アラクノフォビアの一件で、城内にて保護された
幼き魔女・アンジェラ


死神の決断によって 死武専に入学するコトになった





その記念すべき初日


椿やキム達に連れられ、死武専内を
あちこちざっと案内してもらい


ブラック☆スターが保健室に寝ているコトを聞いて





「じゃ、治療は後でやるから
二人でゆっくり話でもしててよ」


「ええ ありがとう二人とも」


「こっちこそ、付き添ってくれてありがとう」


気を使ってか キムとジャクリーンが場を後にし


椿と共に お見舞いもかねての報告を
行おうとドアを開け







「君の活入れ…てかパンチ、マジ手加減な…イダダ」


「あんだよオレ様の気合いが入った一発
欲しいっつったのお前じゃねーか」





くの字でドア付近の床に転がる
亜麻色髪の少年と、はじめての邂逅を果たした






君!?何したのブラック☆スター!!」


「おう椿にアンジェラか、いやコイツが
起きるなり活入れてくれってせがんで来たから
いい心がけだと思って一発」


「せめて手加減してあげて!!」





ベットに腰かけて腕をグルンと回す
包帯だらけのパートナーへ


悲鳴交じりの叱咤をして


苦しむ自分へ駆け寄る心優しき魔暗器へ


壁に身をもたせて起き上がりつつ、魔鋏は

弱々しく笑いながら なんとか言葉を紡ぐ





「い…いいよ椿さ…椿、僕が言ったんだし」


その通り!
オレは信者の望みを叶えてやっただけだぜ!」


えっへん!と得意げに胸を張る
ブラック☆スターに椿はため息を一つ





入口でぼんやりとその様子をみてたアンジェラが


青いトンガリ頭と、前髪の隠れた亜麻色を
とっくりと見比べて訊ねる





「ツンツン このチャイロいのダレ?」





ああ、と指さされた当人が声を上げた





「そういえば、こうやってちゃんと会うの
はじめてだったっけね」





側にいた椿がしゃがんで目線を合わせ


やわらかい声音で パートナーと同等か
それ以上に包帯だらけの少年を紹介する





「アンジェラちゃん、この子は
って言って私たちのお友だちなのよ」


「ふーん、けどなんか弱そう」





率直な言葉に心をえぐられ





「ま、偉大なるオレ様とじゃ比べもんにならねーが
骨はあっからエンリョなく話しかけとけ!!」


「ハハハ…ま、よろしく アンジェラ」


身体のあちこちをくすぐられるような感覚を
こらえながらも、苦笑したがそう返した












〜Piccola signora precoce
"彼女の扱いは丁重に?"〜












後日…アンジェラは死武専の授業見学をしたり


"スパルトイ"での個別訓練にて


待機中の椿や、年頃の近い
ファイアー・サンダーら武器組と遊んだり


手の空いたメンバーか 教師に構ってもらい


デス・シティーでの楽しい日々を
本格的に、過ごし始めた





しかしスパルトイメンバーや教師陣も

キッドの捜索、自らの任務、訓練や授業があるため


必然として アンジェラに
気を回し続けるわけにもいかなくなってくる


…だが







チャイロー!肩車してよ!!」


だってば…はいはい」


「もーアンが先に肩車するのー!」


「ちょ、え、ファイアーにサンダー!?
順番順番一緒に乗ろうとしないで重いって!!」





訓練の際 差し入れを届けに顔を出したり


死武専内や町中で、割合普通に
休学中のがエンカウントしてくるので


椿やほかのメンバーが構えない時などは


彼がアンジェラの相手役を務めていた









…ある時も


彼女を一人にしそうになるタイミングで





ん?どうしたアンジェラ」


「チャイロが来る!」





訝しんだキリクが 視線を上げた直後





ラノベ主人公のように、顔と服装は普通に
イケてても"没個性"な亜麻色髪の少年が現れ





「やぁキリク」


「おお本当d「チャイロチャイロ!
塩コンブアメ買ってきてくれた?」



「あ、ゴメン忘れてた」


もー!ミフネの好きな味のアメなんだから
買っておいてって言ったのに!」





ぷくっと頬を膨らませる子供らしい様子に
キリクは笑うと同時に


幼くとも"魔女"ゆえに彼の"波長"に気づき

相手の来訪を言い当てたのだとおぼろげに考え


いいトコロへ来た、と安心した







けれども 申し訳なさそうにしていた


なおも文句アリアリと言った感じな
アンジェラの前へ屈みこんで





「そんなに怒ったらカワイイ顔が台無しだよ?」


営業スマイルで、さらりと歯の浮くような
セリフを放ったのには些かビックリしたらしく





おま…よくそんなこっ恥ずかしいことできんな」





四角いフレームのメガネの目の奥を丸くした
キリクに訊ねられ


顔を上げたは、きょとんとしていた





「女の子に優しくするのは普通じゃない?」





一切迷いのない一言に


