ここは・・・・・どこだ・・・・・・・
うっすらと、さっきまでの記憶が甦る
リキッドにみぞおちを喰らって・・・・・
遠い意識の中で 奴の嘲笑と轟々と流れる水の音と
「「ー!!」」
微かに銀時と桂さんの声がしたような・・・・・・
おそらく・・・・・リキッドに投げられて
濁流に飲まれたのだろう
崖から下流までの高さを考えると、普通なら生きてはいない
とすると・・・俺は・・・・・・死んだのか?
・・・・・・・・妙に死んだ感じがしない・・・・・
気がつけば、俺は腰位の深さの川を歩いていた。
特に疑問は無く 直感で三途の川だろうと理解した
噂でしか聞いたことがないのだが・・・
思ったより、汚いんだな。
特に当ても無く前へ進むうち、目の前に何者かが現れた。
反射的に拳銃を突きつけ 問いかける。
「誰だ、お前は!」
そいつは川の上空に浮かんだ状態で
ゆっくりと口を開いた。
「哀しい・・・・・・・」
地の底から響いてくるような、不気味な声音。
「死は哀しい・・・・・・
お前も哀しみのひとつ・・・・・」
俺が哀しみのひとつ?どういうことだ?
「俺は、ザ・ソロー。」
ザ・ソロー・・・フューリーが言っていた
コブラ部隊の一人だ
ということは、ここは本当に死の世界なのか。
「お前と同じく哀しみで満ちている。
・・・・・・この世は哀しい。」
呟く言葉と共に、俺はコブラ部隊の
コードネームの由来を思い出していた。
コブラ部隊はそれぞれが戦場で見出した感情を
コードネームとしているという。
ペインは痛み、フィアーは恐怖、ジ・エンドは終焉、
フューリーは憤怒
ビッグ・ママも元々は部隊の一員でザ・ジョイ
そのコードネームの意味は、歓喜。
それになぞらえて考えれば・・・ソローは
戦場で哀しみを見出したということか。
「戦いは死を生み、死は哀しみを生む。」
「何が言いたい?」
「届くまい・・・・生きている者には・・・・・
聞こえまい・・・彼らの声が・・・」
「どういうことだ?」
「だが、お前は知らなくてはならない。
死者は決して、沈黙はしていないということを。」
何度問いを重ねても、相手は俺の言葉に
答えず とうとうと語り続けている
というより・・・まるで俺の言葉が聞こえてないようだ。
「お前が殺めた死者の哀しみを知るがいい。」
ソローの片目から血が流れ、眼鏡が割れる。
それと同時に いきなり複数の人影が現れた。
第九話 死にかけっとどーでもいい思い出も美化される
・・・これが、今まで俺が殺めた死者だというのか
誰かはいちいち覚えていないが、川には
今までの作戦で殺してきた兵士が立っていた。
CQCで首をかき切った兵士
爆発に巻き込まれて死んでいった兵士
頭を撃ち抜かれた兵士などが・・・痛みを訴えながら
虚ろな顔を向けて俺に近づいてくる。
「・・・こいつら、死んでも俺に突っかかってくるのかよ。」
眉間にしわを寄せながら まとわりつく死者から
離れてひたすら川を進む。
ソローはまるで案内をするかのように宙を漂う。
群がる兵の中に 知った顔もいくつかいた。
今まで死闘を繰り広げてきた敵のリーダー格の兵士
先程まで戦っていたコブラ部隊の連中・・・・
ウォルギン、ジーン、戦友だったパイソン、
変装のために服を奪ったライコフもいた。
ライコフは ソ連の政権争いに巻き込まれて
殺されたと思うが・・・
実質、俺が殺したということになるのか?
「間接的に死んでいった奴もいるのか。」
独り言のつもりの言葉に、しかし ソローが答える。
「そうだ・・・みな、お前に関わった死者達だ
お前は死者の哀しみを知るため、ここに招かれた。」
冗談じゃない。
俺は生きて戻って、あいつらと再会しなければならない。
そして今度こそリキッドを・・・・
先の方にいたぼんやりとした人影が
近づくにつれ、見覚えのある男と女の姿に変わる。
女は エルザだった。
もう一人の男は・・・・思い出せない。
「エルザ・・・まさかこんな再会の仕方を
するとは思わなかった。」
エルザは、悲しげに目を伏せる。
「私もよ・・・
あなたはここで死んではいけないのに・・・・」
生まれた僅かな沈黙を破ったのは もう一人の男の方。
「お前がジャックか・・・直接会うのは初めてだろうな。」
「そういうあんたは?」
男は、ニッと口の端を持ち上げて笑う。
「俺か?俺は・・・・・スネークと呼んでくれ。」
「スネーク?」
「そう・・・ビッグ・ママの、お前の前の弟子だ。」
「弟子?」
「ああ・・・俺は彼女と接近戦の基本、
CQCを編み出した。」
このスネークがCQCの生みの親という事か
初対面でのその発言を、疑う気は起きなかった。
「そうか・・・・・・所でエルザと一緒にいるのは
何か伝えたいって事なのか?」
「お前のことについてだ。」
「・・・俺のこと?」
「ああ、これは非常に重要なことだ。
しっかり聞いてくれ。」
俺のことで重要?
