俺達は互いのメタルギアを駆使し、攻防を繰り返しながら
いまだに決定打を相手に叩き込めないまま睨みあっていた。
向こうのRAYは機動性が高く、
ジャンプや突進も軽くこなし 元々の攻撃力に加えて
自己修復力の速さにも苦戦させられる。
・・・しかし、機銃がなくなっただけまだマシだ。
俺のREXに積んである装備はレールガンと機関銃
攻撃力に関してはこちらとて負けてはいない。
強硬な装甲のおかげで、ある程度の攻撃にも耐えられ
以前より高くなった機動性の賜物か
格闘攻撃をこなすことも、攻撃の受け流しも出来る。
・・・が、それでも向こうの方が僅かに
優位に立っていた。
体当たりをくらい 吹っ飛ばされて体勢を立て直す間に
『ハハハハハ!!遅いぞ!!』
リキッドがミサイルを放ってくる。
ミサイルをなんとか機関銃で迎撃し、返す刀で
立ち尽くすRAYにレールガンを当てた。
直撃し その場にヒザを突くRAY。
『油断したな!』
先程までの攻防の時に、気付いてはいたが
・・・この攻撃で 確信した。
RAYは攻撃をかわされた際、大きく隙が出来る!
『おのれ!!』
立ち上がりざまRAYの口が開き、
そこから水圧カッターを繰り出してくる。
俺はそれを横に回避し、RAYに突っ込んだ。
「これで終わらせる!!」
『おのれ!!返り討ちに・・・・・・・・
何故だ!?何故動かん!!』
思った通り、RAYの動きが止まった!
今だ!!
「うおおおおおおおおおおお!!!!!!」
突進の勢いを借りてREXで蹴りを2発当て、
RAYの喉元に噛み付いた後、至近距離で
レールガンを被弾させた。
『ジャアァァァァァック!!!』
リキッドの叫びがその場に響き渡り―
・・・RAYは、完全に機能停止した。
「終わったか・・・・・」
ここで倒せたのは運がよかった。
REXも、既に稼動限界を超えていたからだ。
恐らくこれ以上・・・もう動きはしないだろう。
「ありがとう・・・REX。ゆっくり休んでくれ。」
俺は動かなくなったREXから降り、湖へ
向かうべく足を進め
刺す様な気配を感じて振り返った。
『まだ終わっていない!!』
リキッドの執念に引きずられてか
機能停止したはずのRAYが 立ち上がった!
第十二話 ガチ喧嘩ではゲンコのみ
「まだ戦う気か・・・しつこいぞ!リキッド!!」
『何と言われようが構わぬ!
貴様だけは・・・貴様だけはここで消す!!
オリジナルは一人しかいらん!!!』
こちらににじり寄るRAYから距離を取りつつ銃を構える。
幸いにも動くのがやっとなのか、攻撃は仕掛けてこない。
しかし、生身であのメタルギアに勝てるわけなどないのは
火を見るよりも明らかだ。
俺にターゲットが絞られている以上、
このまま湖へは行けない。
どうにか横をすり抜けて、中継基地に行くため走り出す。
『待てぇぇぇ貴様ァァァ!!』
追ってくるRAYから逃げながら、反撃の手を考える。
ハインドに乗れば何とか・・・・・・・って、あ!
銀さんが乗ってきたんだったよチクショォォ!!
心の中で思い切り叫び とりあえず何か決め手が
浮かぶまで湖からなるべく離れようと逃亡を続ける。
『逃げる気か!待てぇぇぇ!!』
「待てるかぁぁぁ!!」
くそっ 距離があるとはいえ相手は戦車だ
このままこうしていてもいずれ追いつかれる
一体どうすれば
「オーイ、テメェらいい年して何やってんですか
中二の追いかけっこかコノヤロー」
聞こえた気だるげな声に 視線を向ける。
前方左ナナメ二メートル先に
一足先に行ったはずの銀時が立っていた。
「銀さん、何でここにいる!
湖に向かったんじゃないのか!?」
「やー、ちょっと木陰でションベンしてたら
みんなとはぐれちまってよぉ 慌てて歩き回ってたんだよ」
「小学生の遠足か!!!」
戦場の この状況を見てもとことん緊張感の無い男だ。
「ま、何にせよそろそろ幕引きだしなぁ
ここは主人公の俺が決めとかねーとってトコか!」
銀時は俺の側に寄りながら 腰の木刀を引き抜き、
やって来るRAYの正面に立って構える。
「やめろ!木刀でRAYには勝てないぞ!!」
「言われるまでもねぇよ、だからトドメは
テメェがこれで刺せ 」
そう言って、銀時は俺に何かを手渡した。
これは・・・・最新鋭の小型ミサイル『スティンガー』!?
