『守らないと私、出ちゃうかも・・・・』


「・・・・どうだ?」


「・・・・全然怖くないわ。これがどうかしたの?」





ゴミ分別のCMをモニター越しに見せてみたが
パラメディックは平然としていた。





B級映画マニアの上にコスプレ衣装まで
持っているくらいだから、


「ウケると思ってたんだがなあ・・・・」


「これより『世界残酷物語』の方が怖かったわよ?
案外昔の童話ってグロイのよ 例えば―」


「いや聞いてないし聞きたくないから」





しばらく夢に見そうな映像を予測し、語りを止める





「でも、江戸にもこういうホラーっぽいものが
あるなんて驚きね。」


「そりゃあるだろ、妖怪の話はアジアの発祥だからな。」


「興味深いわ 後で調べてみようっと・・・
あ、そうだ 今度江戸の食べ物何か送ってくれない?」


「べ、別にいいけど・・・・・」


「じゃあ楽しみにしてるわね。」





彼女は無線ごしに微笑み そこで通信は終了した。







今更ながらだが・・・





FOXの隊員は一様に 戦闘力はもちろんあらゆる分野に
ずば抜けて高い能力を持っている分、変人揃いだ。


先程のパラメディックとて医療関係において
右に出るものはいないのに嗜好が人とズレてるし


オタコンより新鋭兵器開発の技術に特化している
シギントは、デザインに対して妥協を全くしないもんだから


おかげで数ヶ月前に頼んでおいたスタンナイフはまだ来ない。





・・・・・・このままじゃ年越しちまうぞ







他にも色々アレな奴等はいるが・・・上げていると
前フリが長くなりすぎるし話しきれないのでここまで。







「どうだった?」


「やっぱりパラメディックのセンスには付いていけんよ。」





笑いかけるに肩を竦めた所、





「おーい、さーん。これ、どうにかしてくんねぇ?」





勝手に家のドアを開け、銀さんがぼそぼそと
しゃべりながら入ってきた。







「なんだ銀さん、こんな朝早・・・・・って・・・・」


「「うわぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
ちょっそれ何生首持ってきてんのぉぉぉぉ!?」」






