源外さんの家で 林博士が殺害された映像を
目の当たりにしていた俺達は


更にとんでもない光景を目撃する







映像の中で床に横たわっていた林博士が・・・





身体を動かし、ゆっくりと起き上がった







「「な・・・・・!?」」





声も出ず映像に釘付けになる俺達に





『な・・・何をしている・・・・芙蓉・・・・・』





画面の林博士はこちら・・・いや、彼を見ている
タマを見つめながら呼びかける







『早く・・・・早く逃げろ・・・・・』





血だらけのその身体が、唐突に発光し





『迎えにいく・・・・・だから・・・・・・今は逃げろ。』


光が収まってそこにいたのは・・・万事屋で
俺を蹴り飛ばした あの男の機械だった







「流山は・・・まだ生きている・・・」







源外さんの呟きは小さかったが、俺達の耳には確実に届いた





「あの時の機械が・・・・林博士だったのか・・・・」


「じいさん、何でこんな映像持ってんだよ・・」





確かにそうだ 様子からしたらこれはタマ・・・
いや、芙蓉が見たことになる。


こんな映像を何処で・・・・・





「いや、俺もこの嬢ちゃんから今しがた聞いた所よ。」


どういう事だと訊ねる前に映像が乱れ、





今度は・・・・タマが写った







「「「タマ!?」」」











第三話 犯人は大抵近しいアイツ











「近くに電脳中枢管が落ちていてな
新八がギリギリで投げ込んだんだろう。」





なるほど・・・ただで起きなかったか 新八君







『源外様と新八様のおかげで私のデータが護られ、
記憶を蘇らせることが出来ました。』





画面の中のタマは、淡々と林博士の真意を語りだした。









娘の死と共に その人格データを芙蓉・・・
いやタマに宿らせ、彼はプロジェクトを推し進め





ついにはその実験に自分も実験体となり、


命を落としたことと引き換えに 博士の人格データを
持った一番人間に近い機械・・・・・・戸―號丸弐号


俺が万事屋で戦った機械になったという事らしい・・・





そして、この騒動を使い各地に散らばった
機械家政婦を全部回収し一箇所に集めようとしている。







・・・それなら、副主任と他の研究員は用済みとなり
今頃 処分されてるかもしれない。









銀さんは項垂れたままで口を開いた





「機械家政婦集めて、メイド喫茶でも開こうってのか?」


「その冗談がホントであってくれればいいのだが・・・」


『病弱な芙蓉様のために 機械を造ったのが最初でした。
その時の私はただのおもちゃでした。』







タマが、今度は自分の生い立ちを語りだす







『博士が変わりだしたのは芙蓉様の先が
長くないことを察してからでした。


芙蓉様に永遠の命をと あのような無茶な実験を
試みてあのような結果に・・・』





死んだ・・・・ということか・・・・無理もない







顔を上げた銀さんが 真面目な顔で話し出す。





「娘のために話し相手を、娘のために永遠の命を、
そして今度は娘に再び命を・・・


そして今度は娘のために兵隊引き連れて革命かい。」


「確かに、今までの話からするとそうなるな」


「ったく・・・大層な親父さんだねぇ。」


「親父は娘に弱いアル。」


「分かってんじゃねえか。」





星海坊主のことを指してると思い、俺は少し笑った。







『私は博士のために、博士の言うままに
実験に協力しただけです。


でもあれを博士とは思えない。
あれは・・・・博士の夢の残骸です。


「博士のいいなりだったんだろうけど
・・・疑問に思ったことはないのか?」


『はい、でも私のしたことは間違っていたのでしょうか?
私には分かりません・・・博士が何故自分は
機械になりたいと言っていたのか。』


「・・・いるだろ?お前の大事な連中なら
・・・いるだろ?お前の中に







静かに 銀さんが画面のタマを見据えて言う。







『種子のことですか?』


違げーよ。んな目に見えねえデータだの
数字の羅列だの、リセット押しながら電源切らなきゃ
消えちまいそうもんじゃねぇ。」







ファミコンの事を言っているようだが・・・・





そういう言い回しで 伝えようとしてるのか







「本当に大事な記憶ってのはな、
何回電源切れようがブレーカー落ちようが飛ばねーよ。」






銀さんの言葉にタマはじっと視線を送り―







プツンと周りの電気が消える


・・・・・・ホントにブレーカーが落ちたようだ





「あれ?」


「何アルか?」


「ブレーカーが落ちたか。
やっぱ相当電気食うみてぇだなこの機械。」


あれ?なんか煙でてない?」


「いかんな、容量がでかすぎたか。
やっぱあり合わせの機械じゃ持たなかったぜ。」


「オイオイオイまた記憶飛んだんじゃねーのか?」


「いやまさか・・・・そう簡単に・・・・」





神楽がTVから電脳中枢管を引っこ抜きながら言う。





「大丈夫アル、本当に大事な記憶ってなぁ
ブレーカー落ちようが消えねーアルぜ。」


「うぜーんだけどこの娘殴っていい?」


「家政婦の部品があれば何とかなるんじゃないか?」


「簡単に言うけどなぁ、そんな都合よく
部品が手に入るわけ・・・・」


「ワン!」





咆えた声をたどると、そこに俺と戦った
ピンク髪の家政婦の頭を転がしている定春の姿が。







『おそうじですの〜、おそうじですの〜。』


でかした!ポチ!!これなら・・・・」


「ポチじゃない!定春アル!!」









定春の元へ集う銀さん達に釣られて外へ出ると
辺りはもう暗くなっていた





月明かりが異様にキレイに・・・・・・・・・ん?







「月明かりしか・・・・・・ねえ。」


「どういうことだ?都市停電?」


「街じゅう真っ暗アル。」





何の前触れも無く後のテレビが映りだし、
そこに写っていたのは・・・機械となった林博士だった。





「野郎!」


「どういうことなんだ・・・・これは・・・・」







よく見ると・・・・奴の後に機械家政婦に
拘束された新八君の姿がある





「「「新八(君)!!」」」







更に家政婦達の背後に月光らしき足も・・・


量産に成功していたのか・・・!









