俺はエヴァのバイクに乗って要塞へ向かっていた。
この調子なら さほど経たずに着きそうだ。
周囲で唸る風の音に負けない声でエヴァが言う。
「そうだ、あなたコブラ部隊の贈り物
2個も忘れていたから拾っておいたわ。」
「贈り物?」
「ええ、フューリーからは、小型火炎放射器、
ソローからはスピリット迷彩よ。」
「ああ、すまないな わざわざ回収してくれて。」
「まだあるわよ・・・受け取って。」
運転中にも関わらず、器用にも片腕を捻り
後部の俺にそれを手渡した。
受け取ったのはバンダナ ∞の文字が描いてある。
「それは無限バンダナよ。
それを着けてれば弾薬が無限に使えるわ。」
「弾薬が無限?どういう仕組みだ?」
「さあね?それよりジャック、そろそろ要塞よ。
覚悟はいい!」
言われて前方を見れば 見る見るうちに要塞の外壁が
その大きさを増していた。
「とっくにOKさ!!」
「行くわよ!!」
エヴァは鮮やかにハンドルを捌き、段差を利用して
勢いをつけ 大きく跳躍する。
バイクは弧を描いて飛び、要塞内に入った。
「相変わらずスタントプレイうまいな!」
「どうも!・・・見て、あそこ!」
「あれは!?」
収容所近くに設置された高台に兵士が並び
「よーし 一斉に撃てい!」
高台に取り付けられた二本の柱に括りつけられた
銀時と土方へ 一斉に銃口を向けていた。
「早く兵を倒して!!」
「分かってる!!」
俺は未だに疾走しているバイクから飛び降りざま
SVDで兵士を全て狙い撃った。
『ぐわぁぁっ!!』
間一髪で全員を薙ぎ倒し、高台へ登ると
銀時と土方の縄を解きにかかる。
「っ…!?生きてやがったか!」
「遅ぇぞ、どっかで買い食いでもしてたのか?」
ギリギリのピンチにも関わらず軽口を叩ける所は
両者とも相変わらずである
「悪いな二人とも、三途の川で少しばかり道草を食った。」
「三途の川ぁ!?んなとこで何してたんだお前!?
どっかのブラコン女じゃあるまいし」
「とにかく 今は仲間の救出が先だ!!」
縄を解いた土方さんが高台を降りた途端
収容所の壁にヒビが入り、そこが崩壊して
中から新八や近藤さん達が出てきた。
第十話 女は鳴かすことはあっても泣かせるな
「銀さーん!!」
「トシ!!無事だったか!!」
「ああ、今回ばかりはがいなきゃヤバかったぜ」
「そいつぁどうも…どうせなら土方だけ
助けなきゃよかったのに」
「聞こえてんぞコラァ!」
こんな状況でも、二人の仲は変わらないらしい。
「銀ちゃん、これ」
神楽が手に持っていたモノを銀時目がけて投げる。
「よっ・・・おっ、気が利くじゃねぇか神楽」
ニッと笑って銀時は 柄に"洞爺湖"と書かれた木刀を
いつものように腰に刺す。
土方も近藤さんから自分の刀を受け取っていた。
お妙さんと九兵衛に寄り添うようにして出てきたが
「よかった!!、生きてくれてたのね!!」
俺を見つけるなり、一直線に駆け寄り 抱きついてきた。
「お、おい!!今はそんなことしてる場合じゃ・・・・・」
「何よそれっ!濁流に呑まれたって聞いて私・・・・・!」
その目は涙で溢れていた。
ずっと・・・俺の心配をしていてくれたのか・・・
いつの間にか側に来ていたエヴァが言う。
「ジャック、ここはローズに謝るのが筋ってものよ。」
「ちょっ あなた誰ですか?」
「えれぇボインのパツキンじゃねーか、
の知り合いか?」
エヴァへと近寄ろうとして、銀時は顔面にパンチを受ける。
「銀さん?ちょっと黙ってなさいな」
殴った本人の顔は分からぬが・・・おそらくは
笑顔のまま物凄いオーラを出していたことだろう。
顔を引きつらせ、銀時は大人しく引き下がった。
「エヴァ・・・・分かった。」