俺達は血の気の引いた顔で同時に叫び
銀さんの手にある生首を指差す。







「いや話せば長いんだけどよーとにかく何とかしてくれよ
お前なら何とかなるだろ?源外のじいさん全然
当てにならなくてよー参ったぜコレ。」


「何言ってるかさっぱり意味がわからないし!
そもそも全然話が見えてこねーよ!!」












第一話 B級ホラーな状況はある意味起こりやすい











一旦落ち着いて事情を改めて問いただした所





どうやら夜中、家のゴミ捨て場の近くで見つけた
機械家政婦『エツコちゃん』の首を神楽が拾ってきてしまい


源外と言う機械工のおじいさんに胴体追加を頼んだが、


結局金がなく胴体追加を断念し 現状をどうにかすべく
俺のところに来た・・・・と言うことらしい。





「生憎だが家政婦は専門外だ・・・オタコンに聞いてみるか?」


「あー誰でもいいからそうしてくれよ
さっきから殺人者の気分でしょうがねぇんだよ。」





まぁ生首なんて普通はそう転がってないからな・・・・





俺は、周波数をオタコンのものに合わせ
無線を開始する。







どうしたんだい?こんな夜遅く』


「え?・・・あ、そうか。
時差の関係でそっちは真夜中か。すまんな。」


『気にしないでいいよ。ちょっとゴタゴタしてて
今寝ようとしてたところだから。』


「ゴタゴタ?何かあったのか?」


『ゴメンよジャック・・・今は教えることは出来ない。
どうやら機密事項らしいんだ。』





・・・気になる所ではあるが、今はそれよりも
先に伝えるべき用件があるからな







「いきなりな話になるが・・・・・・・」







俺はオタコンに今までの経緯を話した。







首だけ残した機械家政婦か・・・・・
悪いけどそれだけじゃなんとも言えないな


一旦起動して様子を見てもらえないかな?
それで 何か分かるかもしれないし』


「起動か・・・・分かった、何かあり次第連絡する。
すまないな。ゆっくり休んでくれ。」


『ああ、寝不足になったら駄目だからね。おやすみ。』







無線を切り、俺と銀さんは風呂敷で隠した
機械家政婦の頭部を持って 万事屋へ集いなおした。







起動ったってどうすりゃいいんだよ。」


「スイッチか何かあるはずだが・・・・」


「乳首だったら終わりだな。起動できねえぞ。」


「あんたの頭がおしまいだよ・・・・・」


「おいー、起きろー。」





言いながら、神楽が機械の頭にチョップを一発





「おいおい、あんまり強く叩くなよ。
精密機械だったら今のでおシャカだぞ?」


「平気ね TVも左斜め四十五度で大抵直るアル」


「神楽ちゃん、これ頭だけだけどTVなんかより
はるかに高いモンだからね?」





もう一度叩こうとする神楽を新八君が諌める。







「まさか・・・・この額のほくろか?」





じっと頭を見つめていた銀さんは、おもむろに
ホクロを指で押し





「ドルルルドルルルドルルルドゥーン。」





正解だったらしく 家政婦が起動した。







「うわ!」


「ついた!」





つーか起動音どこかで聞いた覚えが・・・・







「申し訳ありませんが、あなたの冒険の書1
冒険の書2 冒険の書3は消えました。」


「何この始まり方!?ドラクエ!?」


「つーか冒険の書ってどういうこった・・・」


「きっと冒険してたネ。」


「新しく冒険の書を作ってください。」







作れって・・・・









オタコン。俺たちとんでもない機械を拾ったらしい。





こんな・・・・・変な機械は初めてだ・・・・
嫌な意味でだが。







変なだけでなく、欠陥もあるようで
色々とおかしな動作をした。







「復活の呪文をメモしてください
[もががずぼろそくされまぐろばろみ]


「今時パスワード形式!?メモ帳!早くメモ帳!!」


「プツン」







・・・・・ホントに何だよこの機械





見せる、いや報告しただけでもオタコンなら
すごい反応を返してきそうだが・・・


無性に何も言わないでおきたい気がすごくする。









「駄目だなこりゃ・・・これじゃ売れねーや。」


「売る気だったのかよ銀さん」


「たりめーだろ そこそこ高ぇ機械なんだし
ちったぁ俺の懐も潤してぇじゃねぇか」


「銀ちゃんの場合、お金入ってもすぐパチンコで
スッテンテンになって終わりヨ」


「どうですか?もういっそ街角でストレスの
溜まってる人に好きなだけ殴らせるとか」


「まー落ち着けよ新八君」







宥めつつ 俺は何の気なしにTVのスイッチを入れる





タイミングよくニュースが入り、





『現場の結野さん。結野アナ。


『はい!現場の結野です!』





銀さんが応援している朝のニュースアナウンサー
結野アナが映し出される。





お〜!結野アナ復帰したんだ!」


「ケッ、で戻りが・・・・」





確かに離婚騒動で報道から離れちゃいたが
ようやく復帰できたんだし、そう言ってやるなって。







しかし流れたニュースの内容に・・・俺達は驚愕した。





機械家政婦を開発した『林流山』が殺害され
以前逃走中の容疑者は『芙蓉零號機』・・・


今、目の前にいる『タマ』だということだ。







・・・この名前は先程のやり取りの中 神楽が
"卵かけご飯"の卵から取って名づけられたものだが







「タマさんが自分の生みの親を殺して、
ここに逃げて・・・?」


「んなわけねーだろ。
首だけでどうやって殺すってんだよ。」


「逃亡中に何者かに首だけにされた可能性があります。」


うぉっ、復活の呪文なしで復活しやがった・・・・」







起動したタマが言うには、逃亡中に首だけになり





その際かどうかは不明だが 記憶データが破損
今は真実が分からないとの事







「すみません。この近くに機械技師はいらっしゃいますか?
予備のデータがあるのですがロックがかかっていて開けません。
これが分かれば記憶が蘇るのですが・・・」


、何とかならねえか?」


「オタコンなら何とかなりそうだが・・・・・」


「もっかい源外のジジイのとこ持っていくアル。」







玄関の戸を叩く音が 居間まで鳴り響く。







「すみませーん。奉行所の者ですがー。
ここに不審な機械があると通報があったのですが






まさか・・・・・・・・・・と思った刹那


銀さんは速効で生首を窓から投げ捨てようとした。





「銀さん!早い!!まだ早い!!」


冗談じゃねー!このままじゃ俺達も殺人犯だぞ!!」





腕を振る銀さんだが、髪が絡みついているらしく
タマはまったく離れようとしなかった。





「この装備は捨てられません。のろわれています。」


「捨てられませんじゃねーよ!
お前なんて装備した覚えねぇぇぇぇぇぇぇ!!」






見るに見かねたらしく、新八君が立ち上がり
玄関へ向かいながら





「僕が応対しますのでその隙に・・・・」


「待ってください。出ない方が安全です。」





差し挟まれたタマの言葉に、俺達は動きを止める。







・・・どういうことだ?