「なんでアンタがこんなもん持ってんだよ!」
「俺のじゃねぇよ、あのパツキン姉ちゃんが
どうしても渡してくれって寄越しやがったんだよ」
「エヴァが・・・ってことはやっぱり
はぐれたってのはウソか」
俺の問いかけに、銀時はただ笑ってこう答えた。
「何となく、こーなるんじゃねぇかって思っただけさ」
会話の間にも RAYは眼前に迫っていた。
『何をゴチャゴチャと!!死ねぇぇぇぇぇ!!!』
リキッドはRAYで銀時を踏み潰そうとしたが、
それを紙一重でかわし 右足で地を蹴って
銀時が頭部まで一気に跳ぶ。
木刀を大上段に振りかぶって
「兄弟だか宿敵だか知ったこっちゃねぇがなぁ、
喧嘩は自分の拳でしやがれ!!!」
渾身の力で振り下ろし RAYの口を破壊した。
「今だ!撃てぇぇぇ!!」
「これで終わりだ!リキッドォォォォォォ!!!」
銀時の呼びかけに、俺は間髪入れず
スティンガーを壊れた口目掛けて命中させた。
『何故この私が・・・こんな軟弱な侍共に・・・・・・・
ぬおおおおおおおおおおおおお!!!!』
リキッドが断末魔の咆哮を轟かせたと同時に
ミサイルはRAYの全身に誘爆し、大爆発を起こした。
これで・・・・やっと、終わった・・・・・
いや、これからか。
―まだ ママが残っている
「行くぞ、母ちゃんを待たせんな。」
「ああ。」
俺は頷き 銀時と湖へ向かった。
湖に着くと、全員が笑顔で出迎えてくれた。
「銀さん!さんも無事だったんですね!」
「まあ、お前等じゃあのぐらいで死なねぇだろ・・・」
「やはり俺が認めた兵士だ。」
「ジャック!!」
抱きついてきたローズを、そっと身体から離す。
「みんな、すまないな。心配かけて・・・・」
「まだよ、ビッグ・ママが残ってる。」
「エヴァ・・・ママは何処に?」
彼女は 静かに湖の先を指差す。
「あそこの花畑にいるわ 必ず生きて帰るのよ。」
「・・・分かった、みんな
すまないがもう少しだけ待っていてくれ。」
それを告げて、俺は花畑へと進んでいくが
「おい、。」
ふいに、銀時が呼び止める。
「何だ?」
「あっちと決着つける気なら・・・・
本気でいかねえと駄目だぞ。」
「ああ、分かっている。」
銀時達に見送られ・・・ついに、ママと対面した。
「待っていたわ、よくここまで来れたわね。ジャック。」
「聞かせて欲しい 何故ローズ達を連れ去る必要があった?」
問いかけに、ママは表情を変えずに答える。
「そうでもしないとあなたは命令なしで
ここまで来ないと思ったからよ。
もちろん危害は加えてないし、仲間も無事・・・」
「二人ほど、兵士に銃殺されかけたが?」
そこで 微かにだが初めてママの表情が動く。
「何?そんなことを命じた覚えは・・・・」
言葉を途切り やがて思い当たったように
「・・・恐らく、リキッドが独断でそうしたのだろう。」
・・・なるほど、これでつじつまが合う。
「そうか あと一つ答えて欲しい
・・・何故、ロシアに亡命したんだ?」
「・・・・・・『賢者の遺産』を知っている?」
賢者の遺産、名前だけは聞いたことがあるが・・・・
「賢者の遺産はアメリカとその同盟国2国の政府や
軍部が出し合った軍事資産のことよ。
私はこの半分をリキッドが奪ったとの情報を知り、
ソ連へ亡命したの。」
「遺産を取り返すために亡命したというのか?
