買い物の途中、店の中で珍しい相手と顔をあわせた





「あ、こんにちは君…バイトの帰り?」


「こんにちはマカさん まぁ大体そんなトコ
ソウル君は一緒じゃないの?」


「アパートで留守番してるけど…ていうか
いつも一緒にいるワケじゃないんだけど?


「ああゴメン、君らパートナーだから
ついつい二人セットで考えちゃって」





両手を軽くあげながら済まなさそうに謝られ





「いいよ 別に怒ってないから」


私は、小さく笑って許す







亜麻色の髪が顔の半分をおおってるから
普段から彼の表情は読みづらいんだけど


その分、声や仕草なんかで感情を
分かりやすいくらい表してくれるからか

話していて"わりと親しみやすいな"って思える





「ええと、夕食の買出し?」


そう!今日の夕食当番は私なんだ
で、明日がソウル」


「へぇー君らのトコロは当番制なんだ
やっぱりマカさんの方が上手いの?料理」


「うーん…悔しいけど どっちかというと
料理はソウルの方が得意みたい」





途端 彼の口が微妙なカタチで半開きになる












〜Giorni chiassosi
"バカ騒ぎも悪くない"〜












「…なにその"マズイこと聞いたかな"って顔」


「えっ、いやいやいそんなつもりじゃないよ!
本当だって信じてください!





あわててパタパタ手をふる行動はとても普通の反応


普通すぎるだけに、無意識にせよそうでないにせよ
少しはそう思ってたことがあっさり分かる





全く…とため息つきつつ私は問い返す





「逆に聞くけど、君は料理得意なの?」


「え…僕?僕は…うーん…」


彼は腕を組んで首をかしげ、深く考え込んでしまった





「なんでそんなに悩むの?
ひょっとして一度も料理したことないとか?」


「いやあの、流石にそれはないんだけどさ」





それもそうだ バイトの収入で一人暮らしなら
自炊しなきゃやってけないハズだもの





「自分の料理の味についてって…今まで
深く考えたことなかったから どうなのかなって」


「え…そうなの?」


「食べられる味であれば特になにも考えずに
食べてたし、好み云々言える立場でもないから」


私には、ちょっと信じられなかった

自分で作る料理は、誰が食べるにしても
なるべくおいしい方がいいハズ





「ひょっとして君って、誰かに
自分の料理を食べてもらったことないの?」






問いかけに少し沈黙が下りて





「……よく考えればそうだった」


ちょっとだけ寂しそうに返された答えは
予想していたモノだった





だから思い切って提案してみた


「じゃあさ、今度君のアパートに
ソウルと二人で遊びに行っていい?」


「ええっ!な、なんでイキナリそんな話に!?」


「だから、遊びに行って一緒に料理を
作って食べくらべてみようって思って…どう?


「いやあの、僕のアパートお世辞じゃなく本気でボロイよ!
それに家具や食材もほとんどないから
ロクにおもてなしも出来ないだろうし…」


並べ立てられている言葉は否定的だけれど

口を開くその様子には 迷いがにじみ出ている





「だったら…逆にそっちがウチに遊びに来るとか」


え!そ、それだと…メーワクにならない?」


「平気平気♪ソウルもきっと歓迎してくれるよ」





言って笑えば、少しばかりモジモジしてから





「そこまで言ってくれるのなら…お言葉に
甘えさせてもらっても、いいですか?」


ほっぺを赤くして彼はおずおずと返事した





「もっちろん!」







バイトの予定とかもあるから、お互いに
都合がつきそうな週末に約束をして別れ


帰ってからソウルにそのことを話せば





「ふーん…ま、いいんじゃね?


いつもよりやや嬉しそうに笑ってた









そして…来る約束の日にベルが鳴り





「お邪魔しまーす」


やって来た彼の姿はツナギじゃなくて

ペパーミントブルーのボーダーカットソーに
デニムジャケットと、黒ズボンだった





「私服姿って、初めてみたかも」


見慣れてない姿なだけにわりとイケてるかも

…これで髪の毛あげたらモテそうなのに





「誰かの家に遊びに行くの初めてだから
それなりの格好しようかなって…古着だけど」


「ま、服のセンスはいつもよかマシだな!
そのパッツン髪が全体的にダセェけど」





照れたようにうつむく君を茶化すように
ソウルが笑いかけたトコロで





「おうおうおう!そんなダセェ奴なんかより
オレ様を見ろ!ひゃっはぁ〜!!」






いつの間にかソファの背もたれ部分に

バランスよく立って叫ぶブラック☆スターが…


「ってなんでブラック☆スターまでいるの!?


「ご、ゴメンねマカちゃん 止めたんだけど…」


「オレ様にナイショで料理ショーやろうなんざ
百年早ぇーんだよ小物どもが!ひゃははは!!