俺はそう言って、へと向き直る。
「・・・・遅くなった 心配かけて、すまない。」
「いいの・・・ごめんなさい。」
微笑むの頬は僅かに赤くなる。
「よっ、君もスミに置けないねぇ〜ひゅーひゅー!」
「アンタいつの時代の人ですか?」
「いちゃついてる所悪いがな、
さっさとこのしけた要塞から脱出するぞ!」
土方さんの言葉に 大半が頷いて
移動を開始しようとした矢先
「待て、今出ても途中で殺されるのが落ちだぞ。」
その出鼻をくじいて、見覚えのある少年が現れた。
「何だ貴様は!」
九兵衛がお妙さんを庇うように前に出て、彼へ問いかける。
「少なくとも今はお前達の敵ではない
・・・久しぶりだな ジャック。」
「お前は・・・モザンビークの!?」
「そうだ。俺は、ヌル。」
ヌル。ジーンの事件で絶対兵士と呼ばれていた少年だ。
苦闘の末どうにか退けた相手で、
あの後 帰国して入院していたと聞いていたが・・・
「まさか、ここまで回復していたとはな。」
「俺の任務は終わっていないからな。
お前はいずれ俺が殺す!それまで死なせるものか!!」
つまり・・・・・俺に殺されるまで死なれたら困る
だから、回復してここまで来たということか。
「わかった・・・それで、脱出方法はあるのか?」
「ある、そこの兵器棟にシャゴホットが置いてある。」
「シャゴホットだと!?あれは俺が破壊したはずだ!!」
「極秘裏に回収されたのだ。あれを使い脱出する。」
「そうか わかった」
「シャコだかなんだか知らねぇけど、そんな大層なもん
俺達動かせやせんぜの旦那」
「心配するな沖田さん そっちは俺に任せてくれ
戦車の操縦訓練は受けている。」
「みんないいわね!!兵器棟まで来て!!」
エヴァの扇動により、皆が移動を開始し始める。
「ちゃん・・・あなた、いえあなた達・・・」
「ゴメンなさい 隠してたわけじゃないんです。
これが、任務でしたから・・・・」
悲しげに項垂れるの手をとり、
「いいのよ、それでもあなたは
私の知っているちゃんよ・・・」
お妙さんは やわらかく微笑んだ。
「お妙さん・・・・」
「お妙さん!!早く!!」
「さんも急いで!!」
俺達は寄ってくる兵を蹴散らしながら兵器棟へと駆けて行く。
「どうやって牢屋を脱出したんだ?
それに武器も どうやって見つけた」
「あーそれはですねぇ・・・」
新八は言いよどみ、ちらりと桂さんを見た。
桂さんはフフンと得意げな顔をしている。
「そういえば俺が来る前に変な生き物が
脱獄させていたのが見えたが・・・」
「エリーね、武器とか持ってきてくれたアル」
「エリー?あの白い生き物の名前か?」
首を傾げるヌルに補足を入れる。
「あれはエリザベスって言ってかつ・・・・
じゃねーや キャプテン・カツーラのペットだ。」
「ペット!?あれがペット!?
一体どんな趣味してんだ!!」
「エリザベスを愚弄するか貴様!
エリザベスは俺の唯一無二のペットだ!!」
「聞いたことねぇよ武器持って主人を脱獄させるペットなんて!
てゆうかあんなデカイのどうやって姿隠すんだ!!」
「・・・・ヌル?キャラ変わってんぞ。」
俺のツッコミにヌルは眉をしかめて押し黙った。
どうやら、感情も少しは蘇ってきてるらしいな。
兵器棟へ辿り着くと、そこに兵士の姿はなかった
あったのはシャゴホットと―見たこともない兵器。
「あん?何だ、あの二本足で立ってんの?」
「魚にしてはでかすぎるネ。それになんか変なカタチアル。」
「銀さん、これ もしかして・・・・・」
新八の台詞に、銀時はコクリと頷いてそれを指差し
「あーこれ、あれだろ?四足で川から上がって
人型ロボに退治されたカニもどきの親戚・・・・」
「小学館に怒られるぅぅ!!
