俺達は、伊東と土方さんが向かい合っている所を見ていた。
・・・これから伊東の粛清が始まるのだろう。
その予想は 土方さんがあいつの前に投げた
持っていた刀の一つが落ちる音と共に裏切られた。
「立て伊東、決着つけよーじゃねぇか。」
「どういうことだ・・・・?」
「よぉ、あいつら・・・奴を
うす汚ねぇ裏切り者のまんま死なせたくねーんだよ。
最後は・・・・武士として、仲間として
死なせてやりてーんだよ。」
そうか・・・・・兵士では有り得ないことだな。
裏切り者は誰だろうがその場で銃殺
どんな事情であろうと、情状酌量の余地など無い。
だが侍は違う。
どれだけ手を汚そうが罪を重ねようが・・・・
最後は侍らしく、武士らしく死なせる。
本当に・・・・・・侍には学ばされてばかりだ。
やっとの思いで立った伊東は刀を持つと
土方さんと同時に構え、お互いに地を蹴り突っ込んだ。
「土方ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「伊東ぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「「てああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
剣を振るう速度はどちらも申し分の無いものだった
けれど・・・僅かに及ばなかったか
土方さんの攻撃が当たり、伊東の左半身から血が吹き出る。
ゆっくりと 伊東が後ろを振り返れば
近藤さんを含め、真選組隊士全員もまた伊東を見ていた。
彼らのその目に宿るのは軽蔑でも憎しみでもない
仲間として死んでいくことを悲しみ、弔うものだった。
「・・・・・・・・がとう・・・・・
あり・・・・・がとう・・・・・」
小さく、しかしはっきりとそう呟いた後
伊東は倒れ込んだのを皮切りに 動かなくなった。
その顔は今までで初めてみる・・・穏やかな顔だった。
第六話 大事なもんは後から気付く
「・・・フン、つくづく侍と言う人種は理解しがたい。」
端的に言ってオセロットは、きびすを返し
フライングプラットフォームに乗り込んだ。
「オセロット!さっきは助かった!!」
「別に助けたのではない、たまたま目の前に
敵のヘリがいただけだ。」
ったく・・・素直じゃない奴だな。
「それでも助かった!ありがとう!!」
「フン!ではまた会おう!!」
笑い返したオセロットを乗せたヘリが飛び去り
・・・こうして、この真選組の事件は終結した。
後日 調べた情報を元に推察を述べるとするなら
伊東は昔、ある上級家系の次男として生まれたらしい。
しかし、両親は病弱な長男につきっきりとなり
本人は相手にされなかった。
伊東はどうにか両親に自分を見てもらいたくて
勉学、剣術を誰よりも努力し 常に優秀な成績を残した。
にも関わらず親は彼を見ようとせず
所か伊東の周りから、徐々に人がいなくなっていった。
兄がいる部屋を通りかかり、母親のあの
とんでもない一言を聞いてから
彼は誰も信用しようともせず人を拒絶した。
自分が一人になってしまった理由を
他人のせいにしてまで・・・・
だが本当は・・・・あいつは誰かに
隣にいてほしかっただけだったんだ・・・・・・
孤独が怖くて・・・・・絆が欲しかっただけだったんだ。
でもとっくの昔に・・・・土方さん達が・・・・・
欲しかったものは・・・絆はそこにあった。
伊東はそれに早く気が付いていれば
こんな事にはならなかった・・・・・・・・・
それだけが、俺は残念でならないと思う。
事件から数日が経ち、俺達はだんご屋にいた。
土方さんは妖刀の呪いを消そうとあらゆる念仏や
御祓いをしたが・・・ついに妖刀が離れる事はなかった。
「またいつ何時こいつに食われちまうかわからねぇ。」
「それじゃあ・・・真選組復帰は・・・・」
「転職を考えた方が良さそうアルな。
知識活かしてアニメイトにでも就職するアルか?」
「そんな簡単にいくもんじゃないと思うんだが・・・」
「けっこうな事じゃねーの 身体から離れねぇ妖刀・・・
まさしく剣身一体ってわけだ。
てめーにおらつあえの剣じゃねーか。」
銀さんのその言葉に、土方さんはしばし黙り込み
「・・・軽く言ってくれるぜ。」
やがて そう言って立ち上がった。
「世話んなったな。」
「土方さん、何処に行くんですか?」
「決まってんだろ?
俺の身体はとうの昔に霊やら祟りやらで定員オーバーさ。
今まで踏み越えてきた敵や仲間達の怨念でな。」
台詞と同時にマヨ盛りだんごを頬張り
串を捨てた・・・・ってポイ捨て・・・・・・・・
「今更呪いの一つや二つ増えたところで何も変わらねぇ
誰が死のうが振り返るつもりもねぇ。
全部背負って前に進むだけだ
・・・地獄で奴らに笑われねぇようにな。」
銀さん達はそのまま動かず こっそりマヨだんごを
失敬してやっぱり吐いた神楽の背を擦ったりしていたが
俺は不安にかられ、土方さんの後を追う。
「土方さん!!」
「・・・か・・・・てめぇには迷惑かけたな。
まさか懸賞金をかけたのが伊東だったとはな・・・」
「いいさ・・・あの後から浪士の襲撃が止んだ。
伊東が倒されたことで敵わないと思ったんだろう。」
「まあようやくテメェに喧嘩売る事が
そもそもの間違いだったんだって、気付いたんだろ。」
そうかもな・・・と思っていると、土方さんが
急に真剣な眼差しを俺へと寄越す。
「、テメェがよければの話だがな・・・・・」
「何だ?」
「真選組に・・・・・入らないか?
