パティーが読んでたソレを横から覗き見したのが
そもそものきっかけだったと思う





「そんなモンにハマって、キッドに見つかったら
ヤバいんじゃないの?」


「見つかってもウマくごまかせば平気だもん♪」





無邪気に笑うパティーにあきれながらも


ちょっとしたヒマつぶしになるかと思って

私もついでに付き合ってみた


…そうしたら、見事にハマってしまった





同じようで違う 並んだ二つの絵に







「お姉ちゃーん今回の意外とムズかしいね〜」


「ああ…なんかこー、この辺とか怪しいんだけどな」


「キッド君に見せたら一発で分かったりして」


「かもな…けど変わりにものスゴク
面倒くさいことになると思う」


前みたく怒るか、丸め込んだとしてもウツに入るか


どっちにしろ後々手を焼かされるのは私たちだ





「そーだね、じゃ別の人に手伝ってもらお」


「誰に?…ってちょとパティー!







お姉ちゃんの声を背に私は教室を出ると





「ちょっと来て!」


なにイキナリ!?僕これから行くトコロが…!」





近くにいた君を引きずってきた












〜Guarda la concentrazione
"目には色々と注意しろ"〜












「お姉ちゃん!連れてきたよ!!」


「って後ろエリつかむのは止めなさい!
首しまってるから!すっごく苦しそうだから!!」


「ありゃりゃ、ごみ〜んに?」





手をはなせば ケホケホむせながら彼はノドをさする





「いやあの、それはかまわないよ
けど僕 本当に急いでて…用件ってなに?」


「そんな時間は取らせないよ ちょっとコレ
解くの手伝ってもらおうかと思ってさ」





ひょいとお姉ちゃんが机にのせてた本を
取り上げて、いどんでた問題を見せたら


君はきょとんとした顔で問い返した





「え…なにソレ」


「知らない?"まちがい探し"っていうの」


「それはまぁ、分かるんだけど…え?
もしかしてソレの間違いを見つけろってコト?」


「うん♪」


「どーしても最後の一個が見つかんなくてさ〜
ホント頼むよ」







チラリと前髪に半分隠れた顔が時計を見て


小さくため息をついたの口が
ふわっと笑みの形に釣りあがった





「…分かった、ちょっとだけ手伝ってくよ」


「わーいありがと〜!」


うれしそうに笑ってパティーは自分の席に座った


私も、不在のソウルの席に腰かけつつ
つっ立ったままのツナギ姿へ声をかける





「席はキッドんトコが開いてるから
来るまで座っちゃっててかまわないよ」


「ありがとう…ご子息様はどちらに?」


「キッド君ならおトイレだよ〜多分また
ペーパーの紙折るのに時間かかってるんじゃない?」


「それより、ここじゃその呼び方するなって
会った初っ端怒られてたろ?」


ゴメン つい仕事でのクセが…」







言いながら、困ったように頭をかいてた





君はガッコ行きながらお仕事もしてて


ごくたまーにおヤシキではたらいてるのも見かける





なんでもその時はキチンと仕事として
人に接しなきゃなんないらしくて


トモダチの私たちにも敬語、とくにキッド君は
"ご子息様"ってレーギ正しく呼んでる





…大人の世界ってメンドくさいね









座ってじーっと絵を見比べていたけれども

まだ まちがいの最後の一個は見つからない





「これ結構むずかしいね…」


「でしょ?」





時計をチラチラ気にしながら、モジモジと彼は言う





「やっぱりキッド君が戻るまで待った方が
いいかもしれないよ?ホラ彼こー言うの得意だろうし」


逆だよ、キッドがいたら間違い探しが出来なくなる」


「どうして?」


「それがねー、ずっと前にキッド君の前でやったら
ものすごいケンマクで怒り出したの」





そこでお姉ちゃんと顔を見合わせて、声をそろえる





「「同じ絵が並んでいるのに片方が
アンバランスだなんて全くもってけしからん!!」」








ポカンとバカみたいに口を開けてたけど


相手はそのセリフの意味をちゃんと
理解したように苦笑いしてた





「ああ、そういうコトか」





こいつもキッドの神経質っぷり及び
左右対称へのこだわりを十分理解している





「でも説明したらきっと分かってくれると思うし
ダメだったら、日を置いていどむのも一つの手だよ」





申し訳なさそうに言いながら、が席を立つ





「なんで僕はこの辺で…力になれなくてゴメンね」


え〜もう少し付き合ってってよ
解けないまんまってスゴいモヤモヤするし!」


「そこは解けるよろこびを味わうための
楽しみだと考えて乗り切ってください」


「何でそんな急いでんの〜?
あ!もしかして今日もバイ「あ゛ー!!」


「ちょっと君達!」





二人の上げた声のボリュームに
負けないくらいの声が張り上げられて


まばらにダベってた教室中の奴らの視線が

一気にこっちに向いてビビった





「少し静かにしてくれないかなぁ
勉強してるのに迷惑だよ?