形状違うし、そのネタ分かる人どんだけいるの!?」
「その程度の親戚ならまだいい方だ・・・・・
あれは、メタルギアだ・・・」
「旦那、メタルギアってなんですかぃ?」
沖田君の問いに、俺はそれを見つめたまま答える。
「メタルギアは二足歩行戦車だ。
その戦闘能力は現代兵器を凌駕するくらいだ。」
「とっつぁんの大砲よりタチ悪いってことか」
「まあ、そんな所か」
「でも・・・あのメタルギア、
今まで見たこともないわ。新型?」
REXが奪取されたという話は聞いていたが
目の前のメタルギアは、記憶にあるそれとは
全くといっていいほど当てはまらない。
・・・誰かが、新しく作ったのか?
ヌルが俺の肩を叩いた。
「今は脱出することが最優先だ。
ジャック、シャゴホットの操縦を。」
「分かった。」
その場から一歩進んだ まさにその瞬間
何処からか兵士が現れ、俺達の周りを
あっという間に取り囲んだ。
「囲まれた!?こんなときに!?」
「慌てるな!新八君!」
「やはり生きていたか!兄弟!」
鉄橋を見上げれば そこに、リキッドがいた。
「リキッド・・・・」
「さすがはあの男の血を引いているだけのことはある。
だが、お前はここで終わりだ。」
「リキッド・・・・・・お前が兄弟と呼ぶ理由が
死に掛けて、ようやくわかった。」
奴はほう、と呟いて口の端を歪める。
「どうやらあの世であの男と会ったようだな。」
「おい、どういうことだよ!!」
この雰囲気じゃ隠しておくわけにもいかない
それに、元々隠す気もない。
俺は 死後の世界であったことを話した。
「そいつぁまた、突拍子もねぇ話だな」
「さんが・・・・試験管ベビーだったなんて・・・・」
「試験管から生まれてくるアルか?
なんか改造ヒーローみたいでカッケーアル。」
「改造ヒーローか、俺もそんなんだったらよかったのにな」
ヌルも唖然とした表情で俺を見ていた。
「ジャック、お前も造られた兵士だったのか・・・・」
「ヌルの方がまだマシさ。
完全な人造人間なんだからな、俺は。」
「・・・・」
「、それに皆すまない・・・俺も知らなかったんだ。」
銀時が ふっと笑って言った。
「謝る必要ねーよ。
、テメェは自分の道を生きてきたんだろ?
・・・それなら問題ねぇさ。」
その瞳には、あの時のスネークと同じ光が宿っていた。
「ああ。」
・・・そうか 道理で見たことがあるはずだ。
「別れは済んだか?兄弟。」
呼びかけに 俺は奴を睨みつけて叫ぶ。
「リキッド、ママは何処に行った!」
「ビッグ・ママならもうここにはいない。」
「何だと!?なら、何処にいる!!」
「フン、教えて欲しければ・・・・・
この私を倒してからにしろ。」
どうやら、最後の決着をつけるつもりらしい。
オセロットが現れ リキッドに呼びかける。
「リキッド!ここは私にお任せを!!」
「オセロット、貴様はこいつらの始末をしろ。」
「しかし!!」
「逆らう気か?」
「・・・・・分かりました。」
オセロットが悔しげに顔を歪めてたじろぐ。
「さあ、ここまで上がって来い!ジャック!!」
その言葉と共に 囲っていた兵の一部が間を空ける。
俺は、そこを抜けてリキッドがいる鉄橋へ進むが
鉄橋に上がった直後 一斉に下の兵士が
攻撃を仕掛けてきた。
「うわ!!何のつもりだ!!リキッド!!」
「馬鹿め、誰も1対1の対決をするとは言ってない。
これだけの銃弾の雨をかわし、私を倒せるか?兄弟!」
勝ち誇ったように笑うリキッド。
「くそっ・・・!卑怯な!!」
俺は被弾覚悟で奴へと近づき―
唐突に 下からの銃撃がピタリとやんだ。
「・・・何だ?一体何が起きた?」
「ヌゥ?何をしている!!」
同時に下を見下ろせば、
そこに兵士と戦う銀時達の姿が見えた!