逆に問いかけた側が気恥ずかしさを
感じながらも、負けじとキリクは返す





「それブレアの前でも同じコト言えんのk
「アレは魔女で痴女だから対象外」


時間をおかず食い気味な発言と、微妙に
機嫌が悪そうな顔をしてはいても





先日のハーバーの話も加味して


ブチ切れたの様子を知ってる彼には


案外、ブレアに対して若干態度が
軟化しているコトに気づく





「…ま、ちょっくら行ってくるから
子守りよろしくな」





やや強めに背中を叩かれて むせこみながらも


親指を立て、少年は歩き出した彼へ
いってらっしゃいと返した









独特な町で 個性的な仲間や友や保護者に囲まれ


殺伐うきうきライフを楽しんでいる
アンジェラではあったけれど





"いつか迎えに来る"ミフネのコトや


何をしているのか、どこにいるのか
今会えないのは何故なのか


幼いながらにどうしても





気になって 仕方なかった







「ねーミフネはどこにいるのー?
会いに行ってもいいでしょー?」






椿を始め、だれかれ構わず幾度となく
繰り返された質問を





「一人で町の外に出るのは危ないって
ミフネさんなら…待ってれば、来るから」


事情を知ってるも曖昧に受け流し





「けど君って ホントにミフネさん好きなんだね」


うん!ミフネはすっごく背が高くて
強くて、カッコいいの!」






代わりに、会うコトのなかったミフネの
人となりを改めて訊ねて


楽しげに話しだす幼き魔女の言葉へ


相づちを打ち、共感を示していた







「会ってみたかったな…」





遠い目をして呟いた一言は 無意識だったのだろう





「会えないの?」


だが、首を傾げる彼女へハッと振り返り





少年は自らが不用意なコトをしでかした
事実に気づき 冷や汗を流し始めた





「えっいや!ほら僕あの時お城にいたけど
ミフネさんに会えなかったからさ!」


今度アンジェラを迎えに来た時に 話がしたい、などと


慌てて取り繕っていただが





隣から注ぐ不審げな眼差しにいたたまれなくなり


誤魔化すように 矢継ぎ早に続ける





「そうだ!せっかくだから何かして遊ぼう
アンジェラは何がしたい?」



「…じゃー、かくれんぼ」


「OK 隠れるのは今見えるトコまでね」





身振り手振りでざっと範囲を指定して


鬼役をコイントスで決め、
アンジェラへ背を向けてカウントを始める





その隙にこっそりと魔法を使い


姿を透明にしたアンジェラは…落ちていた
棒切れを拾い上げて 彼との距離を縮め





手加減など まるで考えずに振り上げた





「んぎゃあっ!?」


股間を強打され、は耐え切れず
その場にうずくまる





頭上に浮かんだ手が棒を捨て


パタパタと、足音と共に遠ざかる







入れ替わるように、途中からその光景を
目撃していたらしきリズが駆け寄ってきた





「おい大丈夫か!?」


「…まる半日はダメ、かも」





絞り出した声と苦悶の表情に


相手の状態(主に下半身)を心配しつつも


逃げて行ったアンジェラを追いかけるべきか
迷うリズへ、立ち上がっては言う





「リズは訓練がまだあるだろ?
ここは僕に任せて







……一方、当てもなく走ったアンジェラは





デス・シティーの裏路地で疲れ切り


ペタンとその場にへたり込んでいた





もちろん透明化の魔法は解けており


通りかかった、いかにも不良でございと
言わんばかりのチャラい少年達が


彼女を見つけて歩み寄ってくる





あっれーコイツ最近入ってきた魔女じゃん」


「確かEATのヤツらがアラクノフォビア
壊滅させた時、保護したとかなんとか」





見下ろす彼らが 自分に興味と悪意
持っているのを何となく感じ


逃げようとしたアンジェラの行く手を遮って





「こいつ狩れば、一気に
デスサイズに近づけるんじゃね?」



一人が ぼそりとそう言った





「けど死神様にバレたらマズいだろ」


「大丈夫だべ どーせ魔女なんだから
今の内に殺したって平気だって」


「そうそう、魔女らしく暴れてたーとか
テキトーな理由つけときゃ何とかなるだろ」


よからぬ誘いをかける一人に
つるんでいた数人も納得し


下卑た笑みを浮かべて


不良の一人が、アンジェラの腕を
乱暴にぐいっと引っ張った





「やめてよぉ!」





あっさりと抱え上げられた彼女は





やだぁ!助けてツンツン!助けっ」


うるせぇ!大人しくしろよ」


「むぅー!!」


目一杯暴れるのを抑え込み、口を塞ぐ手へ
かみつき必死に抵抗する


その様子に苛立ち一人が武器化した手を





アンジェラへ、振るうよりも早く


割り込んだハサミの片刃が強く阻んだ






驚く彼らの腕から助け出され





「ちょっと、何してんの?





