じた。
「ここから先は余達に任せよ。」
「だな、お前らはあの野郎をとっとと
迎えに行って来い。」
「動けない凡人が増えると
エリートの足手まといとなりますからね。」
「あの男が心配なんでしょ?行きなさい。」
他のヤツらが次々と口にする言葉に背を押され
頷いた二人は、すぐに引き返していく。
・・・見届けて 俺達は再び
頂上を目指して走り始める。
「まさかとは思うが・・・
あの男、死んだんじゃないだろうな?」
思わず呟いた言葉に、佐々木と土方が
揃ってこちらを見て・・・笑ってた。
「まさか」
「槍ムスメやよかしぶといあの野郎が
あれぐれぇでくたばるかよ。」
・・・我ながらバカなこと言ったもんだ
ピースウォーカーやZEKEと正面切って
やり合ったあの侍が
死ぬだなんて、到底思えやしない。
「・・・だよな。」
俺もまた 笑ってそれに同意した。
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後書き(管理人出張)
狐狗狸:きっと原作でも、将ちゃん先頭にみんなが上に向かう途中
こんなやり取りがあったんじゃないかな〜と
メリル:ありえないとは・・・言いきれないわね。
スネーク:奴らが暗躍していたとはいえ今回
俺達は後手に回りすぎているな・・・気に入らん。
カズ:全くだな。ついでにさっきから
佐々木からのメールが止まらないんだが
メリル:知らないわよそんなの
アドレス変えるかメール拒否しなさいよ
カズ:変えても拒否しても何故か届くんだよ!
ジョニー:何それこっわ!!
スネーク:呪いのメールか何かか?
狐狗狸:恐るべし、サブちゃんの執ね
「無視しないで下さい傷つきますので」