いや・・・銀時達だけじゃない、オセロットの山猫部隊も
彼らに混じって 兵士達と戦っている!
「おいパチスロぉ!テメェ、アイツの部下じゃ
なかったっけ?こらどーいうつもりだ?」
「オセロットだ!何、俺は純粋に彼らの闘いが見たいだけだ。
余計な茶々はあってはならない!」
「ケッ、エラそーに 何かあったら
テメェらを叩き斬ってやるから覚悟しとけや!」
「フ・・・好きにしろ。」
「!さっさとそこのムカつくオヤジやっつけるネ!!」
「ここは僕たちに任せろ!!」
「旦那!!負けたら承知しやせんぜ!!」
「さんは、そいつに集中してください!!」
「大丈夫だ君!!侍は約束を破らん!!」
「貴様は貴様の敵を討て!!」
ヌルやも 拳銃を持って奴らに応戦している。
「ここで死ぬなんて許さない!必ず勝って生きろ!!」
「!負けないで!!」
「みんな・・・・・」
リキッドが悔しげにオセロットを睨みつける。
「オセロット!!どういうつもりだ!!」
「我々は、誇り高い部隊だ!
隊長が認めた男の誇りを傷つけることは許さん!!」
「何を下らんことを・・・」
奴の呟きに 毅然とした視線でお妙さんが一括した。
「リキッドだかローションだか知らないけど、
何様のつもり?侍なら男らしく戦いなさい!!」
「戦いなさいだと!?」
「おーい、どこのお母さん?」
面食らったような表情の後、リキッドが
ぐにゃりと表情を歪ませ 哄笑を響かせた。
「・・・・・・・・フハハハハハハ!!
何とくだらん!!さすがは時代遅れの侍どもだ!!
そのような甘っちょろい感情を抱いて戦場で生き残れるものか!!
オセロットもジャックも、愚かな輩どもに感化されおって!!!」
「貴様・・・侍を馬鹿にするな!!!」
俺は兵器棟じゅうに聞こえるくらい、声を張り上げて叫ぶ。
「侍には、兵士には持てない感情がある!!
守るべきものや、自分の信念を突き通すために
どんな敵にでも立ち向かい、戦える―
それこそが、侍魂だ!」
侮蔑を含んだ目で、リキッドがこちらを見る。
「くだらん!!そんな安っぽい感情で戦うなど!!」
「侍魂が安っぽいかどうか・・・お前に分からせてやる!」
「いいだろう!!その侍魂とやらを
お前ごと打ち砕いてくれる!!」
リキッドが 床を蹴ってこちらへ向かう
俺も同じようにして、奴へと向かっていった。
「スネークの血の争い、ここで終わらせてやる!!
リキッドォォォォ!!!!」
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後書き(退助様サイド)
???「さあ、ようやく盛り上がってまいりました。
対リキッドの戦い!」
銀時「おお〜いいねえこの展開。
俺達の見せ場もあるし、悪くねえな。」
新八「やっとまともになった気がしますね。
…まあ強いて言うなら姉上のあの言葉、本来
オセロットさんが言うはずのセリフなんですが・・・」
妙「バカっぽい男より私が言った方が決まるでしょ?」
???「・・・オセロットさん泣くよそれ」
神楽「でもギャグが減ったから笑えないアル。」
???「神楽ちゃん。そんなこと言っちゃ駄目だから!
原作でもあるだろ!多少は!!」
新八「まあ、確かに・・・・」
銀時「で、俺の活躍は次あるんだろうな?」
???「さあ?」
銀時「何!?さあって!!
もしかして俺たちザコ片付けだけか!?」
???「どうだろうねえ?銀さんの態度しだいかもよ?」
銀時「・・・分かった!次回までいちご牛乳断ちするわ!!」
新八「何その願掛け!
ゲームやりすぎの小学生への罰ですか!?」