敵のヘリを落としたフライングプラットフォームが
こちらに近づいてきて
ようやく、乗っている相手を肉眼で捕らえる事が出来た。
「ジャック!早く列車を追え!!」
「オセロット!?何でお前が!!」
「話は後だ!
奴らは橋を爆破して伊東鴨太郎もろとも始末する気だ!!」
「な、何だって!?」
オセロットが現れたワケは検討がつかないが
放たれたその言葉は、納得のいくものだった。
あの鬼兵隊が真選組の人物とコンタクトを
取ること事態 有り得ない
・・・高杉が真選組を潰すために利用してた
今やそう考えた方が辻褄がピッタリと合う。
何が参謀だあの野郎、ただの道化じゃないか!
「・・・分かった!オセロットは空中のヘリを頼む!!
ちなみに後ろからヘリが来てるぞ!!」
「俺に命令するな!!」
憎まれ口を叩きながらも、オセロットは機敏な動きと
SAAでヘリの急所を撃ち抜いて破壊する。
それを尻目に橋へ向かいかけた瞬間
列車を乗せた橋が 爆発するのが見えた。
第五話 無策もまた、策のうち
遅かったか・・・近藤さん!みんな!無事でいてくれ!!
行く先々を邪魔する浪士どもを薙ぎ払い
やっと橋へとたどり着いたのは、爆発から
30分が経過した頃だった。
二つのヘリが列車を襲撃し その内一つは俺が来る前に
急降下して墜落し
もう一つは、何故か背を向けている血だらけの銀さんへ
矛先を向けたまま動かなくなっていた。
ヘリの所々に微かな陽光を反射する糸が見え
木刀に巻きついた糸が万斉もろともヘリを
捕縛しているのを理解した。
アレは・・・奴の三味線の弦か・・・・?
「おい兄ちゃん、ヘッドホン取れコノヤロォォォォ!!」
「拙者の弦を!?何してる撃て!!」
万斉の命令を受け、機関銃を構えた浪士がヘリから身を乗り出す
「・・・させるかよっ!」
俺はパトリオットで、銀さんに当たる射線上にある弾を
狙い撃ち 相殺させた。
「耳の穴かっぽじってよぉく聞けぇ 俺ぁ安い国なんぞのために
戦った事は一度たりともねぇ、国が滅ぼうが侍が滅ぼうが
どうでもいいんだよ!俺は昔っから!!」
言いながら銀さんが力を込めて木刀を動かす
連動するヘリの衝撃に、乗っていた浪士と万斉が怯む。
「今も昔も、俺の護るもんは何一つ・・・・・・・・・
変わっちゃいねぇぇぇぇぇぇ!!」
「銀さん!!無理するな!!」
「うおおおおおおおおおお!!!」
咆哮と共に渾身の力を込め 銀さんはヘリを叩き落した。
すごいな・・・・・
ホントに銀さんには驚かされてばっかりだ。
「万斉様ぁぁぁ!!」
「嘘だろ・・・・万斉様がやられた!?」
寄って来ていた周りの浪士がうろたえている。
大将がいなくなって統率を失ったか。
「!テメェどこで一発抜いてやがったんだよ!」
「そういう銀さんこそ、無駄に盛り過ぎなんだよ
一辺献血にでも行って来い!!」
「けっ・・・さっきはあんがとな」
照れたように言って敵陣に突っ込む銀さんと入れ違い
土方さんと沖田君、近藤さんが列車から出てくる。
良かった、無事だった・・・・・・・・
俺は 少しホッとした。
「総員に告ぐぅ!敵の大将は討ち取ったぁぁ!!
最早敵は統率を失った烏合の衆!!
一気にたたみかけろぉぉぉ!!!」
そこから真選組の快進撃が始まった。
近藤さんは浪士の刀を甲冑ごと叩き切り
沖田君は一瞬で浪士達を斬り伏せ
そして土方さんは、向かってくる敵を一掃していた。
どうやら・・・・妖刀を使いこなせてるみたいだな
心配せずとも、もう土方さんは大丈夫か。
戦いに参戦している途中 先程のヘリの落下地点が眼に入る
微かに倒れている万斉が見えた。
・・・俺は戦っている双方に気付かれぬよう
万斉の元に向かい、応急処置を施した。
「どういうつもりだ殿・・・・?」
「ふん、お前のためじゃない・・・お通ちゃんのためだ。
お前がいなくなったら歌が歌えず彼女が困るからな。」
「フ・・・その甘さ、いつか後悔する時が来るでござるよ?」
「ご忠告どうも その時はその時さ。」
万斉はニッと笑い・・・音もなく立ち去った。
いつの間にか降りてきたオセロットが駆けてくる
「ジャック!首尾はどうだ?」
「大丈夫だ、真選組が押してる。
・・・でオセロット、何でお前がここにいる?」
「お前と同じく、俺も伊東に借りがあるのでな。」
なるほど、つまりはオセロットも伊東に付け狙われていたのか。
俺と同じスパイだから・・・危険と判断されたんだろう。
「ジャック、恐らく伊東はあの列車の中だ。行くぞ。」
「あ、ああ・・・・・」
そういえば伊東の姿がないが
・・・・・土方さんが仕留めたのか?