林博士の演説が 始まった。







『江戸のエネルギー供給源は抑えた。
もうじきこの街は機械によって制圧される


怪我をしたくない者は大人しく機械の支配下に降りるべし


機械が人に支配させる時代は終わった。


我等が御霊、帰還せし時 機械は人に・・・
いや、神に等しき存在となる


この御霊戻らぬことあらば・・・
生贄の血が流るることになろうぞ。








要するに・・・・・タマの種子を返さなければ
新八君を殺すということか・・・・・







「こりゃ・・・名指しで喧嘩売られたようモンだな。」


「月光のこともある。俺も行こう。


上等アル、ミタマだかキンタマだか
知らないけど届けにいってやるネ。」





俺達が武器を取り出し 構えた所に







「ミタマでもキンタマでもありません。タマです。」





振り向けば、ピンク髪家政婦の姿をした
タマが・・・そこにいた。







「嫌だっつってもふん縛ってでも連れてくが
一応聞こう」


「ありましたよ・・・思い出したのです」


「・・・何をだ?」


「はるか昔、私が目覚めた時の記憶
油まみれの顔で博士はこう言いました。


娘に笑顔をと・・・







そうか・・・タマが生まれたのは
大切な娘の笑顔を見るために・・・・・・







「どれだけ機能を拡張し姿を変えようとも忘れません。
今の博士を見て 芙蓉様は笑ってくれると思いますか?」





みんなの答えは一つだった。







そんなことは 絶対有り得ない







「いくか・・・・その笑顔ってやつを取り戻しに。」


「ああ、俺もこいつを使う。」





そう言って取り出したパトリオットを 三人は
まじまじ見つめ、それぞれが口々に





「なんだその銃は?見たことねえな?」


「おおー、それの母ちゃんが持ってた
ネオアームストロングサイクロンジェット
アームストロング砲
じゃねえか。」


「こっちは完成度が低いアル。」


「当たり前だ!
あんな卑猥な大砲と一緒にすんじゃねえぇぇ!!」



「とにかくよぉ、お前さんのバイクじゃ
包囲網は突破出きんだろ。ちょっと待ってろ。」







源外さんは一旦奥の方へ引っ込むと





扉が開いて 戦車らしきものと共に現れた。







「うおっスゲェなじいさん」


「当たりめぇよ!どうだ こいつなら
相当馬力があんぞぉぉ!」



「そうだな、見直したよ源外さん!」





俺の言葉が終わらない内に、無線が入ってきた。





『こちらメリル。応答して。』


「メリルか、そっちはどうだ?」


『全然ダメよ・・・警戒が厚すぎるわ!
とてもじゃないけどターミナルの潜入は無理ね。』


「大丈夫だ、こちらでなんとかする。」


『何とかって・・・・どうする気よ?』


「こっちには心強い味方がいるから心配ない。


メリル達は奉行所の人の手助けをしてやってくれ。
万が一月光が出たら対処できない。」


『わかったわ。気をつけて。』


「ああ。」







無線を切った瞬間、外から大量の足音が聞こえてくる。









「生体反応察知、この家屋に隠れている者は
速やかに・・・・・・」



まずい!連中もうきやがった!」


「早く乗り込め!銀の字!!」