困ったように告げる椿ちゃんの側で
悪びれもせずに笑い続けるブラック☆スター


もちろん、二人を呼んだ覚えは無い





「オイオイ、お前しゃべったのかコイツに」


「うん…そこで会っちゃって 材料持参でなにしに行くのか
白状するまで離してもらえなくてつい」


「そっか…災難だったね」





うなだれる君へ思わず同情する


すっごい押しが強いからなぁ〜アイツ…







何はともあれ、会話を間に挟みながら


私達三人は当初の予定通り簡単な料理を作り

あとの二人は、その手伝いをして


出来たいくつかの料理をテーブルの上から
好きなように取っていく





「ねぇ?どう 私の作った料理」


「女の子の手料理って初めて食べたけど
その…とてもおいしいです」


ありがと!君の作ったピザもおいしいね
これってどーやって作るの?」


「ピッツァ・マルゲリータは少ない材料で
出来る簡単なものだから、あとでレシピ教えるよ」


「まあ食える味だがの料理ってよぉ
なーんか一味足んなくね?」


あ、オレも思った!
今ひとつパンチにかけるんだよな〜!!」


「そうかな…私はこのままでもおいしいと思うけど」


「あ、ありがとう椿さん…」







そんなこんなで楽しく料理を平らげて


椿ちゃんとで食器を洗ってひと段落したところで





「マカさん…今日は本当にありがとう」


道具を収納しながら 君が言う





「友達の家に招待されたのって初めてだから
……とても、うれしかった」


髪に隠れてない下半分の顔と耳を真っ赤にしながら
すごく楽しそうな声で言われたので





「いえいえ、どういたしまして♪」


「今度はウチにみんなを呼ぶから 遊びに来てね」


私たちも思わず笑顔でそう答えた


…そう言ってもらえるとこっちも呼んだかいがある







後片付けを済ませてダイニングに戻ってくると





「「「な、なにやってるの?」」」





床で痛そうに腰をさするソウルと、
ソファに寝転がって笑ってるブラック☆スターがいた


オレが聞きてぇよ!ソファで寝てたら
無理矢理コイツに落っことされたんだよ!」


「つまんなそーにゴロゴロしてたお前に
面白い遊びを教えてやってたんだろーが!」


「遊びって…ソファから人を落っことすのが?」





呆れて呟けば、ソファから上体を起こした
ブラック☆スターが胸を張る





おうよ!ソファの上でいかに相手を蹴落とすか
考えただけで楽しいじゃねぇか!


偉大なるオレ様がこの遊びに名前をつけてやる!
その名も"ソーファ"だ!どーだ!!


「そのまんまじゃねぇか」


「でも、私は素敵な名前だと思うわ」


「ほうほう…で、信者のお前はなぜ黙ってる?
素晴らしいと思わねぇのか?」


僕?!えっと…いいんじゃない?覚えやすくて」





その答えに満足したらしく ニカっと笑って


「そーかそーか、じゃ今度はお前がかかって来い!





アイツはソファに寝転んで君を手招きする


あー案の定 招かれた本人すっごいとまどってる

可哀想なくらいキョドってるよ


「ちょっとブラック☆スター…止めてあげなよ
君困ってるじゃん」


「うるせぇ!オレの誘いが受けられねぇってのか!


「いやあのそーいうつもりじゃ…」


「いーじゃねぇか、アイツなりの歓迎だろ?
受けなきゃ失礼に当たるぜぇ?


ソウルまでニヤニヤ笑ってたきつけるし…

もう、男って本当にバカなんだから





「しかたない…お手柔らかにお願いします」





言ってソファの隙間に身体を入れた彼を

ブラック☆スターはすかさず捕まえて
放り投げようとするけれど


どうにか腕をすり抜けて下から潜りこんだ
君が相手を振り落とそうともがく







「お〜なんだ、アイツ結構しぶといな」


「あぁ…大丈夫かしら…」





白熱した攻防に片や期待が、片や不安が高まる





……私はというと


激しい動きのせいで
はね上がった髪の下から現れた彼の顔に

なんでか分からないけどモヤモヤしていた







のクセに中々しぶといじゃねぇか
このヤロ、さっさと落ちろコラぁ!」



いやいやいや痛いって!ブラック☆スター君
ひょっとしなくても本気になってない!?」


「男二人でニャにやってるの〜?」





顔を上げた二人を、いつの間にかソファの背に
座った黒猫姿のブレアが見下ろしていた


その瞬間 君の顔も嫌そうにゆがむ


げっ!お前…っあっち行けよ!!」


「そんニャあからさまに邪険にすること
ニャいでしょ〜君たら冷たーい」


「冷たくて結構!」





あ、すっかり忘れてた


そう言えば彼 ブレアとはあんまり
仲がよくないんだったっけ…





「へへん隙あり!


「うっうわわわっ!!


ブラック☆スターに足を挟まれ 相手は
成す術もなくソファから床へと落下…





「楽しそうだからブレアもまーぜてv」


する直前で変身したブレア(なぜか下着姿)

取っ組み合ってた二人の間に無理矢理
身体をもぐりこませてきて





「うおっほぉぉ!?」


「うぎゃああぁぁぁぁぁ!!」





ほぼ同時に、二人は転がり落ちていた


全くもう…みんなして騒がしいんだから








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:大勢にも括れそうですが、視点と主体が
マカなので多分マカ夢です


マカ:多分って…それにここでも地味に
布教がされてるのはなんで?


狐狗狸:スイマセンただの趣味です


椿:でも彼の料理も本当においしかったわ
特にあのピザなんて、シンプルなのに


ソウル:あー…あのピザはアイツの料理ん中でも
一番だったかもな わざわざ材料持参してたし


ブラック:アレにはオレ様の舌も大満足だったぜ!


狐狗狸:母親仕込みの味ですからね、ピッツァは
(他はまぁ…本人の見様見真似とかでしょう)


ブレア:ニャんで私嫌われてるの〜せっかく
初登場ニャのにひどくなぁい?


狐狗狸:ゴメンねブレア 長編や別の短編で
後々理由を語ってあげるから許してちょ




なるべくなら友情と恋情の合間を目指したいです
(…通常営業の平均は微糖ですけど)


様 読んでいただきありがとうございました!