内心首を傾げつオセロットと激戦を掻い潜り、列車の中に入った。
先に感じたのは鼻を刺す、濃い血の臭い。
それが新八君と神楽の眼前に存在する 左腕の無い
血だらけの伊東のモノだと判断したのはやや遅れてからだった。
「新八君!神楽!」
「さん、良かったいい所に!早く伊東さんを!!」
「いいんだ・・・・・僕はもう長くない・・・・・」
つい数刻前までの態度が嘘のように、弱々しい声で話す伊東
「腕がもげて蜂の巣・・・・・これはもう助からんな。
だが、おかげで俺の手間が省けた。」
「オセロット!口を慎め!!」
余りに不謹慎な物言いに、俺は
オセロットの胸倉を掴んで怒鳴った。
「いいんだ・・・僕は君達にそれだけの事をしたんだ・・・・
ようやく見つけた大切な絆でさえ
自ら壊してしまったのだから・・・・・・・」
その言葉を聞いて 俺はオセロットを離す。
「何故・・・・何故いつだって、気づいた時にはもう遅いんだ。
・・・何故共に戦いたいのに・・・立ち上がれない・・・・
何故剣を握りたいのに・・・腕がない・・・・!」
「・・・・・・止める親はいなかったのか?」
その問いは、思わず口を吐いて出たものだった。
眼を伏せた伊東が・・・悲しげに笑う
「もういないさ・・・・・いや、生まれた時から
いなかったのかもしれない・・・・・・・・・
『あんな子、生まれてこなければよかった』ってな・・・・・」
「俺は知っているぞ・・・貴様には病弱な兄がいた。
その兄に全てを持っていかれたと嘆いていたらしいではないか?」
「オセロット、お前何でそんな事知って・・・」
「フ・・・・偶然耳に入ったのさ。」
嘘をつけ嘘を どうせ調べたんだろーが
しかし、薄情な親がいたもんだな・・・・・
いくらこの国が 長男が家系を継ぐ決まりとはいえ
仮にも自分の子に向かって口にする事じゃないだろ・・・・
「何故・・・・ようやく気づいたのに・・・・・
僕は、死んでいく・・・・
死にたくない・・・死ねば一人だ・・・・もう一人は・・・・」
そうか・・・・
俺はその時少しだけ、解った気がした
伊東はただ一人になりたくなかっただけだったのか・・・・・
肩を叩かれ 振り返ると
そこには近藤さんを始めとした真撰組の面子が全員
揃って列車の中にいた。
気付かないうちに、残党は全て片付いていたのか。
「そいつを、こちらに渡してもらえるか?」
「・・・・・お願いです・・・・・この人はもう・・・・」
「万事屋、それにの旦那、お前らには世話になった。
だがその頼みだけだけはきけない。」
「・・・・・身内の始末は身内でつけるのか?」
「そうだ、そいつのために何人が犠牲になったと思っている。
裏切り者は俺達で処分しなきゃならねぇ。」
「助けてもらったんです!それにこの人」
止めに入ろうとする新八君の肩を、近藤さんが抑えた。
「連れてけ。」
「近藤さん!!」
「あんな奴でも信頼はしてたんだろ!近藤さ・・・・!?」
呼びかける俺と新八君は
涙を流す近藤さんの横顔を前に、言葉を失った。
そのまま隊士達に連れて行かれる伊東をただ
見ているだけの俺達の隣に 銀さんが静かに佇む。
「そうさ、ほっといても奴ぁもう死ぬ。だからこそ・・・
だからこそ斬らなきゃならねぇ。」
「フン、つくづく侍と言うのは分からん。」
「パチスロも覚えとけや。これが侍のけじめって奴だ。」
「オセロットだと何度言わせれば・・・・」
「まあいいじゃねぇかオセロット。」
橋から離れた広い土地に投げ出された伊東を
完全に囲みこむように、隊士が並ぶ。
彼らを割って 二本の刀を手に
伊東へと近づく土方さんの姿があった。
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後書き(退助様サイド)
退助「さて、そろそろ動乱篇終了です。」
銀時「またパチスロ来たのかよ。もホント都合良過ぎね?」
オセロット「だからオセロットと何度言えば覚えるのだ!!」
退助「まあまあ落ち着いて・・・・都合のことは聞かないで」
土方「つーか色々と端折り過ぎだろ。
所々抜けてっとこはここの管理人譲りか?あん?」
退助「仕方ないじゃん。こういうのって全部詰め込むと
半端じゃなく大変だし・・・それにスピンオフのような
感じだからねこれ、あと管理人と一緒にしないで」
新八「まあ分かりますよそれは・・・ってオォォイ!
それ言ったらアンタ次回から話載せてもらえなくなるって!」
神楽「てーか何で私は名前だけアル!なめてんのかアン!?」
退助「仕方ないじゃん!本編でも台詞なかったんだもの!!」