それは、阿修羅を封じるよりも遥かに昔
記憶が定かではないくらいの昔


"魔武器"の存在がさほど一般的ではなかった頃の


一人の"魔武器"との出会い







情報を得て、魔女を狩るべく赴いたその場所で
私が目にしたのは


見事な切れ味で"割かれ"、もはや建築物としての
役割を放棄した壁や床 天井の残骸と


かわりに大きく外界へと開けた魔女の本拠地





味気ない瓦礫の中で際立っているのは


主である魔女の体内から吹き出され、鮮烈に
辺りを彩っている


この現状を作り出したであろう当人の 頭髪の白銀





スーツのような服をまとった、すらりと長い背丈


クセのある長髪を気の向くままに遊ばせて





「こんちは、お前が死神?


天気の話でもするかのように和やかに


血を纏っていた魔武器は、ズタズタに切り裂いた
魔女などには目もくれずに訊ねる













〜L'antenato di due pezzi di lame
"ありえたありえない奇縁"〜












「貴様が・・・ウワサの"双剣"か」


「まーな、もっとも"フラガラッハ"のが通りがいい
むしろ本名より呼ばれた回数多いかもな」





三白眼に近い目つきをして、片口を歪めた
傲岸不遜な佇まいは どこか頼もしくもあった





「単刀直入に言おう、魔女のクソどもを
世界から一掃するために力を貸せ」



「ん・・・別に魔女討伐にゃー興味ねぇんだけどな」


「それなら足元のそれは何だ?」


「あーこれ?俺がこの女ブチ殺ったのはさ
子供を、儀式に使ったから」


「・・・子供を?顔見知りか」


「いいや、全く会ったこともない他人」





吐き出された台詞は一貫して淡々としており





「生きながら腹掻っ捌いて 心臓やら内臓やら
脳味噌引きずり出してたなら、同じ目に
合わせてやらねぇといけねぇよな?


子供に害を与えたなら、同じだけ
害が与えられると身を持って知るべきだ



内容はことごとく常軌を逸している


・・・だが、表情はあくまでも真剣だ







しばらく間を置き





こちらを見据えた"フラガラッハ"は


凶悪な面相を少しばかり緩め・・・


おそらく本人としては"人懐っこそうな笑み"
実践し 明るく告げる





「まあでも、何かあったら手伝ってやるから
遠慮なく頼ってくれ 特に子供に害を与える奴を
ブチ滅ぼす
とか子供を助けるって頼みは大歓迎だ!!」


ふん、精々役に立つんだな」





・・・私を前に その態度を崩さないとは
無神経なのか肝が太いのか


どちらにせよ"見所はあるな"と感じた









実際、"フラガラッハ"は常にあちこちを歩きながら
一人で戦っているコトが多かった





時折、行きずりの職人と組むコトもあったが


大抵は一人で敵対者の魂を狩り取っており


その腕前には 他の八武衆の面々も
一目おくほどであった





「流石は"双剣"・・・攻撃に乱れがないな」


「ところがどっこい "剣"じゃねぇんだ俺」







ケルトの出でイギリスからの移民である あの女は


時代のせいか、はたまたウワサに上るほどの
強さのせいなのか


・・・決して民には歓迎されてはいなかった





そんな周囲の拒絶により 半ばなし崩しに
夫と子と別れてしまっていたコトもあってか


"フラガラッハ"は・・・異常なほど"子供"に対する
愛情と執着を披露していた







「ところでお前、子供は好きか?


初対面の相手に会えば、大概は
この文言から唐突に始まり





「子供はいいぞ?見てよし触ってよし愛でてよし
まさに癒しの存在、言うなれば天使だ!

あの愛くるしい笑顔!仕草の一つ一つに俺は
輝きと潤いと心からの幸福と満足を得るね!!」






放っておけば何時間でも飽きるコトなく


子供についての礼賛を延々と繰り広げる





もちろん、相手がどれだけ困ろうが引こうがお構いなし





倒錯主義もいい加減にしろ、身を滅ぼすぞ」


と否定すれば 即座にヤツは目を剥いて
物凄い剣幕で反論してくる





失礼な!
変態なんかと一緒にすんじゃねぇよ死神!!


言っとくが俺は子供を性的対象でなんか見ないからな?


あくまで子供は愛顧対象であり愛護対象であり
保養対象であり保護対象であり育成対象!

そんな存在に手前の卑しい性欲押し付けようなんざ
金輪際思わんわ!むしろそんな輩がいたら
性別関係なく俺がナニをブチ切ってやらぁー!!