路上に降ろされたアンジェラの見開いた両目が
の背中を認めた





あんだテメェ、オレら死武専生は
魔女を狩んなきゃいけねぇんだ」


「どいつの武器だか知らねーけど
邪魔すんならテメーも痛い目見るぜ?」






肩を怒らせ数の多さで押し通そうとする
不良達を鼻で笑い





「僕は小物でね、職人もないし決闘ドコロか
ケンカすらまともに勝てた覚えがない」





だけど、と続けながらも


少年は一歩も引かず鳶色の瞳で睨み返す





「君らが数にモノを言わせるんだったら
僕は全力でこの子を逃がして
後で手段を選ばず、倍にしてやり返してやるよ



「テメェみてぇなヤツがオレらにどうやって
やり返「アンタ、ハデ・キラビヤのファンだよな?」


先頭にいた不良の薄ら笑いが消えた





「そこのセミロン毛は包○、で隣に立ってる
武器のアンタはボスニアの妹とケンカ中」





淡々と、次々にプライベートを言い当てられ

不良少年達の顔色が青ざめていく





構わず貼り付けたような笑みでは言う





「ああ、それとこの子に手ぇ出したら
僕よりもこわーい先輩が黙ってないだろうねぇ?」


その表情は…ひどく加虐的で愉しげであった





「さーどうするよ」







折悪しく、群れていた不良の一人が


目の前の相手がブラック☆スターの"信者"で

ソウルキリクらとも交流があるコトを思い出し





"手を出せばヤバい"という認識が
不良らの間であっという間に伝播していき





「今日のトコロはこれでカンベンしてやらぁ」


結局 捨て台詞を一つ残して
不良達はすごすごと退散していった







油断なくそれを見送って 彼は息を吐き





「…相手がビビりで助かったぁ〜」


バイト時に見聞きした"顧客情報"を利用した
ハッタリが上手くいったコトに胸を撫で下ろして


がっくりと その場で脱力をした





瞬間 ひしとジーンズにアンジェラが縋り付く


「っく…こ、ごわかっだよ〜!


「安心してアンジェラ、悪いのはもう
追っ払ったから…ダメか」





ボロボロと涙を流すアンジェラを見下ろして





今月の必要経費を思い浮かべて
ちょっと迷ってから…は決意した





「よし!
今日は特別にいいモノを食べに行こう!」










並んで歩いて、ほど近い店に入り


注文して出された"スペシャルデスパフェ"


アンジェラは…すっかり機嫌を直していた





「おいしい?」  「うん!!」





テーブルに乗り出しながらパフェを食べる彼女に


一安心して、もやって来た
デットチキンサンドをぱくつき始める





「チャイロ、それ一口ちょーだい」


「え?だってデスパフェ食べてるじゃん」


「ひーとーくーちー!」


「しょうがないなー…一口だけだよ?」


「わーいありがとっ!





差し出したサンドが、大きく開いた口に
噛みちぎられて一気に半分減った





「って結構大きい一口いったな!?


「ひふぉふちはひふぉふちはもーん」


「食べ終わってからしゃべりなよ
女の子なんだから、マナーを気にしないと」





呆れながらも、食べ終わった彼女の
食べカスだらけな口周りを紙ナプキンで拭くと


アンジェラは満面な笑みで ありがとうと言った





「さっき助けに来た時、ちょっとだけだけど
ミフネみたいだったよ」






そう、と返して少年は


…会えなかった侍に好感を覚え


目の前の魔女に、懐かしさと親近感と
罪悪感が混じった眼差しを向けた









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ほのぼのと甘めなやり取りを
短くまとめるつもり…だったのに


リズ:おっそろしく時間かかったな


キリク:よくばり過ぎなんじゃね?


ジャッキー:あと何か、最近キャラが
ブレてきててない?いきなりナンパになったり


狐狗狸:その辺は長編もあるからアレだけど
"変化"もまた"普通"の一面って事でひとつ


椿:普通、なのかしら…?


キム:てゆうかアイツこわっ、人のプライベート
逐一覚えてるなんてマジョきもい


狐狗狸:うぐ…えーとアンジェラちゃん
君はウチの子のコト、どう思う?


アンジェラ:よく遊んでくれるしミフネと
ツンツンの次くらいにはカッコいいから好き!



ブラック:オレ様が一番じゃねぇのかよー




きっとウチの子は天然ジゴロ(笑)


様 読んでいただきありがとうございました!