一体スネークは、何を知っているんだ?
「君はジーンと戦ったようだな。
彼は創造者計画の産物だと言っていただろ?」
「ああ、自分はママ、ザ・ジョイを元に造られたと。」
「実はお前は、俺を元に造られたんだ。」
スネークを元に造った?どういうことだ?
俺の心を読んだかのように、スネークはこう続ける。
「造ったといえど、お前の過ごしてきた記憶は本物だ。
もちろん君は俺とも出会っている。」
「いまいち話が見えてこないんだが・・・・」
「そうだろうな。簡単に言うとお前は
俺のDNAを受け継いだ、俺の息子のような存在だ。」
その一言を、俄かには信じられなかった。
「俺が、あんたの息子だと?
・・・悪い冗談だ、俺には両親がいる!」
二人は凶弾に倒れ・・・戦災孤児として一人
さまよっていた俺を ママが拾ってくれたのだ。
「そう、確かにお前には両親がいる・・・
が、実際に血を分けてはいない・・・受精卵を
協力者の母体に植え付けて お前は生まれたんだ。」
「・・・試験管ベビー、と言うわけか。」
「そうだ、リキッドがお前を兄弟と呼ぶのも
あいつもお前と同じ生い立ちからだ。」
片方だけのその瞳には、嘘はないように感じた。
しかし・・・
「リキッドはあんたにそっくりだが、俺は全然違う。
ちゃんと亡くなった両親に似ていた。」
「それは、ジョイの計らいで俺の戦闘センスと
身体能力のみを受け継がせたのだ。
まるごと変えてしまうのはリキッドの二の舞だと。」
・・・そういうことか
何となく、スネークがここにいるわけを理解した。
「リキッドはあんたに似すぎた
コンプレックスを抱いていたということか。」
「察しの通りだ・・・俺はリキッドに殺された。」
そこで一旦言葉を切り、
スネークは 思いもしなかったことを口走った。
「そして、お前の育ての親を殺したのも 奴だ。」
一瞬 言われたことが分からなかった。
じわじわと脳に言葉の意味が浸透し、
「何だと・・・俺の両親を殺したのが
リキッドだったっていうのか!?」
俺は、ほとんど叫ぶように言葉をオウム返しする。
首を縦に振り スネークは苦しげな顔で俺を見つめる。
「ジャック・・・・・・あいつを止めてくれないか?
いまさらこんなこと言うのも 勝手だと思うだろうが・・・」
しばらくの間 視線を逸らしてその場に立ち尽くす。
周囲にうようよいた筈の死者達は、いつのまにか
全く姿を見せなくなっていた。
俺は そのままでようやく口を開く。
「・・・・俺は、として仲間を助けに来ただけだ。」
「ジャック!スネークの話を聞いて・・・・・」
「待て、エルザ。」
「だが・・・・・・これ以上
リキッドの思い通りにさせるわけにはいかない。」
真っ直ぐに スネークを見据えて
「俺のやり方で 奴と決着をつけてやる」
言うと、彼は安心したように微笑んだ。
「よく言ってくれたな・・・・ジャック。」
スネークの目に宿る光は力強くて、けれど
どこかで同じものを見たような覚えがあった
それも ごく最近・・・どこだっただろうか・・・
思い出しかけた思考は、エルザの言葉に掻き消された。
「ジャック、あの時言った言葉、覚えてる?」
「・・・ああ。」
「あなたはビッグ・ママと戦うことになるわ。
でも憎しみで戦ってはいけない。
それがあなたの・・・いえ、ママのためにもなるわ。」
「ママのためにも・・・どういう事なのか
教えてくれないのか?」
エルザは 笑みを浮かべたまま首を振った。
「いずれ・・・分かることよ。」
・・・彼女には 一体何が見えたのだろうか、と
考えているうちに
「ソロー、もういいだろう。」
スネークの言葉に、ソローがコクリと頷き
「そうだな・・・目を覚ませジャック。
帰るのだ、お前のいるべき世界へ!