「そこまで聞いてはおらん」


「いつも心にー!YES子供NOセクハラ!!」


「やかましいわ!!」





気付けば、自然と相手にチョップをかましていた





うぶっ い、いいモン持ってやがんな・・・」


「今後は余計なコトを慎め、全く口の減らんヤツだ」


「なぁ死神・・・俺が女だって忘れてね?」







上記の性格のせいか、それとも三白眼が織り成す
見た目の印象があまりにも悪かったからか





八武衆のメンツともさほど打ち解けた様子も無いまま


"フラガラッハ"は徒党を組むことも

親しき友を持つことも、作ることも無く


迫害の過去も事実も背負って


一人世間を渡り歩く







それでも顔見知りと・・・私と出会ったならば


微塵としてそんな背景を感じさせるコトなく
いつだって あっけらかんと笑っていて





「お前、顔のお面怖いんだよ それじゃー
子供が泣いて当たり前じゃねぇか」


貴様が言うな戯けが、それに私が今更
ガキになど媚を売ったところでどうなる」


あぁ?分かってないな死神 子供はいいぞ!

お前も持ってみれば分かる、あの愛しい存在
側にいれば誰だって優しく変われるんだからな」





必ずと言っていいほど、ひたすらにしつこく


"子供がいることの素晴らしさ"を嬉しそうに
延々と語り倒してくる





「一々うるさい女だ・・・」







正直 自分勝手に過ぎる信念には辟易していたが





お前も一度子供を持て!でもって向き合え!
そーすりゃ絶対分かるって!!」






それでも生き生きと輝いていた鳶色の瞳を


忘れる事は、出来なかった














―それから どれほどの日が経ったか
自分でも分からなくなった頃





「・・・ホント〜にあの子の言った通りになっちゃった」





二度と"鬼神"を生まないために設立した組織・死武専


職人・魔武器の素質を持つ子供を集めて
教育していく形態は必然的なモノだったけど





そうやって、育っていく子供達を見つめる内


彼女の言葉が 少しだけ分かったような気がした







子供はいいぞ〜死神!どーよ、癒されるだろ!』





もしも・・・現役として活躍していた
"フラガラッハ"が、この時代に生きていたのなら


満足そうな笑顔でこう言ったかもしれない


『俺の子孫共々、ちゃんと愛してやれよな

お前にもきっと出来るって・・・
俺が保障してやるよ!








ま、やれるだけやってみるさ」


呟いて・・・ふと虚空を仰いで言葉を足す





"息子も、他の子たちも、君の子孫も
みんな元気でやっているよ"









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あとがき(今回は自キャラのみでの対談)


やっちゃいましたーまさかの隠れ設定短編・・・


本編には出てこないし、表の夢小説読んでないと
意味不明だし 名前変換も無いので隠し行きっす

ここでは独立した一つの話だと思ってください


「にしては結構俺のキャラ立ってるよな〜」


あ、ちーっす"フラガラッハ"さん!
私でもそう思います!


ぶっちゃけ万が一・・・いや京が一ですがもし
本編登場とか願われたらどうします?


「いやー流石に俺は本編登場無理だな、なんたって
ずいぶん昔の話だぜ?死神と会ったの
なんで元気のいい連中にあと頼むとするわ」


まあそうですよね・・・って敵じゃない立場で
死神様を平気で呼び捨てにするとかアナタぐらいしか
出来ないと思うんですが(しかも怖い時の)


「けどもったいねーわ、やっぱ、出来るなら教師
いや用務員でいいから死武専出てみたかったわー!」


生まれる年代が違ってたら有り得たかもね、流石に
寿命はどうしようもない


「しっかし、死神の奴もいい顔してんじゃん
やっぱあれだ子供に囲まれてっからだな!

畜生羨ましい!妬ましい!
俺だって笑顔の子供たちに囲まれたい!名前とか
役職とかオバちゃんとかて呼ばれて慕われたい!


ぶっちゃけ嫌われてもいいから死武専の生徒全員
ハグしてやりたい!職人も武器も魔女もまとめて
きやがれ!子孫共々全身全霊で愛してやるぜ!!



もっそい熱烈っぷり!引かれるくらいの子供好き!
そこに痺れる憧れない!


「当ったり前だそれが俺のアイデンティティだし

で、ところでお前、子供は好きか?子供はいいぞ?
勿論言うまでも無いが子供を傷つける奴は大嫌いだ
そんな奴は例え手前の子供でも容赦なくブチ滅ぼす!
まずは髪から!



怖ぇ!"フラガラッハ"さんマジ怖ぇ!!
武器化した腕はしまっといてください!!

とゆうより、案外スパルタなんですか?矛盾してね??


してねーよ全然!厳しいしつけも時にはするが
基本は愛を注ぎ倒すのが俺の教育方針だ!

子供には愛をもって接する、叱る時は叱って導く
それが出来ないんなら親である資格なんか
さらっさらねぇよ!!」


言い切ってるトコ申し訳ないんですけど
人によっては、完璧に"押し付けがましい"と思われ


「実質押し付けに近いからな、それでも俺は
自分を曲げないし曲げられねーんだな、これが」




・・・本当、本編に出せないのが残念です
(プロポーションもグンバツなだけに/ボソ)


とにかく 拝読ありがとうございました〜!