「源外さん!これで敵を吹き飛ばさせてもらうぞ!」





俺はスティンガーを構えた。


バイクに積んであったバレットとパトリオットは
既にこの戦車に積み替え済みだ





「いいぞ!思い切りやっちまえぇぇい!!」





言われなくとも、既に俺はスティンガーを放っていた


外にいた機械家政婦は悲鳴を上げて吹っ飛ぶ





「っしゃいいぞ!出せ!!」







源外さんは戦車を急加速させ、林博士のいる
ターミナルの地下へ向かった。











一方、メリル達は・・・・・・
苦戦している奉行所と見廻組の援護をしていた。







「カバーしてくれ!!」


「おう!!」





エドとジョナサンが奉行所の仕掛けた障害物を使い、
掛け声を上げながら機械達に銃撃を加える。


弱点を見抜いたらしく、着実に敵を排除していた。







アキバ!外すんじゃないわよ!」


「は・・・はい!!」





メリルに怒鳴られながらもジョニーは月光の
頭脳部分をバレットで狙い撃ち・・・


見事 一撃で再起不能にさせた。







「やれば出来るじゃない。
雑魚は任せてあなたは月光を撃つのよ!」


「了解!!」







そういうとメリルは愛用銃 デザートイーグルで
次々に群れ成す機械家政婦を倒していく。







敵の攻撃に間が出来たタイミングを見計らい


メリルはに無線を入れる。





「ジャック、聞こえる?」


『メリルか!どうした!?』


「今のうちに月光の弱点を教えるわ


バレットで撃つなら頭にある半球のカメラを撃って。
そこが月光の頭脳よ。


もしバレットがないなら足を撃って転ばせてから
首を狙って。そこが一番装甲が薄いし、頭脳に流れる
ナノペーストを遮断することが出来るわ。」


『分かった!助かるよ・・・!
こちらにも襲撃が来ている、無茶するなよ!


「あなたに言われたくないわ・・・
それじゃあ。無事で・・・」







メリルは無線を切り、誰にも聞こえない声量で呟く。







「ジャック、まだ死なないでね・・・・・
軍の内通者には あなたに立ち会ってもらいたいから・・・」








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後書き(退助様サイド)


退助「さあ、林博士の正体も明かされ
クライマックスを迎えつつあります。」


銀時「つーかあの女共、江戸で活動させていいのかよ?」


退助「いいじゃないの?
助けてくれたからお咎め無しっつーことで」


新八「真選組が黙っちゃいないと思うけど・・・・」


神楽「ていうか潜入出来てないのに
なんで内通者のことが分かってたアルか?」


メリル「それは林博士の研究所にあった資料を
見て分かったの・・・すごい意外な人物だったわ。」


新八「へえ、誰なんです?」


メリル「それ言っちゃうと面白くないんだけど・・・
強いて言うなら自分の椅子にしか興味がない最低野郎よ。」


銀時「へえ、その椅子そんなに具合がいいの?
俺にも一個分けて欲しいなぁ。」


退助「違うから!本物の椅子じゃないから!!
階級とか地位とかの椅子のこと!」



メリル「そう、そのせいで傷ついた人もいたからね・・・
ジャックには一度アメリカに来てもらうわ。」


退助「そうした方がよさそうですな。」