だが・・・そんなに大切なものなのか?」
ママは 少し俯いて答える。
「その遺産を出し合った者の中に、私の父がいたの。」
「ママの父が?」
「ええ・・・でもある日を境に私の元に
帰ってはこなかった。」
それで・・・取り返そうとしたのか。
「私は軍に入隊し、コブラ部隊を結成した。
その時に知り合ったのは、スネーク。」
「リキッドに殺されたと 本人から聞いた」
「そうよ・・・アメリカは彼の遺伝子と私の遺伝子を使い、
究極の兵士を作り上げようとしたの。」
「創造者計画・・・・・・」
ママは 無言のまま頷く
「ジーンは私の遺伝子を濃く受け継がれ、
リキッドはスネークの遺伝子をそのまま複製した。」
リキッドは 完璧なクローンと言うわけか。
「でもそれが間違いだった・・・・・・その後、
スネークは 当時子供だったリキッドに殺された。
理由は『同じ顔を持つ人間は2つもいらない。』から」
「たったそれだけの理由で・・・・・・」
それでは、殺されたスネークだって浮かばれない。
「その後、私はリキッドに対抗するために
あなたの親の精子と卵子を使い、
スネークの能力のみを遺伝子に組み込み受精卵を作った。
―それが あなたよ。」
「勝手なことを・・・・・」
「私はあの時、まだ若かった。
彼の仇が取れるならどんな手段も使うと 決意していた。」
気持ちは、分からなくも無いが・・・・・・
復讐―それだけの理由で 俺はこの世に生を受けたのか
迷惑な話だ。
「あなたを保護したのも、最初は罪滅ぼしだった。
いつリキッドに殺されても おかしくなかったから
私は、あなたを強く育てた。」
俺の気も知らないで 勝手なことを・・・
「俺はあんたに・・・本気で惚れていたんだ。
それを、ただの罪滅ぼしだと?」
「でも後から思ったわ、それだけでは
またリキッドの二の舞になってしまうと。
だから、あなたを愛した。本当の息子のように・・・・」
本当の 息子?
その時 ママはスニーキングスーツを胸の所を少し空ける
そこには・・・大きな傷が刻まれていた。
「この傷を見るがいい・・・私が、母親になった証拠だ。」
あの傷が・・・母親になった証拠?どういうことだ?
「私は国に全てを捧げた、
体も・・・心も・・・・実の息子も・・・・」
ママは傷に手を当て 少しだけ苦しげに呟く。
「夜になると傷が痛むの。地を這う蛇のように・・・・」
「・・・息子は今、どうなっている?」
彼女は 静かに首を横に振る。
「分からない、私は息子に会うことを許されなかった。
私だけではない 父親であるザ・ソローも。」
「ソローは・・・あんたが殺したんだろう?」
「ええ・・・でも、それが任務だった。」
「任務だからって・・・・」
「兵士には任務が全て、感傷することは許されない。
・・・でも、私は幸せだった。
あなたという息子が・・・・いてくれたから・・・・・」
ママの目には いつの間にか涙が溢れていた。
そうだ、ママだって 悲しくないわけじゃなかったんだ
ただ 仕方が無いことだったんだ。
俺の事を・・・ずっと、愛してくれていたんだ。
顔は歪むが 涙はやはり出ない。
ママは、スーツを閉じて 涙を拭う。
「ありがとう・・・・私の話を聞いてくれて・・・・・」
「・・・・俺は、何にもわかっていなかった・・・・
全部、あんたが正しかった なのに俺は・・・・!」
「それでいいのよ・・・兵士には、任務が全てだから。」
言いながら ママは銃と∞の形をしたバレルを取り出す。
「よく聞いてジャック このザンジバーランドは
後30分で、全て消えてなくなるわ。
それまでに私を倒せば、あなた達は生き残れる。」
いきなり語られた言葉に仰天した。
「何だと!?待ってくれ!
せめてあいつらだけでも先に逃がしてやってくれ!!」
要求に、しかしママは頑として首を縦に振らない。
「駄目よ。あなたがいたから仲間はここまで来れた。
仲間がいたから あなたも私の前にいる。
彼等とて、自分達だけ先に助かることを良しとしないはず。」
銃とバレルを繋ぎ合わせ、俺に銃口を向ける。
「さあ、ジャック 人生で最高の30分にしよう!」
「・・・ママ!」
「お前は兵士だ、任務を全うしろ!」
うって変わった厳しい声音は歴戦の兵士のそれで
仕方なく 俺はライフルと拳銃を取り出した。
「さあ、来い!!」
俺とママとの決闘が 始まった。
本気で向かわないと、皆も脱出できなくなる。
この勝負・・・絶対勝たなくてはいけない!
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後書き(退助様サイド)
???「さあ、そろそろサブタイの肝となる
ビッグ・ママ対ジャックの対決です」
新八「なんか 思ったより話が重たくありません?」
神楽「こんな辛気臭いの銀魂らしくないネ。
何かボケろこのアマ!!」
???「無茶言わないで!そんなキャラじゃないから!
ギャグパートじゃないから!!」
銀時「あーはいはい、外野は静かにしなさーい。」
新八「ズルイですよ 銀さんだけ活躍して!!」
桂「そうだそうだ!俺だっての母親と
色々話がしたかったのに!!」
銀時「テッメ、ヅラぁ人妻好きもいい加減にしろぉぉ!!」
桂「ヅラじゃない!桂だ!!」
???「ハーイハーイハーイハーイおふざけはここまで!
次回は感動のクライマックスへ!こうご期待!!」
銀時「で、俺達は活躍すんのか?」
???「いえ・・・・
もうアナタ方のターンは終了しました・・・・」
銀時「えぇぇぇぇぇぇぇ」