「タマ、何かあるのか?」


「はい、3人いる内2人に生体反応がありません。
彼らは役人どころか・・・・人ではありません。







タマの言葉が終わるか終わらないうちに
玄関の戸がけたたましい音を立てて爆発した。







「うわぁぁぁ!また戸が壊れたぁぁぁぁぁ!!」


落ち着け新八君!俺が食い止めるから
みんなは早く逃げろ!!」


「ってさんはどうするんですか!?
ロクに武器もないのに・・・・」


「大丈夫だ、無限バンダナがある。」





俺は、取り出したバンダナを額に巻くと
愛用銃M1911A1カスタムを構える。





、何アルか?それ。」


「弾薬が無限になるバンダナだ。」


「何ですかそのチート設定・・・」


「理屈を説明してるヒマは無い!いいから早く行け!!」







窓から降りた3人とタマを持って スクーターと
定春にそれぞれ乗って逃げたのを見届け





入れ違いに人の姿をした3人組が部屋に入ってくる。


・・・確かにタマが言った通り、二人は機械のようだ





戦闘力は未知数だが 何としてもここで食い止める。







うん?この家の者か?」





訊ねる中年に、俺は拳銃をつきつけ答える。





「だったらどうする?」





次に口を開いたのは ピンク髪の機械。





「あれを何処にやったのですの?」


「あれ?」


「・・・ここに首だけの機械があるはずだ。
その居所を吐いてもらおう。」





そう言ったのは三人目の、機械家政婦ではない男の機械。







「ないぜ?そんなもの。」





なるべく話を長引かせよう、少しは時間稼ぎに・・・・





「あれがないようならここに用はない・・・
が、ここで見られたからには生かして帰さん。





くそ!どのみちこうなったか!!





「お掃除の時間ですの〜。」


「証拠を抹殺します。」



「やれるものならな!!」







襲いかかる機械達に銃口を向け拳銃を連射する。





「機械にそのような弾は効きませんのぉぉ!」







言葉通り、奴等にあまり効き目は無いようだ。







「弾切れになるまで待て、少しだけ足掻かせてやれ。」


「了解。」





機械達は防御の姿勢に入る。なめやがって・・・





だが、生憎弾切れなんて起きやしない


無限バンダナのおかげで 何故か弾が入っている
マガジンが無限に出てくるからな。







「目標側部に弾薬らしき熱源が次々と発生しています
尽きる事は無いかと。」


「何だと!?どうなっている!?」


どうした?こっちは無限に足掻けるぜ?」







中年の男がシビレを切らし、男の機械を振り仰ぐ。







「ええい!伍丸弐號、片付けろ!!」


「了解。」





一つ頷き、機械が急接近して間合いを詰め


CQCに切り替える間も無く横に蹴り飛ばされた。





「ぐは!?」





俺は戸を突き破り、隣の部屋まで吹き飛ぶ。







「とどめを刺して来い。」


「了解。」







あの機械、存外手強い このままじゃ本当に・・・







そうだ!アレを使えば!!





奴等が近づくよりも早く、俺は体にテーピングされた
カプセルを取り出して飲んだ。





そこで 急激に意識が途切れる・・・・・・













土煙が収まりつつある中、


伍丸弐號がの転がる場所まで近づく。







足元には まるで糸の切れた人形のように
倒れたの身体があった。





「・・・目標、生体反応消滅。死亡を確認。」


「あれで死ぬとは意外とやわな男だ・・・まぁいい
零號機を追うぞ。場合によってはアレを使う」


「「了解」」





3人はそれきりに目もくれず、この家を出る。







しばし間が空いて・・・・が起き上がった。











「・・・・・まさかこんなところで役に立つとはな。」







俺が直前に飲んだ薬は"仮死薬"だった。







実はあの作戦が終わった後、


シギントが仮死状態になれる虫などを研究し


その結果 一時的に死ねる薬
仮死から復活できる薬を開発していたのだ。





ちなみに蘇生薬は奥歯に仕込まれていて、いつでも
服用できるようになっている







「すぐに銀さん達を追おう。まだ間に合うはずだ。」







俺は外へ出て、家の前に止めていたバイクにまたがる。





エヴァが使っていたバイクと同じ車種だから
かなりかっ飛ばせる・・・







奴等・・・ホントに零號機であるタマを
排除しに来ただけなのか?」





呟き、それを俺はすぐさま否定する。


あの態度に行動・・・絶対 何か裏がある。
とにかく銀さん達に早く追いついてやらなければ!





エンジンを噴かせ 銀さん達の逃走したルートへ向かった。








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後書き(退助様サイド)


退助「さて、始まりました芙蓉篇。
時間軸的にはクリスマス話の前・・・かな、うん」


銀時「でもよぉ、何で次の長編がこれ?
普通紅桜とかがセオリーじゃね?」


退助「いやあの色々事情があるし、サイトの
兼ね合いとか・・・まあ後のお楽しみってことで。」


新八「でもあの無限バンダナでしたっけ?弾薬が
無限に使えるって・・ホントどういう仕掛けですか?」


退助「実は俺も仕組みはわからないんだ。とにかく
弾だけじゃなくてミサイルやグレネード、地雷や
爆弾も無限に使える便利なモノだと思ってちょ。」


銀時「オィオィオィすげーなそれ、ぜひ今度
から借りてパチンコの玉を無限に・・・」


退助「増えません。」


神楽「どんだけパチンコするきネ この甲斐性ナシ