「あ、ごめんオックス君」





謝るに あの二本ヅノみたいな髪型の
オックスは眉をしかめながら席に向き直る


それにつられて徐々に他の奴らの目も
私らから離れて行くけれど





「なんかエラそーだな…あの髪の毛
両方引っこ抜いてやろうかな」


やっちゃえーお姉ちゃん」


「止めときなよリズさん、彼だって怒るよきっと」





それもそうかと思い直して、私はもう一度
二つ並んだ絵へと目を落とした





「…あの、どうして僕の腕をつかんでるの?」


「決まってんじゃん 間違い見つけるまで
逃がすつもりはないからね」


「いやその悪いんだけど元々ちょっとって
約束だったハズじゃ?それに遅刻はマズイんだって」







ややイラだったお姉ちゃんの目が私に向けられた


オッケー、鶴の一声だね!


親指出してOKサインを送ってから

すかさず目と声に力を入れる





「グダグダ言わず手伝えやダサ男が
バイトの件、ここで皆にバラすぞ」



「わ…わかりましたよ!もう!


観念したように叫んで君は席に座り直した





他の人たちがまたこっちをチラ見してたけど
そんなの気にしないもーん





「…さっすがパティー」


「えへへ〜ほめられちった」





よーし、本腰入れて三人で
最後のまちがい見つけるぞコノヤロー!









…って意気込んでたんだけど





ずーっと同じ絵を見つめてたら目が痛くなって


全然ちがうトコが見つけらんなくて

だんだんタイクツになってきた





うー…なんかイライラしてきた」


「こら机を足で蹴らないの うるさいでしょ」


「だぁって〜…」







ふくれツラする妹にやれやれと呆れながら





「全く、だって困るだろ?」





同意を求めて隣を見て…ハッとした







亜麻色の髪を、机に乗せた右腕でかき上げて


ジッと絵に目を注いだ円らな鳶色の瞳が
あまりに真剣で





「…え?ゴメン聞いてなかった、なに?」


「いっいや何でもない!


私はあわてて返すと、間違い探しに
熱中し直すフリをして視線を外した





……分かってはいるけど


改めて隣に座るツナギの顔がそこそこ
イケてる事を再認識する





普段はあの髪の毛が顔を上半分隠してるし


人並みの意見しか言わない、自己主張の
ウスめな地味さがどっか野暮ったくて

友達の付き合いから進展させる気は無いんだけど





あの目が出てると ほんのちょっとだけ
ドキッとするというか何と言うか…







「お姉ちゃん顔赤くない?」


「きっきき気のせいだろ!





モロにあわててた所で肩を叩かれたから


お姉ちゃんはビクッ!と飛び上がって
ちょっと面白かった





「な、なんだよっ


「いやあの…ひょっとしてこの右上のコレ
最後の間違いなんじゃないかなーと」


「見つけたの?どれどれ!?


「この辺の、ここんトコかな」





指差す部分を注目して 比べて…





「「ああ!本当だ!」」


またオックス君が指でしーっとか言ってきたから
ゴメンって小さくあやまっておく





「これでもう用はすんだよね?じゃあ僕はこれで」


うん!ありがとね〜君!」





私はバタバタとあわただしく教室を出て行く
ツナギ姿に手をふった







げ、もうこんな時間か…何か悪いことしたな」


「でもおかげでまちがいが見つかったから
よかったね〜お姉ちゃん」


「まーな…でも何でアイツ連れてきたの?」





聞かれて ちょっと思い出しながら答えた





「たまたま目に入ったし、あと頼めば
手伝ってくれそうな気がしたからかな?」


「ああそう…つかキッド遅くない?」


「遅いよねーまだトイレかな?」





キッド君は本当に神経質だから、もしかしたら
トイレで泣きながらペーパー折ってるかも





「まちがい探しも終わったし、迎えに行こ?」


「そーだな」





目を交わして、私たちも教室を出た








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ややこしいけど、今回はトンプソン姉妹
二人の視点で交互に話を進めていきました


キッド:なんでオレがいないモノ扱いなんだ!


狐狗狸:記述の通りおトイレ入ってたからです
…後々お話に出てくるので勘弁下さい


リズ:パティーはどーやってあんな本を手に入れたんだよ?


パティー:ひーみつ♪


狐狗狸:年代的にはあやふやながら…まー
なくも無いかなってことで、一つ


キッド:…しかしそんなに面白いのか?間違いさがしなど


パティー:こればっかりはやってみなきゃ
わかんないと思うよ〜?


リズ:似たような事はやってるけどな




蛇足ながら…彼は仕事の時には邪魔にならんよう
ワックスで固めたりして髪の毛上げてます


様 読んでいただきありがとうございました!