お前なら俺の代わりが充分勤まんだろ・・・」
何だよ、土方さんらしからぬ台詞だな・・・・・
「忘れたか?俺はアメリカの軍人 他の組織に染まる事は
任務以外は許されない。それにまさか・・・
山崎君がいなくなった穴を埋めたい、と思ってるだろ?」
「・・・・・ああ、山崎が殺害されたと聞いてな・・・」
「・・・・死んでない 勝手に殺すなよ。」
「何!?生きてるのか!?」
驚く土方さんに、別行動をしていた際
真撰組の様子を見るため潜入した事と
万斉に殺されかけた山崎君を救った顛末を簡単に説明した。
「ったく、まーた勝手に屯所に入りやがって・・・・・・」
「仕方ないだろ?真選組の緊急事態だったんだし・・・・」
「おま、いつか叩っ斬ってやっからな・・・?」
「ああ・・・いつでも来い。」
笑いかける俺に薄ら笑いを返し、土方さんは屯所へと歩く。
その姿を見えなくなるまで見送りつつ思った
・・・これでもう 土方さんは大丈夫だろう。
真選組にはやっぱり土方さんがいないと成り立たない。
この後どれだけ仲間が死んでいこうが
例えまた妖刀に魂を食われようが・・・・・
土方さんは 真選組にはなくてはならない存在なんだよ・・・
あれから一週間が経ち、俺はとNEO秋葉に来ていた。
「秋葉は見るだけにする」と言いつつちゃっかり隣に
オタコンを映したMk.Uが走っている。
「フフフ・・・・・やっと買えたわプリ○ュアのDVD。」
「ったく・・・・・いくら何でも
フィギュアまで買わなくてもいいだろ・・・・・」
「あらいいじゃない。女の子は人形が好きなのよ。」
「それ絶対フィギュアの方じゃないと思うんだが・・・・」
渋い顔をしつつ雑踏に視線を逸らすと、右斜め前方に
あの見慣れた格好をした男がいた。
「ねぇ・・・・・あの人もしかして・・・・」
「いや違う、あれはトッシーだ。土方さんじゃない。」
「でもあれどう見ても」
「見た目・・・というか本体はな。
だが中身は妖刀のせいで全くの別人だから。」
「え?妖刀?」
「また今度教えるさ。
アレは無害だから無視し「萌えぇぇぇぇぇぇぇ!!」
な・・・何だ急に叫んで・・・・・・皆見てるし
不審者扱いで捕まるのも可哀想だし自重させるか。
「ともえ5000等身大フィギュアが半額でござるか!?」
「おーい、土方さ・・・・じゃねーやトッシー。」
「あ、氏と氏〜偶然でござるな。」
「あの・・・ホントに土方さんなのよね?」
「そうでござる。真選組副長、土方十四郎でござる。」
「何よその喋り方・・・・妙にイラっと来るんだけど?」
「怒るな怒るな、仕方ないさオタクなんだから。」
『ジャック・・・この人が本場のオタクなのかい?』
モニターのオタコンに気付いたトッシーが
食い入るように画面を見つめる。
「ほぇ〜スゴいメカでござるな〜所で誰でござるかこの人?」
『初めまして・・・でいいのかな?僕はハル・エメリッヒ』
「ハル氏でござるか。」
「何か語呂悪ぃな・・・・所でこのフィギュアに
食いついてたけど・・・」
訪ねると急激に首を動かし、トッシーが
キラキラした眼で俺に力説しだす
「ともえ5000等身大フィギュアが半額セールに
なってるんでござるよ。今なら保存用、観賞用、実用用として
通常の半分の値段で買えるんでござるが・・・うーん、迷」
「迷うなよ!金の無駄だろ!!
ていうか実用用って何に使う気だ!?」
『いやその気持ちは分かるよ。1個だけ買うとどうしても
いじりたかったりしたいけど埃がかぶると嫌だし・・・』
「分かるでござるか!?」
『うん、僕も一応保存と鑑賞、実用用に飾り用に
4つそろえてるんだよね。』
「マジでござるか!?レベル高いでござるなハル氏〜!!」
『いやいや、真のオタクはこうじゃないと・・・』
「オタコン・・・・・」
俺は呆れかえった。
こいつら、オタク通り越して馬鹿だ・・・・・
「でもこのゲシュペ○ストも捨てがたいでござるな・・・・」
『ああ、それってス○ロボに登場するメカで
連合軍の主力PTだよね。それには・・・・』
やたらと濃くてマニアックな話が始まる中
「・・・行こうか」
「え、ええ・・・・・」
俺達は速効で二人を置き去りに、家へ戻った。
その後Mk.Uが帰ってきたのは5時間後で、あのまま
ノンストップで話に没頭していたんだとか。
オタク・・・・・・・恐るべし
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後書き(退助様サイド)
退助「やっと動乱篇も終了です。無理やり終わらせた感じが
ヒシヒシしますが気にしない方向で。」
新八「自分で言いますか!?」
銀時「つかの語り長ぇしいらねぇだろ!
あのくだり、元々は伊東が列車から落ちそうに
なってる所のだろ!何でここで言う!?」
退助「だって原作読んでない、見てないって人が
何で伊東が反乱を起こしたかってのを教えなきゃ・・・」
新八「何その無駄に旺盛なサービス精神。」
退助「いやーこれ書いたつい最近日記にコメントしてる人のを
見ててね・・・そこにこの小説見てくれてる人がいたんで。」
銀時「こんな勝手なコラボ小説見る奴なんていたんだな・・・」
退助「そこまで言うか・・・・・・・」
トッシー「このリ○ンってAMも中々カッコイイでござるな。」
オタコン「そのリ○ン系は色々あるよね、砲撃戦仕様の
ものとか格闘戦特化、宇宙仕様も色々あって・・・」
退助「あとがきなのにまだ語ってんのかよ・・・・・・」
オセロット「オタクは良く分からん。」