ママを・・・頼む。」
最後にそう言って、衝撃を放った。
避けることが出来ずそれに当たった刹那
急に再び、意識が遠のいていく。
「ど・・・・どういうことだ・・・・・・・!?」
「大丈夫だ お前ならやれる。
仲間達のいるお前なら、な・・・」
「頑張って、ジャック。」
「エ・・・ルザ・・・・スネ・・・・ク・・・・・・」
視界が 闇に閉ざされた。
・・・・・遠くで、誰かの声が聞こえる。
あれは ソロー・・・それに・・・・・・
ママ・・・?
「ジョイ!!俺を殺してくれ!!」
「出来ない!!」
「やるんだ!!任務を遂行するんだろ?
なら、撃たねばならない!!」
「くっ!!」
「大丈夫、哀しまなくてもいい・・・また 会える。」
銃声がやけに大きく聞こえ
―俺は目を覚ました。
水中にいることを認識し、慌てて水を掻いて浮上する。
陸地に這い上がり 水を吐き出して
そこで何とか一息つく。
俺は・・・生きているみたいだ。
だが、先程までの出来事はハッキリと思い出せる。
エルザのこと、スネークのこと、そして、俺のこと・・・・
まるで夢の中にでもいるかのような感覚だったが
彼らの言葉には確かな説得力と 重みがあった。
呼吸が大分整ってきたので、辺りを見回してみる
・・・・・・随分流されたらしい。
要塞があんなに遠くにある。
歩いていっても この距離じゃ時間が掛かりすぎる。
どうすれば・・・・・・
その時、バイクのエンジン音が聞こえてきた。
・・・・・・こっちに近づいてきている。
「敵・・・!?感づかれたか!?」
にしても いくらなんでも早すぎる。
とりあえず武器を取り出し、身構えた所で
「久しぶりね!ジャック!!」
聞き覚えのある声とともに バイクで登場したのは
見覚えありまくりの女性だった。
「まさか・・・エヴァか!?」
「なによ、随分な言い草ね ジャック?」
「何でここに?」
「何でって・・・聞いてないの?
WIG用意したの、私よ?」
マジで?それ、初耳なんだけど・・・・・
エヴァはため息を一つつく。
「聞いてないって言う顔ね?
・・・ちなみに用意したのはいいけど
あなた、あれ操縦できるの?」
「・・・いや。」
言われてみれば そのことについては
すっかり失念していた。
「呆れた・・・・・・まあいいわ、乗って。」
言いながら彼女は後部座席を指し示す。
・・・要塞まで連れてってくれるというのか?
「急いで、今 仲間も要塞に向かってるの。」
「仲間?」
「あなたと戦ったこともある人よ。」
俺と?いまいち見当が付かない・・・
苛立ったようにエヴァが再度、俺に言う。
「グズグズしないで乗って!
あなたの仲間がもうすぐ銃殺刑に処されるってのに
油売ってるヒマなんて無いのよ!!」
「何だって!?急ごう!!」
後部座席に飛び乗ると、
「あの時を思い出すわね・・・さあ、飛ばすわよ!
落ちないようにしっかり捕まってて!!」
ハンドルに力を込め エヴァは要塞に向けて
猛スピードでバイクを飛ばした。
戦ったことのある仲間とは誰のことなんだ?
それよりも・・・急がなければ銀時達が危ない
みんな 待っていてくれ!!
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後書き(退助様サイド)
???「さて、さんも死亡フラグも回避でき、
重大な秘密を暴露したんでクライマックスを・・・・」
銀時「最初っからクライマックスゥゥゥ!!!」
???「アベシっ!てかそれ危ないよ!!」
銀時「オメェの叫びも十分アレだよ!?
つーか何がフラグ回避だ!!
今度は俺たちが死亡フラグ立ってんじゃねーか!!」
新八「落ち着いてください銀さん!
つか新事実が色々発覚しまくり!!
さんが試験管ベビーだったとか、リキッドとの
関係とか色々」
神楽「そんなのどうでもいいネ。
濡れたオッサンとかの話に興味ないアル」
新八「その言い方止めてェェ!!」
土方「てか俺達の出番少ねぇぇぇぇ!!」
???「次回に出てくるからガマンガマン」
桂「しかし、の母親が未亡人だったとはな・・・・・
知っていたらこう お近づきに」
銀時「おまっ何やらしーこと考えてんだ!
真面目なフリして結局ムッツリかヅラ!!」
桂「ヅラじゃない!桂だ!!
俺はただ寂しい夫人の心の支えになろうと」
???「てゆうか 何でそういう風にとらえたの!?
出来たら根拠とか教えてもらえると・・・」
桂「話の流れから ソローと言う男と
愛し合っていたように見えたのだが?」
???「・・・・・・変なトコで勘いいね、ほんとに。」
銀時「何?ひょっとして正解?」
???「いや、ここで言うとネタバレになるんで
後ほど詳しく語るんでご勘弁を。」